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物語の終わり、創造の始まり
予想外の敵対者
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「……なかなかユニークな友人なんだな」
「そう言ってもらえると、私としてはありがたいわ」
ガレンのちょっとした皮肉に、私は笑って返す。
「でも、そうね昔、前仲良くしてた時はあんな雰囲気じゃなかったんだけど……」
いつも何かに怒って、いつも何かに満足していないようなことは言ってたけどあんなに声を荒げて激高するような人間ではなかった。
「あんなに怖いアリシアさん初めて見ました」
ナタリーがしみじみと言う。いつもニコニコしているナタリーでさえもアリシアの変貌に驚きを隠せないようだった。
「そうね……。私の友達がごめんね」
「……いつからアリシアさんの中に実紗希……さん、ですか?実紗希さんはいたのでしょう?」
「いつから?」
「はい。もし、アリシアさんの中に実紗希さんが居たならどこかでレヴィアナさんみたいに口調が崩れてもおかしくないと思います」
「あぁ、『ですわー』ってやつな」
「もう!それはもういいでしょ!」
結局あの口調も『レヴィアナ』の覚悟のためだった、と後からガレンに教えてもらった。
ガレンたちには事前に学園ではそう振舞うと言っていたから特段囃し立てられることはなかったけど、でもそうだとしてもどこかで注意してほしかった。
「テンペトゥス・ノクテムと対峙してた時もさっきみたいな口調じゃなかったしな」
「うーん……確かに……?どういうことなんだろ……」
アリシアの中に実紗希がいる。それは間違いない事実なんだろうけど、その実紗希は一体いつからいたんだろうか?それにやっぱり実紗希だったとしても違和感がある。
「って、それより早くあの杖何とかしないと!それに【陽光の薔薇】も使われてた。これで確定よ!」
まだこの地下と魔力の紐は切れてなかった。このままじゃ本当に封印が暴走してしまうかもしれない。
「そうだな、早くしないと」
「はい!行きましょう!」
3人でモンスターの森に駆け出そうと振り向いた時だった。
――――ガガガガガ!!!
進行方向を阻むように、大量の魔力が圧縮された弾丸が私達を襲った。
「これは……ヒートスパイク?」
こんな大量な、でもこんな高威力な魔法、イグニスもノーランもいない今、私が知る限り1人しかいない。
「セオドア先生!?」
射線の先に視線を送るとローブに身を包んだセオドア先生の姿があった。
「そっか、あのローブ、だから感知にも……」
「みんな、そこで止まりなさい」
いつもの優しい雰囲気は消え失せ、静かにそれでいて有無を言わさない迫力を持った声が私達の足を止めさせる。
「先生、俺達急いでるんです」
「知っている。だが、君たちをアリシアの元ヘは行かせない」
ローブのフードからはいつもの優しそうなセオドア先生の瞳は見えない。ただ冷たく私たちを見つめているその視線が放つ圧力に息を吞むしかなかった。
「……先生も【陽光の薔薇】に……?」
「いや、あれは3つしかないと言っていた。これは俺の意志だ」
「なんで……」
「俺の目的は『ナディアの復活』だ」
「ナディア先生の……復活?」
「そうだ、ここで俺は役割を果たせば、そうすればまた俺はナディアに会えるんだ」
セオドア先生の顔からふっと険しさが抜ける。まるで希望を見出したかのように晴れやかな笑顔を浮かべていた。でもその笑顔はどこか狂っているようにも見えた。
「だから、ここで君たちにはここでおとなしくしていてもらう」
セオドア先生から大量のヒートスパイクが放たれると同時に、ガレンはストーンバリアで障壁を展開させる。
「くっ!くっそ……マジか!?」
「私も……!」
ストーンバリアを覆うようにエレクトロフィールドを展開する。何とか防ぎきることができたけど、無詠唱魔法でこの威力……。
