悪役令嬢になった私は卒業式の先を歩きたい。――『私』が悪役令嬢になった理由――

唯野晶

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物語の終わり、創造の始まり

この世界の中心_1

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「はぁ……最近なにしてんだろ?」

生徒会室を見渡す。マリウスと目が合う。そしてその横のセシルとも目が合う。
実に良い笑顔をしていた。
ずっと見たかったはずの笑顔。2人の胸ポケットには【陽光の薔薇】がそれぞれ輝いている。

「生徒会もずいぶん減ったな」

3人になった部屋を見ながらつぶやく。もともとの人数から考えるとずいぶんと広くなったものだ。

「まぁ、そうだな」
「確かに。最近イグニスも、ガレンも、それにレヴィアナも見てないしね」
「……セシル。レヴィアナは関係ないだろ?」
「そう?僕としてはレヴィアナと最近戦ってないから――――」
「セシル、少し静かにして」
「はいはい、わかったってば」

頭の後ろで腕を交差させて、セシルは椅子に深く腰掛けた。

「セシル、お願いがあるの」
「ん?なんだい?」
「俺、今のでイラっとしたから、罰として校舎の周りを倒れるまで走っててくれない?」
「ん、わかったよ」

この一言でセシルは席から立ち上がり、生徒会室を出る。そしてその表情は実に晴れやかで、嬉しそうだった。

「えへへ、二人きりだ、マリウス」
「あぁ、そうだな」

2人で生徒会室に残り、セシルの出ていったドアを見つめる。

「ねぇ、俺の事抱きしめて」
「言われなくても」

手を広げてマリウスを迎え入れる。

「あは、マリウスの匂いだ」

マリウスの胸に顔をうずめて、大きく息を吸う。
そのままマリウスを抱きしめる手に力を籠めると、俺の背中に回された腕にも力が籠った。
――――俺がそうしてほしいと願ったように。

「……ん、ありがと」

マリウスから一歩離れると、寂しそうな顔をしてこっちを見つめる。

「あは……そんな顔しないでよ」

そうしてほしい、と願ったから?それともそういう設定をされているから?

「ま、どうでもいっか」

もう一度手を広げながらマリウスを呼ぶ。

「ん」

今度は素直に俺を抱きしめてくれた。

「アリシア何か企んでるのか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「いや、特に根拠はないけど、なんか変な気がしてな」

マリウスは鋭い。当然だ。だって俺が大好きなマリウスなんだから。

「勘か?すごいね」

俺はマリウスに笑いかける。そしてもう一度、今度は俺の方から手を広げると、マリウスが俺を抱きしめた。

「俺はアリシアの事が好きだ。だからこうしているのは本当に嬉しい」
「うん。俺もマリウスの事好きだよ」
「アリシアが望むことなら、俺はなんだってする」
「ん、じゃあ、もうちょっと強く抱きしめて」
「わかった」

マリウスの抱きしめる力が強くなる。体が密着し、お互いの心音が聞こえるようだった。

「でもな、俺はやっぱりアリシアの事がわからない時がある。それに、本当にこんな事をしていていいのか、という気持ちにもなる」

ぽそっと耳元でマリウスが囁くのがくすぐったい。いや、くすぐったく感じる。

「すまない。変なことを言った。きっと俺が恋愛というものを理解していないからなんだろうな」

マリウスは俺を解放すると、困ったように笑った。
ほかの事を考えず、俺のことだけ考えろ、そんな言葉が口から出そうになった。

「まぁ、一緒に卒業式を迎えよう。それで一緒に卒業するんだ」
「あぁ。そうだな」
「ごめん、マリウス。後でセシルのところに行って許すからゆっくり休んでくれと伝えておいてくれ」
「ああ、わかった」

それだけ言い残して生徒会室を後にした。

***

(柚季はどこに行ったんだろ?)

廊下を一人歩きながらそんな事を考える。
セレスティアル・アカデミーは今日も相変わらず雑音を奏でている。時折顔のない何かが声をかけてくる。よくわからないまま無視して一人で歩き続ける。

(ま、さすがに気付くよな?)

というかずっと合図を出していたのだからそうでないと困る。あの子の事だからもしかして、まだ俺のことに気づいてないのかもしれない。
でも、さすがにイグニス、アルドリックを排除したので「何かが起きている」くらいは気づいているだろう。

(あんまり遅いと、もっとぐちゃぐちゃになっちゃうよ?)

校内にあるナディア像に宝石を近づけると像が動き出し、地下に続く階段が現れる。
その階段を下りると、巨大な空間が広がっていた。

先には空間から現れた鎖に手足を繋がれた人影がある。

「ふぅん……?これがマルドゥク・リヴェラムか。さすがにすごい威圧感だね」

何重にも封印魔法がかけられたその体に、禍々しい魔力を感じる。ところどころ形を保てず、崩れかけているが、それでもこの存在感はすさまじい。

「ディヴィニティ・エンブレイスがあればよかったんだけどな」

流石、この世界の理外の三賢者、アルドリックといったところだろうか。
俺に一切の攻撃は通じないのにあれだけ圧倒して、その上俺の切り札の杖まで焼失させられてしまった。

「ま、時間をかければいいか」

ディヴィニティ・エンブレイスの対になる杖、アストラル・エテルナを構え、封印魔法にぶつける。
流石にアルドリックと同じ三賢者が施した封印魔法ということもあり簡単には破れない。というか別に壊すつもりはなかったし、ただ大きな音、そして魔力が暴走してくれればよかった。

「何をしている!」

背後から声が聞こえる。思ったよりも早い到着で良かった。これで無駄な時間を過ごさないで済む。
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