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一章 花の咲く死をあなたに
EP14 終幕は静か
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7月21日の午後、明後日から夏休みに入る俺は今日も変わらない。俺は今日も木の下に足を運ぶ。するとそこには椿さんじゃない、別の女性が佇んでいた。
バッサリと短髪な髪、扇子を片手に仰ぎながら、木の下で涼んでいる女性は、俺を見つけると扇子をパシっと閉じ、俺の方へ駆けつけてきた。
「あなた、走馬君?」
ジリジリと太陽に照らされている日当へ出てきた女性は目を細めて俺の名前を確認した。俺は思わず「はい」と返事をして女性の名前を聞いた。
「そうよね、私の名前がまだだったわ。私は上野律よ。えっと、上野椿の姉なんだけど、椿のこと覚えてる?」
「もちろん覚えてます!」
衝撃的なことに身を乗り出した。律さんは哀しそうな目を微笑みに隠しながら俺に全て話してくれた。
椿さんは七夕の夜に倒れて病院へ救急搬送されたこと。
一命は取り留めたものの、患部の浸食が全身に広がっていること。
そして、17日の午前7時に亡くなったこと。
この一連のことを伝えると律さんは涙を拭いながら、持っていたバッグから何かを取り出した。見覚えのあるピンクのキーホルダーと緑色の封筒だった。律さんはそれを俺に差し出した。
「これは椿の書いた手紙と、あの子が大事にしていた、香水の便で作ったキーホルダーです。あの子が走馬君に自分が死んだら絶対に渡して欲しいって言ってたの」
「そうですか」
俺はそれをとった。涙は出てはいないが、俺の涙腺が絞られている感覚をなんとなく感じている。
「読んでみてください。椿にとってもきっと、ここが1番の思い出だと思うので」
「そうですね。読んでみます」
俺はキーホルダーを小指に通して封筒を開けた。そこにはキラキラとした便箋が3枚入っていて、文字がズラズラと書かれていた。
走馬、元気?
私は絶賛から元気中だよ。
君がこれ読んでるってことはさ、もう走馬のことだし、察してるよね。やっぱり長くは生きれなかったな。
ごめんね?最後は全然木の下ににいれなくて。私も行きたかったんだけどさ、今書いている時もそうだけどお医者さんがダメだって言うんだよね。まあドクターストップってやつ?カッコいいでしょ。
って、こんなところでまで強がるかって思ったでしょ?最初に書いたよね、から元気だって。
じゃあ仕方ないな、ちょっとシリアスな文面を書いてあげるよ。言ってたよね、死ぬ時、人は何を想うかって。私はね今、すっごく充実してるよ。
これはあくまで私の個人の感想だよ。いやまった、もう読んでる時には死んでいるから故人の感想って感じ?やばい病室で大声出してわらっちゃった。
そんなブラックジョークはさておいて、ズバリ今のわたしの気持ちは、大好きな家族と友達が毎日お見舞いとかに来てくれてなんかすっごく幸せな気持ち。それに私の脳裏にはいっつも走馬との楽しい会話が浮かんでてさ、もう一回だけ遊びたいなって思う。ちょっとは真剣に書いたんだけど、こういうので走馬との契約は成立したのかな。
最後に、走馬は私が1番、家族よりも親友よりも心を開けた人だから、重いって思われても仕方ないけど、私の形見を持っていてほしいです。私がいっつも背負ってたバッグに付いてたキーホルダー、昔ねお母さんがわたしにくれた香水の空き瓶をお父さんがうっかり落として割っちゃったんだよね。それをお父さんは拾い集めて、シーグラスみたいに角を丸めてくっつけてこういう球にしてくれたんだ。「割ってごめん」って言いながらこれを渡した手はちっちゃな傷だらけだったんだ。なんかそれを見たら涙が止まらなくなっちゃってさ、なんかずっと持ってるんだ。だからお願い、これを持っていて欲しい。わたしを少しでも覚えていてほしいからさ。
黙読した手紙には微かな水玉模様ができていた。律さんは黙って俺を見ていた。そして手紙をしまうのを見て喋り出した。
「走馬君、椿と仲良くしてくれてありがとう。あの子退院してから、最高の友達ができたってとっても楽しそうだったわ。走馬にはなんでも打ち明けられる気がする!なんて言っててね。私には言えないのになあって思うと少し羨ましかった。でもあなたみたいな人がいてくれたお陰で、あの子の最後の反抗は実ったのよね」
そう言って律さんは背を向けて歩き始めた。
最後の抵抗…そっか、それなら良かったかな。すると律さんはくるっと顔を向けた。
「あ、そうそう。あの子ね死ぬ前の日によくわからない言葉を言ったのよね」
「よくわからない言葉?」
「そうそうえーっとなんだったかな…あ、思い出した」
「独奏は終わったね。わたしは満足かな。伴奏者の采配はいかに」
