197 / 225
二、螢華国
百九十六、褒美(2)
しおりを挟む「ほ、褒美って……っ!?」
アルの端正な顔立ちが、急に間近になる。
心臓がバクバクと早鐘を打った。
「最近は、柚と閨を共にすることも出来ないからな。俺とて、男だ」
神話の神のように精悍な容貌が、視界いっぱいに広がる。
腰をぐいと引き寄せられ、左手で頬に触れられれば、逃れる術はない。
「あ、アル……っ! ――ッン、んっ……!」
温かくて柔らかい、アルの唇が僕のそれに触れた。
(アルとキスするの……久しぶり……)
いつしか、アルの舌が僕の唇を割開き、中へと入ってくる。
「……っふ、ァ、……っ!」
先ほどまで口にしていた、茉莉花茶の味がする。
ほんのりと苦味のある、それでいて華やかな茶の味を、アルとひっそりと共有しているような錯覚さえ起こしてしまう。
ぬるりと舌を絡めて吸われると、急に力が抜ける。
膝がガクガクして立って居られない。
そんな僕をしっかりと支えながら、アルは淫らな水音を立てて僕の咥内を蹂躙し続けた。
擬音にすることすら恥ずかしいような淫猥な響きに、僕の羞恥心は更に煽られる。
「っは、ア、ル……っ、!」
ただキスされているだけだというのに、下腹部が疼く。
久方ぶりにアルと肌を触れ合わせるというその事実だけで精一杯の僕には、強すぎる刺激だった。
「っア、だ、だめ……っ!」
耳朶に唇を這わされ、僕は波のようにうねる快感に飲み込まれそうになり身を捩る。
「柚……。もっとお前が欲しい」
アルの吐息が耳に直接掛かり、ぞくぞくとした快感が脊髄に走る。
身体の芯が蕩けてしまいそうだ。
砂漠の王にオアシスの水の如く求められて、拒絶出来る者など居るのだろうか。
乾いた喉を泉で潤す旅人のように、アルは熱っぽく僕を求めた。
歯列をなぞり、上顎を舐められると、肉食獣に食べられているかのようだった。
「ッン! ひァ、ア、ル……っ!」
このままでは、ほんの少しキスしただけでイってしまう。
抱きすくめられた腕の中で、腰が動く。
低く甘い声で、アルが僕に囁いた。
「イきそうか? 存分に気持ち良くなると良い。柚」
柚、という名前を愛おしそうに呼ばれ、僕の中で何かが弾けた。
「ひっう、アルっ、んっ、やァッ! ア――――――ッ!」
熱い腕の中で、熱に浮かされ背を逸らす。
あまりの気持ち良さに、頭が真っ白になる。
絶頂の後も、まるで電流が走ったかのようで、余韻にふるりと身体が震えた。
11
あなたにおすすめの小説
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
僕と教授の秘密の遊び (終)
325号室の住人
BL
10年前、魔法学園の卒業式でやらかした元第二王子は、父親の魔法で二度と女遊びができない身体にされてしまった。
学生達が校内にいる時間帯には加齢魔法で老人姿の教授に、終業時間から翌朝の始業時間までは本来の容姿で居られるけれど陰茎は短く子種は出せない。
そんな教授の元に通うのは、教授がそんな魔法を掛けられる原因となった《過去のやらかし》である…
婚約破棄→王位継承権剥奪→新しい婚約発表と破局→王立学園(共学)に勤めて生徒の保護者である未亡人と致したのがバレて子種の出せない体にされる→美人局に引っかかって破産→加齢魔法で生徒を相手にしている時間帯のみ老人になり、貴族向けの魔法学院(全寮制男子校)に教授として勤める←今ここ を、全て見てきたと豪語する男爵子息。
卒業後も彼は自分が仕える伯爵家子息に付き添っては教授の元を訪れていた。
そんな彼と教授とのとある午後の話。
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる