記憶を封じられた新米冒険者、森で誰にも見えないはずのS級冒険者を拾いました

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それぞれの一歩

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 訓練七日目。
 私たち四人の訓練生にとって、この一週間の集大成ともいえる一日がやってきた。

「今日の訓練が終われば、お前たちは正式なEランク冒険者として登録される」

 朝一番、教室に入ったオルド教官がそう言ってから、私たちは緊張の面持ちでうなずいた。

「最後の試験だ。今から始まりの洞へ転移する。指輪の機能をひとつ開放しておく。素材を拾ったとき、その手にこの指輪があれば、自動的に収納される」

 教官の手元で赤い輝石が光ると、私の指にはめられた指輪もかすかに熱を帯びたように感じた。

「これは餞別だ。無駄にするな」

 そして、私たちは転移の光に包まれた。

───

 転移先は、訓練生専用の初級ダンジョン――“始まりの洞”と呼ばれる場所だった。

 ひんやりとした空気。石造りの天井と床には苔が生えており、所々に赤い輝石の光がほのかに灯っている。

「ここに出てくるのは、弱いスライムが中心だ。自分の力で倒し、素材を拾え。換金方法も覚えておけ」

 教官の指示とともに、私たちはそれぞれ別々のルートに進んでいった。

────

 私の前に現れたのは、半透明の小さなスライム。
 これまでの訓練を思い出しながら、矢をつがえ、冷静に狙いを定める。

 落ち着いて、いつも通りにやればいい。

 矢はまっすぐに放たれ、スライムを撃ち抜く。

 霧のように消えると、残されたのは赤く輝く輝石と、ゼリー状の素材。

 私はそれを拾おうと手を伸ばした瞬間……

「……!」

 素材が、すっと指輪の中に吸い込まれるように消えた。

(本当に、指輪が収納してくれた……!)

 なんだか、冒険者になった実感が湧いてくる。

───

 別の通路では、カイルが剣を握りしめていた。

「おっしゃ……今度こそ一撃だ!」

 以前のように空振りはせず、スライムに正確な一太刀を入れる。

「ふっ……完璧……じゃ、なかったっ!」

 踏み込みすぎて足を滑らせ、転がって壁に頭をぶつけた彼は、しばらくジタバタしていた。

 でも、ちゃんと倒せた……!

 彼のそんな様子を見て、笑いながらも安心した。

 エルマーは冷静に魔法でスライムを誘導し、隙を突いて撃破。素材の状態まで確認してから拾っていた。

 ボルドは重たい盾と鈍器を扱いながら、確実に敵を追い詰める。地に足のついたその戦い方に、どこか安心感があった。

 こうして、それぞれが自分の力で戦い、素材を集め、換金所前の広場へと転移した。

───

「よくやったな。これで、お前たちは正式なEランク冒険者だ」

 教官オルドが短く告げた。

「街の南門を出て右手に、依頼所と換金所がある。自分のやり方で、生き残れ」

 それだけ言い残し、教官は指輪の転移を使って姿を消した。

 ……静かな別れだった。

 私たち四人は、ぽつんと教室に戻ってきた。

「……なんだか、あっけないね」

 私がつぶやくと、ボルドが笑った。

「最初はどうなることかと思ったけど、ここまで来たんだ。よく頑張ったよ、みんな」

「おう。これでやっと、冒険者ってわけか……!」

 カイルが照れたように笑い、背中をぽんと叩いてくる。

「これからは、ひとりでも進めるようになれ」

 エルマーは相変わらずクールな表情だったけど、その声にはどこかあたたかさがあった。

 私は小さくうなずく。

「……うん。私、きっと大丈夫」

 それぞれの未来へ向けて、私たちは静かに歩き出した。


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