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レグルス編
38 復讐の終着点
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side クロエ
暗い暗い洞窟の中。復讐の標的である片腕のないスプリガンを求めて、クロエはただひとりでこの危ない場所を歩いていた。
「……松明なかったら本当に真っ暗で何にも見えないよ……」
片手に光源を持って、慎重に足を運ぶ。
カナタからの修行を全てクリアし、晴れてイノセントの一員となった日から、クロエはずっと復讐相手を探し続けた。二人にはバレないようにと、夜遅くの数時間を使って。
私が絶対にやっつけてみせるから、待ってて、お母さん……!
強い思いを胸に、クロエは前へ前へと臆することなく進んで行く。
『キーキー!』
『バタバタバタバタ……!』
「ぅわっ……!」
前方から突然、小さな黒い物体の群れが飛び出してきた。それに思わずギョッとしたクロエは、転びはしなかったものの、松明を地面に落としてまう。
「なんだ、コウモリか……ビックリしたぁ」
クロエは松明を拾い、再び歩き出す。
『お前が倒したいと思ってる奴の名前はスプリガン。Cランクの魔物として分類されているが、相当厄介だ。身体の大きさを変えられるのがその大きな要因のひとつだが、それだけじゃねぇ』
「ここ、すごく開けてる……それに小さな穴がいっぱい……」
この洞窟の最奥と思しき広々とした空間に出たクロエ。その床や壁、天井といったあらゆるところに無数の穴が散りばめられていた。
「モグラさんがたくさんいるのかな……っ!」
クロエはなんの警戒もなしにこの広い空間の中央に出た。そしてその瞬間、自身が無数の視線の雨を浴びていることに気づいた。
「なに、これ……!」
床、壁、天井……ありとあらゆる場所が真っ赤な光を放ち、二つのギラギラとした目が無数にこちらを睨んでいた。さらには……。
『ギャッギャッ!』
気味の悪い高笑いが、この空間中を反響した。
「うぅ……っ!」
超音波攻撃のような耳障りな音に、クロエは顔を顰めて両手で耳を塞いだ。けれどその音は、そんなやわな障壁などものともせず、直接耳の中に入り込んでくる。
『奴らのもうひとつ厄介な点……それは一匹いたら百匹のスプリガンが襲いかかってくることだ』
『ギャギャァァァ!!!』
一際大きな咆哮とともに、四方八方からクロエを取り囲むように、スプリガンの群れが飛び出してきた。
「っっ!!!」
脳を揺らすような不快な音に、クロエは一瞬反応が遅れてしまった。このままでは、醜いこの魔物たちに肉だけでなく骨までも貪られてしまうだろう。
「ぁ……」
なんとか顔を上げたクロエも、自身に訪れる未来を予感し、脱力した。
……お母さん、ごめんなさい。笑って生きるって約束、果たせそうにないや…………。
「今、会いに行くからね……」
せめて笑って再会できることを願って……。
「なーに情けねぇ面してやがんだ!馬鹿ガキがァァァァァ!!」
「っ?!」
スプリガンとは別の低い咆哮が後方からした途端、身体が宙に浮くような、誰かに抱えられた感覚がクロエを襲った。
ズシャァッ、と足でブレーキをかける音がする。
「あっぶねぇな、馬鹿。俺らが気づいてなかったらお前、あっという間にスプリガンの餌食になってたぞ」
物を運ぶみたいに脇に抱えられたクロエは、一瞬自分の身に何が起きたのか把握できずにいたが、毎日毎日聞き飽きるほどに馴染んだ安心をくれる声に驚き、無理矢理に顔を上げた。
「な、なんでここにいるの?カナタ先生……」
「んぁ……正直俺はお前のこの復讐劇に、ひとりのキャストとして出るつもりはなかった。自分の手でケリをつけなきゃならねぇもんに、部外者にチャチャ入れられたらたまったもんじゃねぇしな」
大勢のスプリガンが獲物たちに真っ赤な視線を向けてくる。それをカナタは軽く睨み、警戒しながらクロエとの会話を続ける。
「だがなこっちもこっちで、クロエ……お前に死なれちゃ困るんだわ」
「っ……!」
「せっかく新イノセントが始まったばっかだってのに、またカイトと二人ってのも、なんつうか……ちいと味気ねぇんだよなぁ」
「そ、それって……」
わたしが、本当の意味で、イノセントの一員に、カナタ先生にとって、大事な存在になれたってこと……?
