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反乱
戻ってきた日常
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ミーナがこの世界からいなくなってから1週間経った。
それでもこの世界は何も変わらなかった。
教室からミーナの席はなくなっていたし、生徒会の女性陣は初めから私、アリシア、ナタリーだったことになっていた。
そのことに疑問を呈す人はだれもいなかった。
「それにしてもすごい量ですわね」
「あらかた回収しきったけどまだ残ってるかもね。今日の午後僕とマリウスでまた見てくるよ」
『あー、セシルさん!ミーナもいくですー!』
ふと作業の手を止めて耳を澄ましてもその声は聞こえてこなかった。
(うん、でも無駄こと考えないで済むしちょうどいいかも)
そうして生徒会室に大量に詰め込まれたモンスターシーズンの戦利品と相対していた。
今年のモンスターシーズンは例年よりも大きいというのは本当だったようで、予定の3日間よりも4日もオーバーしてようやく仕分けが終わった。
中でも大変だったのが、シルフィード広場へ卸す衣類と学校で利用するものの分類、そして見たこともないアイテムの分類だった。
(アイテムなら全部知っているはず!)
1日目サボってしまった事もあり、そう意気揚々と仕分けに参加したものの、ゲームですら見たことがないアイテムも沢山あって、正直混乱してしまった。
それに大量のモンスターを討伐したからかレアアイテムも混じっている。この「妖精の音符」は使用する装備者に風の精霊の加護を与えて素早さをアップさせるものだ。色合いと言い、効果と言い、なんとなくミーナを想起させることもありこっそりポケットに忍ばせた。
「これでよし、っと!」
目の前の箱の整理が終わり、背筋を伸ばして息を吐き出す。
「全然よくねーよ!まだまだあるだろーが!」
ノーランから厳しい声が飛ぶ。
「うるさいですわよ。ちゃんとやっていましてよ」
少し気を使ってくれているのかもしれない、それともただ単にからかっているだけなのかもしれない。でも、少しだけその日常がうれしかった。
私も少しずつミーナのいない日常に溶け込むことができた。ただ、完全に元通りという訳では無かった。
「これ美味しいね!私も作ってみようかな」
「わぁ!作ったら教えてください!絶対に食べに行きますから!」
ミーナが居なくなってからアリシアとナタリーと3人でシルフィード広場を散歩して、食べ歩きもするようになった。
今もナタリーの髪にはミーナのリボンが靡いている。
それを見るたびに少しだけ悲しい気分になって、その度に「妖精の音符」に触れるのが癖になってしまった。
……でも、もしかしたら、ナタリーも完全にミーナの事を忘れたわけでは無いのかもしれない。
前に「そのリボン気に入ったんですの?」と聞いたら、「はい!なんとなくしっくりくる気がしまして。似合ってませんか?」と言っていた。
ただそのリボンの代わりなのか、あれほど毎日つけていたイヤリングを見なくなっていた。捨てたという事は無いと思うけど、あまりまだ深く踏み込んで聞けないでいる。
ただ、モンスターシーズンを超えて、良いこともあった。
シルフィード広場食べ過ぎた腹ごなしに、3人で魔法の訓練場に向かうと魔法の音が響いてきた。
「ノーラン!そんなんで俺様に攻撃が当てられると思うなよ!」
「っく―――…!!っくしょう!!!」
