不運な花嫁は強運な砂漠の王に愛される

shio

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二、螢華国

百六十一、龍藍炎VSイスハーク 不自然なお茶会(5)

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「一体、どこで私たちのことを――?」

 フン、と藍炎はさも当たり前のように鼻を鳴らした。

螢華国けいかこく、歴史長い国ネ。千里見渡せる国。神仙、皇帝高貴な力持つ。直接会ったことなくても、わかるネ。ナニも不思議なことない」

 だが、バハル国出身であるイスハークが、それを鵜呑みにするはずもない。
(――今、濁しましたね)
 何か言い辛い理由があるのだろう。

(皇帝は私たちと対面してはいないはず。――どこかから、何らかの方法で覗き見していたということでしょうね)
 だが、そのまま思ったことを言うわけにもいくまい。

 何もわからないような笑顔を浮かべ、ふんわりと微笑む。
「ああ、千里眼というものでしょうか。詳しくはわかりませんが、螢華国けいかこくにはそのような超能力を扱える方がいらっしゃるとか」

 藍炎は不意に目を逸らし、茶を啜る。

「超能力違う。神通力。道士、仙人の力持つ。神の使いネ」
「左様でございますか。流石さすが、歴史が長い国は奥が深い」

「南北朝時代の書にもある。『魏書ぎしょ』に不思議な力載ってる。官僚の楊逸、神通力で役人の悪事暴いたネ」
「――なるほどそんなに昔から」

 いつこの茶番を終わらせたものかと思い相槌あいづちを打っていたら、丁度、茶が運ばれて来てしまった。

「飲むヨロシ。茉莉花茶ジャスミンティー、我が国で最も有名な茶葉の一つネ。リラックス効果、口臭予防、腸内環境、高血圧改善、アンチエイジングの要素たっぷりネ」

「それはそれは。いただきましょう」

 透明な急須の中に、茶色の毛糸玉のようなものを女官が放り込む。すると、熱湯を注ぐとまるで解凍されたかのように、茶葉が湯の中でふわりと花となり広がっていく。広がり切ってしまうと、確かに咲いている姿は見事ではあるが、触手がゆっくりとうごめくような動きには、一種の不気味さを感じずにはいられなかった。

 藍炎はずばり切り込んで来る。
「結局、この話受ける、受けないどっちネ」
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