「これがエレメンタルエンフォーサーか。すごいアイテムもあるものだ」
ローブの中から宝石のついた杖を取り出す。あれは屋敷を襲撃したときにカムラン達が持っていた杖……。
「その杖……」
「あぁ、これか?これもアリシアが渡してくれたものだ。君たち三人を相手取るにはさすがに厳しいからな」
……よく言う。
先日イグニスと魔法をぶつけ合った時だって全力でないのにあっさりとイグニスの最強魔法を退けていた。
テンペトゥス・ノクテム戦の時も少なく見積もっても私たち10人分以上の力を持っていたはずだ。
そんな先生と杖の組み合わせ、正直手に負える気がしない。
「先生!先生は騙されています!アリシアは復活魔法なんて使えません!彼女が使えるのは火属性の魔法だけです!」
「どうしてそんなことが言える」
【解体新書】を見たから。
【解体新書】にもそう書いてあるから。
私がさんざんアリシアの事を操作してゲームを楽しんだから。
でも、それをここでセオドア先生に言うわけにはいかない。
「回復魔法、復活魔法、光魔法はナディア先生だけのものです!」
「こんな理外のアイテムを持っているような子だ。もしかしたら使えるかもしれないだろう」
「でも……!」
こうしている間にも魔力反応はどんどん増幅していく。もしセシルに本気で逃げられてしまったらナタリーのグレイシャルスライドを使っても追いつけないかもしれない。
「俺は……もう一度、たった一度でいい、ナディアと会いたい。もう一度だけ話がしたいんだ」
「先生……」
セオドア先生の目を見る。その目には涙が浮かんでいた。
「……わかりました。なら私たちも実力行使をさせてもらいます!!」
「あぁ、君たちもずいぶん強くなったようだ。悪いが全力でいかせてもらう」
セオドア先生の魔力が高まっていく。
魔力が杖に収束し、光が増していく。
「2人とも、いい?」
目配せをするとうなずいてくれた。背中から頼もしい魔力を感じる。
「星々の嵐よ、我が力と共鳴し、雷鳴を轟かせろ――――!」
こんなボスみたいな相手をまともに相手取っていたらどれだけ時間がかかるか分からない。
一瞬だけでいい。押さえつけさえすればナタリーの魔法で逃げることができる。ガレンは万が一に備えていつでも最大の防壁を作る準備をしてくれている。
今使うことができる最強魔法だけど、きっと防がれる。でも、大丈夫、大丈夫――――。
「稲妻と嵐の融合、ヴォルテックテンペスト!!!!」
右腕から放たれた赤と青の閃光がバチバチと弾け、先生に向かって一直線に突き進む。
「――――えっ!?」
視線の先のセオドア先生は一瞬笑ったように見えた。
そして、そのまま私の魔法はセオドア先生を飲み込んだ。
***
(……うそ……直撃……?)
3人ともあっけにとられ足を止めてしまった。そのままセオドア先生は地面にどさっという音を立て、受け身も取らずに倒れ込んでしまった。
「……せ、先生……?」
何かの作戦?いや、さっきのあの笑い方はそんなんじゃない。
先生は間違いなく私を見て笑った。そして、次の瞬間には……。
「おい、どうなったんだ?」
ガレンも、いつでも飛び出せるようにグレイシャルスライドの詠唱をしていたナタリーも近寄ってくる。
「わからない……でも、直撃だった」
「ぐ……うっ……」
セオドア先生が短くうめき声をもらす。
「せ、せんせ……」
「もしかしたら罠かもしれない」
「たぶん違う、でも一応防御魔法をいつでも展開できるようにしておいて!先生!」
ガレンに叫び返し先生に駆け寄る。
「先生、大丈夫……ですか?」
先生は苦しそうに上体を起こした。
「っぅ……く……お……」
「先生?」
「はっ……生きてる……か。無意識にも防御しちまうんだな」
仰向けになったまま、先生が自嘲気味に言う。
「先生!どうして……?」
「レヴィアナも強く……なったなぁ……」
「そんなこと!いや、それより先生……!大丈夫ですか!?」
「あぁ、君たちの足止めはこれで失敗したけどな」
そう言って上半身を起こそうとするが、力なくまた地面に突っ伏してしまう。
