14 / 225
十四、お嫁にいけない!
しおりを挟む
アルにもっと触られたいという気持ちと、アスアドの花嫁になるという気持ちの間で、僕はぐらぐらと揺れていた。
けれど、勇気を出してアルに告げた。
僕はアスアド・アズィーズの花嫁だと。
アルは怒って、僕を砂漠に放り出してしまうかもしれない。
しかし、目を丸くしたアルは、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
あまりに予想外の反応だ。僕は狼狽した。
てっきり怒鳴られたりするんじゃないかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
「ほう。俺が、柚のことを好きではないと思うのか」
「だって……アルは僕のことなんて……」
何とも思っちゃいないんだろう、と言いかけた言葉はアルにかき消された。
ぐいと顔を近づけられる。アルの目鼻立ちのくっきりとした、彫りの深い端正な顔立ちは、見つめられるだけで心臓が高鳴った。
「今まさに身体を委ねている相手を、それほど悪し様に扱うとは。お前は案外、悪女なのだな」
くつくつと笑われると、まるで相手にされていないように感じる。
「アル様! 僕は、真剣に――!」
アルは起き上がろうとした僕の身体を、今度はやんわりとではなく、決して抗えない力で押し倒した。
先ほどまで、アルは本当に力を入れていなかったのだ。両手は、床に縫い付けられたようにびくともしない。
(まさか……)
強姦するつもりなのか、と顔から血の気が引いた。
しかし、怯える僕を、どこか遣る瀬無いように見つめると、アルは凛として言い放った。
「俺が、アスアドからお前を奪ってやる。お前は、俺の花嫁になるのだ」
「――アル……?」
あまりのことに、敬称をつけることすら忘れていた。
少し薄暗い浴場の明かりが、アルの雄々しい表情を、艶めかしく照らし出す。
ほんの数日前の僕には想像も出来ないだろう。
元々不運な僕だが、広大な砂漠の国で、命からがらの目に遭うなんて思いもしなかった。
それを助けてくれたアルに剣を向けられたかと思えば、アルは今、とんでもないことを言い出しているのだ。
「お前は、俺の花嫁だ」
そう言うと、僕の唇に、アルは自らの熱い唇を重ねた。
けれど、勇気を出してアルに告げた。
僕はアスアド・アズィーズの花嫁だと。
アルは怒って、僕を砂漠に放り出してしまうかもしれない。
しかし、目を丸くしたアルは、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
あまりに予想外の反応だ。僕は狼狽した。
てっきり怒鳴られたりするんじゃないかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
「ほう。俺が、柚のことを好きではないと思うのか」
「だって……アルは僕のことなんて……」
何とも思っちゃいないんだろう、と言いかけた言葉はアルにかき消された。
ぐいと顔を近づけられる。アルの目鼻立ちのくっきりとした、彫りの深い端正な顔立ちは、見つめられるだけで心臓が高鳴った。
「今まさに身体を委ねている相手を、それほど悪し様に扱うとは。お前は案外、悪女なのだな」
くつくつと笑われると、まるで相手にされていないように感じる。
「アル様! 僕は、真剣に――!」
アルは起き上がろうとした僕の身体を、今度はやんわりとではなく、決して抗えない力で押し倒した。
先ほどまで、アルは本当に力を入れていなかったのだ。両手は、床に縫い付けられたようにびくともしない。
(まさか……)
強姦するつもりなのか、と顔から血の気が引いた。
しかし、怯える僕を、どこか遣る瀬無いように見つめると、アルは凛として言い放った。
「俺が、アスアドからお前を奪ってやる。お前は、俺の花嫁になるのだ」
「――アル……?」
あまりのことに、敬称をつけることすら忘れていた。
少し薄暗い浴場の明かりが、アルの雄々しい表情を、艶めかしく照らし出す。
ほんの数日前の僕には想像も出来ないだろう。
元々不運な僕だが、広大な砂漠の国で、命からがらの目に遭うなんて思いもしなかった。
それを助けてくれたアルに剣を向けられたかと思えば、アルは今、とんでもないことを言い出しているのだ。
「お前は、俺の花嫁だ」
そう言うと、僕の唇に、アルは自らの熱い唇を重ねた。
59
あなたにおすすめの小説
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
鳥籠の中の幸福
岩永みやび
BL
フィリは森の中で静かに暮らしていた。
戦争の最中である。外は危険で死がたくさん溢れている。十八歳になるフィリにそう教えてくれたのは、戦争孤児であったフィリを拾ってここまで育ててくれたジェイクであった。
騎士として戦場に赴くジェイクは、いつ死んでもおかしくはない。
平和とは程遠い世の中において、フィリの暮らす森だけは平穏だった。贅沢はできないが、フィリは日々の暮らしに満足していた。のんびり過ごして、たまに訪れるジェイクとの時間を楽しむ。
しかしそんなある日、ジェイクがフィリの前に両膝をついた。
「私は、この命をもってさえ償いきれないほどの罪を犯してしまった」
ジェイクによるこの告白を機に、フィリの人生は一変する。
※全体的に暗い感じのお話です。無理と思ったら引き返してください。明るいハッピーエンドにはなりません。攻めの受けに対する愛がかなり歪んでいます。
年の差。攻め40歳×受け18歳。
不定期更新
【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。
美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる