Mobを演じてきた僕に与えられたスキルは「環境適応」だった

さくーや

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8page・体育座りしたマンボウは奴隷予定らしい。

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日記

朝のランニングで塀に登ったら衛士さんにあって。
話してたら夕市ようの倉庫が爆発して。
面白そうだから夕市の裏で開かれる特殊な競りの護衛任務に付いて、金貨20枚はたいてやっと会場入りでござい。
非現実的な舞台の裏側って、やっぱり気になるよねー。


====================

テントの中は最初に見た時とあまり変わっていなかった。
あえて変わった所を挙げるならば、中央の台座に置かれた水晶にスマホの画面のように手垢が付いているのと、台座の周りに置いてある絨毯は汚れていないが周囲に足跡が沢山残っているぐらい。
水晶に透明度がもっと良ければきっとあの手垢は邪魔になると思う。

「ボウズ、金貨20枚払ったんだって?」
「はい! 1度競売見て見たかったんです!」

さぁ、是非連れて行って下さいね!

「じゃあこっちだ」

ん? 水晶に触らないの? あんなに垢が付いてるのに。
水晶に触って転移とか、水晶の台座を退けると隠し階段とかないの?

「あ、あの! あの水晶って‥‥」
「あ? あれは組合の紹介なら知ってるだろ、証の真ん中にある石と同じものさ‥‥もしかしてあれに触ったらどっかに移動するとかおかしな事考えてたのか」
「えっと、そのー」
「はっはっは! いや、子供らしくていい考えだ。いつかそういう魔道具が開発されれば良いんだがな」

水に濡れたワカメみたいな髪をしてるけど不思議と臭くないおっさんに背中を押されて、入ってきた入り口から見て左側の布をかき分けて中に入った。
転移とか大層なものじゃないけど、未知の空間に心が弾む。

「さぁ、ここが会場だ」
「んん?」

連れてこられたのは、テントの幕をいくつも潜った先。
目の前には多くのヒトが‥‥なんて事もなく。沢山の檻があった。


====================


どうやら、若いのにポンと払えるお金を持っていて、問い合わせたらあまり依頼を請け負っていない王都の後見人に、敬語と慣れたような受け答えから考えられ、出品予定の奴隷を見張るお仕事を与えられたらしい。
いやいや、休みたいんだけど。
競売に奴隷がかけられる様とか、禁制品がでるところを見たかったんだけど!

「はぁ‥‥」

周りを見渡しても檻、檻、檻。
中に入っているヒトも項垂れてたり、虚空を見つめてヘラヘラしてたり、体力温存してるのか動かなかったり。一体どういうわけで奴隷になったんだか。

「いいか新人。檻の中のヤツに気を許すな。ほとんどが生活奴隷だが、犯罪奴隷もそれなりにいる」
「そうなんですか」
「借金で奴隷になった生活奴隷は比較的おとなしいけどな、犯罪を犯してこの檻に入れられてるヤツは出ようと新人、キミを脅したりなんでもしてくるだろう。心を強く持てよ」
「はい」

なんて入った時にワカメな人に言われたけど、この場所は比較的穏やかだ。
ただ、ものすごくファンタジーなので、興奮してます。静かに。

「あっちのヒト、エルフかなんかかな? 薄緑の肌に黄色の目‥‥首輪は生活奴隷かー。お、あっちはんー獣人的な? 黒っぽい肌に黒い瞳、背中に生えてる翼は青っぽいな‥‥幸せの青い鳥だったら胴体も青いよなー」

今まで人間型のヒトしか見てなかったけど、受付幼女はちょっと違うかもだけど、ここは完全に違うとわかる体つきをしているヒトが多い。
足や手に鱗や毛が生えているヒトだったり、耳や鼻の形が変わっていたり、床で爪とぎしてたり、尻尾をビタンビタンさせてたり、翼をはためかせていたり。
かなり不思議。
超ファンタジー。

「おーい」
「あっちのヒトの原型は猿かな?」

尻尾でくるっと檻の上の突っ張りに捕まって寝ているヒト。ちょうど正面の顔が見える位置だから背中が確認できないけど、多分猿!
もしくは蝙蝠。

「おーい、見張り君よー」
「あっちのヒトは魚かな? 人魚ならぬ魚人ってか」

両手足あるけど、胴体と頭が魚っぽい。マンボウっぽい。
普通に体育座りしてるけど、服とか着ないんだろうか。水槽とかなくても大丈夫なんだろうか。むしろ履いてないのを隠すために体育座りしてるように見えるんだけど。

