霊感少年と40人のクラスメイト達 その1 ~霊感少年、ここにあり。~

鳳凜之助

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この日は一時間目から五時間目までぶっ通しで実力テスト、それらが終わってから大掃除と、初っ端からかなりハードな時間割であった。
全て終わる頃にはクラスメイトほぼ全員がかなりグロッキーな様子だったのは言うまでもない。



「疲れたな~」
「テストむずかった~」
「先生まだこねぇのー?」

幸いにもこの日は水曜日…ノー部活デーの日。帰りのホームルームさえ無事に終われば、生徒達は自由の身になる。恐らく全員早く帰りたくてヤキモキしながら担任教師を待っていた、



その時だった。






「どーした、りゅう?」

「…ねぇ!どこにもねぇよ!」

「何がだよ?」



出席番号十二番の生徒、北上龍一きたかみりゅういちが少し前から頻りにカバンの中をごそごそと探し回っている。その仲間である、出席番号九番の勝田源吾かつたげんごと出席番号二十二番の田川康弘たがわやすひろも気になっているのか駆け寄る。



「財布が…ねぇんだよ!!」



その一言で教室にどよめきが起こった。



「はぁ!?マジかよ」
「ウソだろ?!」
「昨日珍しく勝ったのによ!中穴狙ったし…」



この発言に対し、「中穴?」「競馬?」「未成年なのに…」「何やってんだよ…」と大半の生徒がドン引きしたようだった。そんな状況でも構わず龍一とその仲間達は探し続けているが…一向に見つからないようだ。



「ヤス、あったか?」
「どこにもねぇよ」



「もしかすっと…誰か盗ったんじゃねーの」



龍一達はクラスメイトほぼ全員を満遍なく睨み付け、疑いの目を向けた。

今度は教室中が一気に静まり返る。



「おいしらばっくれてんじゃねーよ!!盗んだ奴出て来いよボケェ!」



このグループのリーダー格である源吾が近くの机をドカッと蹴って威嚇する。そのせいでビビって震え出す者や泣き出しそうになる者まで出て来てしまった。



「そうだぞ早よ龍に返せ!」
「今なら土下座さえすりゃ許してやっからよぉ!」



康弘と当事者の龍一も加勢するが、こんな空気では誰も名乗る者はいない。
そんな中、遂に重苦しい空気に耐えられなくなったのか…



「どーせどっかに落としてなくなったんだろドジ~」



この空気をぶっ壊そうとしたのは…出席番号二十七番の広尾大樹ひろおだいき。どうやらこのようにキレている相手に対しても平気で揶揄うタイプらしい。



(おいおい命知らずな奴だな。…まぁ俺も正直そう思ってたけど。てかこれで更に機嫌悪くなるんじゃ…)

孝信はそう懸念したが…こんなことで事態が収束するはずもなく、残念なことに予感は的中してしまった。



「……ぁんだとォ!?」



ものすごい剣幕で怒鳴った源吾は疾風の如く大樹のいる所へと向かい、



バキッ!と鈍い音を立て、拳を振り上げ思い切り大樹をぶん殴った。
一部の女子生徒がキャーッと悲鳴をあげる。



「っ…だぁ!!」



勢い余って大樹はその場に倒れ込んだ。
彼と仲の良いクラスメイト達がすぐに駆け寄る。



「大丈夫か大ちゃん!?
何すんだよ勝田!コイツは盗んでないって言っただろ」

出席番号三番の岩泉迅いわいずみじんが倒れた大樹の体を起こす。流石にもの凄く痛かったようで、「ひぃぃ~」と呻きながら真っ赤に腫れた左頬を擦っている。



「ぁあ!?」
「バカにしたろ!」
「そーだよ!ふざけたこと抜かしやがって…」



未だに怒りの収まらない三人に対し…



「三人とも落ち着け」



出席番号二十九番、北条聖人ほうじょうきよとが立ち上がった。彼は大樹とも迅とも日頃から仲がよく、いてもたってもいられないのだろう。
他のクラスメイト達は息を呑む。

聖人のような容姿端麗・誰からも好かれるようなクラスの中心的人物が遂に出て来たのだから、少しでもこの状況が好転するだろうと誰もが期待しているようだ。



「落ち着いていられっかよ!龍の財布がなくなったんだぞ」
「だからって殴っていいワケねぇだろ。それに盗まれたなんて勝手に決め付けんな」
「うるせぇ!」



またしても源吾は聖人の胸ぐらを掴む。先ほどの大樹とは違い、女子達から「やめて!」「誰か止めて!」との声があがった。




(これがモテる男とそうでねぇ奴との違いか…)



