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7page・衛兵さん問題発生してますよ?
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日記
サルガドレアっていうサイもどきを討伐した。普通に死体残るし、殺したっていう感覚もあるんだけど、なんだか薄い。
そんなに薄情だったかな?
薄情とはまた違うのかも。夢見心地?
それよりも、ローヴァやパルセは燃やし尽くしちゃったけど、サルガドレアの討伐は成功したし、無事休暇での収入源ゲットってところかな。これ重要。
フリューレとは仲良くなった‥‥気がするけど、どうやったら今後も一緒に旅してくれるかなぁ。
====================
朝の光は結構眩しい。
もしかしなくても空気が綺麗だから?
日本でも暑い夏の日差しは単純に暑かったけど、寒い冬の日差しは暖かいけど痛かった。まさにそんな感じ?
「おはよう‥‥ってやっぱりいないのかー」
ベッドのフリューレの姿はない。
一体朝は何をやってるのか‥‥気になるけど、早朝バイト的な何がだったら迷惑だよねー。
「とりあえず走ろうかな」
ラジオ体操をして体をほぐす。
昨日のサルガドレアとの追いかけっこで結構体を酷使したと思うけど、体が痛んだり軋んだりしない。丈夫になったのか治癒の魔術が万能なのか。
サルガドレアとの追いかけっこより、フリューレとの追いかけっこの方が死にかけてる‥‥仲間内で何やってんの僕。
「靴は‥‥フリューレ過保護ー」
綺麗な文字で「街中で着れる服装」と書いたメモがベッドサイドの布の山の上に置いてあった。
布の山はどう見ても服と靴で、この街に来てからよく見る街の人の服と雰囲気が似ているものばかり。
「じゃあ、寒いから民族衣装的な上下にしよっと」
暗い色でジッパーだったら芋ジャーっぽいし。足首と手首が紐で締められるようになっている仕組み。ちょっとダボつくけど、動きを阻害する程度じゃないし。
靴は木靴と革靴と布靴‥‥走るなら布靴だよね。こっちにゴムとかないのかな?
====================
水遊びで怒られたけど、そのおかげでちょっとフレンドリーになってくれた宿の人に見送られて、街中を走る。
日の出が東だと仮定すると、この街の南側に大きな樹が生えていて、そこから上り坂があり城壁と似ている城のようなものが北にある。石造りのアパートのようなものが南側の大樹の根っこ沿いに多くあって、東から西にかけてのメイン通りに大きな商店だったり組合などが並んでいる。南側から北側にかけて貧民から富豪になるように並んでいる気がする。
「君ねぇ、高いところに登りたいのは分かるけど、こういう衛士が巡回するための場所には入っちゃいけないの。分かった?」
「はい、ごめんなさい」
「今回は初犯ってことで許すよ。なんだったら一緒に歩こうか。2度目はないからね」
「ありがとうございます!」
上から見たいなーなんて思った僕は壁を登って万里の長城的になっている塀の上を走って街を眺めていたんだけど、3周目あたりでまだ若い衛士さんに捕まってしまった。
夜は門を閉める為、見張りはかなり少ない人数で行うらしい。この若い衛士さんは一定時間毎に壁の上を見回って街中や街の外に違和感がないかどうか確認するのが仕事なのだとか。
「俺はリポス出身でね。本当はオルドになるのが目的だったんだ。この街は多くの英雄伝説があるから。でも僕にはオルドとして率先して戦いに行ける能力も技能も授からなかった。だから兵士になったんだ」
「へえ~」
「衛士の仕事は見回りがほとんどでね。門番はまれに戦闘することもあるけど、領主様のお抱えの騎士団がくるまで時間を稼ぐのが目的だから根性だけでどうにかなるんだ」
「そうなんですねー」
「君がどんな職につくかは分からないけど、もしこの街に定住する気になったら衛士を勧めるよ。君ぐらい走るのが早い人の活躍できる職場だからね」
「そうですねー」
よく喋るやっちゃなぁ。
「ん? 衛士さん、あれ問題発生じゃないですか??」
「どれだい?」
「ほら、組合とは反対側の大通り沿いにある倉庫っぽい建物‥‥」
