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十三、湯浴み(4)
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とんでもなく上品な顔面が、僕の胸元で卑猥な音を立てている。
ちう。じゅる、と赤面してしまいそうなほどいやらしい音が、浴場に響く。
(う、嘘。僕の乳首、アルが、食べ……てる……?)
どうしてこうなったのか、まったくわからない。
(確かアルが、野苺が好きだと言い出して……。それで、僕の乳首が似てるとか、で)
「ん、んぅ……っ、ふ、ぁ……っ」
強請るような嬌声が漏れて、慌てて身を捩った。
単なる触り合いのはずが何故こんなことに、と嘆いても何もかもが遅かった。
風呂に入っているせいか、燃えるように身体が熱い。
まるでサウナに居るみたいだ。
湯だか汗だかわからぬ雫が、互いの身体を伝って落ちる。
アルの舌も灼熱のようだ。
敏感なところを舐られると、びくりと身体が跳ねる。
「声を抑えるな」
手首は掴まれているので、二の腕で口を塞ごうとするも、アルに優しく解かれた。
アルは決して無理強いしていない。
ただやんわりと僕の両手首を戒めているだけだ。
いくらでも拒むことが出来るのに、僕は拒否しなかった。
出来なかったのだ。
アルがあまりにも格好良くて、優しくて、その手に溺れたいと思ってしまった。
極上の笑みで、アルが微笑む。
「大人しくしていろ。気持ち良くしてやる」
アルはすいと僕の下半身に目を向けた。
自分でも驚くことに、今までにないぐらい、僕のペニスは反り返っていた。
(どうして……)
自分で自慰をして達したときですら、これほどまでに勃ち上がったことはない。
「感じているんだな」
不意にアルが無邪気に笑んだ。
いつもは帝王のような覇気をまとっているのに、ふと少年のような顔を見せる。
だが、少年には似つかわしくない手つきで、僕の硬く芯を持った蕾の先端を、爪で引っ搔くようにして愛撫した。
「やっ、アアッ! あ、ル、さまッ、そ……れ、だめぇっ……!」
下半身には手を触れられてさえいないのに、まるで情事のときのように、腰がひとりでに前後する。
信じられないぐらい気持ちが良い。
今まで知っていた快楽は、一体何だったのだろうと思うほどだ。
頭の奥が白くスパークし、チカチカと目の前が点滅する。
激しくくねる僕の身体に、アルは僕のペニスへと手を伸ばした。
「それほど悦いなら、こちらも弄ってやろう」
「――だめ……っ!」
気付いた時には、アルの腕を押さえていた。
「柚」
アルは目を丸くして僕を見つめている
「だめ、です……! アル様は命の恩人だけど……、僕は、アスアド様の花嫁、で……」
この場でアルと交わってしまえば、きっと何も考えられなくなるほど気持ち良いに違いない。僕の不運な人生で、何度も味わえる快感ではないだろう。
だが、僕を花嫁にしようと、今も待っているアスアドを裏切ることは出来なかった。
「それに――アル様だって……僕を好きなわけじゃ……ないでしょう……?」
言いながら段々と悲しくなって来た。
そうだ。こういうことは好きな相手とするものだ。
アルは、いかにも経験豊富そうだから、こんなことは何ということはないのかもしれない。
アルは怒って出て行ってしまうかもしれない。
しかし、これは花嫁として、越えてはならない一線だった。
僕は、アスアド・アズィーズの花嫁なのだ。
ちう。じゅる、と赤面してしまいそうなほどいやらしい音が、浴場に響く。
(う、嘘。僕の乳首、アルが、食べ……てる……?)
どうしてこうなったのか、まったくわからない。
(確かアルが、野苺が好きだと言い出して……。それで、僕の乳首が似てるとか、で)
「ん、んぅ……っ、ふ、ぁ……っ」
強請るような嬌声が漏れて、慌てて身を捩った。
単なる触り合いのはずが何故こんなことに、と嘆いても何もかもが遅かった。
風呂に入っているせいか、燃えるように身体が熱い。
まるでサウナに居るみたいだ。
湯だか汗だかわからぬ雫が、互いの身体を伝って落ちる。
アルの舌も灼熱のようだ。
敏感なところを舐られると、びくりと身体が跳ねる。
「声を抑えるな」
手首は掴まれているので、二の腕で口を塞ごうとするも、アルに優しく解かれた。
アルは決して無理強いしていない。
ただやんわりと僕の両手首を戒めているだけだ。
いくらでも拒むことが出来るのに、僕は拒否しなかった。
出来なかったのだ。
アルがあまりにも格好良くて、優しくて、その手に溺れたいと思ってしまった。
極上の笑みで、アルが微笑む。
「大人しくしていろ。気持ち良くしてやる」
アルはすいと僕の下半身に目を向けた。
自分でも驚くことに、今までにないぐらい、僕のペニスは反り返っていた。
(どうして……)
自分で自慰をして達したときですら、これほどまでに勃ち上がったことはない。
「感じているんだな」
不意にアルが無邪気に笑んだ。
いつもは帝王のような覇気をまとっているのに、ふと少年のような顔を見せる。
だが、少年には似つかわしくない手つきで、僕の硬く芯を持った蕾の先端を、爪で引っ搔くようにして愛撫した。
「やっ、アアッ! あ、ル、さまッ、そ……れ、だめぇっ……!」
下半身には手を触れられてさえいないのに、まるで情事のときのように、腰がひとりでに前後する。
信じられないぐらい気持ちが良い。
今まで知っていた快楽は、一体何だったのだろうと思うほどだ。
頭の奥が白くスパークし、チカチカと目の前が点滅する。
激しくくねる僕の身体に、アルは僕のペニスへと手を伸ばした。
「それほど悦いなら、こちらも弄ってやろう」
「――だめ……っ!」
気付いた時には、アルの腕を押さえていた。
「柚」
アルは目を丸くして僕を見つめている
「だめ、です……! アル様は命の恩人だけど……、僕は、アスアド様の花嫁、で……」
この場でアルと交わってしまえば、きっと何も考えられなくなるほど気持ち良いに違いない。僕の不運な人生で、何度も味わえる快感ではないだろう。
だが、僕を花嫁にしようと、今も待っているアスアドを裏切ることは出来なかった。
「それに――アル様だって……僕を好きなわけじゃ……ないでしょう……?」
言いながら段々と悲しくなって来た。
そうだ。こういうことは好きな相手とするものだ。
アルは、いかにも経験豊富そうだから、こんなことは何ということはないのかもしれない。
アルは怒って出て行ってしまうかもしれない。
しかし、これは花嫁として、越えてはならない一線だった。
僕は、アスアド・アズィーズの花嫁なのだ。
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