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第10話 第二至上主義論者のおかず
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「一番先に食べるおかずですか?」
「そうそう」
一条さんは自身のお弁当の蓋を開けるなりそう言い放った。
「例えば、今日の私のお弁当からするとだね。私はこの“シソ入り豆腐ハンバーグ”が好きだね」
一条さんは蓋を置いた途端、既にその中身を知っていたのか迷いなくころりと小さく丸められた“シソ入り豆腐ハンバーグ”へと箸を伸ばし、それを一つ摘まみ上げるとぽいっと小さな口へと放り込んだ。そして、「ん~!」と言葉では言い表せないその至福の声を上げると、上品に口元を手で隠しながら嬉しそうに“シソ入り豆腐ハンバーグ”を噛みしめていた。
その光景を見て、私も一条さんと同じように嬉しい気持ちになったが、今はそれどころではない。これはまたもや彼女からの挑戦状である。『第一至上主義論者』として、彼女は私に『第二至上主義論者』の論を聞こうとしているのだ。ならば、受けて立とう。
「残念ながら、私は違う」
「へー。じゃあ、二階堂くんは何を一番に食べるのかな?」
「私なら、先ずはこの“ブロッコリー”からいただく」
そう言いながら、手付かずだった弁当箱からその隅に並べられた”ブロッコリー”を一つ摘まみ上げて一条さんに見せつける。
「二階堂くんは“ブロッコリー”が好きなのかな?」
「いやいや、これはあくまでも先陣。言うなれば前座。一番に好きな物は二番目に食べるに限る」
好きな食べ物を目の前にして、冷静でいられる人は少ないであろう。誰しもが自分の好きな物をたらふく腹一杯に食べられたのであれば、どんなに幸せなことか。皆、一度は自分の好きな物を好きなだけ食べたいと願ったことがあるに違いない。
だからこそ例えば、お弁当箱を開けた瞬間に自分の好物が見えた時に、皆はお弁当を作ってくれた父母や材料を育ててくれた生産者、好物となってくれた動植物に手を合わせて感謝の口上を述べた後に、真っ先にそれを食べるだろう。
しかし、しばし待たれよ。よく考えてほしい、好きな物が無くなったお弁当箱の末路を。
自分の好物が無くなった途端、今まで光り輝いていたお弁当箱は一気にその輝きを失い、それに比例して食欲も減退していく。それはまるで、打ち上げ花火が終わった夏の夜空。あれほどまでに花火で色鮮やかだった夜に、突然に訪れる静寂のように寂しい。
ご飯を食べれるだけ幸せと分かっていても、やはり好物の無いお弁当などは消化試合の様なものだ。噛んでは飲み込み、噛んでは飲み込む。それでは、顎ばかりが鍛えられていくだけだ。
そこで私が提唱したいのが、
「“餅つき食法”!!」
「そうそう」
一条さんは自身のお弁当の蓋を開けるなりそう言い放った。
「例えば、今日の私のお弁当からするとだね。私はこの“シソ入り豆腐ハンバーグ”が好きだね」
一条さんは蓋を置いた途端、既にその中身を知っていたのか迷いなくころりと小さく丸められた“シソ入り豆腐ハンバーグ”へと箸を伸ばし、それを一つ摘まみ上げるとぽいっと小さな口へと放り込んだ。そして、「ん~!」と言葉では言い表せないその至福の声を上げると、上品に口元を手で隠しながら嬉しそうに“シソ入り豆腐ハンバーグ”を噛みしめていた。
その光景を見て、私も一条さんと同じように嬉しい気持ちになったが、今はそれどころではない。これはまたもや彼女からの挑戦状である。『第一至上主義論者』として、彼女は私に『第二至上主義論者』の論を聞こうとしているのだ。ならば、受けて立とう。
「残念ながら、私は違う」
「へー。じゃあ、二階堂くんは何を一番に食べるのかな?」
「私なら、先ずはこの“ブロッコリー”からいただく」
そう言いながら、手付かずだった弁当箱からその隅に並べられた”ブロッコリー”を一つ摘まみ上げて一条さんに見せつける。
「二階堂くんは“ブロッコリー”が好きなのかな?」
「いやいや、これはあくまでも先陣。言うなれば前座。一番に好きな物は二番目に食べるに限る」
好きな食べ物を目の前にして、冷静でいられる人は少ないであろう。誰しもが自分の好きな物をたらふく腹一杯に食べられたのであれば、どんなに幸せなことか。皆、一度は自分の好きな物を好きなだけ食べたいと願ったことがあるに違いない。
だからこそ例えば、お弁当箱を開けた瞬間に自分の好物が見えた時に、皆はお弁当を作ってくれた父母や材料を育ててくれた生産者、好物となってくれた動植物に手を合わせて感謝の口上を述べた後に、真っ先にそれを食べるだろう。
しかし、しばし待たれよ。よく考えてほしい、好きな物が無くなったお弁当箱の末路を。
自分の好物が無くなった途端、今まで光り輝いていたお弁当箱は一気にその輝きを失い、それに比例して食欲も減退していく。それはまるで、打ち上げ花火が終わった夏の夜空。あれほどまでに花火で色鮮やかだった夜に、突然に訪れる静寂のように寂しい。
ご飯を食べれるだけ幸せと分かっていても、やはり好物の無いお弁当などは消化試合の様なものだ。噛んでは飲み込み、噛んでは飲み込む。それでは、顎ばかりが鍛えられていくだけだ。
そこで私が提唱したいのが、
「“餅つき食法”!!」
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