孝信はその様子を静観しながらそう考えていた。



(しっかし…流石北条君みたいな実力者は違うなァ。あーんな如何にもワルな奴らにでも果敢に立ち向かっていくんだから…)



そう思いながらふと前を見ると…クラスメイトほぼ全員が源吾達と聖人に注目している中、そうでない者もいた。



スリングショットを構え、今にも発射させようとしている者。周子だった。
弓道部員でシューティングゲームにも強い周子はこれも得意で、幼い頃から護身用にいつも持ち歩いている。これで悪ガキや不良相手に制裁を下すこともしばしばあった。そんな彼女の性格からすると…狙っているのは勝田だろう。

しかし、孝信はそんな周子と目を合わせ、首を横に振った。

(ちぃちゃん…気持ちはわかるけど)

恐らく源吾及びその仲間達の一連の言動を見ていられなくなったのだろうが、流石に本当に発射してしまっては今度は周子が痛い目を見せられるかもしれないからだった。

その思いを理解したのか、周子は黙ったままスリングショットを渋々下げた。






そして孝信の目に留まった者がもう一人いた。



(………?)



その人物は机の上に置いたカバンの中に両手を突っ込んで、その中を覗き込んだまま動かないでいた。
…というよりも、固まっていた。

しかもその人物は孝信のちょうどすぐ前の席にいる。



(どうした?久慈君)



彼は出席番号十四番、久慈輝くじひかる。昨日、この天高に転入してきた生徒だ。その為か彼のみ天高の制服であるグレーのブレザーと白黒チェックのスラックスでなく、学ランを着ている。



(………まさか!?)



と思った直後、




「ちょ…、待って……!」




ここで輝が話を切り出した。
今まで源吾達と聖人に向けられていた視線が一斉に輝の方へと向けられる。




「財布って………コレ?」



青ざめた顔をして震える手でカバンから財布を出した。
それは…輝には到底似合わなそうで、どう見てもガラの悪い者が持っていそうな、無数のスタッズのついた黒の長財布だった。



「!!!…俺のじゃん!」



どうやら本当に龍一の財布そのものだったようだ。龍一が急いで輝から財布を奪い返したのも束の間…

「テメエが盗みやがったんかァ!!」
「ドロボー!」
「謝れや!」

源吾達の怒りの矛先は速攻で輝へと向けられた。あっという間に聖人の胸ぐらから手が離れ、今度は三人揃って詰め寄る。
他の生徒達もヒソヒソと話を始め、どんどん騒がしくなっていく。



「…違う!俺は盗ってねぇ!」



最初こそたじろいでいたものの、輝は彼らをキッと睨み付け毅然と反論した。

まさかの反応に教室内がシーンと静まり返る。



「………はァ?」
「何言ってんだコイツ」
「カバンの中にあったろ」



源吾らも一瞬たじろぐ。
しかし、輝は態度を変えず続ける。



「カバンの中見たらたまたま入ってあったんだよ」
「何でテメエのカバンにあんだよ!?」
「知らねーよ!ホントに身に覚えな…」
「ウソつけエ!」
「ウソじゃねぇ!お前が競馬か何かで当てたのも知ったこっちゃねーよ。そもそも…こんなセンス悪ぃ財布なんか誰が欲しがるか!」



本人に身に覚えがないとはいえ、こんな空気でバッサリ否定したどころか、不良軍団相手にケンカを売るような発言までするとは誰が思っただろうか。
大樹のようなお調子者ならともかく、そうでないうえ、それもつい昨日に転入してきたばかりの者なのだから尚更である。



三人も他のクラスメイト達も暫くの間唖然としていたが、源吾は徐々に眉毛をつり上げ…



「…んだとコラァ!!テメエも殴られてーのかァ!?」



案の定、今まで以上の剣幕で輝に掴みかかろうとした。聖人がそれを止めにかかる。



(なかなか言うねえ久慈君…。でもそろそろ本気でやべぇな…俺も行くか)

と、孝信も聖人に援護射撃するべく立ち上がろうとするが…ちょうどその時、ガラッと教室の戸が開いた。



「静かにしろ!一体何があったんだ!?」



ここに来て担任教師の山口駿やまぐちしゅんがやっと到着したのであった。


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