人が多く出入りしているから、何かしらの倉庫だと思ったのだけど、そこから赤い煙のようなものが立ち上がっているのだ。
「あそこは午後の市場に出品する為の商人が集まる寄り合い所だね」
「いや、赤い煙が‥‥」
「煙? ---ッ!?」
ドオォォオンと、その寄り合い所が目の前で吹き飛んだ。
====================
衛士さんは仲間の元へ行き、僕は一旦宿に帰ることにした。
フリューレがいたらちゃんとオルドとした格好で出歯亀してみるのもいいと思う。
「そーゆーわけでさ。履かせてくれない? 靴」
「ああ。いいだろう」
宿は北に近いところで、遠方の商人や組合の登録員より、裕福な商人や貴族のお付きの者が多い宿だったせいで、かなり厳重な警戒体制になっていた。
正確には入り口がしっかりと閉められ窓からしか中に入れないぐらい。
「にしてもさ。夕市に出す商品を爆破するって、どんな目的あるんだろうね」
朝はナマモノ、夕は乾物や固形物、となんとなくまだ日の浅い僕でさえわかって来ている。向こうとこっちを比べちゃいけないのは分かっているけれど、比較的裕福に思えるこの街の倉庫1つ爆破したぐらいで何か得られるものがあるのだろうかという疑問が拭えない。
「さあ。何を思うかは人次第だ」
「そっか。見てみるだけなら良いよね?」
「ああ。‥‥ついでに訓練だな」
「え?」
キュッと綺麗な蝶結びが完成したところで、立ち上がったフリューレが部屋の窓を大きく開けた。
====================
風が冷たい。
なんでこんなところにいるんだろうね。普通に組合で依頼とか受けたりしてあとはグータラしてこの世界を冒険したりとかしてみたいんだけど。
「フリューレ、あれが原因?」
「ああ。あれが爆発した」
今屋根の上にいる。爆発して屋根が飛んだ隣の倉庫の屋根の上にいる。
なぜ屋根の上にいるか。それは僕が出歯亀したいっていったら直接見に行こうからの訓練で屋根に上走って行こうなんてことになったからさ。いらんこと言ったな、僕。
「でもさ、なんでわざわざ屋根を吹っ飛ばして被害が甚大だと演出する必要があったわけ?」
この爆発の原因。
お野菜だった。
「もともと爆発することがわかっていたお野菜なら爆発しないよう保管するだろうし‥‥これが意図的なものだとしても被害が出ないと衛兵とか調査騎士とか入れないでしょ」
見た目はスイカっぽい野菜は爆弾。よし覚えた。
割れたら臭いをはっするドリアンより危ないよね。あっちもあっちで危ないけど、こっちは近くにいたらほぼ即死だよ。天井へ被害がほとんどだったけど、やっぱり地面も結構抉ってるし。
上から見る限り人的被害はなかったみたいだけど、かなりの馬車とかが壊れてる。衛兵は来てないから多分お金で解決できる範囲の被害だったみたい。
「ああ。それが目的だとしたら」
「‥‥衛兵が来ないようにすることが目的ってこと? そんなの、何か違法なものをはこ、んで?」
そうだよね、木の葉を隠すなら森の中。やばい事件をかくすなら、見た目だけ大きい事件!
「そう。恐らくは禁制品を運んでいたか、正規ではない奴隷を運んだ」
麻薬的なのとかかな?
いかんせん世界が違うとスケールが変わるからなぁ‥‥向こうで野菜が爆発したって言ったら多分「腐らせるまで置いといちゃダメでしょー」って叱られるぐらいだし。こんな被害、想定できないでしょ。
「それって通報してなんとかなる?」
「いや。禁制品も奴隷も大店や貴族が関わってるのがほとんどだ」
「誰も手は出したくないよねー‥‥」
お金は偉大なり。
あれ? そういえば僕今すっごいお金持ちだったような‥‥。
「フリューレ、資産的に今この街で僕結構上位にいると思うんだけど」
「ああ。間違いない」
「その禁制品ってさ、多分裏の競売かなんかにかけられるのが通例でしょ。誰かに直接渡すならこんな大騒ぎする必要ないし、大騒ぎして話題性を上げるってのも1つの手だし」
「ああ」
ならばそっちにも出歯亀ろうではないか!
欲しいとは思わないけど、禁制品とか奴隷とか、そう言った単語はちょっとワクワクするよね! 日常生活で味わえなかった非日常!
あれ? 今僕がここにいるのも非日常‥‥んー気にしない!
とりあえず固く閉められた蓋ほど開けて見たくなるものだしっ!