いつものように訓練場からはイグニスとノーランの声が響く。しかし今日は2人の声だけでは無かった。
「今だ!!一気にイグニスに当ててやれ!!カムラン!!」
そう、あの貴族の事を、特にイグニスの事が大嫌いなカムランが、2人の訓練に参加するようになっていた。
「任せろ!!猛威を振るう風の暴力、破壊の渦を巻き起こせ!無慈悲なる暴風、ガストストーム!!!!」
なんでもモンスターシーズンで自らの無力さを感じた事、それにイグニスの訓練ノートを見て「貴族も才能だけなくて努力をしているんだ」みたいなことを感じて、自分からイグニスにこの訓練への参加を持ち掛けたとのことだ。
「おせぇ!今のタイミングなら無詠唱魔法で俺様の体制を崩すことに注力するべきだ!簡単に避けられちまうぜ」
カムランの攻撃を何でもないようにかわしながらイグニスはそうアドバイスを送る。
「っくっしょう!!!貴族だったらもっとどっしり構えてろよ!!!エアースラッシュ!エアースラッシュ!!!!おら!!!喰らえ!!!!エアースラッシュ!!!!」
「……荒れてますわね………」
イグニスに先生役を依頼しての訓練なのか、それともただ貴族のイグニスに対してストレスをぶつけているだけなのか、この状況を見ていると少しだけ自信がなくなるけど、きっと入学したころはこんなふうに訓練場で時間を過ごすことは絶対なかったと思うから良いことなんだと思う、うん、きっと。
「雑すぎるな。エアースラッシュは距離が離れてしまうと威力が無くなる。もっと圧縮して一点に集中させるようにしろ。セシルは絶対にこんなふうに戦わない」
「ちぃ……くそっ!!俺にも狙いがあるんだよ!!」
「ほう……見せてみろ」
そんな風にカムランに相対するイグニスの表情は何だか少しだけ大人びて見えた。
カムランもあんなに嫌っていたイグニスに魔法の教えを請いに来ている。
(私もいつまでもくよくよしてられないよね、ミーナ?)
「わたくしたちも参加しません事?きっと良い食後の運動になりましてよ?」
「いいですね!私もちょっと試してみたい魔法があるんです」
「私も賛成。もっとブレイズワークスの精度高めないといけないし、男性陣対女性陣の3対3のチーム戦とか楽しそうよね」
「では決まりですわね。みなさま!わたくしたちも混ぜてくださいまし!」
そう、しっかりと楽しまないと。きっとミーナは私たちを、ここにいる誰かを守って、死んでいったんだから。
もう一度だけ「妖精の音符」に触れ、訓練場に足を踏み入れた。
それでもこの世界は何も変わらなかった。
教室からミーナの席はなくなっていたし、生徒会の女性陣は初めから私、アリシア、ナタリーだったことになっていた。
そのことに疑問を呈す人はだれもいなかった。
「それにしてもすごい量ですわね」
「あらかた回収しきったけどまだ残ってるかもね。今日の午後僕とマリウスでまた見てくるよ」
『あー、セシルさん!ミーナもいくですー!』
ふと作業の手を止めて耳を澄ましてもその声は聞こえてこなかった。
(うん、でも無駄こと考えないで済むしちょうどいいかも)
そうして生徒会室に大量に詰め込まれたモンスターシーズンの戦利品と相対していた。
今年のモンスターシーズンは例年よりも大きいというのは本当だったようで、予定の3日間よりも4日もオーバーしてようやく仕分けが終わった。
中でも大変だったのが、シルフィード広場へ卸す衣類と学校で利用するものの分類、そして見たこともないアイテムの分類だった。
(アイテムなら全部知っているはず!)
