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真意
しおりを挟む「バルさん! よかった! 無事だったん……」
「……」
駆け寄ろうとしたけど、ルナさんが警戒を解かない。むしろ逆に強めた気さえする。
彼は静かに聞いた。
「殺したのか?」
「ん? いや、まだだよ。必要ではなかったからね。それよりルナ、君が来てくれたなら見せたいものがある。おいで」
そう言って身を翻し、また奥に戻ってしまう。私は一刻も早くここから出たかったのだけど。
ルナさんを見上げると、彼はジッとバルさんの背を見て、一瞬迷ったように視線を下げたもののすぐに「行こう」と言った。
小さく頷いて、歩き出す。バルさんは少し先で立ち止まった。そこは物置きに近い場所だった。中は木箱が積まれている。
先にルナさんが入って、続いて中を見ようとした私の隣にバルさんがくる。そしてコソッと耳打ちした。
「君は来てくれると信じてたよ」
「術がありますからね」
「そうだね。それもあるけどきっと……」
「ルベール!!」
話の途中でルナさんが声を上げた。暗くて気付かなかったが、部屋の奥の壁面に格子のようなものがあった。
その格子にしがみつくルナさんを目を凝らして見る。
直後、息を飲んだ。
「……!!」
そこは牢屋で中に人がいたから。バルさんが「手伝おうか?」と聞く。
「リアナなら簡単に開けられそうだよ。どうする?」
「え、私ですか?」
「もちろん。私は壊しかねないからね。出来ないのかい?」
「私でも同じですけど……あ」
そういえば前に、鍵開けの魔導術を描いた気がする。ポーチをガサゴソと探って、紙を取り出す。たしか倉庫の鍵をなくしたおじさんに頼まれた。簡単な鍵なら開けられる。
ルナさんに「頼む」と言われて、それを牢屋の鍵穴に近づける。カチャンっと小さな音がして、キー……と隙間が出来た。すかさずルナさんが入っていく。バルさんも続いて、私も少し離れた状態で追った。
ルナさんは中に入るなり、倒れている人を抱き起こす。
「おい、ルベール。大丈夫か」
「生きてはいるようだよ、たぶんね」
隣から身を屈めてバルさんが言う。ルナさんが顔を上げて、一瞬目を見開いて、でも抱えてる人に視線を戻して小さく「そうか」と呟く。
けど今度はバルさんの方が低い声で言った。
「ようやく目的が果たされて、リアナに感謝はないのかい?」
「……へ?」
突然、話を振られて呆けてしまう。
そもそも目的って? 私に感謝?
疑問符が浮かぶ中、ルナさんが私を見て、何か言いたげに口を開けたものの何も言えずに固く閉じた。
代わりにバルさんが続ける。
「ここに囚われた直後はね、彼もまだ話せる状態だったんだよ。その時、話してくれたよ。彼……ルベール卿は王族に近い魔術師だったと。隣のギラロッシュ王国のね。そして友人が助けに来てくれるはずだと話していたな」
「……」
「同じ宮廷騎士である友人が。ルナ、君のことだろう?」
一拍置いて答える。
「……ああ」
「おかしいと思ったよ。冒険者だという割に、夜営の過ごし方が整っている。普段から、どこか品もあったからね」
バルさんの言葉にルナさんが黙り込む。私は話についていけず、つい口を挟んだ。
「どういことですか? いったい何の話を?」
するとバルさんが答えた。
「つまりルナは友人を探すために、魔王討伐を言い訳にして君に同行し囮にしたってことだよ。君は、まんまと利用されたんだ」
「そうじゃない! オレは」
ルナさんは顔を上げたけれど、バルさんが私の背後から両肩に手を置いて続ける。
「リアナ。君はずっと道具として使われていたわけだ。信用して過ごしてきたのに。どうだい? 悲しいだろう?」
「……」
そう囁かれて、私は動きを止めた。
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