クロエはカナタが照れくさそうに言った言葉を自分なりに解釈した結果、心が嬉しさでいっぱいになり、視線をカナタから少し外して両頬を赤らめた。
「あーあ、ガラにもねぇこと言っちまったぜ、ったくよ。まあなんだ……」
カナタはようやくクロエを下ろした。
先ほどまで諦めで心を埋めていたクロエだったが、今は背筋をピンと伸ばして、己の成さねばならない目的のために、敵をしっかりと見据えている。
「俺が勝手にやったことだからあんま気にすんな。それとお前の復讐相手までの道のりは俺が切り開いてやる。お前は自分の成すべきことにだけ全力を尽くせ!いいな?」
ドンッ、と内臓から全身に響くような力強い衝撃が、クロエの小さな背中から伝わってきた。「わっ」という声とともに、思わず右足が一歩前に出る。
「ふはっ……うん!!」
だがクロエに怒りの感情などは微塵もない。むしろ、パワーが満ち満ちて、自然と笑みが溢れてしまっていた。
この一喝……やっぱやみつきになりそう!!
「ハァァァ!!」
『ギャァァァッッ!!!!』
クロエの振り上げた一線により、片腕のなかったスプリガンの、もう片方の腕も斬り落とされた。ブシャァァッ、と黒ずんだ血飛沫を撒き散らすスプリガンは、痛みのあまりかよろよろと千鳥足を踏む。
その隙を、クロエは見逃さない。
「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
振り上げた勢いを乗せたままに、腰を捻りながら上半身ををグッと丸め込む。そして横なぎに剣を一気に振り抜いた。
『ギャッ…………』
自身に起きたことを感じる間もなく、スプリガンの二分された身体が地面に落ちた。バタンバタンと、二度の大きな音が洞窟内に駆け巡った。
「お母さん……」
クロエは動かなくなった復讐相手を見下ろした。
こんなやつにお母さんは……これでお母さんは救われたよね……だけどなんで殺されなきゃいけなかったんだろう……何も悪いことしてなかったのに……普通に、ただ幸せに暮らしてただけなのに……なんでいなくなっちゃったの……?
「……っぅ…………」
顔を上げ穴だらけの殺風景な天井を見上げた直後、ふと全身に力が入った。握りしめた手は、爪が手のひらに食い込みかけた。
会いたいよ、お母さん……!
「ぅう……ぐすっ……うぁぁ」
唇を噛み、その薄い膜を破りそうなほどに歯を食いしばる。だけれど嗚咽が漏れ続ける。
「……っぉかあさん……っう……」
涙の激流を堰き止めようと、二つの手で何度も何度も目元を拭う。だけれど手を離した直後から、ボロボロと悲しみの涙が落ち続ける。
たくさんおしゃべりして、たくさんご飯を食べて、たくさんたくさん笑い合って……そんな毎日をただ過ごしたかっただけなのに。
どうしてこんなことになっちゃったの……?
「おかあさん……!おかあさんっ!!」
大声とともに脱力した身体は、張り詰めた弦がプツンッ、と弾けるが如く崩れ落ちた。
悲しくて、悲しくて、悲しくて………………笑顔のやり方を忘れてしまいそうになる。母親に教わった、あの太陽みたいに輝く笑顔を。楽しいから、嬉しいから……そんな当たり前なことで思わず出てしまう、喜びしかなかったあの笑顔を。
「終わったな」
項垂れたクロエの肩に、大きくて温かい手が乗せられる。柔らかでいて少し強めなその感触と滅多にない優しげな声に、クロエのどん底に落ちた心が引き戻される。
自然と、涙が止まった。
「ぁ……ぅん……」
重い頭を上げてカナタを一瞥したクロエだったが、なんとなく地面へと視線を逸らした。
「なーにしょげてんだっつーの!」
「ぐへっ……!」
正常な思考を邪魔するほどの大きな衝撃が、クロエの背中を襲った。突然の出来事に、いつも以上にクロエは変な声を出した。
「はは、んだよそのカエルが潰れたみてぇな声は。もっと胸張れよ。お前の目的を完遂できたわけなんだからよ……っしょ」
「わわわ」
口角を上げながら、カナタはクロエを抱き上げた。動揺を隠せないクロエは頬をうっすらと赤く染め上げたものの、暴れることなくされるがままにカナタの首に腕を回した。
そしてそのままカナタは魔物の残骸を避けつつ、外への出口に向かって歩き出した。
「えと……ありがと、助けに来てくれて」
「おうおう、随分としおらしくなってまあ……いや待て、お前ほんとにクロエか?」
「っ!カナタ先生のバカッ!!」
「イテ」
冗談混じりの言葉にクロエは大きく反応し、カナタの頭に自身の頭をぶつけた。カナタは反射的に声を出したものの、クロエの反応がおかしくて、再び朗らかな笑みを浮かべた。
「はは、冗談だっつーの。……で?復讐を達成したご感想は?Cランク冒険者のクロエさん?」
「……お母さんが死んだ時からずうっとあるもやもやが、全然晴れない」
「へぇ……」
興味深そうな声を出したカナタだったが、そんな声はクロエに届いてはいない。クロエはただ、口にしたその言葉のわけを、心の内で考えていた。
