悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい。――『私』が悪役令嬢になった理由――

唯野晶

文字の大きさ
5 / 143
異世界転生

状況整理

しおりを挟む
フローラと一緒に屋敷に戻ってからは、自室に籠ってこの世界の事、私の事、そして今の状況を必死に確認した。
ノートとペンがあってよかった。今までだって私の行動はノートに書くことで始まってきた。

【レヴィアナの記憶】
【セレスティアル・ラブ・クロニクル】
【私の記憶】

次々に気になった事を書き出していく。
まず一番助かったのはこの世界で生きていくための【レヴィアナの記憶】が私の中にある程度残っていたことだ。
徐々に思い出してきた……という表現も変だが、はじめは何もわからなった屋敷も、今では迷わずに移動することがでるし、途中ですれ違ったメイドの名前も間違うことなく会話することができた。

ただすべて思い出せたわけでは無かった。なんで私があんな強力な魔法を使ったのと言ったことは思い出すことができなかった。

(でも……そんな事より……!)

指先を立てて体内にあるマナを集中させると指先にパチパチという音と共に火花が散る。私が魔法を使っている、それもごく自然に。
この世界では当たり前のことなのだろうけど、私にとっては夢のような出来事だ。

「これを……うん、あの石なんていいわね……。『サンダーボルト』」

小さく、本当に小さく出力のイメージをし、窓から外へ向けて外に転がっている石をめがけて魔法を唱える。狙い通り石がバチリという音と共に爆ぜた。

「ふふっ……すごい……!」

思わず頬がほころぶ。レヴィアナの部屋には魔法に関する書籍が大量にあった。きっとレヴィアナは優秀な魔法使いなんだと思う。初級魔法であるサンダーボルトはこうして簡単に使うことができるし、上級魔法のページにある魔法も問題なく使えそう、という事が感覚としてわかる。
ずっとこうして魔法で遊んでいたかったけどそうもいかない。

(次は……この世界について……よね)

【セレスティアル・ラブ・クロニクル】
ゲーム自体は平民のヒロインが魔法学校に入学して、貴族の攻略対象と出会って…という、いわゆる普通の乙女ゲーだ。
レトロゲーで、あまりメジャーではない一部のコアなファンがつくような類のゲームだったけど、私はこのゲームが好きだった。何周も何十週もした。攻略本も、解体新書といった設定資料も読み込んだ。だからどうすればいいかも全部知っている。
……知っているはずなんだけど、私のペンは止まったままだった。

―――そう、【私の記憶】も少しおかしい。

キャラクターについては覚えている。攻略対象の4人、イグニス・アルバスター、マリウス・ウェーブクレスト、セシル・ブリーズウィスパー、ガレン・アイアンクレストについても、ヒロインのアリシア・イグニットエフォートについても、学校の名前がセレスティアル・アカデミーという事も、この世界がフェアリス・アルカディアという名前であることも知っている。

【モンスターシーズン】は思い出すことができた。
【モンスターシーズン】までにレヴィアナに対しての好感度を下げておくと、レヴィアナの救済イベントが発生せずにレヴィアナは死ぬ。

ヒロインのアリシア視点では、それ以降のイベントで悪役令嬢レヴィアナに邪魔されることが無くなりイージーモードに突入するわけだが、レヴィアナである今はそのイベントを起こさせるわけにはいかない。
ただ、舞踏会や卒業式と言う大きなイベントはうっすら覚えているものの、それ以外のこの世界で起きるはずのイベントについては思い出すことができなかった。

(なにかまずいイベントとかもあったはずなのよね……)

確か予想外の……それこそバッドエンドと言われるものもあったはずだ。少しの間腕を組んで考えてみたものの、いまいちピンとこない。

(まぁ、あくまで私が知ってるのはアリシア視点だけだもんね)

レヴィアナのイベントなんてゲーム内に大して描かれない。
イベントの邪魔をして、ただ嫌がらせをしてくる成績優秀な嫌なヤツ、と言った感じだ。

(まぁ、なんとかなるでしょ!せっかく憧れのゲームの世界に転生できたわけだし!)

大好きなゲームを初見プレイができると思えば、それはとっても、とっても楽しいことかもしれない。

(それに、もしこれで死ぬとしても悔いはない。だって……)

そこで不意に言葉が詰まる。
胸が痛い。ギュッと締め付けられるように得体のしれない感情が広がっていく。

(あれ……?なんで……?なに……これ?)

