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新たな魔導術
しおりを挟む緊張しつつ馬車を降りたタイミングで、前方から声がした。
「バル、こっちは頼んだぞ。ほら、来い! 相手をしてやる」
ルナさんが何かを投げる。それが一瞬光って、山狼たちの目がくらみ気が逸れた。
その瞬間を逃さず、彼が駆け出す。
その後ろ姿を見送った直後、背後で物音がした。反射的に振り返る。狼の一頭がすぐそばに迫っていた。
「っ!」
私が降りたばかりの乗降台に乗り掛かり、中の女性を狙っている。彼女は怯えた様子で立ち上がることもできず、そのまま後ずさる。
「ひっ! こ、こないで!!」
「おい、騒ぐな」
隣にいたローブの男が止めたけど、狼が反応して飛びかかった。
「ガゥッ!」
「──キャア!」
「まっ……!」
女性が悲鳴を上げて、咄嗟に腕で前を遮る。私も咄嗟に手を伸ばす。
それでも間に合わず、狼が腕に噛みつこうとした。
でもその寸前、狼のそばでいきなりボワッと炎が上がる。「キャインッ」と狼が離れた。
直後、人の気配がして反射的に横を見る。
「バルさん!」
「ルナに任されたからね。リアナ、援護を頼むよ」
「は、はい」
慌てて女性のもとにいき、しゃがみこんで声をかける。
「大丈夫ですか?」
「……ええ」
「しばらく奥にいてくださいね」
「君はどうするんだ?」
「あなたは……」
女性のそばにいた男性。先程はローブの男性の後ろにいたらしい。
聞けば二人は夫婦だと言う。マリーさんとベンナンさん。ローブの人は黙ったままだった。
私は援護のために外に出ると伝える。
「いま外にいる二人は私の仲間なので行かないと……行ってきますね」
急いで立ち上がり、歩き出そうとする。けど後ろからグンッとローブが引かれた。
「わ!」
「待って……」
マリーさんが見上げてくる。焦げ茶色の長い髪を揺らして、薄茶の目で訴えるように見つめてきた。
「あなたみたいな子が行って何が出来るの? 危ないからここにいなさい」
「あの、でも」
心配してくれてるのかな、と思う。ついでにいうと私も残りたい。けど外にいる二人に何かあれば結局、狼に襲われることになるわけで。
それなら多少でも援護をして、早いとこ終わらせた方がいい。
だから、引き留められると戸惑ってしまう。
私の困惑に気づいて隣にいた夫のベンナンさんが、私のローブを掴むマリーさんの手をそっと外した。
「マリー、彼女はメイラとは違う。大丈夫だよ」
「でも……!」
外で狼が吠えている。「ガウガウッ」と聞こえてマリーさんの肩が跳ねた。
すみません、と残して急いで外に出る。
外ではもうバルさんが狼を相手にしていた。
「くっ!」
「バルさん!」
今まさに狼が飛びかかる瞬間だった。びっくりして、でもそのとき不意に視界の端に金色の光が見えた。
魔力の輝きが、目を瞑って集中しなくても見える。なんだか瞳が熱い。その流れに沿って、浮かんだ記号を素早く辿った。
紋章が勝手に浮かび上がる。
「∑!」
発動した直後、風の塊が狼を吹き飛ばす。ハッとしたときにはバルさんが、目を見開いて、でもフッと表情を和らげた。
「助かったよ……──っ! リアナ!!」
でもその顔がすぐさま変わる。私の背後に迫った狼によって────。
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