……復讐を果たすことが、こんなにも虚しいだなんて思わなかった……。
心のどこかで、この復讐が終われば母親も自分もまたいつものように笑ってられるのだと、クロエは本気で信じていた。だけどそこには、黒い黒い小さな裂け目が無数にあった。
復讐なんてしたところで、結局あの楽しかった頃は戻ってはこないのだと、あの笑顔が眩しかった母親に会える日はもう二度とこないのだと。
その誰かの目にも似た、口元にも似た裂け目が、その中の眼球が、両端が吊り上がった唇が、こちらを見てケラケラと嘲笑っているようだった。
『お前がしたことは、すべてが自己満足に過ぎない。無駄な努力をご苦労さん笑』と。
その笑い声がスプリガンの醜い鳴き声と重なり、クロエは思わずカナタの身体をギュッと力強く抱きしめる。そんな、身体を震わせるクロエの様子に、カナタは軽く背中をさすってやった。
「……復讐なんてのは結局ただの自己満足。死んだ誰かのためと綺麗事をほざいているが、そんな免罪符は本来もってちゃならねぇ代物だ。あの時弱かった自分が許せなくて、あの頃の自分を超えたんだと証明するために復讐相手を殺すんだ。これのどこが死者を弔う行為だぁあ?死者への冒涜の間違いだろ」
「……!」
心のうちに棲む黒い裂け目たちに感じた言葉と重なり、クロエはビクッと身体を震わせた。
「だが……それがなんだってんだ、バーカ」
「……え?」
カナタはまるで死者を侮辱するかのようにベロを少し出した。
「死者への冒涜、大いに結構。死者がどう思ってるかとか、所詮はもうわかりゃしねぇ。だったら生者の俺たちが好きに判断して、好きに復讐したっていいだろ。それが残されたもんの特権だ」
「……」
そういう見方もできるんだ……。
いっそ晴れ晴れとしていると錯覚するほどに清々しい言葉に、クロエの複雑奇怪と化した心が少しずつ浄化されていく気がした。
無数の黒い裂け目が灰のように散り散りとなり、真っ白な心の内が姿を表していく。もやもやとした胸の内が、すっと晴れやかになっていく。
クロエはふと目を閉じた。
そこにはずっとずっと会いたかった母親のが立っていた。いつものように柔和な笑みを浮かべて。
『クロエ。あなたはひとりじゃないわ。私はずーっと、あなたのことを見守っているから』
『うん……』
目から大粒の涙が流れそうになる。だけど必死に堪えた。弱い自分を見せたくなくて。
『笑顔、忘れちゃだめだからね』
『ぅん……』
声が震えた。だけど、必死に悟らせまいと口角を上げた。成長した自分を見て欲しくて。
『……心から笑って生きて!それが母さんのたったひとつの願いよ』
『ぁ……うん。わかってるよ、お母さん。お母さんの分まで、めいいっぱい笑って生きる。約束する』
迫り上がった悲しみの声を押し留め、クロエは真剣な面持ちで母親へと応えた。
これが自分の覚悟だと、はっきり伝えるために。
そんな、一度も見たことがなかった娘の様子に一瞬呆気に取られたものの、母親は満足そうにひとつ頷いた。
『またね、お母さん』
伝えたいことを言い終えたクロエは、笑顔で別れの挨拶を済ませつつ、この場を後にしようと、自身の背後で眩しいくらいに煌めく場所へと、歩みを進め始めた。
『ええ、いってらっしゃい、クロエ』
『……っ!……いってきます、お母さん!!』
一瞬立ち止まったクロエだったが、振り返って大きく手を振りながら、満開の笑顔の花を咲かせた。
「……おい、聞いてんのか、クロエ」
もちろん、幼いクロエでもたった今の出来事が、自身が作り出した幻想だということはわかっていた。死者と会話することなど不可能だと知っていた。ただの心の防衛反応なんだと説明されれば、それまでのこと。
「ぁ、ごめん。聞いてなかった」
だがクロエにとって、そんなことはどうでもよかった。幻想でも幻覚でも、今の自分の言葉を大好きな人に伝えられた。それだけで満足で、それだけで心が晴れ渡ったのだから。
「ったく……ん?なんか爽やかな声してんな」
「え?やだなー、カナタ先生。いくらわたしが可愛い弟子だからって、そんなに褒めても何にもでないよー、だ」
「はぁ?そんなんじゃねぇっての。……まあいいわ、なんか調子取り戻したみてぇだし」
……心配、してくれたんだ。
やっぱり優しいなー、カナタ先生は。
「ありがとう、カナタ先生」
「んだよ、改まって。それはさっきーーー」
「だーい好き……!」
「っ?!?!?!」
チュッ、と小さなリップ音が響いた。と、同時に頬を今まで感じたことのない柔らかな感触が襲った。その高く軽い音は、やけに大きくカナタの耳には届いた。ここがまだ洞窟内部のせいなのだろうか。
「なっ……は?……お、おおお前何して……!」
クロエの衝撃的な行動に、カナタは立ち止まった。そして明らかに普段以上に大声をあげている。俺はこの状況に困惑しすぎてテンパってます!、と言わんばかりである。