これはレヴィアナの記憶?それとも私の?
わからない。わからないけれど、とても大切なものだった気がする。
涙がこぼれそうになるのを堪えて、大きく深呼吸をする。

(いけない、冷静にならなくちゃ……。まだ何もしてないじゃない)

首を振って深呼吸を繰り返す。この分からないことについて考えるのはとりあえず棚上げする事にした。今はやることがある。

「せっかく憧れのセレスティアル・ラブ・クロニクルの世界に来たんだもの!」

誰もいない部屋の中でそう声を上げて、両手で頬を叩き、気合を入れる。パンっと小気味良い音が部屋に響いた。

「私は……私は誰よりもこの世界を楽しむんだ!!」

訳も分からず憧れのゲームの世界で1人きりになってしまった私にとって、今はその目標だけが心の支えだった。

***

この世界を楽しむと決めてからは積極的に屋敷中を探検した。

書斎に入っては日がな一日入り浸り、この世界の事についてひたすら調べた。

レヴィアナの中にある記憶と、私の頭の中にあるセレスティアル・ラブ・クロニクルの設定資料が少しずつ頭の中で交わり、欠けたピースを埋めていくような感覚を覚えた。そして世界が私の頭の中で補完されていく。

本を読むのはとても楽しい。知らないことについて知るのは本当に楽しい。

「お嬢様は本当に本が好きなんですね」

そんな私の様子をずっと見守ってくれていたフローラはいつもそう言って笑っていた。

この屋敷には私はルールをあまり知らないチェスの部屋など、娯楽のための部屋がいくつもあったが、大抵は部屋にある本を読んでいた。

「魔法学校に入学しても遅れを取らないように、日々鍛錬ですわ」

なんてうそぶいてごまかしたが、単に楽しくて仕方がないだけの話だった。そして何より魔導書については1年中読んでいても読み切れないのではないかという量があり、本を読みながら実践するだけですぐに一日が終わってしまった。

本のページを読みふけるうちにいつしか日も暮れ夕食の時間になっていて、時間になっても大広間に行かない私を探して屋敷中を使用人が探されしぶしぶ中断して食事に向かうなんて日常茶飯事になっていた。

「ごめんなさい。ついつい夢中になってしまってしまいまして」
「いいえ、お嬢様。夢中になれる事があるのは良い事ですわ」

そうしてクスクスと笑うフローラに連れられてようやく夕食の席に着くのだった。

食事も見たことが無いような料理がたくさん出てきたが、どれもとても美味しかった。食事の時にはアルドリックも使用人が全員揃ってにぎやかなおしゃべりをしながら楽しい時間を過ごすのが日常だった。

私はそれに加わって、知らない料理が運ばれてくる度に「これはなに?」と聞いては、フローラに説明してもらい、時には自分で作ってみたりしていた。

そんな風にようやくこの屋敷にも、キャラクターにも、世界にも慣れ始めて来た頃だった。

「明日はいよいよセレスティアル・アカデミーの入学式だね」

アルドリックがワインの入ったグラスを傾けながらそう呟いた。

「えぇ……緊張いたしますわ」

あの4人の貴族たちに実際会うとどんな感じなんだろう。それに実際に会うヒロイン、アリシアがどんな人なのかも気になる。

「入学祝い……という訳ではないんだが、これを君に渡しておくよ」

渡されたものはリボンのついた小さな箱だった。開けてみるときらびやかな装飾が施された小さなペンダントが入っていた。きっと今の私、レヴィアナにはとてもよく似合う。

「お父様……これは?」
「我が家に伝わるお守りだよ。魔法学校では辛いことも、苦しいことも沢山あると思う。それでも諦めずに、最後まで楽しんで欲しい」

ゲームの世界でキャラクターに『楽しんでほしい』、なんて言われるとついついテーマパークのキャストロボを思い出して少しだけ笑いそうになってしまう。
それでも私の顔を見るアルドリックの初めて見せる真剣な眼差しに、私も表情を引き締めてしっかりと頷く。

早速ペンダントを首にかけると、胸元に青い宝石がキラリと輝いて私を励ましてくれているような気がした。
そんな私を満足げに見つめてアルドリックは席を立ち私の背中越しに手を置いた。

「きっと楽しいこともあるだろう。そして辛いこともあるかもしれない。でも私はいつでも君の味方だ。君ならきっと乗り越えられるよ」
「もうどうしたんですか?お父様、そんな真面目ぶってしまって」

いつもとのギャップに私が笑いをこらえながら冗談めかしてそう言うと、フローラもクスクスと笑っていた。

「きっとお嬢様としばらく会えなくなるのが寂しいのですよ」
「はっはっはっ!いや、なに。レヴィが頑張るというのだ。応援したいじゃないか」そういいながら私の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「ちょっ、お父様!髪が乱れますわ!」

