Mobを演じてきた僕に与えられたスキルは「環境適応」だった

さくーや

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4page・拷問にあっても多少なら耐えきれるだろう痛みをめちゃくちゃ経験した気がする

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日記

これから組合ギルド本業オルド、ティルですって自己紹介することになるのかな。
‥‥指輪モドキって383個あったんだって。つまり僕は383体の白骨と相対してたと。やばくね?
しかも体だけ若くなっちゃった! 15歳だって! おじさんこんなに身長変わってなかったんだなって泣きたくなったよ‥‥
しかも孤児に赤ちゃんと同じ技能なんだって。笑えるよねー。
うん10年と付き合って来たマイクが証になるのは当然だよね。


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個室は壁に打ち付けられた机と、簡素な椅子が2つ。想像するに恐らく依頼を受けたり、報酬の引き渡しや同僚や依頼内容の相談とかに使われているんだろう。
そして、証を作った球と似た材質の板が机の上にはめ込まれていて、机の上には「←証ここ」と落書きがされていて、証を嵌められる窪みのようなものがある。
首にかけたばかりなのに外さなきゃいけないとか面倒だけど何が起こるか分からないしー。

「窪みにこれを嵌めてーどうだっ」

一瞬証の中の透明な石が光り、遅れて証自体が浮かび上がる。
机の上の板には「ティル」と、文字だけが出ている。

「んータップかスクロールか。一つ一つやってくかなー」

タップではなくプッシュでした。
いや、プッシュでもないのかな。指紋認証とか静脈認証に近いかんじだった。
詳しい状態って言われたから、健康診断的に体の情報が開示されるのかと思ったけどちょっと違った。

名前 : ティル (15)
 名前 : 寺田 樹 ・ 五木 照 (??)
種族 : クラシェ
 種族 : 寺田 岸本
職業 : -空欄-
 職業 : 俳優 声優
技能 : 環境適応
 技能 : -空欄-

うん、見事にダブってるね。
同じような情報だけど、前と今が混在してる感じ。やはり地球では技能という与えられしものはなかったと。こここには神的な上位存在が結構近くに存在してるのかな??
種族は確かに結婚前の両親の苗字だ。じゃあお貴族様とか凄い名前になりそう‥‥名乗る時ってどう名乗ってるのかな? ガザさんかフリューレに後で聞いてみよう。そういえばガザさんにティル・イッキーって名乗ったけどイッキー成分どこいったんだろ。

称号 : 異世界者 証漁り
 称号 : Mobマスター
魔道具所持 : 眼・任意発動
 魔道具所持 : -空欄-

HPやMPの概念はないらしい。体感で身につけなきゃいけないのは大変だなー。
称号なんてのが追加されたけど、随分と直接的な‥‥。わかりやすくていいけど。
魔道具に至っては、向こうで持ってなくてこっちでもってるもの。なんだろ。向こうだと異能判定されないけど、こっちだと異能判定されるようなものってこと? しかも目だって。
実はこの体は精巧に作られた人形で、はめ込まれた義眼には脳力がッ! な、なんだってー!! ありえないな、うん。

取得可能技能 : 身体強化 法術強化
 取得可能技能 : -空欄-

環境適応持ってるとほかの技能取得できないんじゃ? さっきそんなこと言ってた気がしたけど、もしかして子供しか持ちえないから気にしてないとか?
当たり前なことって結構研究としては灯台下暗しで考えられてないこと多いしねー。あとはわけがわからなくてもそういう現象が起きるからそれでいっかと諦めてる感じのやつと。飛行機の飛べる理論とか提唱されてるのが多くてまだ確立されてないって感じがひしひしと‥‥ただ実証実験は行えてるから理論が唯一でなくても信用はできると。
思考より実践ってことか。習うより慣れろ? とにかくこの取得可能技能をどうにかして取得したい‥‥触っても無反応ですかそうですか。んーどうすればいいんだ? 念じてみよう。

「身体強化っ」

‥‥変わんない。
1人でよかった! ヒトリゴトハズカシイ!
まぁいっか。とりあえずこの世界が知らない事実が知れた優越感でいっぱいです。
つか、称号のMobマスターって誰が呼んだか知らないけどそれ以外仕事無かったってことー? 笑うしかないじゃんねー。


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廊下の先は異世界でした。
いや、だいぶ前から異世界に居るわけだけど、役所の裏に小学校の校庭も真っ青なドームがあるって言えば分かる? 誰が??