「何って……感謝のキス?」
目をパチパチとさせるクロエ。なぜカナタがこんなにも動揺しているのか、理解してはいなかった。
「キ、キスは誓いのキスのことだろ?!何を勘違いしたか知らないが、俺は別にお前なんかを愛してなんぞいない!」
「あー!可愛い愛弟子を愛さない先生は、先生失格なんだー!先生のばーか!!」
「先生をバカ呼ばわりするなんざ、千年早ぇんだよ、クソガキ!」
「そこは百年早いじゃないの?!」
「どっちだって一緒だっ!」
「……より一層仲良くなられたみたいですね。私も一安心です」
いつのまにか外に出ていたらしい。言い合う二人を遮るように、優しげな声が割って入ってきた。
「カイトも来てくれてたんだ……」
「ええ。この洞窟の出入り口がここ以外にない可能性も考慮し、誰も入ってこないように見張っていたのです。ですが、杞憂に終わって何より。クロエさ……クロエが無事で良かったです。ね、カナタ様?」
「ゴホン……ま、まあな。ほらもう十分休んだろ。あとは自分で歩け」
「わ……」
カナタはぶっきらぼうにクロエを下ろした。
もうちょっと優しくしてくれても……。
「……!」
だがその直後、カナタはポンッとクロエの背中を軽く叩き、そのままカイトの方へと歩き出した。それは何か、カナタなりの励まし、もしくはこれからよろしく頼むという、そんな信頼が乗っていたのではないかと、そう錯覚させるには十分な激励だった。
「ったく、とんだおてんば娘だぜ。おかげでもう、朝日がのぼっちまうじゃねぇか」
「ふふ。クロエがいなくなっていの一番に駆け出したのは、どこの誰でしたっけ?」
「おまっ……チッ……クロエにはぜってぇに言うんじゃねぇぞ」
「そうですね……カナタ様が今後、勝手にお金を使わないと約束くだされば聞いてあげましょう」
「なっ!そりゃお前、金はいろんなもんに使わなきゃなんねぇんだから、いちいちお前に許可取るのだるいだろ?!」
「そうは申されましても、うちの資金も湯水のようにどこからともなく湧いてくるわけじゃないんです。計画的に消費していかないと、下手をすれば餓死にします」
大の大人があーだこうだと揉めている姿に、クロエは口元に手を当てて思わず、くすくすと笑った。
「うぐっ…………わ、わーったよ。善処はする、善処は……」
「言質、取りましたからね。ね、クロエ?」
「うん!」
振り返ったカイトに対して、クロエはいたずらっ子のような笑みを返した。
「いつまでそこにいるつもりだ、クロエ。とっとと戻るぞ」
クロエが来ないことに痺れを切らしたカナタは、クロエの方へと振り返った。そして仏頂面をしてパーティの新たなメンバーを呼んだ。
手は差し伸べられはしなかったが、再び前を向いた時、手持ち無沙汰な左手が宙を切っていることにクロエは気づく。
よーし!
クロエはカナタに抱きつくような勢いで駆け出した。
「つかまえた!」
「のわっ」
カナタの手が肩の高さほどまで上がり、さらに突然の推進力が身体にかかったために、前方に身体が倒れかけ、足下がたじたじとなった。
「このじゃじゃ馬娘!何しやがるっ?!」
「えっへへー。このくらいで文句言うなんて、心が狭いよー、カナタ先生!」
「てかその手を離せ」
「やだ!」
クロエは空いた左手で下まぶたを下方向へと引き、「ベーッ」と言いながら舌を出した。
「(なんだこの生意気な態度は……!)……やだじゃねぇ。離せっつってんだ。先生の言うことは聞けよ」
「はい!弟子の意志を尊重するのも、先生の務めだと思いまーす!」
左腕を高々と天にあげ、悪びれもなくカナタに物申す。
「クソッ……ああいえばこういいやがる……わーったよ。ただし……今日だけだからな」
「はいはーい」
「返事は一回でいいんだよ」
「ふふ。子猫に振り回される親猫みたいで、かわいいですね」
カナタとクロエのじゃれあいを、カイトは一歩引いた所から見守っていた。誰しもが思わず微笑んでしまうような、穏やかなワンシーンがそこにはあった。
だがその直後、カイトは哀愁漂う目で二人を見つめた。
「……(このような楽しい日々が、ずっと続けばいいのに)」
そんなカイトの思いを知ってか知らずか、この数年後まさかクロエ自身が悪徳組織に攫われ、イノセントというパーティが瓦解し始めるとは、この時の誰もがつゆとも思わなかったのである。
暗い暗い洞窟の中。復讐の標的である片腕のないスプリガンを求めて、クロエはただひとりでこの危ない場所を歩いていた。
「……松明なかったら本当に真っ暗で何にも見えないよ……」
片手に光源を持って、慎重に足を運ぶ。
カナタからの修行を全てクリアし、晴れてイノセントの一員となった日から、クロエはずっと復讐相手を探し続けた。二人にはバレないようにと、夜遅くの数時間を使って。
私が絶対にやっつけてみせるから、待ってて、お母さん……!