「みーはーりーくーんー」
「んー魚人って、何が得意なんだろう。水魔術とか得意だったりするのかな?」

魚人はべつだけど、人魚とセイレーンのイメージってなんか似てるよね。セイレーンは歌で船を転覆させるんだからちょっとご同業とかシンパシー勝手に感じてるけど。あ、向こうのね。歌で食費稼いでる的な。

「黒髪黒目の組合のオルドっぽい見張り君!!」
「はい? 僕ですか?」

なんか檻に捕まって肩で息してるオニイサンがいる。頭から2本の角が出てて、耳も少し尖ってて、歯がちょっと鋭い? 肌は赤黒い感じで尻尾はないけど、手も足も爪は鋭そう。
奴隷用の質素な服じゃなくて虎柄の服だったら是非とも赤鬼さんってあだ名で呼びたい。
あれ? 奴隷用の服が支給されてるならなんであの魚人は服着てないの? え? 売られる前からイジメられてるの??

「見張り君!」
「聞いてます聞いてます。どうかしました?」
「その‥‥その刺すような威圧をやめてはもらえないか」
「え? 威圧?」
「いや、その歳でこの区画の見張りを任されるのだから相当な実力者なんだろう。その威圧を緩めてもオレ達は出る気ないから、とにかくその威圧を抑えてくれ、ください」

嘆願するようにこっちを見てくるけど、なんだろう? むしろ威圧って何?

「あー‥‥ごめん、威圧が分からないや」
「はい!?」

いろんな檻から同じ言葉が聞こえた。


====================


無意識でガンつけ続けてたらしい。
集中して怒ってくる人の声って怖いじゃん。多分そんな感じだったんだと思う。

「あー生き返るぅー」
「チョー凄かった! 肩凝った~」
「足痺れた」
「背中いたいわー‥‥」
「まだ吐き気する」

いや、ほんと。

「申し訳ない」
「うん、見張り君はほんと威圧しないで」
「ごめんなさい」

口々に怖かったと言われてしまった。
ここは犯罪奴隷と生活奴隷がごっちゃになってる場所で、主に奇形と言われているヒトが檻に入っているらしい。
売る方も買う方も種類でまとまってる方が分かりやすいだろ。とは赤鬼さんの談。
確かにね~。

「でも犯罪奴隷ってなんでなったんです? 話を聞く限りだと強制労働と選べるんですよね」

そう。犯罪奴隷は一括してこうやって競売に出されるのだと思ってたから身の上話を聞いてて疑問だったんだけどね。
犯罪を犯すと街や村の衛士や警邏に捕まって、お金を払うか投獄されるか選ぶんだって。投獄を選ぶと刑が確定するまで牢に入れられて、確定した刑を教えてもらう。大抵は損害金額分の労働で、国で常時出している強制労働場でその金額分貯めるか、奴隷として誰かに買われた分で支払って買ってくれた者に奉仕しながらお金を貯めるか。
ここにいるのは後者を選んだヒト達。

「だって強制労働場はお金貯まるまで時間かかるじゃない」
「はぁ」
「分かってない顔ねぇ? 強制労働はお金たまる期間は分かってるけど外に出れないのよ。でも奴隷になっちゃえば外に出れるし好きなことできるかもしれないじゃな~い」
「お金や拘束される時間より、自由とかを選んだってことです?」
「そ。いーことゆーじゃない!」

褒められて悪い気はしないけど、見張りの位置と檻までの距離は結構あるからなんか寂しい。
仕方ないけど。

「そういえばあかお‥‥あのツノの彼はいつまで蹲ってるんでしょう」
「あー見張り君の威圧最後の方1人で受けてたから‥‥もう少し休ませてあげて~」
「え、あ、はい」

威圧は集中しなくなったらすっかり消え失せました。逆にやめようと集中した時が1番すごかったらしく、別の檻の方から悲鳴が聞こえてきたぐらい。まぁ僕のせいって決まったわけじゃ無いけど。
それを浴び切って誰も倒れなかったことを皆が褒め合ってたけど、ちょっとよく分からない感覚だった。


====================


赤鬼さんが復活したのはそれから少し経ってからだった。

「それで、お前はなんでここで見張りなんてことを?」
「いや~全く縁のない者が突然競売に参加したいって言っても入れるわけ無いじゃないですか。だから手っ取り早く依頼を請け負って入り込んで仕舞えば競売見れるかなーって」

ただの好奇心ですけどね!