「俺もナディアが蘇らないなんてわかっていた。封印も解除しないって言ったのにそれも反故にされている。そして、こうしてナディアと同じ場所に行くことも失敗した」
「先生……」
「でも、俺はありもしないナディアが復活する可能性にすがってしまった。だから、君たちをここで足止めして、大切な生徒に魔法を向けて、……俺はいったい何をしてたんだろうなぁ……」
先生がまた自嘲気味に笑う。
「ナディアはなんで自分が死ぬってわかってたあの戦場に笑って来れたんだろう。すごいなぁ……」
魔法の直撃で意識も朦朧としているのだろう。目の焦点は合っていない。
「本当に済まなかった」
そう言って、先生が少し首をこちらに向ける。先生の頬から涙が伝うのが見えた。
先生の手を優しく包み込む。細かく震えていた。
「この戦い、アリシアを止めたら卒業式です。先生が死んでしまったら誰が私に卒業証書を渡すんですか?」
ゆっくり、優しく語り掛ける。
「ナディア先生も、お父様ももう居ません。私は何の思い出もない人から証書だけ受け取っても泣くことはできません」
「……」
「セオドア先生は私たちの大切な先生です。だから、絶対に生きてください」
先生が少し顔を持ち上げた。目じりに涙の跡が光る。そして、いつもの優しい目で私を見つめてきた。
「レヴィアナ……お前……」
「えぇ、ナディア先生とセオドア先生の生徒ですから」
そう言って、先生に笑顔を返した。
「では、少しの間失礼しますね」
セオドア先生の手を優しく胸元で離し、立ち上がる。
「ナタリー!お願い!」
「はい!案内はお願いします!」
「あっち!」
グレイシャルスライドを展開し、指さしたほうへ一直線へ氷の道を作る。
「ガレン!」
「おう!」
ナタリーとガレンの手をしっかりとつかみ、突き進む。今は一分一秒を争う。早く実紗希の元に行って、この魔法を止めなければ。
私の魔力探知をフル活用してナタリーのグレイシャルスライドで氷の道を走る。
(実紗希……!絶対に許さないから!!)
風を切って、氷の道を駆け抜けた。
「そう言ってもらえると、私としてはありがたいわ」
ガレンのちょっとした皮肉に、私は笑って返す。
「でも、そうね昔、前仲良くしてた時はあんな雰囲気じゃなかったんだけど……」
いつも何かに怒って、いつも何かに満足していないようなことは言ってたけどあんなに声を荒げて激高するような人間ではなかった。
「あんなに怖いアリシアさん初めて見ました」
ナタリーがしみじみと言う。いつもニコニコしているナタリーでさえもアリシアの変貌に驚きを隠せないようだった。
「そうね……。私の友達がごめんね」
「……いつからアリシアさんの中に実紗希……さん、ですか?実紗希さんはいたのでしょう?」
「いつから?」
「はい。もし、アリシアさんの中に実紗希さんが居たならどこかでレヴィアナさんみたいに口調が崩れてもおかしくないと思います」
「あぁ、『ですわー』ってやつな」
「もう!それはもういいでしょ!」
結局あの口調も『レヴィアナ』の覚悟のためだった、と後からガレンに教えてもらった。
ガレンたちには事前に学園ではそう振舞うと言っていたから特段囃し立てられることはなかったけど、でもそうだとしてもどこかで注意してほしかった。
「テンペトゥス・ノクテムと対峙してた時もさっきみたいな口調じゃなかったしな」
「うーん……確かに……?どういうことなんだろ……」
アリシアの中に実紗希がいる。それは間違いない事実なんだろうけど、その実紗希は一体いつからいたんだろうか?それにやっぱり実紗希だったとしても違和感がある。
「って、それより早くあの杖何とかしないと!それに【陽光の薔薇】も使われてた。これで確定よ!」
まだこの地下と魔力の紐は切れてなかった。このままじゃ本当に封印が暴走してしまうかもしれない。
「そうだな、早くしないと」
「はい!行きましょう!」
3人でモンスターの森に駆け出そうと振り向いた時だった。
――――ガガガガガ!!!
進行方向を阻むように、大量の魔力が圧縮された弾丸が私達を襲った。
「これは……ヒートスパイク?」
こんな大量な、でもこんな高威力な魔法、イグニスもノーランもいない今、私が知る限り1人しかいない。
「セオドア先生!?」
射線の先に視線を送るとローブに身を包んだセオドア先生の姿があった。
「そっか、あのローブ、だから感知にも……」
「みんな、そこで止まりなさい」
いつもの優しい雰囲気は消え失せ、静かにそれでいて有無を言わさない迫力を持った声が私達の足を止めさせる。
「先生、俺達急いでるんです」
「知っている。だが、君たちをアリシアの元ヘは行かせない」
ローブのフードからはいつもの優しそうなセオドア先生の瞳は見えない。ただ冷たく私たちを見つめているその視線が放つ圧力に息を吞むしかなかった。
「……先生も【陽光の薔薇】に……?」
「いや、あれは3つしかないと言っていた。これは俺の意志だ」
「なんで……」
「俺の目的は『ナディアの復活』だ」
「ナディア先生の……復活?」
「そうだ、ここで俺は役割を果たせば、そうすればまた俺はナディアに会えるんだ」
セオドア先生の顔からふっと険しさが抜ける。まるで希望を見出したかのように晴れやかな笑顔を浮かべていた。でもその笑顔はどこか狂っているようにも見えた。
「だから、ここで君たちにはここでおとなしくしていてもらう」
セオドア先生から大量のヒートスパイクが放たれると同時に、ガレンはストーンバリアで障壁を展開させる。
「くっ!くっそ……マジか!?」
「私も……!」
ストーンバリアを覆うようにエレクトロフィールドを展開する。何とか防ぎきることができたけど、無詠唱魔法でこの威力……。
「これがエレメンタルエンフォーサーか。すごいアイテムもあるものだ」
ローブの中から宝石のついた杖を取り出す。あれは屋敷を襲撃したときにカムラン達が持っていた杖……。
「その杖……」
「あぁ、これか?これもアリシアが渡してくれたものだ。君たち三人を相手取るにはさすがに厳しいからな」
……よく言う。
先日イグニスと魔法をぶつけ合った時だって全力でないのにあっさりとイグニスの最強魔法を退けていた。
テンペトゥス・ノクテム戦の時も少なく見積もっても私たち10人分以上の力を持っていたはずだ。
そんな先生と杖の組み合わせ、正直手に負える気がしない。
「先生!先生は騙されています!アリシアは復活魔法なんて使えません!彼女が使えるのは火属性の魔法だけです!」
「どうしてそんなことが言える」
【解体新書】を見たから。
【解体新書】にもそう書いてあるから。
私がさんざんアリシアの事を操作してゲームを楽しんだから。
でも、それをここでセオドア先生に言うわけにはいかない。
「回復魔法、復活魔法、光魔法はナディア先生だけのものです!」
「こんな理外のアイテムを持っているような子だ。もしかしたら使えるかもしれないだろう」
「でも……!」
こうしている間にも魔力反応はどんどん増幅していく。もしセシルに本気で逃げられてしまったらナタリーのグレイシャルスライドを使っても追いつけないかもしれない。
「俺は……もう一度、たった一度でいい、ナディアと会いたい。もう一度だけ話がしたいんだ」
「先生……」
セオドア先生の目を見る。その目には涙が浮かんでいた。
「……わかりました。なら私たちも実力行使をさせてもらいます!!」
「あぁ、君たちもずいぶん強くなったようだ。悪いが全力でいかせてもらう」
セオドア先生の魔力が高まっていく。
魔力が杖に収束し、光が増していく。
「2人とも、いい?」
目配せをするとうなずいてくれた。背中から頼もしい魔力を感じる。
「星々の嵐よ、我が力と共鳴し、雷鳴を轟かせろ――――!」
こんなボスみたいな相手をまともに相手取っていたらどれだけ時間がかかるか分からない。
一瞬だけでいい。押さえつけさえすればナタリーの魔法で逃げることができる。ガレンは万が一に備えていつでも最大の防壁を作る準備をしてくれている。
今使うことができる最強魔法だけど、きっと防がれる。でも、大丈夫、大丈夫――――。
「稲妻と嵐の融合、ヴォルテックテンペスト!!!!」
右腕から放たれた赤と青の閃光がバチバチと弾け、先生に向かって一直線に突き進む。
「――――えっ!?」
視線の先のセオドア先生は一瞬笑ったように見えた。
そして、そのまま私の魔法はセオドア先生を飲み込んだ。
***
(……うそ……直撃……?)
