血術使いの当主様

重陽 菊花

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深雪の覚醒

無職になった日

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【六月七日】
 いつも通りの時間に目が覚めて、支度をして仕事用の鞄に診断書を入れて家を出た。
直接社長室に行くか、一度自分の席の私物を回収するかと色々と考えているともう会社に着いてしまい意を決して自分の席に向かった。
「何でまだ終わってないんだ!」
「柊、どうなっているんだ!」
出勤して秒で修羅場になった、まだ鞄すら置けていない状況だ。
他の社員も皆こちらを見ている。
自分のデスクの上を見ると知らない書類の束があった。
「今朝、出勤した際に机の上に置いてあったこちらの事でしょうか?」
一切終わってない書類の束を見せた。
「それだ!それ!おい沼田、提出期限は昨日だぞ!」
「いや、課長!柊が終わらせてなくて…」
「昨日は有給を頂いてましたし…一昨日、帰る時にはありませんでした」
また沼田がやらかしたのかと周りがザワザワし始めた。
「おい!沼田!どうなってるんだ!」
「おい!柊!どうなってるんだ!」
出た!困った時の沼田のオウム返し!
「沼田さん…私のデスクに書類を置いたら仕事は終了ではないですよ?何年勤めてるんですか?無能のコネ入社って本当に迷惑ですね!課長?」
思わず口が滑ってしまった。
沼田は顔を真っ赤にして、課長は顔を青ざめた。
歩行信号の完成である。
他の社員は更にザワザワし始めた。
「今までのお二人の件は伯父社長伯母人事部長には報告済みです」
私はデスクの片付けを始めた、今日で辞めると決めて出社したからだ。
沼田はこんな感じで他の社員にも仕事を押し付けて人のせいにしたりしている。
課長は部長のコネで入社した沼田には強くは言えずに沼田のミスを他の社員のせいにしたりしている。
顔を真っ赤にして怒り出した沼田が叫んだ。
「報告したとしてお前に何の権限があるんだ!」
「私には何の権限もありませんよ?ただ親族に報告をしただけです」
「平社員のお前が報告しても信憑性なんてないから無意味だ」
沼田に便乗し真っ赤な顔で叫ぶ課長。
「俺は部長の息子だぞ!」
「私は社長の姪です!まぁ私もコネ入社なんですが!」
シーンと静まり返るフロアで笑ってみたが誰も笑みを返してくれない。
「この騒ぎを起こした私達三人は沙汰を受けるでしょうし、この会社ともお別れでしょうね!他の社員の皆さんからしたらハッピーエンドですね!」
またもや笑ってみたがまた誰も笑みを返してくれない、流石に寂しい。
 そこに社長が「何の騒ぎだ」と言って入って来た。
「いや、これは柊が仕事が終わらなくてデマを風潮して…なぁ沼田!」
「はい!それでこんな空気なんです!」
「あ、伯父さん!先日はごちそうさまでした!」
「深雪ちゃん…会社で伯父さんは駄目って言ったでしょう」
「すみません…そこの無能コネ社員につい言い返してしまって…」
「アハハハハ本当に弟にそっくりだよな」
「コネをバラしちゃったから祖父会長に怒られるかな…」
「会長は深雪ちゃんに甘いから大丈夫だよ!こう云う時は先手を打つんだ…早く会長室に行っておいで」
「先手必勝って祖父も言ってましたね…速攻行って来ます」
「では、失礼します」とフロアーにお辞儀をして祖父の元に向かった。
「深雪です…失礼します」
私は勝手を知る会長室に入った。
ソファー同士がテーブルを挟み向かい合うソファーの定位置に腰を掛けたら、祖父が向かいに座って来た。
良いタイミングで秘書の藤井のオネエ様が私の好きな銘柄の紅茶を入れてくれた。
藤井のオネエ様は身長は百八十センチ位はありネイビーのスリーピーススーツを着こなす三十代半ばの細マッチョのイケメン様。
「深雪、聞いたよ…部長の息子を『無能コネ社員』って呼んだんだってね、私も藤井も笑いが止まらなかったよ」
そう言いながら笑う祖父に怒りが沸いたが涙腺の方が勝った。
「だって…だって…私は限界で…」
泣きながら鞄から診断書を祖父に渡した。
後に控える藤井のオネエ様も見ている。
