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十二、湯浴み(3)
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「俺に触られるのは、嫌か?」
アルは飄々としている。
しかし、嫌々なのだと誤解されてアルを傷つけることだけはしたくなかった。
「い、嫌じゃない。……アル様の手が……気持ち良くて、その……恥ずかし……くて。でもっ、多分しばらく触られていたら慣れるから、大丈夫!」
アルは大きく目を見開いた。
一度大きく瞬きをしたあとに、ふっと笑みをこぼす。
「面白い奴だ。……しばらく触っていれば平気になるのか。なるほど」
「た、多分だけど……!」
「ならばお言葉に甘えよう」
「ひぃ、アッ!?」
アルの手元が、今まで避けていた胸の頂きをすいと掠める。
乳首は反則だと思って、避けていたからアルも当然触らないものだと思っていた。
「ん、なっ……!」
「綺麗な紅色に色付いて、美味そうな果実だ。知っていたか? 俺は果実の類が好物でな……。中でも、蜂蜜浸けのナッツや果実が一等美味い……」
まるで、僕の乳首に囁くように、吐息混じりで話しかけるアルは、壮絶な色気がだだ漏れていて、思わず悲鳴を上げそうになる。
「そ、そうなん、だ……!?」
「ああ。中でも、野苺が絶品でな……。酸味と蜂蜜の甘みが混じりあって、楽園の食べ物と言えば、まずあれだろう。バライチゴという、ちょうど柚の胸の飾りのような、美味そうな色をしている。蜂蜜だけでなく、蜜酒に浸けても絶品だ」
今にも息が掛かりそうなほど、アルの唇は胸元に接近している。
「あ、アルはてっきり、お肉とか好きなのかと思ってた……!」
剣術や弓矢の運動量を見る限り、肉主体の食事でなければ間に合わないだろうと思っていた。
にやりと不敵に笑むと、アルはそのまま僕の両手首を片手で絡め取り、湯殿のへりへと押し倒した。
下半身は湯に浸かったまま、上半身だけが投げ出され、アルがその上に覆いかぶさる。
「確かに肉も好物だ。特に活きの良い、血が滴るステーキが美味い」
「アル…様……?」
「お前も、活きが良く食べごたえがありそうだ」
影が落ちた瞳に、ぎらりと光る眼光は、間違いなく百獣の王のそれだった。まさかの展開に、僕はだらだらと冷や汗を流す。
「あ、アル……様……」
「まったく、お前が悪いのだぞ。何もする気はなかったのに、やたらと俺の身体に触れたり、こちらが触れれば、しばらくすれば慣れるなどと大口を叩いて煽るのが悪い」
う、嘘! あれそんな風に思われていたのか。
まったく思いもしなかった受け取られ方をしていて、魂が抜けてしまいそうだ。
「誤解……です……」
アルを煽ったつもりなどない。
しかし、その弁解もまったく意味を為さず、虚空に吸い込まれていった。
砂漠の覇王は、口角を上げて一刀両断する。
「もう遅い」
「男を誘い、煽るとどうなるか教えてやらねばな。目の前にちょうど美味そうな野苺がある。味見してみよう」
押し倒されたせいで、胸を突き出すような自身の体勢に、カッと頬が熱くなる。
アルの形の良い唇が、赤い胸の蕾をぱくりと食べ、吸い上げた。
「ひぃ、アアあッ!」
手で触られていたときとはまったく異なる。
強烈な快感に、僕ははしたなく腰を撓らせた。
アルは飄々としている。
しかし、嫌々なのだと誤解されてアルを傷つけることだけはしたくなかった。
「い、嫌じゃない。……アル様の手が……気持ち良くて、その……恥ずかし……くて。でもっ、多分しばらく触られていたら慣れるから、大丈夫!」
アルは大きく目を見開いた。
一度大きく瞬きをしたあとに、ふっと笑みをこぼす。
「面白い奴だ。……しばらく触っていれば平気になるのか。なるほど」
「た、多分だけど……!」
「ならばお言葉に甘えよう」
「ひぃ、アッ!?」
アルの手元が、今まで避けていた胸の頂きをすいと掠める。
乳首は反則だと思って、避けていたからアルも当然触らないものだと思っていた。
「ん、なっ……!」
「綺麗な紅色に色付いて、美味そうな果実だ。知っていたか? 俺は果実の類が好物でな……。中でも、蜂蜜浸けのナッツや果実が一等美味い……」
まるで、僕の乳首に囁くように、吐息混じりで話しかけるアルは、壮絶な色気がだだ漏れていて、思わず悲鳴を上げそうになる。
「そ、そうなん、だ……!?」
「ああ。中でも、野苺が絶品でな……。酸味と蜂蜜の甘みが混じりあって、楽園の食べ物と言えば、まずあれだろう。バライチゴという、ちょうど柚の胸の飾りのような、美味そうな色をしている。蜂蜜だけでなく、蜜酒に浸けても絶品だ」
今にも息が掛かりそうなほど、アルの唇は胸元に接近している。
「あ、アルはてっきり、お肉とか好きなのかと思ってた……!」
剣術や弓矢の運動量を見る限り、肉主体の食事でなければ間に合わないだろうと思っていた。
にやりと不敵に笑むと、アルはそのまま僕の両手首を片手で絡め取り、湯殿のへりへと押し倒した。
下半身は湯に浸かったまま、上半身だけが投げ出され、アルがその上に覆いかぶさる。
「確かに肉も好物だ。特に活きの良い、血が滴るステーキが美味い」
「アル…様……?」
「お前も、活きが良く食べごたえがありそうだ」
影が落ちた瞳に、ぎらりと光る眼光は、間違いなく百獣の王のそれだった。まさかの展開に、僕はだらだらと冷や汗を流す。
「あ、アル……様……」
「まったく、お前が悪いのだぞ。何もする気はなかったのに、やたらと俺の身体に触れたり、こちらが触れれば、しばらくすれば慣れるなどと大口を叩いて煽るのが悪い」
う、嘘! あれそんな風に思われていたのか。
まったく思いもしなかった受け取られ方をしていて、魂が抜けてしまいそうだ。
「誤解……です……」
アルを煽ったつもりなどない。
しかし、その弁解もまったく意味を為さず、虚空に吸い込まれていった。
砂漠の覇王は、口角を上げて一刀両断する。
「もう遅い」
「男を誘い、煽るとどうなるか教えてやらねばな。目の前にちょうど美味そうな野苺がある。味見してみよう」
押し倒されたせいで、胸を突き出すような自身の体勢に、カッと頬が熱くなる。
アルの形の良い唇が、赤い胸の蕾をぱくりと食べ、吸い上げた。
「ひぃ、アアあッ!」
手で触られていたときとはまったく異なる。
強烈な快感に、僕ははしたなく腰を撓らせた。
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