3人ともあっけにとられ足を止めてしまった。そのままセオドア先生は地面にどさっという音を立て、受け身も取らずに倒れ込んでしまった。
「……せ、先生……?」
何かの作戦?いや、さっきのあの笑い方はそんなんじゃない。
先生は間違いなく私を見て笑った。そして、次の瞬間には……。
「おい、どうなったんだ?」
ガレンも、いつでも飛び出せるようにグレイシャルスライドの詠唱をしていたナタリーも近寄ってくる。
「わからない……でも、直撃だった」
「ぐ……うっ……」
セオドア先生が短くうめき声をもらす。
「せ、せんせ……」
「もしかしたら罠かもしれない」
「たぶん違う、でも一応防御魔法をいつでも展開できるようにしておいて!先生!」
ガレンに叫び返し先生に駆け寄る。
「先生、大丈夫……ですか?」
先生は苦しそうに上体を起こした。
「っぅ……く……お……」
「先生?」
「はっ……生きてる……か。無意識にも防御しちまうんだな」
仰向けになったまま、先生が自嘲気味に言う。
「先生!どうして……?」
「レヴィアナも強く……なったなぁ……」
「そんなこと!いや、それより先生……!大丈夫ですか!?」
「あぁ、君たちの足止めはこれで失敗したけどな」
そう言って上半身を起こそうとするが、力なくまた地面に突っ伏してしまう。
「俺もナディアが蘇らないなんてわかっていた。封印も解除しないって言ったのにそれも反故にされている。そして、こうしてナディアと同じ場所に行くことも失敗した」
「先生……」
「でも、俺はありもしないナディアが復活する可能性にすがってしまった。だから、君たちをここで足止めして、大切な生徒に魔法を向けて、……俺はいったい何をしてたんだろうなぁ……」
先生がまた自嘲気味に笑う。
「ナディアはなんで自分が死ぬってわかってたあの戦場に笑って来れたんだろう。すごいなぁ……」
魔法の直撃で意識も朦朧としているのだろう。目の焦点は合っていない。
「本当に済まなかった」
そう言って、先生が少し首をこちらに向ける。先生の頬から涙が伝うのが見えた。
先生の手を優しく包み込む。細かく震えていた。
「この戦い、アリシアを止めたら卒業式です。先生が死んでしまったら誰が私に卒業証書を渡すんですか?」
ゆっくり、優しく語り掛ける。
「ナディア先生も、お父様ももう居ません。私は何の思い出もない人から証書だけ受け取っても泣くことはできません」
「……」
「セオドア先生は私たちの大切な先生です。だから、絶対に生きてください」
先生が少し顔を持ち上げた。目じりに涙の跡が光る。そして、いつもの優しい目で私を見つめてきた。
「レヴィアナ……お前……」
「えぇ、ナディア先生とセオドア先生の生徒ですから」
そう言って、先生に笑顔を返した。
「では、少しの間失礼しますね」
セオドア先生の手を優しく胸元で離し、立ち上がる。
「ナタリー!お願い!」
「はい!案内はお願いします!」
「あっち!」
グレイシャルスライドを展開し、指さしたほうへ一直線へ氷の道を作る。
「ガレン!」
「おう!」
ナタリーとガレンの手をしっかりとつかみ、突き進む。今は一分一秒を争う。早く実紗希の元に行って、この魔法を止めなければ。
私の魔力探知をフル活用してナタリーのグレイシャルスライドで氷の道を走る。
(実紗希……!絶対に許さないから!!)
風を切って、氷の道を駆け抜けた。
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