不運な花嫁は強運な砂漠の王に愛される

shio

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二、螢華国

百五十、龍藍炎

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原来如此なるほど。私は、龍藍炎りゅうらんえん。王直属の配下で、妃管理を任されている。後宮では、私の言うことは絶対だ」

 男の台詞に、アルは目をすがめて押し黙る。
 藍炎らんえんは尚も続けた。

「私を敵に回すということは、王を敵に回すと同義。それを忘れるな」

 口角を上げ、藍炎は睥睨へいげいするように、二つに分かれた門をあごで指した。
 ふわりと掴んだように見せて、僕の肩に回った龍藍炎りゅうらんえんの手は、力が強く振りほどけない。
「そちらが使用人の門、妃候補は私がお連れする」

「待て……っ!」
「柚様……!」

 気付けば辺りが騒がしい。
 兵が駆け付けたようだ。
 アルとイスハークの眼前には、クロスするように、衛兵が長い槍で行く手を阻んでいる。

「では、妃候補を案内するネ。ついてくるヨロシ」
「待って下さい……!」

「心配要らない。今生の別れでもナイ。またすぐに会えるネ。どうせ二時間後には顔を合わせる」
藍炎は呆れ顔だ。

(本当かな……)

 しかし、ここでは藍炎の言うことを聞く他なさそうだ。
 アルを見つめ返して、僕は大丈夫だと約束するように、大きく頷いた。

   *    *    *

 藍炎の後に続くと、庭園の見える廊下に出た。
 既に後宮内部なのか、意外としんとしている。

「では早速、身体検査を始めていくネ」
「しっ、身体検査!?」

「何を驚いてるネ。最初にボディチェックと性別確認するの当たり前。後宮の基本ネ」

 そう言われればそうなのかもしれない。
 しかし、そんな話は聞いていない。
 知っていれば、僕はわざわざ女装などしなかったし、アルたちも勧めてこなかっただろう。

「安心するネ。検査するのも私だけ。口外の心配ナイ」
「うっ、で、でも……っ」
「薄着になって、そこに立つヨロシ。着物はかごの中に」
「な、何とか、ボディチェックなしにならないですか……っ?」

 藍炎は、色の付いた眼鏡を薄暗い光に反射させ、カツカツと僕に歩み寄る。

「何を言ってるネ。性別わからない人間、後宮に入れるは無理ネ。さっさと済ませるから、そこに立つヨロシ」

 藍炎は一歩も譲らない。
 それもそのはず。
 (藍炎の言うことは何も間違っていない)
 
 だからこそ、抵抗が出来なかった。
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