そう抗議の声を上げてもアルドリックはいたずらっ子のように笑うだけだった。

(なんだかくすぐったい)

お腹の奥の方がキューっと熱くなる。その事が嬉しいような恥ずかしいような、それでいてほわほわした捉えようのない気持ちになる。これが「家族」というモノなのかもと思ってみたりもした。
特別な日のデザートと呼ばれて運ばれてきたこれまた絶品の料理をこれでもかというくらいお腹に詰め込み満腹になった私は、食事を終えて自室に戻るとそのままベッドに飛び込んだ。

(あー……幸せ……)

ふかふかなベッドに包まれながら、服にしわがつくのも気にせずゴロゴロしてしながらペンダントの宝石を撫でる。
細い艶のある長い髪が耳をくすぐるのにもようやく慣れてきた。

(このペンダント……なんなんだろう……?見たことがないけど……?)

まさかこんなにも早くイベントが起こるなんて思わなかったけど、きっとこのペンダントも何かのイベントのキーアイテムなのかもしれない。

―――もしかしてヒロインのアリシアに渡したら何かイベントが発展したりして?でもアリシアがこんなペンダントをレヴィアナから受け取るシーンなんて見たことがないわよね?攻略対象で一番好きなイグニスに渡してみたりしたらどうなるんだろう……?

―――もしアリシアのイベントを全部私が横取りして攻略対象の4人を全部ひとり占めしたらどうなっちゃうんだろう?

―――ほかにも私みたいな人間がどこかにいて、イベントの邪魔をしていきたりしたら?

「それは……ちょっと面白いかも……」

そんないたずらっ子みたいな考えをしてついクスリと笑ってしまう。
この世界は未知で溢れている。知らない事が沢山でそれが何より楽しかった。

それに少なくともこの屋敷の使用人たちは皆親切だし、アルドリックもフローラも本当に優しい。どこかで感じていた寂しい感情もいつしか解きほぐされていた。

明日からもどんなことがあるのだろうかと考えるとわくわくしてくる。

――――まずはアリシアと仲良くなって、モンスターシーズンを乗り越えて……

――――魔法大会とかも楽しみ……。私が魔法かぁ……。

――――舞踏会も楽しみだなぁ……。私は誰と踊るんだろう……?

――――卒業式、一緒に証書を受け取る人が私にも居るのかな?卒業した後はどうなるんだろう?

考えれば考えるほど未知の夢があふれてくる。

(夢でも魔法でもない、これが現実なんだ)

セレスティアル・アカデミー、そこで何が起きるのか、私は楽しみで仕方がなかった。

***

「もうそろそろお休みになられてはいかがですか?」

書斎で一人ペンを走らせるアルドリックにフローラが声をかける。

「あぁ、フローラ……。おお!こんな時間か」

そう言ってアルドリックはペンを置き、目頭を押さえる。

「お嬢様はもうお休みになられましたよ」
「そうか……」

そう言ってアルドリックは立ち上がり伸びをする。

「フローラ、君には本当に感謝してるよ」
「なんですか?突然改まって」

アルドリックは照れくさそうに鼻をこすると、少しだけ視線をそらす。

「いや、フローラがあの子の魔法の先生で本当によかったって思ってね。おかげであんなに凄い魔法を使えるようになった」
「私は本当に肝を冷やしました。裏山から爆発音が聞こえた時は一体何が起きたのかと……」

フローラはあの時の爆発を思い出して苦笑する。

「はっはっはっ!なんせ私譲りの魔法のセンスで君みたいな優秀な先生がついているんだ。それにあの子は素直だしきっとすぐに上達するさ」
「私はお嬢様にあんな魔法教えていませんよ?一応、念のため」
「わかっているとも。きっとあればあの子が自分で見つけたものだ」

アルドリックは満足気に書斎の窓の外に目を向ける。真っ暗な空がの中に星がキラキラと光っていた。

「セレスティアル・アカデミー……か……」
「お嬢様ならきっと大丈夫ですよ」

そう微笑むフローラにアルドリックも笑顔で頷く。

「ほら、明日寝坊なされないようにそろそろお休みくださいませ。片づけは私がやっておきますから」

そう言ってフローラはアルドリックの書斎の片づけを始めると、部屋の隅に広げられていたチェスに目を留めた。

「そういえばここ何日かお嬢様とチェスをしていらっしゃいませんね」
「あぁ……。その、なんだ……魔法学校の勉強とか忙しそうだったからね。学校をと卒業してからいくらでも一緒にやればいいさ」

そう言ってアルドリックは歯切れの悪い言葉を返す。

「そうですか……。ふふっ」
「な、なんだい?」
「いいえ、なんでもございませんわ」

そう言ってフローラは悪戯っぽく笑うのだった。

「最近負けっぱなしでしたものね」
「そうなんだよ!全くあの子は親の威厳なんて考えないんだから」

そう言ってアルドリックは苦笑しながらノートを棚に仕舞い、席を立つ。

「まったく誰に似たんだろうね……」
「きっと、旦那様に似たのですわ」
「……そうか……。それじゃあ仕方ないな」

アルドリックは笑いながら書斎の灯りを消した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸
恋愛
 仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。  彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。  その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。  混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!    原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!  ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。  完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

前世が人気声優だった私は、完璧に悪女を演じてみせますわ!

