引きこもり魔導師は、お家に帰りたい!

翠月るるな

文字の大きさ
34 / 64

発見

しおりを挟む

 白い壁面の廊下はずっと奥まで続いていた。なぜか奥に行けば行くほど薄暗くなっていく。照明の数が減っているようだ。

 運良く誰とも出会わなかったけれど、侵入されることを考えていないのだろうか。もしくは罠でもあるのか。

 最大限警戒はしてたけど、廊下の突き当りにある品の良い扉は鍵がかかっていなかった。ドアノブを回して覗き込んだけど、中に人もいない。

 ここまで来ると不自然にも思えてくる。

「入って……大丈夫でしょうか」
「ここまで来たら行くしかない。オレが先に行く」

 明かりもない真っ暗な室内へ足を踏み入れる。周りの様子を窺ったルナさんが腰の小さなランタンを点けた。

 ポッと足元が明るくなる。

 再度魔導術を見ると、いまだ奥を指している。でも進んだところは壁で軽く見たものの隙間すらない。完全に壁だけ。

 一応何度か見たものの、他に入れるところは特に見当たらない。

 ここまで来たのに、と若干落胆しつつ言う。

「別の道があったのかもしれません。一旦戻りますか?」
「そうだな……」

 ルナさんは呟きつつ、その場にしゃがみこむ。彼はそのまま壁を調べ始めた。そこから、さして時間も使わずに何かがガコンっと音を立てる。

 すぐにルナさんが壁を押すと、何かをひきずるような音に合わせて、壁に隙間が生まれる。

 びっくりして小声のまま聞いた。

「ルナさん、何かしたんですか?」
「少しな。前にこういう場所に仕事で入ったことがある。まさかとは思ったが……構造が同じだったみたいだ」

 そう言って、出来た隙間に入っていく。後ろから覗き込んだけれど、その先はさらに真っ暗で何も見えない。怖いと思いつつ、唯一明かりを持っているルナさんについていくと細い階段に続いていた。

 奥に行けばいくほど、ひんやりとした空気にツンとしたカビの臭いがする。触れた壁はゴツゴツとした石壁で、建物の外側と同じ感じに思えた。

 こんなところにバルさんがいるのだろうか。不安になる。けど、何度も見た魔導術はまっすぐ前を示している。

 恐る恐る先へ進んでいると、急に正面が明るくなる。ボッと青い炎が左右に浮かんだ。そしてその光に照らされて、彫りの細かい大きな扉が現れた。

「……これ」
「見たことがあるのか?」
「ないはず、なんですが……」

 そっと近づき、その扉の彫刻に触れる。記憶には見たことがないはずのデザイン。なのにどこか懐かしい。

 なんとなく、その彫刻を辿るように顔を上げる。扉上部に浮かぶ三日月。その周りに星が散りばめられ、中央に大きな百合に似たカルディアの花が彫られている。その周りには古代文字と思われる文字も刻まれてる。

 それは詩のような、祈りのような文章だ。そこにどんな意味があるのかまではわからない。ただ、無意識に文字を目で追っていたら突然扉が動いた。

 ルナさんが開けたようだ。

 彼は「行こう」と言う。

「バルが無事ならいいんだが」
「そうですね」

 後ろ髪引かれる思いで中に入る。そこもやっぱり明るくはない。ただ、外で扉を照らしていたように、青白い炎が点々と壁面に灯っていた。

 室内に調度品のようなものもない。ぽっかり空いた洞窟のような空間。全体的に湿っている気もする。天井から水滴が滴っていた。

 目を凝らして奥を見る。けど直後、ルナさんが私の前を手で遮った。そしてもう片方の手を、腰元の鞘へと持っていく。

「……」

 何かいるのだろうか。警戒するルナさんの後ろから窺いつつ、緊張から喉を鳴らす。ジッと見ていたら、ようやく目が慣れたようだ。

 床に人影が見える。よくよく見ると、入り口ですれ違った男性と同じ服装の男性が二人倒れている。

「え……あっ!」

 思わず声が漏れて、慌てて口を押さえる。奥からカツン、カツンと聞こえる足音にドキッとして息を止めた。

 誰かの気配にルナさんの服を握り締める。

 近づいてくる人が青白い光に照らされて、ゆっくりと浮かびあがる。その相手は、至って普通の声で言った。

「ずいぶん遅かったじゃないか。待ちくたびれたよ」

 金色の髪を揺らして、翡翠の目を細めて、普段と変わらぬ姿でバルさんはそう微笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ

水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。 それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。 黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。 叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。 ですが、私は知らなかった。 黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。 残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

処理中です...