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百二十八、七日間の蜜月(5)
しおりを挟む「っふ、ぁ……はぁ……っはぁ……っ」
荒い息が洩れる。
達したばかりの身体は酷く鋭敏で、無意識に痙攣しているような気さえする。
「――平気か」
「アル……様」
ぼんやりと呟くと、アルは少し躊躇したように咳をした。どこか、照れているようにも見える。
「柚。そのアル様、という敬称は、止めないか?」
「どう、して……?」
「こんな状況で、『アル様』と言われると、何だか、イケナイことをしているような気になるだろう。普段はアルでいい。だが、こうして一つの寝台に居る間は――俺を一人の男として、アスアドと呼んでくれないか。敬称も必要ない」
「アス、アド……?」
呼ぶと、アルは穏やかに微笑した。
「俺のファーストネームだ。少しずつでも構わない」
「わかった……。なかなか慣れないかもしれないけど……」
「すぐ変えろとは言わん。元々、アルと呼ばせていたのは俺だからな」
アルは、最初僕にアスアドという本名ではなく、「アル」という名前を名乗っていた。
それは、僕が「アスアド」という人に嫁がなくてはならないと気負っていたことを慮ってのことだった。それについては、まるで千夜一夜物語のような、僕の旅路をすべて話す必要がある。
ともあれ、僕はアルに連れられて、こうして楽園のような場所に辿り着いた。
「さて――話はそれぐらいにして……、花嫁衣装が、濡れてしまったようだな」
アルの指した先には、絶頂の色濃い痕跡がしっかりと残っていた。
薄手の透けてしまいそうな純白の衣装が、水気を吸って肌に張り付いている。
「……っぁ……、ごめ、なさい……。折角作って貰ったのに」
縁取りの繊細なレースに、ごく薄いけれど着心地の良い絹の布。雪のように純白だ。
ところどころに、反射して光っているのは、あまり考えたくはないけれど、ダイヤモンドかもしれなかった。
アルも、お揃いの婚礼衣装を身に着けている。しっかりとした白地の詰襟のような、軍服を思わせる衣装に、豪奢な宝石が、これでもかと工夫を凝らして配置されている。しかし、それこそがアルに良く似合っていた。
「気にするな。そもそもが、そういう役割の衣装だ。花婿の劣情を煽る為の、禊の花嫁衣装だ」
「そう、なの……!?」
「公にはされぬが、まあそういうところだな。だから、その花嫁衣装は、本来の役割を十二分に役割を果たしている」
「アスアド……?」
呼ぶと、アルは不意に切羽詰まった表情を浮かべた。
「弱ったな。柚に名を呼ばれるだけで、これほどの効き目とは」
「あ……っ」
見れば、アルの中心は既に花婿衣装の上からでも、充分にわかるほど兆していた。布を押し上げて、痛いほどに昂っている。
僕も男なので、どれほどアルが我慢しているか、よくわかる。
「アスアド……平気?」
「俺のことは、気にしなくて良い。少し辛いのは確かだが、今は柚をもっと感じさせたい」
性急に、両足が割開かれた。
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