「適応障害になっちゃったからニートになる」
そう言いながら号泣してしまった。
柄にもなくアワアワしたオネエ丸出しの藤井が高級ティッシュで涙を拭いたり紅茶を勧めたりとカオスな会長室が出来上がった。
 祖父は「そうか」とソファーを立ち上がった。
「藤井はそのまま深雪を頼んだ」
そう言い残すと激怒した祖父は会長室を出て行った。
予想外の展開に涙が引っ込んだ。
「ねぇ藤井のオネエ様、祖父が何するか気にならない?」
「もちろん気になりますが…」
「見に行きましょう」
「え、本気ですか?深雪の嬢様?」
「こんなに面白そうな事を見に行かないでどうするの」
藤井とは「藤井のオネエ様」と「深雪のお嬢様」と呼び合い軽口が叩ける仲だ。
私達二人は静かに会長室を出て先程のフロアに向かった。
 フロアのドア付近に一番仲が良かったあゆみちゃんがいた。
「ねぇ、あゆみちゃん今どんな感じ?」
「あ!本日の主役の深雪ちゃん!」と小声で茶化された。
「深雪ちゃんが退室してから社長が課長と沼田さんを連れて会議室に行ったよ」
「ありがとう!見て来るね♡」
「私にも内容教えてね♡」
あゆみちゃんは社長の姪と知ってもいつも通りの態度である。
 私達二人は会議室に着いたが話は終わっていて落ち込んだ課長と沼田が出て来た。
部長は少し悲しそうな雰囲気だった。
「柊さん、この度は愚息が本当に申し訳なかった」と深々と頭を下げた。
「頭を上げてください!部長が悪い訳ではないですし!部長単品に否はないと会長と社長には訴えます!それにどうしようもないクズと知ってて採用した人事部長にも否はあります」
そう言うと会議室内から笑い声が聞こえた。
「気遣いありがとう」
そう言って部長は馬鹿二人を連れてその場を去った。
「失礼します」
会議室にオネエ様と入ると祖父・伯父・伯母がいた。
「深雪ちゃん…気が付いてあげられなくてごめんなさいね」
普段は厳しい伯母が優しく声を掛けてくれた。
叔母は榎家の長女で姉弟の中で最年長で長男・次男も頭が上がらずこの会社の裏ボスだ。
「今日はこのまま藤井の送りで帰って…後で三人で家に伺うと秀二と雪子さんに伝えといてね」
少しは落ち着いた祖父に言われ、オネエ様と帰途に着いた。
 車内では会話はなかったが気まずい雰囲気になる訳でもなく無言が続いた。
普段は電車通勤で車で帰るのは初めてで、外の景色に夢中だ。
気が付くと見慣れた景色が見えてきて自宅に近い事が分かった。
「そろそろ着きますよ!お嬢様」とオネエ様が声を掛けてくれた。
自宅に着くと外から後部座席のドアを開けてくれた。
「お嬢様…後ほど会長・社長・人事部長が来る事をご両親にお伝えくださいね」
念を押された、オネエ様はしっかりしていて抜かりがない。
オネエ様は私が玄関を入るまで見送ってくれた。
両親は共働きで夕方過ぎまで帰って来ない。
今は昼前でまだまだ両親が帰って来るまで時間がある。
二階の自室で今までの職場での嫌な事を一気に思い出してしまい涙が止まらなくなった。
そのままベッドに伏せる様に寝てしまった。

ーーまた夢を見ている自覚があるーー
柊家の屋敷の居間から、昨日の夢に出て来た男と幼い私が楽しそうに庭で鞠を使って遊んでいるのが見える。
平安時代の貴族かと突っ込みを入れたいが声も出ないし動けない。
暫く二人を見ていると男が振り返った。
【深雪…早く戻っておいで】
 
 今回もそこで目が覚めた、外が真っ暗で時計を見ると十九時に近かった。
一階のリビングで夕食の支度をしているであろう母の元に急いだ。
「お母さん…今日、会社を辞めて来た」
「念願のニートになったのね!良かったね」
「あ!祖父と伯父と伯母が今日来るって」
「そうみたいね、さっき秀一さんから電話があって色々手続きがあって二十時過ぎ頃三人で来るって」
「お父さんは?」
「そろそろ帰って来るんじゃないかしら」
タイミング良く玄関の施錠を開ける音がした。
「ただいま~」と父が帰って来た。
「「おかえりなさ~い」」
「無職の記念に」
父が帰りに買って来た花束とケーキを受け取った。
「無職の記念って…ありがとう」
苦笑いをしながらケーキを冷蔵庫にしまって花束を花瓶に移してリビングの窓際に飾ったら丁度、夕食の支度が済んでいた。
