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発見
しおりを挟む白い壁面の廊下はずっと奥まで続いていた。なぜか奥に行けば行くほど薄暗くなっていく。照明の数が減っているようだ。
運良く誰とも出会わなかったけれど、侵入されることを考えていないのだろうか。もしくは罠でもあるのか。
最大限警戒はしてたけど、廊下の突き当りにある品の良い扉は鍵がかかっていなかった。ドアノブを回して覗き込んだけど、中に人もいない。
ここまで来ると不自然にも思えてくる。
「入って……大丈夫でしょうか」
「ここまで来たら行くしかない。オレが先に行く」
明かりもない真っ暗な室内へ足を踏み入れる。周りの様子を窺ったルナさんが腰の小さなランタンを点けた。
ポッと足元が明るくなる。
再度魔導術を見ると、いまだ奥を指している。でも進んだところは壁で軽く見たものの隙間すらない。完全に壁だけ。
一応何度か見たものの、他に入れるところは特に見当たらない。
ここまで来たのに、と若干落胆しつつ言う。
「別の道があったのかもしれません。一旦戻りますか?」
「そうだな……」
ルナさんは呟きつつ、その場にしゃがみこむ。彼はそのまま壁を調べ始めた。そこから、さして時間も使わずに何かがガコンっと音を立てる。
すぐにルナさんが壁を押すと、何かをひきずるような音に合わせて、壁に隙間が生まれる。
びっくりして小声のまま聞いた。
「ルナさん、何かしたんですか?」
「少しな。前にこういう場所に仕事で入ったことがある。まさかとは思ったが……構造が同じだったみたいだ」
そう言って、出来た隙間に入っていく。後ろから覗き込んだけれど、その先はさらに真っ暗で何も見えない。怖いと思いつつ、唯一明かりを持っているルナさんについていくと細い階段に続いていた。
奥に行けばいくほど、ひんやりとした空気にツンとしたカビの臭いがする。触れた壁はゴツゴツとした石壁で、建物の外側と同じ感じに思えた。
こんなところにバルさんがいるのだろうか。不安になる。けど、何度も見た魔導術はまっすぐ前を示している。
恐る恐る先へ進んでいると、急に正面が明るくなる。ボッと青い炎が左右に浮かんだ。そしてその光に照らされて、彫りの細かい大きな扉が現れた。
「……これ」
「見たことがあるのか?」
「ないはず、なんですが……」
そっと近づき、その扉の彫刻に触れる。記憶には見たことがないはずのデザイン。なのにどこか懐かしい。
なんとなく、その彫刻を辿るように顔を上げる。扉上部に浮かぶ三日月。その周りに星が散りばめられ、中央に大きな百合に似たカルディアの花が彫られている。その周りには古代文字と思われる文字も刻まれてる。
それは詩のような、祈りのような文章だ。そこにどんな意味があるのかまではわからない。ただ、無意識に文字を目で追っていたら突然扉が動いた。
ルナさんが開けたようだ。
彼は「行こう」と言う。
「バルが無事ならいいんだが」
「そうですね」
後ろ髪引かれる思いで中に入る。そこもやっぱり明るくはない。ただ、外で扉を照らしていたように、青白い炎が点々と壁面に灯っていた。
室内に調度品のようなものもない。ぽっかり空いた洞窟のような空間。全体的に湿っている気もする。天井から水滴が滴っていた。
目を凝らして奥を見る。けど直後、ルナさんが私の前を手で遮った。そしてもう片方の手を、腰元の鞘へと持っていく。
「……」
何かいるのだろうか。警戒するルナさんの後ろから窺いつつ、緊張から喉を鳴らす。ジッと見ていたら、ようやく目が慣れたようだ。
床に人影が見える。よくよく見ると、入り口ですれ違った男性と同じ服装の男性が二人倒れている。
「え……あっ!」
思わず声が漏れて、慌てて口を押さえる。奥からカツン、カツンと聞こえる足音にドキッとして息を止めた。
誰かの気配にルナさんの服を握り締める。
近づいてくる人が青白い光に照らされて、ゆっくりと浮かびあがる。その相手は、至って普通の声で言った。
「ずいぶん遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ」
金色の髪を揺らして、翡翠の目を細めて、普段と変わらぬ姿でバルさんはそう微笑んだ。
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