「じゃ、まずはそれっぽい護衛の依頼がないか組合に問い合わせてみよー」
「‥‥‥」
「あれ? なんか違った?」
フリューレは僕が乗り込んでいくと思ったらしい。
そんな危ないことしないよ?
====================
街から街への護衛任務は一定以上の力量が認められていればできるらしいけど、用心棒的な護衛任務は実力の他に見た目や年齢が重要視されるらしい。
一発アウトでした。
「えーっと、エルドワ・フリューレ・トゥエントス。5級オルドが後見人?」
「はい! 6級以上の後見人がいるならこの仕事受けていいんですよね」
フリューレは別にやることがあるってどっかに行っちゃったけど、とりあえずなんとか受付嬢さんを口説き落として定点護衛につく裏技を教えてもらった。
背景に有力者とかおいしいね!
「そうだけど‥‥まぁいいや。キミも男の子なら奴隷とかちょっとヤバい感じのに惹かれて来ちゃったの?」
「そうですねー。気にならないって言ったら嘘ですけど、ちゃんとお仕事はしますよ? 休憩時間に会場の中を見れたらいいなーって思ってます」
会場はこじんまりしてるテントの中。
ほんと、4人も入れないテントの大きさだけど、その中央に玉が置いてあって、きっとあれに触れると地下への隠し通路が開くか、どっかに飛ばされるとか、そんな感じだと考えてる!
「会場に入るのに金貨‥‥」
「20枚ですよね! 」
払うに決まってるじゃないですか!
「今払っても良いんですか?」
「ねぇキミ、この仕事の給料幾らかちゃんと確認したの?」
「もちろん確認しましたよ! 銀貨37枚。締めて金貨19枚と銀貨63枚の損ですね!」
そう。未だなんとなくしか知らなかった貨幣価値。金銀銅に石と木片。貨幣として流通しているものには特殊な染料でこれまた特殊な紋様が描かれるので偽造するのは不可能なんだとか。
木片10枚で石片。
石片15個で石塊。
石塊12個で銅貨。
銅貨25枚で銀貨。
銀貨20枚で銀柱。
銀柱5本で金貨。
金貨50枚で白貨。
白貨の上は教会が有料で販売している紋様の描かれた小切手らしい。僕の証を各地の組合でかざすとこの小切手が対応してくれるのだとか。
木片や石片は街で使われることはほとんどなく、小さい村や遠い町で貨幣を普及させるために使った伝統の残りらしい。
ちゃんと両替屋に持っていけば両替してくれるらしい。今度手に入れてみたい。
そして街中ではほとんど銅貨しか使わない。今の高級お宿だって一泊銀貨1枚なのだ。僕の財布にはお金が貯まるばかり。
向こうで1度体験したかったなぁ。
「‥‥あ、そう。まぁいいわ。いつでも受付に入れるようにするから金貨20枚、渡してちょうだい」
「はい!」
いつもの鞄ではなく、わざとポケットに手を入れて金貨を出す。
どうだろう? 無用心で、後見人を自慢し、なにかと自分の実力を鼻にかけてる純粋バカを演じられてただろうか?
「‥‥確かに。ヴァルグ金貨20枚、受け取ったわ」
「やった! 休憩時間に見に言って良いよね?」
「ええ、いいわよ。十分に堪能してちょうだいね」
餌まき終了。
多分金を持っているすぐ倒せそうな子供として見てくれただろう。
是非、この競売の裏側に連れて行ってくださいね!
====================
後ろから襲ってくるかなーと思ってたのに普通に休憩時間になってしまった‥‥。
一緒に門番、門じゃなくてテントの入り口だけど、やってたのはガザさん程実用的じゃないけど、見せびらかす筋肉としてはかなり優秀な体の持ち主だった。見た目はめちゃくちゃ強そうに見える。
でも多分弱いだよねー。
なんとなく強いか弱いかが分かるようになってきた気がする。
強いヒトは、体から何か尋常じゃない力が立ち昇ってて、弱いヒトにはそれがない。もしかしたら技能がそう見えてるのかもしれないけど。
「じゃあ、先に休憩もらいます!」
「そうかー、ティル君はこれから中の会場見に行くんだって?」
「はい!」
「なるべく興奮しないようにね。美味しくいただかれちゃうから」
何を?