私達三人はテーブルの椅子の定位置に座った。
「「「いただきます」」」
いつもより少しだけ豪華な食事だった、私の好物のとんかつ・カニクリームコロッケ・マカロニサラダ・白米・豚汁だ。
いつも通りの雰囲気の夕食を終えて私が洗い物をして、父がテーブルやキッチンを拭いている。
皆で食べる物を調理をした人は片付けをしなくていい、これが柊家のルールだ。
父と二人で片付けが終わる頃には二十時を少しだけ過ぎていた。
 そこに聞き慣れた藤井のオネエ様の車のエンジン音が聞こえた。
すると父が「迎えに行って来る」と玄関を出て行った。
母に「深雪はテーブルにいなさい」と言われたので定位置に座った。
 祖父・伯父・伯母・オネエ様を連れて父が戻って来た。
「親父と兄貴と姉貴はソファーに座ってくれ」と父がテーブルを挟み向き合うソファーに三人を案内した。
「藤井さんはテーブルでお願いね」と母は私の向かいにオネエ様を案内した。
父はお茶を五つ乗せたトレーを持ってソファーに行きお茶を並べて三人が座る向かいのソファーに座った。
母は私達にケーキと紅茶を持って来て私とオネエ様の前に並べて父の隣に座った。
我が家のリビングが一瞬で地獄の絵図に載ってもおかしくない状態に変化した。
オネエ様と会話すら出来ない圧を感じる状況だ。
この空気で最初に口を開いたのは母だった。
「わざわざ我が家に何の御用で?」
「深雪ちゃんの件で本日は寄らせて頂きました」
母の問いには伯母が答えた。
「あぁそちらさんが無理やり深雪を入社させて適応障害にさせて返却した件でしょうか?」
「そう取られても仕方がないですね、こちらとしてもその様な状態にしてしまった手前、何も言う事は出来ませんが優秀な深雪ちゃんを失うのは痛手です」
「治療費と慰謝料と原因の落とし前は?」
「今までかかった治療費とこれからかかる治療費はもちろんこちらで支払いをさせて頂きますし慰謝料は弁護士を立てて深雪ちゃんに有利な様に対応させて頂きます…落とし前ですが、原因となった二人にはパワハラ被害者が数名いましたのと横領も確認しましたので解雇処分にします」
ここまでの会話は母と伯母の二人だけである。
母と伯母は張り合えるほど気が強くて結託したら無敵で、そこに祖母が入ると無双する。
この女三人には喧嘩を売ってはいけないと小さい頃から教えられてきた。
 外から聞き慣れたエンジン音が聞こえてきた、噂の祖母だ。
「迎えに行って来る」と父が母と伯母の小競り合いの間を小さくなって通り外に祖母を迎えに行った。
父が祖母と運転手の中田さんを連れて戻って来た。
父は運転手の中田さんを私達のいる蚊帳の外席に案内してお茶を一つ持って祖母とソファーに座った。
母は中田さんにケーキと紅茶を出して戦地のソファーに戻って行った。
蚊帳の外席では誰一人話す事なく戦地のソファーを見守っている。
戦地のソファーの沈黙を破ったのはまたもや母だった。
「治療費と慰謝料と解雇処分の件は承知しました、ですが今後も働かせるのは容認出来ません」
「深雪を暫く柊の本家で療養させようと思ってる」
私も初めて聞く事を父は言った。
「それはいいわね!雪子さんのご実家に住むのなら治療費と慰謝料とは別で光熱費と生活費とお小遣いを榎家で出させてちょうだい!これも役に立たない会長と社長と気が付かなかった人事部長の責任でもあるし経費が駄目ならポケットマネーで払わせれば良いのよ!」
榎本家で絶対の祖母が言うんだ、これは決定事項だ。
私の居ない所でどんどん話が進んでいるが山奥に島流しされるのか、私。
夢の男も【深雪…早く戻っておいで】って言ってたし、まぁいいか。
「深雪ちゃんは今日付けで退職で、雪子さんの実家で施療して、治療費と慰謝料とは別に光熱費と生活費とお小遣いは榎家で持つでいいわね?」
「「YES BOSS」」
「そうと決まれば私達はお暇しましょう…秀美!退職金も忘れないでね」
「もちろん分かってます」
改めて思う、男の発言権がない家だな…
四人が立つ前に運転手二人は「失礼します」と外に行ってしまった。
祖父「深雪…また改めて」
祖母「この役立たずには暫く会わなくて良いわよ!深雪ちゃん、またね」
伯父「役立たずで申し訳なかった、何でも相談してくれ」
