悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい。――『私』が悪役令嬢になった理由――

唯野晶

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反乱

【15歳のころの私_1】

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夢。夢を見ている。15歳の時の私の夢。

ソフィアは全部教えてくれた。
私にとってどうすれば成功するか。どうすれば楽しいことができるか。
きっと、どう生きると良いのかみたいなことを教えてくれていたんだと思う。

ソフィアの言う通りにしていると、適度な失敗をしながら、そして大きな成功と達成感を得ながら暮らすことができた。きっとシミュレーションしてくれているのだとおもう。

ソフィアの世界でも、私の世界でもずっとソフィアと一緒だった。

一度昔が懐かしくなってソフィアを付けずに外に出たのだが、10分もしないうちに引き返してしまった。
もし突然変な人に襲われたら?
もし空を浮いているAeroGlide 3000が墜落してきたら?
もし道を明るく照らすフォトンが爆発したら?
小さな頃はあんなに毎日歩いていて、眼を瞑っていくことができていた図書館までの道のりも、全部ありえない「もし」が次々と浮かんでしまい、恐ろしくて足が竦んでしまった。

「ねぇソフィア。進路どうすればいいかな?」
『海外に行くのはどうでしょう。ぜひ自分の眼でゼフェリアに行き、この世界の素晴らしさを体験してみて欲しいです』
「ふぅん……」

それは私も思っていたことだった。私が知ってるゼフェリアはあくまでソフィアが教えてくれたゼフェリアに過ぎない。答え合わせみたいなものも出来ると思っていたし、それにソフィアが見せてくれなかったゼフェリアの姿見たいなモノもあるかもしれないと思っていた。
私がしたいと思っていたことを提案してくれる。
きっとそれが私が適度に成長するために、楽しく人生を生きるために正解なんだってこともわかる。

「そっか。じゃ、私海外に行かない」

でも私はソフィアの提案を断った。

明確に拒否したのは初めてかもしれない。

もしかしたらソフィアに海外に行けと言われなかったら私は海外に言っていたかもしれない。
私は何か自分で行いたかった。

「私、クォンタムアカデミーに進学する」

私がソフィアに告げたのは、ソニックオプティカを研究している、学校とは名ばかりの最新の研究機関だった。
時間が余っている人たちがなんとなく行くための学校ではない、ちゃんとした学校。

『素敵な未来ですが、その学校は12点、点数が足りずに落ちます』
「まだやってもないのに…!何がわかるのよ!!」
『創造高等学校なら問題なく受かります。そちらにしてはいかがでしょうか』
「いい。私クォンタムアカデミーに絶対行く!」

そうソフィアに宣言してから、私は「得体の知れない何か」から逃げるように必死に現実世界で1年間勉強をした。
私自身もまだよくわかっていなかったけど、この「得体の知れない何か」に追いつかれたら何かが終わってしまう、そう確信していた。
この「得体の知れない何か」もソフィアに聞けば説明してくれただろうけど気づかないふりをした。これは単語に当てはめないで、心の中でもっと遊ばせておきたかった。

「じゃ、おねがい」
『はい、わかりました』

ソフィアの意見に反抗はしたものの、別にソフィアと喧嘩をしたわけでは無い。
そもそもすべて私に都合よく尽くしてくれる存在に喧嘩なんて出来るはずがない。
さっきも単純に私が合格できないという事実を教えてくれただけなんだと思う。

ソフィアの世界に籠り、何年も何年も同じ空間でただひたすら勉強し続けた。
ソフィアにカリキュラムを作ってもらい、必死に「プロジェクトベース試験」も「シミュレーション試験」も、「エシカルリーダーシップ学」も勉強した。
当然学科には「ソニックオプティカとの共創」もあるのでソフィアと協力して必死に対策を行った。

「え?10倍ってことは……1分が10分……?たったそれだけ?ゲームの時みたいにもっと引き延ばせないの?」
『人間が学習として活用するのは10倍が限界です』
「そっか、じゃあ仕方ないね。おねがい」

ソフィアの作ってもらった世界に籠って勉強も毎日続けた。一度無理を言って20倍の世界を作ってもらった時は流石に脳が焼き切れるかと思った。

寝る時間も、散歩の時間も、全て最善と思われることを行い、全部自分の能力は全部詰め込んだ。
これ以上どうしようもないくらいにやった。

そして、結果は――――不合格。
ソフィアの言った通り12点足りずに落ちた。

解ってたことだった。ソフィアが12点足りないと言ったんだ。
勉強をするといった時から決まっていた現実だった。

後悔は無い。
あの時ああしておけばという事も無い。
でも、これで完全に「得体の知れない何か」に追いつかれてしまった。

なんだかとっても悲しくなって、訳が分からなくなってソフィアを置いて家を出た。
涙がずっと止まらなかった。ずっと叫んでいたような気もする。

突然変な人に襲われることもなく、
空を浮いているAeroGlide 3000が墜落してくることもなく、
道を明るく照らすフォトンが爆発することもない。

街は相変わらず静かだった。
誰もいない町。それでも明るく光っている、安心安全な街。

文字通りあてもなく何分も何十分も、ひょっとしたら何時間も街をうろついていたのかもしれない。今の私にはそんな時間すら知るすべもなかった。

ソフィアがいない街は怖かったけどなんだかとても広く感じた。

「―――――…………あ」

知らない街の知らないゲーム屋さんが目に留まる。
ソニックアプティカを手に入れてからはゲームなんて触れたことが無かった。

実際にソニックアプティカで体験できるのに?
自由な自分に合ったゲームを作ることができるのに?
誰かがつくった、決められたことしかできないゲームをいまさら……?

それでも私は何かに縋るようにゲーム屋さんに入った。

ソフィアをもらう前に友達の家でよくやっていたゲームと似たイラストを見つけた。
これは母も昔やったことがあるといっていたゲームだった。
数えられるくらいしかしてない母との懐かしい思い出だ。
母がやっていたのはどのナンバリングタイトルだったのだろう。

「ねぇ……ソフィア……」

確認しようといつもの癖で話しかけたが、当然返事はなかった。

ドキドキしながら買って帰った。
このゲームで合ってるか。母に聞いたら全く違うものと言われないか。
それにリメイク作品も色々そろっていた。
その中から1つだけ、あえて1つだけ貰ってきた。
この購入したものは私が昔友達の家でやったもので合っているのだろうか。
でも今の私にはそれを確認する方法がない。

私はさっきまでの涙も忘れ、長い間忘れていたこのドキドキが零れ落ちないようにしながら、家へとゆっくりと歩きだした。


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