強い思いを胸に、クロエは前へ前へと臆することなく進んで行く。
『キーキー!』
『バタバタバタバタ……!』
「ぅわっ……!」
前方から突然、小さな黒い物体の群れが飛び出してきた。それに思わずギョッとしたクロエは、転びはしなかったものの、松明を地面に落としてまう。
「なんだ、コウモリか……ビックリしたぁ」
クロエは松明を拾い、再び歩き出す。
『お前が倒したいと思ってる奴の名前はスプリガン。Cランクの魔物として分類されているが、相当厄介だ。身体の大きさを変えられるのがその大きな要因のひとつだが、それだけじゃねぇ』
「ここ、すごく開けてる……それに小さな穴がいっぱい……」
この洞窟の最奥と思しき広々とした空間に出たクロエ。その床や壁、天井といったあらゆるところに無数の穴が散りばめられていた。
「モグラさんがたくさんいるのかな……っ!」
クロエはなんの警戒もなしにこの広い空間の中央に出た。そしてその瞬間、自身が無数の視線の雨を浴びていることに気づいた。
「なに、これ……!」
床、壁、天井……ありとあらゆる場所が真っ赤な光を放ち、二つのギラギラとした目が無数にこちらを睨んでいた。さらには……。
『ギャッギャッ!』
気味の悪い高笑いが、この空間中を反響した。
「うぅ……っ!」
超音波攻撃のような耳障りな音に、クロエは顔を顰めて両手で耳を塞いだ。けれどその音は、そんなやわな障壁などものともせず、直接耳の中に入り込んでくる。
『奴らのもうひとつ厄介な点……それは一匹いたら百匹のスプリガンが襲いかかってくることだ』
『ギャギャァァァ!!!』
一際大きな咆哮とともに、四方八方からクロエを取り囲むように、スプリガンの群れが飛び出してきた。
「っっ!!!」
脳を揺らすような不快な音に、クロエは一瞬反応が遅れてしまった。このままでは、醜いこの魔物たちに肉だけでなく骨までも貪られてしまうだろう。
「ぁ……」
なんとか顔を上げたクロエも、自身に訪れる未来を予感し、脱力した。
……お母さん、ごめんなさい。笑って生きるって約束、果たせそうにないや…………。
「今、会いに行くからね……」
せめて笑って再会できることを願って……。
「なーに情けねぇ面してやがんだ!馬鹿ガキがァァァァァ!!」
「っ?!」
スプリガンとは別の低い咆哮が後方からした途端、身体が宙に浮くような、誰かに抱えられた感覚がクロエを襲った。
ズシャァッ、と足でブレーキをかける音がする。
「あっぶねぇな、馬鹿。俺らが気づいてなかったらお前、あっという間にスプリガンの餌食になってたぞ」
物を運ぶみたいに脇に抱えられたクロエは、一瞬自分の身に何が起きたのか把握できずにいたが、毎日毎日聞き飽きるほどに馴染んだ安心をくれる声に驚き、無理矢理に顔を上げた。
「な、なんでここにいるの?カナタ先生……」
「んぁ……正直俺はお前のこの復讐劇に、ひとりのキャストとして出るつもりはなかった。自分の手でケリをつけなきゃならねぇもんに、部外者にチャチャ入れられたらたまったもんじゃねぇしな」
大勢のスプリガンが獲物たちに真っ赤な視線を向けてくる。それをカナタは軽く睨み、警戒しながらクロエとの会話を続ける。
「だがなこっちもこっちで、クロエ……お前に死なれちゃ困るんだわ」
「っ……!」
「せっかく新イノセントが始まったばっかだってのに、またカイトと二人ってのも、なんつうか……ちいと味気ねぇんだよなぁ」
「そ、それって……」
わたしが、本当の意味で、イノセントの一員に、カナタ先生にとって、大事な存在になれたってこと……?