桜咲ちはる
ファンタジー
「セイヴァン様!私のどこが劣ってると言うのです!セイヴァン様にふさわしいのは私しかいないわ!」  涙を堪えて訴えかける。「黙れ」と低く冷たい声がする。私は言葉を失い、彼女が床に座り込むのをじっと見つめる。そんな行動を取るなんて、プライドが高い彼女からは到底考えられない。本当に、彼女はセイヴァンを愛していた。 「レイン・アルバドール。貴様との婚約は、この場をもって破棄とする!」  拍手喝采が起こる。レイン・アルバドールは誰からも嫌われる悪女だった。だが、この数ヶ月彼女を誰よりも見てきた私は、レインの気持ちもわかるような気がした。 「カット」  声がかかり、息を吐く。周りにいる共演者の顔を見てホッとした。 「レイン・アルバドール役、茅野麻衣さん。クランクアップです!」  拍手と共に花束を渡される。レインのイメージカラーである赤色の花束を、そっと抱きしめる。次のシーズンがあったとしても、悪女レインはもう呼ばれないだろう。私は深々とお辞儀をした。 「レインに出会えて幸せでした」 【氷の公爵のお姫様】100万部を突破し、アニメ化された大人気の異世界転生ファンタジー。悪役令嬢レイン・アルバドール役の声優が家に帰ると異世界転生してしまった。処刑を回避したい、けどヒロインと公爵をくっつけなければ世界は滅んでしまう。 そんな世界で茅野麻衣はどう生きるのか? 小説家になろう様にも同じ作品を投稿しています。

【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!

DAI
ファンタジー
【第一部完結!】 99回のさよならを越えた、究極の『ただいま』 99回転生した最強エルフは、のんびり暮らしたいだけなのに――なぜか家族が増えていく。 99回も転生したエルフの魔法使いフィーネは、 もう世界を救うことにも、英雄になることにも飽きていた。 今世の望みはただひとつ。 ――森の奥の丸太小屋で、静かにのんびり暮らすこと。 しかしその願いは、 **前世が日本人の少女・リリィ(12歳)**を拾ったことで、あっさり崩れ去る。 女神の力を秘めた転生少女、 水竜の神・ハク、 精霊神アイリス、 訳ありの戦士たち、 さらには―― 猫だと思って連れ帰ったら王女だった少女まで加わり、 丸太小屋はいつの間にか“大所帯”に!? 一方その裏で、 魔神教は「女神の魂」と「特別な血」を狙い、 世界を揺るがす陰謀を進めていた。 のんびり暮らしたいだけなのに、 なぜか神々と魔王と魔神教に囲まれていくエルフ。 「……面倒くさい」 そう呟きながらも、 大切な家族を守るためなら―― 99回分の経験と最強の魔法で、容赦はしない。 これは、 最強だけど戦いたくないエルフと、 転生1回目の少女、 そして増え続ける“家族”が紡ぐ、 癒しと激闘の異世界スローライフファンタジー。 ◽️第二部はこちらから https://www.alphapolis.co.jp/novel/664600893/865028992

追放令嬢、辺境王国で無双して王宮を揺るがす

yukataka
ファンタジー
王国随一の名門ハーランド公爵家の令嬢エリシアは、第一王子の婚約者でありながら、王宮の陰謀により突然追放される。濡れ衣を着せられ、全てを奪われた彼女は極寒の辺境国家ノルディアへと流される。しかしエリシアには秘密があった――前世の記憶と現代日本の経営知識を持つ転生者だったのだ。荒廃した辺境で、彼女は持ち前の戦略眼と人心掌握術で奇跡の復興を成し遂げる。やがて彼女の手腕は王国全土を震撼させ、自らを追放した者たちに復讐の刃を向ける。だが辺境王ルシアンとの運命的な出会いが、彼女の心に新たな感情を芽生えさせていく。これは、理不尽に奪われた女性が、知略と情熱で世界を変える物語――。

処理中です...