「分かりました。気をつけますねー」
僕はテントの中に足を踏み入れた。
サルガドレアっていうサイもどきを討伐した。普通に死体残るし、殺したっていう感覚もあるんだけど、なんだか薄い。
そんなに薄情だったかな?
薄情とはまた違うのかも。夢見心地?
それよりも、ローヴァやパルセは燃やし尽くしちゃったけど、サルガドレアの討伐は成功したし、無事休暇での収入源ゲットってところかな。これ重要。
フリューレとは仲良くなった‥‥気がするけど、どうやったら今後も一緒に旅してくれるかなぁ。
====================
朝の光は結構眩しい。
もしかしなくても空気が綺麗だから?
日本でも暑い夏の日差しは単純に暑かったけど、寒い冬の日差しは暖かいけど痛かった。まさにそんな感じ?
「おはよう‥‥ってやっぱりいないのかー」
ベッドのフリューレの姿はない。
一体朝は何をやってるのか‥‥気になるけど、早朝バイト的な何がだったら迷惑だよねー。
「とりあえず走ろうかな」
ラジオ体操をして体をほぐす。
昨日のサルガドレアとの追いかけっこで結構体を酷使したと思うけど、体が痛んだり軋んだりしない。丈夫になったのか治癒の魔術が万能なのか。
サルガドレアとの追いかけっこより、フリューレとの追いかけっこの方が死にかけてる‥‥仲間内で何やってんの僕。
「靴は‥‥フリューレ過保護ー」
綺麗な文字で「街中で着れる服装」と書いたメモがベッドサイドの布の山の上に置いてあった。
布の山はどう見ても服と靴で、この街に来てからよく見る街の人の服と雰囲気が似ているものばかり。
「じゃあ、寒いから民族衣装的な上下にしよっと」
暗い色でジッパーだったら芋ジャーっぽいし。足首と手首が紐で締められるようになっている仕組み。ちょっとダボつくけど、動きを阻害する程度じゃないし。
靴は木靴と革靴と布靴‥‥走るなら布靴だよね。こっちにゴムとかないのかな?
====================
水遊びで怒られたけど、そのおかげでちょっとフレンドリーになってくれた宿の人に見送られて、街中を走る。
日の出が東だと仮定すると、この街の南側に大きな樹が生えていて、そこから上り坂があり城壁と似ている城のようなものが北にある。石造りのアパートのようなものが南側の大樹の根っこ沿いに多くあって、東から西にかけてのメイン通りに大きな商店だったり組合などが並んでいる。南側から北側にかけて貧民から富豪になるように並んでいる気がする。
「君ねぇ、高いところに登りたいのは分かるけど、こういう衛士が巡回するための場所には入っちゃいけないの。分かった?」
「はい、ごめんなさい」
「今回は初犯ってことで許すよ。なんだったら一緒に歩こうか。2度目はないからね」
「ありがとうございます!」
上から見たいなーなんて思った僕は壁を登って万里の長城的になっている塀の上を走って街を眺めていたんだけど、3周目あたりでまだ若い衛士さんに捕まってしまった。
夜は門を閉める為、見張りはかなり少ない人数で行うらしい。この若い衛士さんは一定時間毎に壁の上を見回って街中や街の外に違和感がないかどうか確認するのが仕事なのだとか。
「俺はリポス出身でね。本当はオルドになるのが目的だったんだ。この街は多くの英雄伝説があるから。でも僕にはオルドとして率先して戦いに行ける能力も技能も授からなかった。だから兵士になったんだ」
「へえ~」
「衛士の仕事は見回りがほとんどでね。門番はまれに戦闘することもあるけど、領主様のお抱えの騎士団がくるまで時間を稼ぐのが目的だから根性だけでどうにかなるんだ」
「そうなんですねー」
「君がどんな職につくかは分からないけど、もしこの街に定住する気になったら衛士を勧めるよ。君ぐらい走るのが早い人の活躍できる職場だからね」
「そうですねー」
よく喋るやっちゃなぁ。
「ん? 衛士さん、あれ問題発生じゃないですか??」
「どれだい?」
「ほら、組合とは反対側の大通り沿いにある倉庫っぽい建物‥‥」
人が多く出入りしているから、何かしらの倉庫だと思ったのだけど、そこから赤い煙のようなものが立ち上がっているのだ。
「あそこは午後の市場に出品する為の商人が集まる寄り合い所だね」
