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第8話 第二至上主義論者の昼休み

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「やぁやぁ、次郎~。今日も“二番”に精を出しているかね~」

「……誰だ?」

 授業初日。といえども、高校生の授業初日というものはどの教科も教員の自己紹介や授業内容の説明、教科書や教材の説明ばかりでこれといった授業はない。50分の授業に10分の休憩。それが4つ並べば、気が付けばお昼休みの時間である。

 我々高校生に与えられたお昼休みの時間は45分。それをいかに有意義に使えるかが午後の授業へのモチベーションを左右することに繋がることから、つまり一分一秒として無駄にする時間はない。

「それでは、いただきます」

「ちょっと待て!?俺はスルーかよ!?」

「スルーはしていない。『誰だ?』と聞いたではないか。これも立派なコミュニケーションだ」

「いやいやいや!?これだけのコミュニケーションだけだと、俺と次郎の関係性が伝わらないだろうが!」

「『伝わらない』とは誰に?」

「それは……言えないなー」

「また、“観測者”という奴か…」

「まぁ、そんなところだな。って、そんな俺のコアな設定はどうでもいいんだよ!名前!まず重要なことは名前!!さぁ、俺の名前は!!さん、はい!!」

「いただきます」

「おいーーー!!?もういいよ!俺の名前は“九十九 大宙”。漢字で“九十九”と書いて“つくも”と読む。下の名前は“だいちゅう”じゃないぜ!“大宙”と書いて“そら”って読むんだ。“観測者”の皆様!どうかこの九十九 大宙をよろしくお願いします!!……じゃあ、俺売店でなんか買って来るから!チャオ!!」

 それだけを言い残して大宙は足早に廊下へと駆けて行った。一体何なのだ、奴は。私の昼食の時間を邪魔しにだけにやって来たのか?

 奴こと、大宙とは小学校からの付き合いで、言わば幼馴染ということになる。幼馴染というか、腐れ縁と言った方がしっくりくる間柄ではあるが、彼は彼で悪い人間ではない。私も『第二至上主義論者』を名乗る上で、どうしても一定数の人間は私のことも機嫌そうな顔で見つめるが、彼はそれを承知の上でなお私と自然に接してくれる。友達百人欲しいとは言わないにしても、あの様な人柄の人間とはこれからも仲良くしていきたいものだ。

 序に言うと、先程言っていた“観測者”については私にもよく分かっていない。時折、ああやっては何処か虚空を眺めてはあの様な態度を取るのである。まぁ、信仰するものは人それぞれであるのだから、この多様性の時代において彼の様な人間もまた少なからずいるのだろうと結論付けておこう。

「じゃあ、改めまして、いただき…」

「やぁ、二階堂くん。お一人で昼食かい?私もご一緒してもいいかな?」
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