「来たなぁ! 嬢ちゃんと話した結果、訓練の仕方を教えることにしたぞぉ」
「魔術の1つや2つは使えた方が良いからね。ちゃんと直してあげるから、痛くても悲鳴あげちゃダメよ? 男の子なんだから」
「はい?」

いや、びっくりしましたとも。
まさか魔術の覚え方って、文字通り「くらう」だった。後ろからガザさんに羽交い締めにされてなにかと思ったら目の前で「ごめんね」って言いながら受付嬢さんが手のひらに生み出した炎を押し付けてくるんだもん。
頬に。

手でいいじゃん!
手にしようよ!?

「さぁ、これで8系統の内6種くらったわね。1番使い手がいないのは最後の治癒系なのだけど、覚えられたら洞窟探索を専門にする探索者や、貴族と一緒に新しい土地を開拓する開拓者に引く手数多って感じになるから」
「なんだ、もうへばったのかぁ? 男ならも少しできるだろう!」
「やめてあげてちょうだい! こんな短時間でいくら最弱とはいえ全ての魔術要素を叩き込んだのよ? 少しの休憩は必要です」
「そうかぁ? じゃあティル、少し休憩したら次は武器の使い方だな!」

いや、少しじゃなくもっと休ませて下さい。

最初に食らったのが指先に着いた炎。イメージは煙草の根性焼き。いやー痛かった。次が手のひらに溜めた水。炎で焼けた頰が沁みたけど濡れた感触はしなかった。次がパリッとしたから静電気かな? 焼けた頰に連発するからかなり痛い。その次は泥っぽい何か。冷たくてひんやりしたけど、やっぱり痛かった。んでシュルシュルっと手から蔦が生えて焼けた頰を攻撃してきて、最後にあったかい手のひらが押し付けられて痛みが飛んでいった。
ほんと意味わかんない。
これで学べる異世界の人すごいな。
8種から考えるに、炎・水・雷・土・樹・癒の6種が僕が食らわされた攻撃魔術の種類と。痛いね!
想像するにあと2種は光と闇とか? 無属性とかも捨てがたいなー。宗教系の魔術があったら王家伝来の魔術とか宗教の聖属性とかありそうだけど。あと2種は夢が膨らむね。
できれば痛くないのがいいなぁ。

「よぉし! 十分に休んだな! 武器の扱いについてやるぞ!!」

お元気なことで。
悪いことじゃないんだ、悪いことでは。


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腕が上がらなくなった。
剣にも戦い方によって種類があるって初めて知った。斧も結構腰に来るんだけど。素材ゲットする為に武器振り回してモンスターを退治する系ゲームとかでもっと振りコンパクトにしろよとか言っててすみません。そうだよね、重いから無理だよね。

「細っこい腕だし心配したが、最後の斧の扱いは結構よかった。かなり器用だなぁ! 鍛えれば重装備で戦えるはずだぞぉ」
「はは‥‥その予定はないと思います」
「はっはっは! それだけ言えれば大丈夫だ。ギルドの向かいの宿とっといてやるから、ゆっくり休んどけよぉ!」

優しい‥‥のか?

「相当ガザさんに気に入られたのね。あの人仲間の募集は結構厳しいから、逃げるならササッと逃げられる脚力つけておいた方が良いわよ」
「そうします」

最初振るだけとか言ってたのに、完全に模擬戦形式になるんだもの。できれば仕事以上の関係性を築きたくない。無理なんだろうけど‥‥。

「一応さっきの部屋まで案内するわ。もしかしたら取得可能技能が増えてるかもしれないし、その確認は大事だからね」
「ありがとうございます」

取得可能技能について聞いてみるか。

「その、取得可能技能って、何なんですか?」
「えっ‥‥」

受付嬢さんが絶句して使いものにならなくなったので少々お待ちください。

「こほんっ、取得可能技能って言うのは、近い将来身につくかもしれない技能のことで、発言する時期はまばらで発現すれば大抵は消えないものです」

長々とした説明を短くすると、多少は使える力が取得可能技能として発現するらしい。それがいつ技能として発言するかは分からないが、多少は得意になって来た技能と思えば良いのだとか。
使えるレベルじゃないけど使えないわけではないレベルな技能、ということらしい。少なくとも取得可能技能に発現するのは得意な傾向にある、ということらしく、諦めないで頑張ってねと励ましの言葉をいただいた。

