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第11話 第二至上主義論者の好き嫌い
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「………“餅つき食法”?」
一条さんはよく噛んで食べているのか、先程の“シソ入り豆腐ハンバーグ”を漸く飲み込むとその口元を隠したまま少し頭を傾げた。
「ご飯を食べながら餅をつくというのは、何とも難儀なことだね」
「一つ、付け加えるとするならば、実際にお餅をつくわけではない」
「なら安心だ。では話を続けて」
“餅つき食法”とは、餅をつくが如く違う食べ物を交互に食べる方法である。あまり聞き馴染みがない者もいるかもしれないが、そんな人は小学校時代の給食の時間を思い出していただきたい。小学校に上がると、我らの食生活が大いに変化したことを思い出せるだろう。毎日美味しい給食を作ってくださった給食センターのおばさま方には感謝しかなく、彼女らの働きで多くの小学生たちの身体が作られ、その小学生だった子らは大きく羽ばたいて行ったであろう。
とはいえ、当時小学生だった我々にはそのありがたみは実感しにくく、好物が献立にあった時には心躍る思いだったが、自分の苦手とする食べ物があった日は何だか朝からどんよりとした気持ちになったに違いない。
そして、その苦手とする給食が出るその日に多くの者が自然と身に付けたであろう技こそが“餅つき食法”である。
元来、この食べ方は嫌いな物を征服する食べ方として用いられてきた。嫌いな物は誰しも嫌いだ。いくら身体に良いと言われても、その栄養素がその食べ物にしかないわけがない。であるならば、「私は他の食べ物で栄養を採るからこれは食べない!」と断固拒否したいのも山々であったが、それを許す義務教育はないであろう。
しかし、そこでふと周りを見てほしい。給食は何も嫌いな物だけとは限らない。好物とまではいかなくとも、嫌いな物を打ち消すだけの魅力がある給食が他にあるではないか。それらを用いて嫌いな食べ物を胃の中へと流し込み、血と肉にする。そんな時の“餅つき食法”である。
例えば、魚が苦手な小学生がいたとして、「魚→魚→魚→魚→…」と食べていたら到底身が持たない。噛みしめる度にポロポロと涙が零れるに違いない。一方で、「魚→野菜→魚→お米→魚→…」と食べてみたらあら不思議、確かに口の中に悲しい思いが一瞬広がるかもしれないが、それを他の食材がカバーしてくれるではないか。「ついて→こねて→ついて→こねて→…」と繰り返している内にもち米がお餅になるように、嫌いな物とそうでない物を交互に食べていると気が付けば皿は空になっている。
そんな嫌いな食べ物を克服する技として多くの小学生が自力で編み出す“餅つき食法”であるが、これを好きな食べ物に応用すると日々の食生活に変化がもたらされるのだ。
つまり「○→好きな物→×→好きな物→□→好きな物→…」と、好きな食べ物を交互に入れていくことで常に口の中は幸せであり退屈しない。次から次へと食は進み、気が付けばお弁当は空になり腹は満たされているという寸法だ。
ここで大事なのは、好きな食べ物を二番目に食べるということだ。
好きな食べ物についつい先に手を伸ばしてしまう気持ちも分からなくはないが、そこをぐっと我慢した先には充実した食の時間が待っていることを保証しよう。
以上が私の論であったが、ふと気が付くと一条さんは箸を掲げて、川面も揺蕩う魚を狙う鷹の如く私のお弁当目掛けてその箸を振り下ろしていた。
「“餅つきの杵泥棒”!!」
一条さんはよく噛んで食べているのか、先程の“シソ入り豆腐ハンバーグ”を漸く飲み込むとその口元を隠したまま少し頭を傾げた。
「ご飯を食べながら餅をつくというのは、何とも難儀なことだね」
「一つ、付け加えるとするならば、実際にお餅をつくわけではない」
「なら安心だ。では話を続けて」
“餅つき食法”とは、餅をつくが如く違う食べ物を交互に食べる方法である。あまり聞き馴染みがない者もいるかもしれないが、そんな人は小学校時代の給食の時間を思い出していただきたい。小学校に上がると、我らの食生活が大いに変化したことを思い出せるだろう。毎日美味しい給食を作ってくださった給食センターのおばさま方には感謝しかなく、彼女らの働きで多くの小学生たちの身体が作られ、その小学生だった子らは大きく羽ばたいて行ったであろう。
とはいえ、当時小学生だった我々にはそのありがたみは実感しにくく、好物が献立にあった時には心躍る思いだったが、自分の苦手とする食べ物があった日は何だか朝からどんよりとした気持ちになったに違いない。
そして、その苦手とする給食が出るその日に多くの者が自然と身に付けたであろう技こそが“餅つき食法”である。
元来、この食べ方は嫌いな物を征服する食べ方として用いられてきた。嫌いな物は誰しも嫌いだ。いくら身体に良いと言われても、その栄養素がその食べ物にしかないわけがない。であるならば、「私は他の食べ物で栄養を採るからこれは食べない!」と断固拒否したいのも山々であったが、それを許す義務教育はないであろう。
しかし、そこでふと周りを見てほしい。給食は何も嫌いな物だけとは限らない。好物とまではいかなくとも、嫌いな物を打ち消すだけの魅力がある給食が他にあるではないか。それらを用いて嫌いな食べ物を胃の中へと流し込み、血と肉にする。そんな時の“餅つき食法”である。
例えば、魚が苦手な小学生がいたとして、「魚→魚→魚→魚→…」と食べていたら到底身が持たない。噛みしめる度にポロポロと涙が零れるに違いない。一方で、「魚→野菜→魚→お米→魚→…」と食べてみたらあら不思議、確かに口の中に悲しい思いが一瞬広がるかもしれないが、それを他の食材がカバーしてくれるではないか。「ついて→こねて→ついて→こねて→…」と繰り返している内にもち米がお餅になるように、嫌いな物とそうでない物を交互に食べていると気が付けば皿は空になっている。
そんな嫌いな食べ物を克服する技として多くの小学生が自力で編み出す“餅つき食法”であるが、これを好きな食べ物に応用すると日々の食生活に変化がもたらされるのだ。
つまり「○→好きな物→×→好きな物→□→好きな物→…」と、好きな食べ物を交互に入れていくことで常に口の中は幸せであり退屈しない。次から次へと食は進み、気が付けばお弁当は空になり腹は満たされているという寸法だ。
ここで大事なのは、好きな食べ物を二番目に食べるということだ。
好きな食べ物についつい先に手を伸ばしてしまう気持ちも分からなくはないが、そこをぐっと我慢した先には充実した食の時間が待っていることを保証しよう。
以上が私の論であったが、ふと気が付くと一条さんは箸を掲げて、川面も揺蕩う魚を狙う鷹の如く私のお弁当目掛けてその箸を振り下ろしていた。
「“餅つきの杵泥棒”!!」
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