クロエはカナタが照れくさそうに言った言葉を自分なりに解釈した結果、心が嬉しさでいっぱいになり、視線をカナタから少し外して両頬を赤らめた。
「あーあ、ガラにもねぇこと言っちまったぜ、ったくよ。まあなんだ……」
カナタはようやくクロエを下ろした。
先ほどまで諦めで心を埋めていたクロエだったが、今は背筋をピンと伸ばして、己の成さねばならない目的のために、敵をしっかりと見据えている。
「俺が勝手にやったことだからあんま気にすんな。それとお前の復讐相手までの道のりは俺が切り開いてやる。お前は自分の成すべきことにだけ全力を尽くせ!いいな?」
ドンッ、と内臓から全身に響くような力強い衝撃が、クロエの小さな背中から伝わってきた。「わっ」という声とともに、思わず右足が一歩前に出る。
「ふはっ……うん!!」
だがクロエに怒りの感情などは微塵もない。むしろ、パワーが満ち満ちて、自然と笑みが溢れてしまっていた。
この一喝……やっぱやみつきになりそう!!
「ハァァァ!!」
『ギャァァァッッ!!!!』
クロエの振り上げた一線により、片腕のなかったスプリガンの、もう片方の腕も斬り落とされた。ブシャァァッ、と黒ずんだ血飛沫を撒き散らすスプリガンは、痛みのあまりかよろよろと千鳥足を踏む。
その隙を、クロエは見逃さない。
「これで、終わりだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
振り上げた勢いを乗せたままに、腰を捻りながら上半身ををグッと丸め込む。そして横なぎに剣を一気に振り抜いた。
『ギャッ…………』
自身に起きたことを感じる間もなく、スプリガンの二分された身体が地面に落ちた。バタンバタンと、二度の大きな音が洞窟内に駆け巡った。
「お母さん……」
クロエは動かなくなった復讐相手を見下ろした。
こんなやつにお母さんは……これでお母さんは救われたよね……だけどなんで殺されなきゃいけなかったんだろう……何も悪いことしてなかったのに……普通に、ただ幸せに暮らしてただけなのに……なんでいなくなっちゃったの……?
「……っぅ…………」
顔を上げ穴だらけの殺風景な天井を見上げた直後、ふと全身に力が入った。握りしめた手は、爪が手のひらに食い込みかけた。
会いたいよ、お母さん……!
「ぅう……ぐすっ……うぁぁ」
唇を噛み、その薄い膜を破りそうなほどに歯を食いしばる。だけれど嗚咽が漏れ続ける。
「……っぉかあさん……っう……」
涙の激流を堰き止めようと、二つの手で何度も何度も目元を拭う。だけれど手を離した直後から、ボロボロと悲しみの涙が落ち続ける。
たくさんおしゃべりして、たくさんご飯を食べて、たくさんたくさん笑い合って……そんな毎日をただ過ごしたかっただけなのに。
どうしてこんなことになっちゃったの……?
「おかあさん……!おかあさんっ!!」
大声とともに脱力した身体は、張り詰めた弦がプツンッ、と弾けるが如く崩れ落ちた。
悲しくて、悲しくて、悲しくて………………笑顔のやり方を忘れてしまいそうになる。母親に教わった、あの太陽みたいに輝く笑顔を。楽しいから、嬉しいから……そんな当たり前なことで思わず出てしまう、喜びしかなかったあの笑顔を。
「終わったな」
項垂れたクロエの肩に、大きくて温かい手が乗せられる。柔らかでいて少し強めなその感触と滅多にない優しげな声に、クロエのどん底に落ちた心が引き戻される。
自然と、涙が止まった。
「ぁ……ぅん……」
重い頭を上げてカナタを一瞥したクロエだったが、なんとなく地面へと視線を逸らした。
「なーにしょげてんだっつーの!」
「ぐへっ……!」
正常な思考を邪魔するほどの大きな衝撃が、クロエの背中を襲った。突然の出来事に、いつも以上にクロエは変な声を出した。
「はは、んだよそのカエルが潰れたみてぇな声は。もっと胸張れよ。お前の目的を完遂できたわけなんだからよ……っしょ」
「わわわ」
口角を上げながら、カナタはクロエを抱き上げた。動揺を隠せないクロエは頬をうっすらと赤く染め上げたものの、暴れることなくされるがままにカナタの首に腕を回した。
そしてそのままカナタは魔物の残骸を避けつつ、外への出口に向かって歩き出した。
「えと……ありがと、助けに来てくれて」
「おうおう、随分としおらしくなってまあ……いや待て、お前ほんとにクロエか?」
「っ!カナタ先生のバカッ!!」
「イテ」
冗談混じりの言葉にクロエは大きく反応し、カナタの頭に自身の頭をぶつけた。カナタは反射的に声を出したものの、クロエの反応がおかしくて、再び朗らかな笑みを浮かべた。
「はは、冗談だっつーの。……で?復讐を達成したご感想は?Cランク冒険者のクロエさん?」
「……お母さんが死んだ時からずうっとあるもやもやが、全然晴れない」
