「第二至上主義論者」の斯くも難しき恋心

三十路独身フリーター男

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第9話 第二至上主義論者の昼食

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「一条さん」

 声に誘われて顔を上げると、そこには一条さんが居た。彼女もお弁当持参組らしく、片手には可愛い花柄のお弁当袋を掲げている。桜の花が刺繍された袋というのも風流があって、何とも一条さんの下の名前“春”にお似合いのお弁当袋だと思う。

「お付き合いしている同士、一緒にお弁当を食べるのはごく自然のことだと思うがいかがだろう?」

「…一年間の“仮”ですけどね。どうぞ、私の机の半分を使ってください」

「ありがとうね」

 一条さんのために開けた私の机のスペースにお弁当袋を置くと、彼女は私の前の席の椅子を借りて着席した。

 一条さんの告白を受け、我々は一年間という時間を設けて“仮”お付き合いをすることと相成った。『第二至上主義論者』として、『第一至上主義論者』であり、かつ私の一番に好きな相手でもある一条さんの告白を素直に受け取ることはできなかった。とはいえ、その次の日に返した私の言葉では彼女の告白を断るには理屈が足りず、断るにしても彼女を納得させる必要が出てきた。

 つまりこの一年間を通して、我々はお互いの主義主張を伝えあい、それにより自身の主義を諦めざるを得なくなった時、我々の関係に真の答えを導き出すことを約束したのだ。『第一至上主義論者』たる一条さんの意見がもっともだと思った場合、私は『第二至上主義論者』を諦め彼女と真剣にお付き合いする。一方で、『第二至上主義論者』たる私の意見が一条さんに納得してもらえたならば、彼女は『第一至上主義論者』を諦め、“仮”だった我々の関係にも終止符が打たれるというわけだ。

 私としても、こんな中途半端な関係はいかがなものかと悩んだが、しかし背に腹は代えられない。これも『第二至上主義論者』として生きる者に課せられた試練なのだと納得させ、一条さんと“彼氏彼女ではないが、ただの友達でもない”関係を築くことになった。

 というわけで、同じ机の上で私と一条さんが仲睦まじく一緒に昼食を食べることには何の問題も無いし、不純異性交遊ではない。もし、我々の関係にとやかく言う者が出てきたのであれば、ここに至るまでの経緯を懇切丁寧に説明した後に、序に『第二至上主義』が如何に素晴らしいのかを説いてやるとしよう。

 それでは、長らくお待たせして申し訳ない。今度こそ本当に…。

「いただきま…」

「お弁当のおかずで一番先に食べるのは、自分が一番に好きなおかずだと私は思うが、二階堂くんはどうかな?」
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