将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月るるな

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「ちょっと待ってくれ。その話が事実だとして、じゃあ、俺の中にある前世の知識はどう説明するんだ? 実際に使えた技術もあるんだ」

 それはたしかに、と思う。二人で会った時に語ってくれた世界は、何よりも色づいていた。

 あの全てが妄想や、その類いには思えない。

 私も「そうね」と同調する。

「ソルは私よりも術の効果が強かったのかしら。鮮明に前世を教えてくれたもの」
「ああ。ここにはない動力も仕組みも、それなりに使えているんだ。あれが偽りには思えない」

 そう悩む私たちに、ジークリード様は意外にも素っ気なく返した。

「知らないよ。術にそれらしい記憶でも埋め込んだんじゃない? 使えるものがあるなら喜ぶべきだよ」

 それより、とジークリード様は私を見る。手を取ると額に当てた。白銀の髪が触れてドキッとした。

「!」
「君が婚約破棄だと言ったとき、本当に驚いたし息が出来なかったんだ.……必死に調べて合点がいったとき安堵したよ。君に嫌われたわけじゃないって」
「ジークリード様……」
「もう他の男と結婚するなんて言わないで」

 こんなにも弱気になるジークリード様は始めてで、戸惑ってしまう。ついソルを見たら、彼は気まずそうに頭をかいて、困ったように笑うと席を立った。

 静かに去っていく姿から視線を外し、目の前の婚約者の肩に手を置く。
 ゆっくり顔を上げた彼は、少し情けない顔をしながらも、私を引き寄せ強く抱き締めた。




 






fin.
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