「へぇ……」
興味深そうな声を出したカナタだったが、そんな声はクロエに届いてはいない。クロエはただ、口にしたその言葉のわけを、心の内で考えていた。
……復讐を果たすことが、こんなにも虚しいだなんて思わなかった……。
心のどこかで、この復讐が終われば母親も自分もまたいつものように笑ってられるのだと、クロエは本気で信じていた。だけどそこには、黒い黒い小さな裂け目が無数にあった。
復讐なんてしたところで、結局あの楽しかった頃は戻ってはこないのだと、あの笑顔が眩しかった母親に会える日はもう二度とこないのだと。
その誰かの目にも似た、口元にも似た裂け目が、その中の眼球が、両端が吊り上がった唇が、こちらを見てケラケラと嘲笑っているようだった。
『お前がしたことは、すべてが自己満足に過ぎない。無駄な努力をご苦労さん笑』と。
その笑い声がスプリガンの醜い鳴き声と重なり、クロエは思わずカナタの身体をギュッと力強く抱きしめる。そんな、身体を震わせるクロエの様子に、カナタは軽く背中をさすってやった。
「……復讐なんてのは結局ただの自己満足。死んだ誰かのためと綺麗事をほざいているが、そんな免罪符は本来もってちゃならねぇ代物だ。あの時弱かった自分が許せなくて、あの頃の自分を超えたんだと証明するために復讐相手を殺すんだ。これのどこが死者を弔う行為だぁあ?死者への冒涜の間違いだろ」
「……!」
心のうちに棲む黒い裂け目たちに感じた言葉と重なり、クロエはビクッと身体を震わせた。
「だが……それがなんだってんだ、バーカ」
「……え?」
カナタはまるで死者を侮辱するかのようにベロを少し出した。
「死者への冒涜、大いに結構。死者がどう思ってるかとか、所詮はもうわかりゃしねぇ。だったら生者の俺たちが好きに判断して、好きに復讐したっていいだろ。それが残されたもんの特権だ」
「……」
そういう見方もできるんだ……。
いっそ晴れ晴れとしていると錯覚するほどに清々しい言葉に、クロエの複雑奇怪と化した心が少しずつ浄化されていく気がした。
無数の黒い裂け目が灰のように散り散りとなり、真っ白な心の内が姿を表していく。もやもやとした胸の内が、すっと晴れやかになっていく。
クロエはふと目を閉じた。
そこにはずっとずっと会いたかった母親のが立っていた。いつものように柔和な笑みを浮かべて。
『クロエ。あなたはひとりじゃないわ。私はずーっと、あなたのことを見守っているから』
『うん……』
目から大粒の涙が流れそうになる。だけど必死に堪えた。弱い自分を見せたくなくて。
『笑顔、忘れちゃだめだからね』
『ぅん……』
声が震えた。だけど、必死に悟らせまいと口角を上げた。成長した自分を見て欲しくて。
『……心から笑って生きて!それが母さんのたったひとつの願いよ』
『ぁ……うん。わかってるよ、お母さん。お母さんの分まで、めいいっぱい笑って生きる。約束する』
迫り上がった悲しみの声を押し留め、クロエは真剣な面持ちで母親へと応えた。
これが自分の覚悟だと、はっきり伝えるために。
そんな、一度も見たことがなかった娘の様子に一瞬呆気に取られたものの、母親は満足そうにひとつ頷いた。
『またね、お母さん』
伝えたいことを言い終えたクロエは、笑顔で別れの挨拶を済ませつつ、この場を後にしようと、自身の背後で眩しいくらいに煌めく場所へと、歩みを進め始めた。
『ええ、いってらっしゃい、クロエ』
『……っ!……いってきます、お母さん!!』
一瞬立ち止まったクロエだったが、振り返って大きく手を振りながら、満開の笑顔の花を咲かせた。
「……おい、聞いてんのか、クロエ」
もちろん、幼いクロエでもたった今の出来事が、自身が作り出した幻想だということはわかっていた。死者と会話することなど不可能だと知っていた。ただの心の防衛反応なんだと説明されれば、それまでのこと。
「ぁ、ごめん。聞いてなかった」
だがクロエにとって、そんなことはどうでもよかった。幻想でも幻覚でも、今の自分の言葉を大好きな人に伝えられた。それだけで満足で、それだけで心が晴れ渡ったのだから。
「ったく……ん?なんか爽やかな声してんな」
「え?やだなー、カナタ先生。いくらわたしが可愛い弟子だからって、そんなに褒めても何にもでないよー、だ」
「はぁ?そんなんじゃねぇっての。……まあいいわ、なんか調子取り戻したみてぇだし」
……心配、してくれたんだ。
やっぱり優しいなー、カナタ先生は。
「ありがとう、カナタ先生」
「んだよ、改まって。それはさっきーーー」
「だーい好き……!」
「っ?!?!?!」
チュッ、と小さなリップ音が響いた。と、同時に頬を今まで感じたことのない柔らかな感触が襲った。その高く軽い音は、やけに大きくカナタの耳には届いた。ここがまだ洞窟内部のせいなのだろうか。