「それじゃ、死者の証の精算と残り2つの石を入れるから、ゆっくりしてから来てちょうだい」
「はい」

はぁ、疲れた。


====================


今すごい吸熱ジェルシート的なのがすっごく欲しい。
あれね、若いとすぐ来るんだよね。筋肉痛。
数日後に来るのも結構きついものがあるけど、慣れてない人が長時間正座した後並みに今全身がビリビリしてる。

「おい。歩けるか?」
「‥‥あれー? フリューレ、いつのまに」
「いま。宿は向かいだがそろそろ行かねば印象が悪くなる。担いで行こうか」
「フリューレが優しい。お願いしたいかも‥‥」

肩に担ぐかと思ったのね。
担ぐって米俵を連想するじゃん。

「ふ、フリューレさんや。なぜにこの格好」
「ああ。これが1番体にはいい」
「さ、さいですか‥‥」

僕ね、肉体年齢は15だけど、精神年齢はその倍行ってるから。お姫様抱っこは恥ずかしすぎるよ!
たしかに、お腹を圧迫するような担ぎ方に比べたら体には良いんだろうけど、整いすぎてるフリューレの顔がすっごい近い距離にあると腐男子じゃないけどドキドキしちゃうよ!

「受付で報奨金とか貰えるらしいから、受付によって欲しい‥‥です」
「ああ。寄る」

体痛くて大変だけど、あったかい感覚は疲れた体を否応なく睡眠の沼に引きずり込んだ。
今日はなんか新しい体験ばっかりだったけど、なんか拷問にあっても多少なら耐えきれるだろう痛みをめちゃくちゃ経験した気がする。
しっかしよ、く何も食べずにここまで運動できたよな。15歳ってめちゃくちゃお腹すくイメージあるんだけど。
ああ、もう何でもいいや。
おやすみなさい。


====================


知らない天井だ。
雨漏りの染みがこんなに大きく人型に広がってる天井を僕は見たことない。
‥‥現実逃避しないでそろそろ起きるか。
異世界2日目。休暇は一体何日続くのかな?

なるべく規則正しい生活をしていたせいか、まだ外は薄暗い朝焼け直前の空模様だった。
普段なら朝食前のルーティーン、部屋でラジオ体操して発声練習して本気のラジオ体操をするところだが、発声練習はここではできなさそうだ。
あまり透明度が高くない窓の向こうでは朝市があるのか馬車のようなものがひっきりなしに行き交っている。終わったのか出荷なのか分からないのが残念。

「ほんとに日本じゃないとこに来ちゃったんだなぁ」

ゆっくりラジオ体操をする。
筋肉がピリッとするが、伸ばすと気持ちがいい程度なのでまぁ辛くはない。心地いいくらい。
若いっていいなぁ‥‥。

「そういえばあの後どうなったんだろ?」

思い出しても恥ずかしくなるお姫様抱っこ。
抱き上げられてストンと眠りに落ちちゃったはず。
そのおかげでスパッと記憶が途切れて現実で言ってみたい台詞ナンバーテン知らない天井だを言えたのだけど。台詞としてはよくお世話になったけど、自分で言うことはまず無いからね。
後9個言えるかなー。

「朝食食べて、フリューレ見っけて、ギルドに顔だして依頼でも受け取ろう‥‥でも絶対フリューレはすぐ見つかるよな」

なんたって今さっき僕が抱え込むようにして抱きしめて寝てたた布地がフリューレの外套っぽいのだ。きっと同じ部屋に泊まったのだろう。多分。おそらく。
灰色の脳細胞とか無いけど。

「この宿ってガザさんが手配してくれたんだっけ? 朝食はガザさんの奢りって事で大丈夫かな」

最悪ツケにでもしてもらって、ギルドからの報奨金で払えば大丈夫でしょ。
早くフリューレ帰ってこないかなー。
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