伯母「本当にごめんなさいね、書類の事でまた来ます」
各自言葉を残して我が家を去って行った。
 気のせいだろうか少し父が小さく見えて母が大きく見えた。
母・祖母・伯母を見てる限り女は強いのに私はどうしてこんなに弱いのだろう、柊の祖母も強い人だった。
そんな事を考えていると、とても悲しくなった。
「深雪…先にお風呂に入っておいで」
色々な感情がぐちゃぐちゃになっている私に気が付いた母がそう言ってくれた。
「ありがとう…お母さん」
そう言い残し私は風呂場に向かった。
その際、父は喋らず動かず存在を消していた。
 いつも通りに髪を洗いトリートメントを浸けている間に体を洗い、流した後に洗顔をし湯船に浸かった。
湯船に浸かると色々な思い出や感情が溢れて涙が止まらなくなった。
「深雪ちゃん泣かないで」
何処からか声が聞こえてきた。
涙が引っ込み恐怖がこみ上げてきた。
懐かしい様な聞き覚えのある優しい女の子の声。
「やっぱり深雪ちゃんは屋敷を離れちゃいけなかったのよ」
また聞き覚えのあるが少し強気の幼女の声。
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「ふふふ…だいぶ昔だから忘れちゃったのかな」
「以前にお会いした事がありますか?」
「深雪ちゃんが小さい頃よく、屋敷で遊んだじゃない」
そう言われて何となく思い出した、柊家の屋敷で遊んでた双子の事を。
出会った頃は七歳位の女の子だったのに時間が経っても見た目が変わらない可愛らしい双子の事をしっかりと思い出した。
「思い出したよ!
藤色の振袖を着た双子の葵ちゃんと菫ちゃんだ!
でも声しか聞こえない…風呂場にいるの?」
「「私達の事見えないの!?」」
「…ごめんね、声はちゃんと聞こえるんだけど見えないの」
「「屋敷から離れてる時間が長すぎて見えなくなっちゃったんだ!」」
「屋敷?柊の?」
「そうだよ!」
「武蔵も雪路も雪子も武臣も」
「「皆、見えてたよ」」
「え、、、普通に怖いんだけど」
「「でも大丈夫!!明日には引っ越すから!!」」
「は?え?誰が?何処に?」
「「深雪ちゃんが柊の屋敷に!!」」
「普通に怖いし嫌なんだけど」
「「大丈夫!!皆いるし!!」」
「その皆が怖いんだよ、それより湯船から出たいから風呂場から出てってくださ~い」
「「は~い」」
暫くすると二人の気配がなくなった、気配を感知出来る様になってしまった。
 風呂場を出て急いで下着・パジャマを着て、頭にタオルを巻いて母の所に急いだ。
「ねぇ、お母さん!葵ちゃんと菫ちゃんの声が聞こえるんだけど!」
「あら~迎えに来たのね!雰囲気は感じたんだけど私も暫く実家に帰ってないから見えないのよね!明日から深雪は柊本家の屋敷に引っ越します!双子ちゃんが迎えに来たって事は決定事項です!明日は車で二時間位かかるから九時には家を出ます!」
兎に角、母のノリが軽い。
「え、何泊位するの?」
「聞いてなかったの?引っ越すのよ!死ぬまで帰って来られないから家具以外は荷造りして」
「は?え?何で?」
「「わーい!!深雪ちゃんとずっと一緒だ!!」」
また双子の声がした。
「あらぁ葵ちゃんと菫ちゃん久しぶりねぇわざわざ深雪を迎えに来てくれてありがとう」
「主様がお呼びなの!!」
「だから迎えに来たの!!」
「深雪…説明するの面倒くさいから直接本人に聞いて!それより!荷造りしないと!」
「「荷造り!!楽しそう!!私達も手伝う!!」」
そんなこんなで荷造りを三人に急かされながらした。
もちろん父には二人の声は聞こえないし発言権がないので空気だ。
二十一時過ぎ頃から荷造りを初めて終わったのは日付が変わってからだ。
「明日はお父さんの運転で実家に行きます!葵ちゃんと菫ちゃんは先に帰る?それとも一緒に行く?」
「「一緒に行く!!」」
元気の良い双子は私のベッドに入っていた。
二人の姿は見えないが布団が動くのは見える。
仕方がなく三人で寝る事にした。
母は電気を消して「おやすみ~」と部屋を出て行った。
私達三人は会話をする事もなく、母に起こされる朝まで爆睡した。
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