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本編
無邪気な魔性★【side:アウルム】01
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情けないぐらい余裕がなかった。
あんな可愛らしいキスをされただけで、私の余裕はすべて奪われた。
いや、余裕なんて最初から微塵もなかったのかも知れない。
夕陽に照らされた可愛らしい顔。赤く染まった顔に浮かんだはにかむような笑顔に一気に熱が上がった。
衝動のままに唇を貪る。ぺろりと舐めれば気持ちよさそうに体を震わせる。もっとと言わんばかりに開いた唇の隙間に、躊躇うことなく舌を差し込んだ。
小さい口の中、ぴくぴくと動く舌を絡めとる。熱い、それに甘い。
最後に飲んでいた果実水の味だろうか。少しもらったその味は確かに驚くほどに甘かったけど……それとも違う気がする。
リティスの唾液だから甘いと感じるのかもしれない。その唾液をもっと味わいたくて、口の中を犯しつくすように舌で撫でた。
名残惜しかったが、唇を離すとリティスは泣いていた。目の周りを赤くして、頬を濡らしている。こんなにも嫌がられているのに気づかなかったというのか。
愕然として謝ると「気持ちよかったから平気」などというものだから、また体の中で熱が燻り始める。
誘っているのか? と問えば、その自覚はないようで首を傾げるだけなのに……その顔にすら興奮する自分に罪悪感を覚える。
これ以上してはいけない、そう自分を戒めて、体を離そうとしたのに―――いつの間にか腰に回っていたリティスの腕が、ぎゅっと私を離そうとはしなかった。
「離れちゃ、やだ」
幼い声。
子供が親に言うような台詞だというのに、興奮している私には違う意味に聞こえる。
私だって離したくない。だが、酷くもしたくない。嫌われたくないというのに、リティスは続ける。
―――誘ったら、してくれるの?
―――いいよ。して?
なんて。
こんなことを言われて止まれる男がいるのなら、会ってみたい。
無言でリティスを抱き上げた。
小さな軽い体に冷静になれるかと思ったが、そんなことはなかった。
触れたところが熱い。余裕がない。それは口づけたときから変わらない。
どうにかこの欲を抑えつけようとするのに、その度にリティスの魔性に煽られる。いや、きっと本人に自覚はない。そうだとわかっていても……もう抑えは利きそうになかった。
* * *
近くの宿屋に連れ込んで、ベッドの上にゆっくりと下ろす。
リティスはこの状況がわかっているのかいないのか、寝転がったまま、私のことを見上げている。その無垢な眼差しに少し胸が痛んだが、それをも無視する。
本当にいいのか、なんて無粋なことは聞かない。
体重をかけないようにリティスの体に覆いかぶさると、触れるだけのキスを落とした。
「……ん、ん」
ちゅ、ちゅ、と何度か繰り返すとリティスから甘い声が漏れる。嫌がる様子はない。
そっと首を撫でるように指を差し込むと、もふりと柔らかい触感が触れた。だが、いつもは好ましいそれが、今はとても邪魔に思える。
「この服は、脱げないのか?」
これが服ではなく、服に似せた毛皮なのだということはリティスから聞いていた。リティスはいつも同じ服を着ている。裸になっているところは、一度も見たことがない。
「え……?」
気持ちよさそうに目を細めていたリティスが、きょとんとした顔でこちらを見つめる。
私の言葉に耳を疑う様子に、今のが失言だったと気づいた。
それは暗に脱げと言っているのと変わらない。その言葉が意味することぐらい、この子ぐらいの年齢になれば察しはつくだろう。また変態と罵られるのだろうか。
それだけならいいが、もしも嫌いだなんて言われたら―――
「脱げるけど……脱いだら、もふもふじゃなくなるよ?」
思わず、耳を疑った。
もふもふが好きなのにいいの? なんて、健気に問われる。脱がされることには抵抗はないのだろうか。
それとも、リティスも私に触れられることを望んでくれているのだろうか。