「なっ……は?……お、おおお前何して……!」
クロエの衝撃的な行動に、カナタは立ち止まった。そして明らかに普段以上に大声をあげている。俺はこの状況に困惑しすぎてテンパってます!、と言わんばかりである。
「何って……感謝のキス?」
目をパチパチとさせるクロエ。なぜカナタがこんなにも動揺しているのか、理解してはいなかった。
「キ、キスは誓いのキスのことだろ?!何を勘違いしたか知らないが、俺は別にお前なんかを愛してなんぞいない!」
「あー!可愛い愛弟子を愛さない先生は、先生失格なんだー!先生のばーか!!」
「先生をバカ呼ばわりするなんざ、千年早ぇんだよ、クソガキ!」
「そこは百年早いじゃないの?!」
「どっちだって一緒だっ!」
「……より一層仲良くなられたみたいですね。私も一安心です」
いつのまにか外に出ていたらしい。言い合う二人を遮るように、優しげな声が割って入ってきた。
「カイトも来てくれてたんだ……」
「ええ。この洞窟の出入り口がここ以外にない可能性も考慮し、誰も入ってこないように見張っていたのです。ですが、杞憂に終わって何より。クロエさ……クロエが無事で良かったです。ね、カナタ様?」
「ゴホン……ま、まあな。ほらもう十分休んだろ。あとは自分で歩け」
「わ……」
カナタはぶっきらぼうにクロエを下ろした。
もうちょっと優しくしてくれても……。
「……!」
だがその直後、カナタはポンッとクロエの背中を軽く叩き、そのままカイトの方へと歩き出した。それは何か、カナタなりの励まし、もしくはこれからよろしく頼むという、そんな信頼が乗っていたのではないかと、そう錯覚させるには十分な激励だった。
「ったく、とんだおてんば娘だぜ。おかげでもう、朝日がのぼっちまうじゃねぇか」
「ふふ。クロエがいなくなっていの一番に駆け出したのは、どこの誰でしたっけ?」
「おまっ……チッ……クロエにはぜってぇに言うんじゃねぇぞ」
「そうですね……カナタ様が今後、勝手にお金を使わないと約束くだされば聞いてあげましょう」
「なっ!そりゃお前、金はいろんなもんに使わなきゃなんねぇんだから、いちいちお前に許可取るのだるいだろ?!」
「そうは申されましても、うちの資金も湯水のようにどこからともなく湧いてくるわけじゃないんです。計画的に消費していかないと、下手をすれば餓死にします」
大の大人があーだこうだと揉めている姿に、クロエは口元に手を当てて思わず、くすくすと笑った。
「うぐっ…………わ、わーったよ。善処はする、善処は……」
「言質、取りましたからね。ね、クロエ?」
「うん!」
振り返ったカイトに対して、クロエはいたずらっ子のような笑みを返した。
「いつまでそこにいるつもりだ、クロエ。とっとと戻るぞ」
クロエが来ないことに痺れを切らしたカナタは、クロエの方へと振り返った。そして仏頂面をしてパーティの新たなメンバーを呼んだ。
手は差し伸べられはしなかったが、再び前を向いた時、手持ち無沙汰な左手が宙を切っていることにクロエは気づく。
よーし!
クロエはカナタに抱きつくような勢いで駆け出した。
「つかまえた!」
「のわっ」
カナタの手が肩の高さほどまで上がり、さらに突然の推進力が身体にかかったために、前方に身体が倒れかけ、足下がたじたじとなった。
「このじゃじゃ馬娘!何しやがるっ?!」
「えっへへー。このくらいで文句言うなんて、心が狭いよー、カナタ先生!」
「てかその手を離せ」
「やだ!」
クロエは空いた左手で下まぶたを下方向へと引き、「ベーッ」と言いながら舌を出した。
「(なんだこの生意気な態度は……!)……やだじゃねぇ。離せっつってんだ。先生の言うことは聞けよ」
「はい!弟子の意志を尊重するのも、先生の務めだと思いまーす!」
左腕を高々と天にあげ、悪びれもなくカナタに物申す。
「クソッ……ああいえばこういいやがる……わーったよ。ただし……今日だけだからな」
「はいはーい」
「返事は一回でいいんだよ」
「ふふ。子猫に振り回される親猫みたいで、かわいいですね」
カナタとクロエのじゃれあいを、カイトは一歩引いた所から見守っていた。誰しもが思わず微笑んでしまうような、穏やかなワンシーンがそこにはあった。
だがその直後、カイトは哀愁漂う目で二人を見つめた。
「……(このような楽しい日々が、ずっと続けばいいのに)」
そんなカイトの思いを知ってか知らずか、この数年後まさかクロエ自身が悪徳組織に攫われ、イノセントというパーティが瓦解し始めるとは、この時の誰もがつゆとも思わなかったのである。
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