婚約者の前で奪われる!?王太子が僕の番だった夜

ちぱ

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あなたの側にいたい

 甘い沈黙が胸に残っているなかで、殿下がふっと視線を落とした。

 長い睫毛が頬に落とす影は、どこか名残惜しげだ。

「……レオン」

「はい」

「お前の気持ちを聞いた今……余計に、このまま公務に戻るのが惜しくなっている」

 冗談のように聞こえるのに、声の奥はまるで隠せていない熱を帯びていた。

 胸がじんと温かくなる。

「僕も……殿下と、もっと一緒にいたいです」

 自然と漏れた言葉に、殿下の視線がすぐ戻る。

 その瞳に映る自分が、理由もなく少しだけ誇らしい。

 逃げたくない。
 関わりたい。
 殿下の力になりたい。

 胸の奥で決意がゆっくり形になる。

「殿下のお役に立てることが、なにか……ありませんか?」

 殿下の目が、わずかに揺れた。

 驚いたような、信じられないような……でも、すぐに喜びを隠しきれない色に変わる。

「役に立ちたい、か」

「はい。ここで本を読んだり待っているだけでは……殿下がいない時間が、とても長く感じるんです。だから……少しでも殿下のお力になりたくて」

 言いながら胸が熱くなる。

 昨日の寂しさも、眠れなかった夜も、誰かのために動けるなら……きっと違う。

 殿下はしばらく何も言わなかった。

 沈黙が否定ではないと分かって、息を吸う。

 やがて、深く、小さく息を吐いて……殿下は言った。

「そんなことを言われて、俺が断れると思うか?」

「殿下……?」

「あなたがそばにいたいと言ってくれる。それが、どれほど嬉しいか……わかっているのか?」

 熱を帯びた瞳で見つめられ、息が詰まる。

 殿下はゆっくり姿勢を正し、手を差し出した。

「レオン。俺の執務室へ来い」

「……えっ」

「書類の仕分けなら任せられるものがある。それに……俺の側にいたほうが、お前も落ち着くのだろう?」

 胸が跳ねる。
 嬉しくて、息が苦しくなるほどだった。

「……行きたいです。殿下の側に」

 殿下は静かに微笑む。

「なら決まりだ。今日から、公務の時間もなるべく共に過ごそう」

 その言葉だけで、寂しさで満たされていた昨日のすべてが塗り替えられる気がした。

 胸の奥があたたかくほどけていく。

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