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悲しみの向こう側

世界の真実_2

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それからゆっくりと話し始めた。突然目覚めて、この世界に居た事。
目覚めた時に、『なぜか』この世界の記憶があった事。そして、レヴィアナとして、そのまま学校に通ったこと。

「どうして、それをみんなに言わなかったんですか?」

ナタリーの疑問はもっともだ。それにもしかしたら本当にみんなで協力していたらお父様も、イグニスも生きていることができたのかもしれない。

「私の記憶も完全じゃないの。そのイベントが起きたときにはじめてイベントの中身を思い出せるの」
「……」
「もしかしたらイベントは起きないかもしれない。そんな不確かな情報でみんなのことを混乱させたくなかったから。それに、私もこの世界を、みんなと一緒に楽しみたかったから。私が知らないミーナやノーラン、ナタリーとの新しい思い出、そして私の大好きなみんなが作っていく物語を」
「レヴィアナ……」
「……あと、ガレンや、みんなに嫌われるのが怖かったの。いままで騙していてごめんなさい」
「レヴィアナさんはやっぱり勘違いしています」

ナタリーが真剣な顔で私を見つめる。

「私がなんで言わなかったんですか?というのはなんで一人で抱え込んだんですか?という意味です」
「……え?」
「言いたくないことがあるのはわかります。私もレヴィアナさんに言っていないことがあります。秘密も全部話せなんて言いません。でも、私がそんな事でレヴィアナさんのことを嫌いになるわけがないじゃないですか」
「でも……」
「私のことを馬鹿にするのはやめてください。どんなことがあっても、私はレヴィアナさんのことが大好きですよ」

その言葉を聞いた瞬間、私の目からは一筋の涙がこぼれていた。

「……あはは」
「レヴィアナさん?」

もう何度この子に泣かされるんだろう。私は涙をぬぐいながら、それでも笑顔でナタリーに向き合った。

「ありがとう。私も大好きよ、ナタリー」
「私は前の『レヴィアナ』さんに会ったことないからこんな無責任なことを言えるのかもしれませんけど」

そういうとナタリーはガレンを見た。私もつられてガレンを見る。
ガレンが私のほうを向いて、ニコリと笑った。

「……いや、どうだろうな?なんて言えばいいのか分からないけど、正直腑に落ちたよ」

ガレンがナタリーのほうへ向かい【解体新書】を手に取る。

「俺と『レヴィアナ』がこの本を見つけて覗き見てから『レヴィアナ』は変わった。きっとビビっちまった俺と違って、最後まで読んだんだと思う。いつも鬼気迫るような表情になって、そしてどんどん何かに追い詰められていってるようだった」
「……」

「すごかったぜ?それまでも強かった魔法の訓練も拍車がかかって、どんどん強くなっていった。でも、同時に危うさも感じた。正直怖かった。仲がいいはずなのに声をかけるのを躊躇したくらいだ。ほかの貴族連中は『さすがレヴィアナ様』『三賢者の娘様ね』なんて言ってたけど、俺はそんな前向きな気持ちから来てるもんじゃないと確信してた」
「俺たちが定期的に行っていたパーティにたまに顔を出すくらい。それ以外はずっと部屋にこもって訓練し続けて、顔もやつれていってたしな」
「そんなときに『レヴィアナが死んだ』との噂が流れた。それなのに入学式に行ってみたら居て正直驚いた。そっか、あの時から中身……っていう表現でいいのか?」

「……そうね、中身でいいんじゃない?」

「変な感じだけどな。中身が変わってたのにいきなり抱き着いて済まなかったな。驚いたろ」
「それはもう。いきなり言葉を交わす前にみんなに抱き着かれて何事かと思ったわよ」
「あれ、『レヴィアナ』に頼まれてたからさ。怒るなら『レヴィアナ』に言ってくれ」

そう言ってくしゃりとガレンは笑った。

「ガレンも私の事怒らないの?」
「ん?なんでだ?」
「だって私、あなたたちの『レヴィアナ』じゃないのよ?『レヴィアナ』の体を借りて図々しく『レヴィアナ』みたいに振舞って、でも中身は私で……」
「――――ほかの3人はわかんないけど、……少なくとも俺は、正直感謝してる。あの時のレヴィアナは見ていられなかった。入学式の時も会うのが怖くて初めのうちは少し離れたところから見てたくらいだ」

ガレンは私の言葉を遮ってそういった。

「あぁ、それではじめみんなと一緒に居なかったのね」
「そ。でも遠くから見てると昔みたいに笑って、楽しそうにしてるレヴィアナを見て、正直なんか俺も救われた気がしたんだ。『レヴィアナ』が変わったのは、きっと俺と一緒に【解体新書】を見たのが原因だから」
「……そっか」
「だから、ありがとな。『レヴィアナ』を、そして俺を救ってくれて」

そういってガレンは私に手を差し伸べてきた。その大きな手から伝わる温かさを感じて、また鼻がツンとした。

「それに、たぶん、きっと『レヴィアナ』は噂になったあの時死んだんだよ。うん、たぶんだけど」

何度か、ガレンはたぶん、うん、と繰り返し、何かに整理をつけているようだった。
その表情から、ガレンが何を考えているかを読み取ることは、私にはできなかった。



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