「つまりはタダで競売見ようとしてたのー?」
「違いますよ。金貨20枚払いましたし」
「きっ金貨!?」
「20枚って‥‥」

そんなに驚くことかな?
競売なんて閉鎖的空間に新参者が金貨20枚で参加できるなら断然おトクだと思うんだけど。
無料タダと信用は高くつくってね。

「そんなキョトンとしないでー。私らの元々の借金なんて、金貨数枚よー? 」
「それでも払えなくて奴隷になるために来てるのに‥‥見張り君、何歳?」
「僕ですか? 15歳です」

中身は違うけど、証には15歳って書かれてるしいいでしょ。

「はぁ~。これが才能ってやつかしらねぇ」
「金貨20枚払ってピンピンしてる15歳ってほんと何なんだよ‥‥」
「この歳で大金とかねーけど、その歳で大金あったら既に別のことでつかってらぁ」
「あはは‥‥」

中身があれなんで買うものも少ないんですよー。勿体ない精神というか。物はだいたい壊れるまで使う性格だし。
なんと言ってもこっちには課金がない。娯楽が少ない。向こうでいうならポンと貰った1億円を明日までに使えと言われてるかのよう。無理。やっぱり貯まる一方。

「あー皆さん、こんな人に買って欲しいとかあったりするんですか?」
「それはあるわよー」
「もちろんあるぜ」
「へぇ~‥‥例えば?」

奴隷は商品だけど、生活奴隷は購入者の条件をある程度決められるらしい。男か女かとか、一定以上の収入の持ち主だとか、商家や貴族家だとか。もちろんそれ相応の技能や能力を求められるわけだけど。
逆に当然といえば当然だけど犯罪奴隷は購入者につけられる条件は無に等しい。むしろ奴隷として生きている間に返済するのを目標に条件が決められるから、窃盗だと条件付けられても、殺害だと条件をつけることすらできないらしい。家族や被害者縁者が購入することはまずないらしいけど、転売で被害者縁者が手に入れたことはあるらしく、当たったら結構大変らしい。

「私はねぇ~女の子がいいの! できたら小さい無垢な女の子!」
「女性なのに女の子がいいんですか?」
「そうよぉ! 女の子柔らかくて可愛くてずっと愛でてたいわぁ」
「見張り君、彼女は何度かここに来てるが、小さい女の子を食べるのが好きなんだ。獣だろうが人だろうが」
「えっ」
「なぁによぉ! 美味しいものは食べたいに決まってるでしょー! 今回だってちゃんとお金払ったのに‥‥食べた後に文句言うからこうなっちゃったのよぉ~」

プリプリ怒ってる様は至って普通の腰から蛇になってるきょぬーのお姉さんなのに‥‥。
カニバってるのかぁ‥‥。いや、一概にカニバとも言えないのかな? 子牛とか子羊とか普通に食べてたし。美味しいし。
まぁ喋らないから食べれたのだけど。

「俺はそうだなー。組合のオルドに買って欲しいかな。攻撃は得意だし、もともと魔物と戦う戦士だったからな」
「戦士だったんだ」
「戦士だぞ。家族もみんなこんな外見でな。戦士ぐらいしか仕事が無かったってのも理由の1つなんだがな」
「見張りくーん、その角男の一族はなー、周りの種族かぞくと喧嘩しまくって全員が狂戦士って言われてる奴らなんだぞー」
「は?」
「おいっ! 一族を馬鹿にするなっ! 俺らは闘うのが好きなだけだっ! 自分から喧嘩を売ったことはない!」
「でもワシ知ってる。喧嘩売られる前に買わせに行く一族」
「なんだとっ! 魚頭は黙ってろ!」
「ひぃっ」

まぁ確かに強そうではある。
赤黒い肌にサンバラな髪に突き出る2本の角。奴隷用の服に身を包んでいても分かる実用的な筋肉。
それよりも縮こまった魚頭が気になるんだけどね。

「どのくらい強いんですか?」
「あー大樹の子には負けたけど、1番強かった奴の証は3級もオルドだったやつだぜ」
「大樹の子?」
「あん? 赤髪で青目のやつだよ。見張りクン大樹の子知らないってどこ出身だ? かなり田舎だろ」
「え? あははは」

この世界の常識は僕の非常識。
と言うか、もしかしてフリューレ相当強かったり?
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