「いや、赤い煙が‥‥」
「煙? ---ッ!?」
ドオォォオンと、その寄り合い所が目の前で吹き飛んだ。
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衛士さんは仲間の元へ行き、僕は一旦宿に帰ることにした。
フリューレがいたらちゃんとオルドとした格好で出歯亀してみるのもいいと思う。
「そーゆーわけでさ。履かせてくれない? 靴」
「ああ。いいだろう」
宿は北に近いところで、遠方の商人や組合の登録員より、裕福な商人や貴族のお付きの者が多い宿だったせいで、かなり厳重な警戒体制になっていた。
正確には入り口がしっかりと閉められ窓からしか中に入れないぐらい。
「にしてもさ。夕市に出す商品を爆破するって、どんな目的あるんだろうね」
朝はナマモノ、夕は乾物や固形物、となんとなくまだ日の浅い僕でさえわかって来ている。向こうとこっちを比べちゃいけないのは分かっているけれど、比較的裕福に思えるこの街の倉庫1つ爆破したぐらいで何か得られるものがあるのだろうかという疑問が拭えない。
「さあ。何を思うかは人次第だ」
「そっか。見てみるだけなら良いよね?」
「ああ。‥‥ついでに訓練だな」
「え?」
キュッと綺麗な蝶結びが完成したところで、立ち上がったフリューレが部屋の窓を大きく開けた。
====================
風が冷たい。
なんでこんなところにいるんだろうね。普通に組合で依頼とか受けたりしてあとはグータラしてこの世界を冒険したりとかしてみたいんだけど。
「フリューレ、あれが原因?」
「ああ。あれが爆発した」
今屋根の上にいる。爆発して屋根が飛んだ隣の倉庫の屋根の上にいる。
なぜ屋根の上にいるか。それは僕が出歯亀したいっていったら直接見に行こうからの訓練で屋根に上走って行こうなんてことになったからさ。いらんこと言ったな、僕。
「でもさ、なんでわざわざ屋根を吹っ飛ばして被害が甚大だと演出する必要があったわけ?」
この爆発の原因。
お野菜だった。
「もともと爆発することがわかっていたお野菜なら爆発しないよう保管するだろうし‥‥これが意図的なものだとしても被害が出ないと衛兵とか調査騎士とか入れないでしょ」
見た目はスイカっぽい野菜は爆弾。よし覚えた。
割れたら臭いをはっするドリアンより危ないよね。あっちもあっちで危ないけど、こっちは近くにいたらほぼ即死だよ。天井へ被害がほとんどだったけど、やっぱり地面も結構抉ってるし。
上から見る限り人的被害はなかったみたいだけど、かなりの馬車とかが壊れてる。衛兵は来てないから多分お金で解決できる範囲の被害だったみたい。
「ああ。それが目的だとしたら」
「‥‥衛兵が来ないようにすることが目的ってこと? そんなの、何か違法なものをはこ、んで?」
そうだよね、木の葉を隠すなら森の中。やばい事件をかくすなら、見た目だけ大きい事件!
「そう。恐らくは禁制品を運んでいたか、正規ではない奴隷を運んだ」
麻薬的なのとかかな?
いかんせん世界が違うとスケールが変わるからなぁ‥‥向こうで野菜が爆発したって言ったら多分「腐らせるまで置いといちゃダメでしょー」って叱られるぐらいだし。こんな被害、想定できないでしょ。
「それって通報してなんとかなる?」
「いや。禁制品も奴隷も大店や貴族が関わってるのがほとんどだ」
「誰も手は出したくないよねー‥‥」
お金は偉大なり。
あれ? そういえば僕今すっごいお金持ちだったような‥‥。
「フリューレ、資産的に今この街で僕結構上位にいると思うんだけど」
「ああ。間違いない」
「その禁制品ってさ、多分裏の競売かなんかにかけられるのが通例でしょ。誰かに直接渡すならこんな大騒ぎする必要ないし、大騒ぎして話題性を上げるってのも1つの手だし」
「ああ」
ならばそっちにも出歯亀ろうではないか!
欲しいとは思わないけど、禁制品とか奴隷とか、そう言った単語はちょっとワクワクするよね! 日常生活で味わえなかった非日常!
あれ? 今僕がここにいるのも非日常‥‥んー気にしない!
とりあえず固く閉められた蓋ほど開けて見たくなるものだしっ!
