不運な花嫁は強運な砂漠の王に愛される

shio

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二、螢華国

百九十六、褒美(2)

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「ほ、褒美って……っ!?」
 アルの端正な顔立ちが、急に間近になる。
 心臓がバクバクと早鐘を打った。

「最近は、柚とねやを共にすることも出来ないからな。俺とて、男だ」

 神話の神のように精悍せいかんな容貌が、視界いっぱいに広がる。
 腰をぐいと引き寄せられ、左手で頬に触れられれば、逃れる術はない。

「あ、アル……っ! ――ッン、んっ……!」
 温かくて柔らかい、アルの唇が僕のそれに触れた。

(アルとキスするの……久しぶり……)

 いつしか、アルの舌が僕の唇を割開き、中へと入ってくる。
「……っふ、ァ、……っ!」

 先ほどまで口にしていた、茉莉花茶ジャスミンティーの味がする。

 ほんのりと苦味のある、それでいて華やかな茶の味を、アルとひっそりと共有しているような錯覚さえ起こしてしまう。

 ぬるりと舌を絡めて吸われると、急に力が抜ける。
 膝がガクガクして立って居られない。

 そんな僕をしっかりと支えながら、アルは淫らな水音を立てて僕の咥内を蹂躙じゅうりんし続けた。
 擬音にすることすら恥ずかしいような淫猥な響きに、僕の羞恥心は更に煽られる。

「っは、ア、ル……っ、!」

 ただキスされているだけだというのに、下腹部がうずく。
 久方ぶりにアルと肌を触れ合わせるというその事実だけで精一杯の僕には、強すぎる刺激だった。

「っア、だ、だめ……っ!」
 耳朶に唇をわされ、僕は波のようにうねる快感に飲み込まれそうになり身をよじる。
「柚……。もっとお前が欲しい」

 アルの吐息が耳に直接掛かり、ぞくぞくとした快感が脊髄せきずいに走る。
 身体の芯が蕩けてしまいそうだ。

 砂漠の王にオアシスの水の如く求められて、拒絶出来る者など居るのだろうか。

 乾いた喉を泉で潤す旅人のように、アルは熱っぽく僕を求めた。
 歯列をなぞり、上顎うわあごを舐められると、肉食獣に食べられているかのようだった。

「ッン! ひァ、ア、ル……っ!」
 このままでは、ほんの少しキスしただけでイってしまう。
 抱きすくめられた腕の中で、腰が動く。

 低く甘い声で、アルが僕に囁いた。
「イきそうか? 存分に気持ち良くなると良い。柚」
 柚、という名前を愛おしそうに呼ばれ、僕の中で何かが弾けた。

「ひっう、アルっ、んっ、やァッ! ア――――――ッ!」

 熱い腕の中で、熱に浮かされ背を逸らす。
 あまりの気持ち良さに、頭が真っ白になる。

 絶頂の後も、まるで電流が走ったかのようで、余韻にふるりと身体が震えた。
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