1日目サボってしまった事もあり、そう意気揚々と仕分けに参加したものの、ゲームですら見たことがないアイテムも沢山あって、正直混乱してしまった。
それに大量のモンスターを討伐したからかレアアイテムも混じっている。この「妖精の音符」は使用する装備者に風の精霊の加護を与えて素早さをアップさせるものだ。色合いと言い、効果と言い、なんとなくミーナを想起させることもありこっそりポケットに忍ばせた。
「これでよし、っと!」
目の前の箱の整理が終わり、背筋を伸ばして息を吐き出す。
「全然よくねーよ!まだまだあるだろーが!」
ノーランから厳しい声が飛ぶ。
「うるさいですわよ。ちゃんとやっていましてよ」
少し気を使ってくれているのかもしれない、それともただ単にからかっているだけなのかもしれない。でも、少しだけその日常がうれしかった。
私も少しずつミーナのいない日常に溶け込むことができた。ただ、完全に元通りという訳では無かった。
「これ美味しいね!私も作ってみようかな」
「わぁ!作ったら教えてください!絶対に食べに行きますから!」
ミーナが居なくなってからアリシアとナタリーと3人でシルフィード広場を散歩して、食べ歩きもするようになった。
今もナタリーの髪にはミーナのリボンが靡いている。
それを見るたびに少しだけ悲しい気分になって、その度に「妖精の音符」に触れるのが癖になってしまった。
……でも、もしかしたら、ナタリーも完全にミーナの事を忘れたわけでは無いのかもしれない。
前に「そのリボン気に入ったんですの?」と聞いたら、「はい!なんとなくしっくりくる気がしまして。似合ってませんか?」と言っていた。
ただそのリボンの代わりなのか、あれほど毎日つけていたイヤリングを見なくなっていた。捨てたという事は無いと思うけど、あまりまだ深く踏み込んで聞けないでいる。
ただ、モンスターシーズンを超えて、良いこともあった。
シルフィード広場食べ過ぎた腹ごなしに、3人で魔法の訓練場に向かうと魔法の音が響いてきた。
「ノーラン!そんなんで俺様に攻撃が当てられると思うなよ!」
「っく―――…!!っくしょう!!!」
いつものように訓練場からはイグニスとノーランの声が響く。しかし今日は2人の声だけでは無かった。
「今だ!!一気にイグニスに当ててやれ!!カムラン!!」
そう、あの貴族の事を、特にイグニスの事が大嫌いなカムランが、2人の訓練に参加するようになっていた。
「任せろ!!猛威を振るう風の暴力、破壊の渦を巻き起こせ!無慈悲なる暴風、ガストストーム!!!!」
なんでもモンスターシーズンで自らの無力さを感じた事、それにイグニスの訓練ノートを見て「貴族も才能だけなくて努力をしているんだ」みたいなことを感じて、自分からイグニスにこの訓練への参加を持ち掛けたとのことだ。
「おせぇ!今のタイミングなら無詠唱魔法で俺様の体制を崩すことに注力するべきだ!簡単に避けられちまうぜ」
カムランの攻撃を何でもないようにかわしながらイグニスはそうアドバイスを送る。
「っくっしょう!!!貴族だったらもっとどっしり構えてろよ!!!エアースラッシュ!エアースラッシュ!!!!おら!!!喰らえ!!!!エアースラッシュ!!!!」
「……荒れてますわね………」
イグニスに先生役を依頼しての訓練なのか、それともただ貴族のイグニスに対してストレスをぶつけているだけなのか、この状況を見ていると少しだけ自信がなくなるけど、きっと入学したころはこんなふうに訓練場で時間を過ごすことは絶対なかったと思うから良いことなんだと思う、うん、きっと。
「雑すぎるな。エアースラッシュは距離が離れてしまうと威力が無くなる。もっと圧縮して一点に集中させるようにしろ。セシルは絶対にこんなふうに戦わない」
「ちぃ……くそっ!!俺にも狙いがあるんだよ!!」
「ほう……見せてみろ」
そんな風にカムランに相対するイグニスの表情は何だか少しだけ大人びて見えた。
カムランもあんなに嫌っていたイグニスに魔法の教えを請いに来ている。
(私もいつまでもくよくよしてられないよね、ミーナ?)
「わたくしたちも参加しません事?きっと良い食後の運動になりましてよ?」
「いいですね!私もちょっと試してみたい魔法があるんです」
「私も賛成。もっとブレイズワークスの精度高めないといけないし、男性陣対女性陣の3対3のチーム戦とか楽しそうよね」
「では決まりですわね。みなさま!わたくしたちも混ぜてくださいまし!」
そう、しっかりと楽しまないと。きっとミーナは私たちを、ここにいる誰かを守って、死んでいったんだから。
もう一度だけ「妖精の音符」に触れ、訓練場に足を踏み入れた。
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