「じゃ、まずはそれっぽい護衛の依頼がないか組合に問い合わせてみよー」
「‥‥‥」
「あれ? なんか違った?」
フリューレは僕が乗り込んでいくと思ったらしい。
そんな危ないことしないよ?
====================
街から街への護衛任務は一定以上の力量が認められていればできるらしいけど、用心棒的な護衛任務は実力の他に見た目や年齢が重要視されるらしい。
一発アウトでした。
「えーっと、エルドワ・フリューレ・トゥエントス。5級オルドが後見人?」
「はい! 6級以上の後見人がいるならこの仕事受けていいんですよね」
フリューレは別にやることがあるってどっかに行っちゃったけど、とりあえずなんとか受付嬢さんを口説き落として定点護衛につく裏技を教えてもらった。
背景に有力者とかおいしいね!
「そうだけど‥‥まぁいいや。キミも男の子なら奴隷とかちょっとヤバい感じのに惹かれて来ちゃったの?」
「そうですねー。気にならないって言ったら嘘ですけど、ちゃんとお仕事はしますよ? 休憩時間に会場の中を見れたらいいなーって思ってます」
会場はこじんまりしてるテントの中。
ほんと、4人も入れないテントの大きさだけど、その中央に玉が置いてあって、きっとあれに触れると地下への隠し通路が開くか、どっかに飛ばされるとか、そんな感じだと考えてる!
「会場に入るのに金貨‥‥」
「20枚ですよね! 」
払うに決まってるじゃないですか!
「今払っても良いんですか?」
「ねぇキミ、この仕事の給料幾らかちゃんと確認したの?」
「もちろん確認しましたよ! 銀貨37枚。締めて金貨19枚と銀貨63枚の損ですね!」
そう。未だなんとなくしか知らなかった貨幣価値。金銀銅に石と木片。貨幣として流通しているものには特殊な染料でこれまた特殊な紋様が描かれるので偽造するのは不可能なんだとか。
木片10枚で石片。
石片15個で石塊。
石塊12個で銅貨。
銅貨25枚で銀貨。
銀貨20枚で銀柱。
銀柱5本で金貨。
金貨50枚で白貨。
白貨の上は教会が有料で販売している紋様の描かれた小切手らしい。僕の証を各地の組合でかざすとこの小切手が対応してくれるのだとか。
木片や石片は街で使われることはほとんどなく、小さい村や遠い町で貨幣を普及させるために使った伝統の残りらしい。
ちゃんと両替屋に持っていけば両替してくれるらしい。今度手に入れてみたい。
そして街中ではほとんど銅貨しか使わない。今の高級お宿だって一泊銀貨1枚なのだ。僕の財布にはお金が貯まるばかり。
向こうで1度体験したかったなぁ。
「‥‥あ、そう。まぁいいわ。いつでも受付に入れるようにするから金貨20枚、渡してちょうだい」
「はい!」
いつもの鞄ではなく、わざとポケットに手を入れて金貨を出す。
どうだろう? 無用心で、後見人を自慢し、なにかと自分の実力を鼻にかけてる純粋バカを演じられてただろうか?
「‥‥確かに。ヴァルグ金貨20枚、受け取ったわ」
「やった! 休憩時間に見に言って良いよね?」
「ええ、いいわよ。十分に堪能してちょうだいね」
餌まき終了。
多分金を持っているすぐ倒せそうな子供として見てくれただろう。
是非、この競売の裏側に連れて行ってくださいね!
====================
後ろから襲ってくるかなーと思ってたのに普通に休憩時間になってしまった‥‥。
一緒に門番、門じゃなくてテントの入り口だけど、やってたのはガザさん程実用的じゃないけど、見せびらかす筋肉としてはかなり優秀な体の持ち主だった。見た目はめちゃくちゃ強そうに見える。
でも多分弱いだよねー。
なんとなく強いか弱いかが分かるようになってきた気がする。
強いヒトは、体から何か尋常じゃない力が立ち昇ってて、弱いヒトにはそれがない。もしかしたら技能がそう見えてるのかもしれないけど。
「じゃあ、先に休憩もらいます!」
「そうかー、ティル君はこれから中の会場見に行くんだって?」
「はい!」
「なるべく興奮しないようにね。美味しくいただかれちゃうから」
何を?
「分かりました。気をつけますねー」
僕はテントの中に足を踏み入れた。
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