俺が思い浮かんだ椿さんは、ニヤリと笑っていた。
「縁起悪いね。椿さん」
2日後の夏休み初日、木の下にはひまわりが咲いていた。
バッサリと短髪な髪、扇子を片手に仰ぎながら、木の下で涼んでいる女性は、俺を見つけると扇子をパシっと閉じ、俺の方へ駆けつけてきた。
「あなた、走馬君?」
ジリジリと太陽に照らされている日当へ出てきた女性は目を細めて俺の名前を確認した。俺は思わず「はい」と返事をして女性の名前を聞いた。
「そうよね、私の名前がまだだったわ。私は上野律よ。えっと、上野椿の姉なんだけど、椿のこと覚えてる?」
「もちろん覚えてます!」
衝撃的なことに身を乗り出した。律さんは哀しそうな目を微笑みに隠しながら俺に全て話してくれた。
椿さんは七夕の夜に倒れて病院へ救急搬送されたこと。
一命は取り留めたものの、患部の浸食が全身に広がっていること。
そして、17日の午前7時に亡くなったこと。
この一連のことを伝えると律さんは涙を拭いながら、持っていたバッグから何かを取り出した。見覚えのあるピンクのキーホルダーと緑色の封筒だった。律さんはそれを俺に差し出した。
「これは椿の書いた手紙と、あの子が大事にしていた、香水の便で作ったキーホルダーです。あの子が走馬君に自分が死んだら絶対に渡して欲しいって言ってたの」
「そうですか」
俺はそれをとった。涙は出てはいないが、俺の涙腺が絞られている感覚をなんとなく感じている。
「読んでみてください。椿にとってもきっと、ここが1番の思い出だと思うので」
「そうですね。読んでみます」
俺はキーホルダーを小指に通して封筒を開けた。そこにはキラキラとした便箋が3枚入っていて、文字がズラズラと書かれていた。
走馬、元気?
私は絶賛から元気中だよ。
君がこれ読んでるってことはさ、もう走馬のことだし、察してるよね。やっぱり長くは生きれなかったな。
ごめんね?最後は全然木の下ににいれなくて。私も行きたかったんだけどさ、今書いている時もそうだけどお医者さんがダメだって言うんだよね。まあドクターストップってやつ?カッコいいでしょ。
って、こんなところでまで強がるかって思ったでしょ?最初に書いたよね、から元気だって。
じゃあ仕方ないな、ちょっとシリアスな文面を書いてあげるよ。言ってたよね、死ぬ時、人は何を想うかって。私はね今、すっごく充実してるよ。
これはあくまで私の個人の感想だよ。いやまった、もう読んでる時には死んでいるから故人の感想って感じ?やばい病室で大声出してわらっちゃった。
そんなブラックジョークはさておいて、ズバリ今のわたしの気持ちは、大好きな家族と友達が毎日お見舞いとかに来てくれてなんかすっごく幸せな気持ち。それに私の脳裏にはいっつも走馬との楽しい会話が浮かんでてさ、もう一回だけ遊びたいなって思う。ちょっとは真剣に書いたんだけど、こういうので走馬との契約は成立したのかな。
最後に、走馬は私が1番、家族よりも親友よりも心を開けた人だから、重いって思われても仕方ないけど、私の形見を持っていてほしいです。私がいっつも背負ってたバッグに付いてたキーホルダー、昔ねお母さんがわたしにくれた香水の空き瓶をお父さんがうっかり落として割っちゃったんだよね。それをお父さんは拾い集めて、シーグラスみたいに角を丸めてくっつけてこういう球にしてくれたんだ。「割ってごめん」って言いながらこれを渡した手はちっちゃな傷だらけだったんだ。なんかそれを見たら涙が止まらなくなっちゃってさ、なんかずっと持ってるんだ。だからお願い、これを持っていて欲しい。わたしを少しでも覚えていてほしいからさ。
黙読した手紙には微かな水玉模様ができていた。律さんは黙って俺を見ていた。そして手紙をしまうのを見て喋り出した。
「走馬君、椿と仲良くしてくれてありがとう。あの子退院してから、最高の友達ができたってとっても楽しそうだったわ。走馬にはなんでも打ち明けられる気がする!なんて言っててね。私には言えないのになあって思うと少し羨ましかった。でもあなたみたいな人がいてくれたお陰で、あの子の最後の反抗は実ったのよね」
そう言って律さんは背を向けて歩き始めた。
最後の抵抗…そっか、それなら良かったかな。すると律さんはくるっと顔を向けた。
「あ、そうそう。あの子ね死ぬ前の日によくわからない言葉を言ったのよね」
「よくわからない言葉?」
「そうそうえーっとなんだったかな…あ、思い出した」
「独奏は終わったね。わたしは満足かな。伴奏者の采配はいかに」
俺が思い浮かんだ椿さんは、ニヤリと笑っていた。
「縁起悪いね。椿さん」
2日後の夏休み初日、木の下にはひまわりが咲いていた。
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