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どうして、と問われて咄嗟に浮かんだのがユウとの約束だった。
『じゃあさ! さくは未来で決めよ! それで今はお互いの願いが叶うように神様にお願いしよ!』
「願い……?」
俺の願いは──。
その時、フッと風が吹いた。
ー あははは! ー
笑い声がして、朔がまた叫ぶ。
「ユウ!! ……くっ」
それからすぐ、パッと目の前の景色が変わった。
明るくなったかと思うと、吹き荒れる風と雨が朔を襲う。正面から叩きつける雨粒に、朔が咄嗟に腕を前にして顔に当たるのを防いで目を細めた。
「なんだ……?」
今までと雰囲気が違う。訝しげに眉を寄せて、周りを見る。
風でしなる木々に、轟音を立てて流れる川。気づけば川岸にいた。恐らく祠の外側だろう。そのせいで、足元にまで水が跳ねている。
「っ!」
足を取られそうになって、慌てて後ずさりした。
ふと横を見て唖然とする。そこには、数メートル先に小さな体のユウがいた。風に逆らうようにして、どこかを目指している。朔と同じように顔を覆うようにしながら、その手を固く握り締めている。
朔が名前を呼んで声をかける。だが風雨の轟音にかき消されて届かない。
「……」
彼は一瞬悩んで、ついていくことにした。
少し先を走るユウは川岸を祠に向かって上がっていく。川幅が雨によって広がり、朔の足でも飲み込まれそうになる場所をギリギリのところで走っていく。
転ばないようにしながら真っ直ぐ祠を目指しているようだ。ついていく途中で、足元に捨てられた雑誌に気付く。表紙に大きく書かれた日付は過去のものだった。
薄々分かっていたものの、見ている状況が過去ならば余計に、ユウがこんな悪天候の中、祠を目指したのかが気になる。彼は後を追う足に力を込めた。
「ユウ!」
視線の先で川の水に足を取られ、滑って転ぶユウを見る。声は届かないものの、彼は再び膝をついて立ち上がる。その姿にホッとした。
少しして、鳥居が見えてくる。
その頃には少し雨も和らいでいた。この分ならきっと、帰りも問題なかったはず。朔は知らぬ間に思い込んでいた。
周囲の状況も、それを裏付けるように風が凪ぎ始める。川の水音すらもう和らいでいた。
ただ、パラパラと小石の落ちるような音だけが鳴り止まない。
おかしいと思いながらも、それはすぐユウの動きに気を取られてしまう。目的地の鳥居が見えて、そのまま入るのかと思いきや、彼は足を止めた。
「……?」
あとから追い付いた朔が、後ろから覗き込む。ユウは自身の手の平をじっと見ていた。だがすぐに、その小さな手を握りしめる。
そして動き出すと、意を決したように鳥居をくぐり、真っ直ぐ祠を目指した。しかしいざ、目の前までくると急に周囲をぐるぐると歩き出す。よくよく見ていると、何かを探しているようだ。
背伸びをして祠の上を覗こうとし、しゃがみ込んで、そのまま膝をつくと地面の隙間を見る。しばらくして「あ!」と声がした。
「見つけた!」
そう言って、祠の真下の隙間に手を伸ばす。最初は、う~んと唸っていたものの少しして「取れた!」と言った。
「何を……」
つい朔が呟き返す。当然返事はなく、ユウはそのまま立ち上がる。祠の正面に行き、泥まみれの手で今しがた取ったであろう何かを指でぬぐった。
それは質素な鍵だった。
誕生日の夜に拾った鍵。何度手放しても戻ってきたあの鍵だった。
「……」
朔が息をのむ。ユウは祠の正面に向かい、背伸びをして小窓のような扉の鍵穴に、その鍵を差し込んだ。
すると一拍置いて、その扉が開く。小さな独り言がかすめる。
「届くかな……」
ユウは扉の奥を覗き込もうとする。プルプルと震えながら背伸びをして、中を覗き込む。朔も少し近づき後ろから見るが、中には何もなかった。
何かを取りに来たのだろうか、目当ての物はなさそうだ、と頭に浮かんだタイミングで目の前のユウは背伸びをやめた。
そして逆に、ポケットから取り出したものを扉の奥の暗闇に置こうとして手を伸ばす。だが、すぐに思い直したのか、再び戻して、その手を開いた
「?」
朔がさらに一歩近づき、様子を見る。ユウの手には赤いお守りがあった。金糸で模様のある赤いお守り。それを小さな手でギュッと握り、ぼそぼそと口に出した。
それは幼く純粋な願い──。
「さくの願いが、叶いますように」
「!」
そう言ってユウは、お守りをぐっと祠の奥に置く。そして扉を閉めて、鍵を閉めようとしたその時だった。
ゴゴゴッ!!と振動がして地鳴りが響く。二人が反射的に視線を上げて、目を見開いた。
「!!」
今まさに滑り落ちる土砂が迫ってきている。咄嗟に「ユウ!!」と叫んだ声は、轟音に消されてしまう。あっと思う間もなく、ユウもろとも泥流に巻き込まれた。
『じゃあさ! さくは未来で決めよ! それで今はお互いの願いが叶うように神様にお願いしよ!』
「願い……?」
俺の願いは──。
その時、フッと風が吹いた。
ー あははは! ー
笑い声がして、朔がまた叫ぶ。
「ユウ!! ……くっ」
それからすぐ、パッと目の前の景色が変わった。
明るくなったかと思うと、吹き荒れる風と雨が朔を襲う。正面から叩きつける雨粒に、朔が咄嗟に腕を前にして顔に当たるのを防いで目を細めた。
「なんだ……?」
今までと雰囲気が違う。訝しげに眉を寄せて、周りを見る。
風でしなる木々に、轟音を立てて流れる川。気づけば川岸にいた。恐らく祠の外側だろう。そのせいで、足元にまで水が跳ねている。
「っ!」
足を取られそうになって、慌てて後ずさりした。
ふと横を見て唖然とする。そこには、数メートル先に小さな体のユウがいた。風に逆らうようにして、どこかを目指している。朔と同じように顔を覆うようにしながら、その手を固く握り締めている。
朔が名前を呼んで声をかける。だが風雨の轟音にかき消されて届かない。
「……」
彼は一瞬悩んで、ついていくことにした。
少し先を走るユウは川岸を祠に向かって上がっていく。川幅が雨によって広がり、朔の足でも飲み込まれそうになる場所をギリギリのところで走っていく。
転ばないようにしながら真っ直ぐ祠を目指しているようだ。ついていく途中で、足元に捨てられた雑誌に気付く。表紙に大きく書かれた日付は過去のものだった。
薄々分かっていたものの、見ている状況が過去ならば余計に、ユウがこんな悪天候の中、祠を目指したのかが気になる。彼は後を追う足に力を込めた。
「ユウ!」
視線の先で川の水に足を取られ、滑って転ぶユウを見る。声は届かないものの、彼は再び膝をついて立ち上がる。その姿にホッとした。
少しして、鳥居が見えてくる。
その頃には少し雨も和らいでいた。この分ならきっと、帰りも問題なかったはず。朔は知らぬ間に思い込んでいた。
周囲の状況も、それを裏付けるように風が凪ぎ始める。川の水音すらもう和らいでいた。
ただ、パラパラと小石の落ちるような音だけが鳴り止まない。
おかしいと思いながらも、それはすぐユウの動きに気を取られてしまう。目的地の鳥居が見えて、そのまま入るのかと思いきや、彼は足を止めた。
「……?」
あとから追い付いた朔が、後ろから覗き込む。ユウは自身の手の平をじっと見ていた。だがすぐに、その小さな手を握りしめる。
そして動き出すと、意を決したように鳥居をくぐり、真っ直ぐ祠を目指した。しかしいざ、目の前までくると急に周囲をぐるぐると歩き出す。よくよく見ていると、何かを探しているようだ。
背伸びをして祠の上を覗こうとし、しゃがみ込んで、そのまま膝をつくと地面の隙間を見る。しばらくして「あ!」と声がした。
「見つけた!」
そう言って、祠の真下の隙間に手を伸ばす。最初は、う~んと唸っていたものの少しして「取れた!」と言った。
「何を……」
つい朔が呟き返す。当然返事はなく、ユウはそのまま立ち上がる。祠の正面に行き、泥まみれの手で今しがた取ったであろう何かを指でぬぐった。
それは質素な鍵だった。
誕生日の夜に拾った鍵。何度手放しても戻ってきたあの鍵だった。
「……」
朔が息をのむ。ユウは祠の正面に向かい、背伸びをして小窓のような扉の鍵穴に、その鍵を差し込んだ。
すると一拍置いて、その扉が開く。小さな独り言がかすめる。
「届くかな……」
ユウは扉の奥を覗き込もうとする。プルプルと震えながら背伸びをして、中を覗き込む。朔も少し近づき後ろから見るが、中には何もなかった。
何かを取りに来たのだろうか、目当ての物はなさそうだ、と頭に浮かんだタイミングで目の前のユウは背伸びをやめた。
そして逆に、ポケットから取り出したものを扉の奥の暗闇に置こうとして手を伸ばす。だが、すぐに思い直したのか、再び戻して、その手を開いた
「?」
朔がさらに一歩近づき、様子を見る。ユウの手には赤いお守りがあった。金糸で模様のある赤いお守り。それを小さな手でギュッと握り、ぼそぼそと口に出した。
それは幼く純粋な願い──。
「さくの願いが、叶いますように」
「!」
そう言ってユウは、お守りをぐっと祠の奥に置く。そして扉を閉めて、鍵を閉めようとしたその時だった。
ゴゴゴッ!!と振動がして地鳴りが響く。二人が反射的に視線を上げて、目を見開いた。
「!!」
今まさに滑り落ちる土砂が迫ってきている。咄嗟に「ユウ!!」と叫んだ声は、轟音に消されてしまう。あっと思う間もなく、ユウもろとも泥流に巻き込まれた。
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