「もふもふよりも、お前の肌に直接触れたい」
「―――っ、え、でも、それじゃ」
「お前は何か勘違いしている。私は確かにお前のもふもふが好きだが、それ以上に……お前に直接触れたいんだ。リティス」
あんな可愛らしいキスをされただけで、私の余裕はすべて奪われた。
いや、余裕なんて最初から微塵もなかったのかも知れない。
夕陽に照らされた可愛らしい顔。赤く染まった顔に浮かんだはにかむような笑顔に一気に熱が上がった。
衝動のままに唇を貪る。ぺろりと舐めれば気持ちよさそうに体を震わせる。もっとと言わんばかりに開いた唇の隙間に、躊躇うことなく舌を差し込んだ。
小さい口の中、ぴくぴくと動く舌を絡めとる。熱い、それに甘い。
最後に飲んでいた果実水の味だろうか。少しもらったその味は確かに驚くほどに甘かったけど……それとも違う気がする。
リティスの唾液だから甘いと感じるのかもしれない。その唾液をもっと味わいたくて、口の中を犯しつくすように舌で撫でた。
名残惜しかったが、唇を離すとリティスは泣いていた。目の周りを赤くして、頬を濡らしている。こんなにも嫌がられているのに気づかなかったというのか。
愕然として謝ると「気持ちよかったから平気」などというものだから、また体の中で熱が燻り始める。
誘っているのか? と問えば、その自覚はないようで首を傾げるだけなのに……その顔にすら興奮する自分に罪悪感を覚える。
これ以上してはいけない、そう自分を戒めて、体を離そうとしたのに―――いつの間にか腰に回っていたリティスの腕が、ぎゅっと私を離そうとはしなかった。
「離れちゃ、やだ」
幼い声。
子供が親に言うような台詞だというのに、興奮している私には違う意味に聞こえる。
私だって離したくない。だが、酷くもしたくない。嫌われたくないというのに、リティスは続ける。
―――誘ったら、してくれるの?
―――いいよ。して?
なんて。
こんなことを言われて止まれる男がいるのなら、会ってみたい。
無言でリティスを抱き上げた。
小さな軽い体に冷静になれるかと思ったが、そんなことはなかった。
触れたところが熱い。余裕がない。それは口づけたときから変わらない。
どうにかこの欲を抑えつけようとするのに、その度にリティスの魔性に煽られる。いや、きっと本人に自覚はない。そうだとわかっていても……もう抑えは利きそうになかった。
* * *
近くの宿屋に連れ込んで、ベッドの上にゆっくりと下ろす。
リティスはこの状況がわかっているのかいないのか、寝転がったまま、私のことを見上げている。その無垢な眼差しに少し胸が痛んだが、それをも無視する。
本当にいいのか、なんて無粋なことは聞かない。
体重をかけないようにリティスの体に覆いかぶさると、触れるだけのキスを落とした。
「……ん、ん」
ちゅ、ちゅ、と何度か繰り返すとリティスから甘い声が漏れる。嫌がる様子はない。
そっと首を撫でるように指を差し込むと、もふりと柔らかい触感が触れた。だが、いつもは好ましいそれが、今はとても邪魔に思える。
「この服は、脱げないのか?」
これが服ではなく、服に似せた毛皮なのだということはリティスから聞いていた。リティスはいつも同じ服を着ている。裸になっているところは、一度も見たことがない。
「え……?」
気持ちよさそうに目を細めていたリティスが、きょとんとした顔でこちらを見つめる。
私の言葉に耳を疑う様子に、今のが失言だったと気づいた。
それは暗に脱げと言っているのと変わらない。その言葉が意味することぐらい、この子ぐらいの年齢になれば察しはつくだろう。また変態と罵られるのだろうか。
それだけならいいが、もしも嫌いだなんて言われたら―――
「脱げるけど……脱いだら、もふもふじゃなくなるよ?」
思わず、耳を疑った。
もふもふが好きなのにいいの? なんて、健気に問われる。脱がされることには抵抗はないのだろうか。
それとも、リティスも私に触れられることを望んでくれているのだろうか。
「もふもふよりも、お前の肌に直接触れたい」
「―――っ、え、でも、それじゃ」
「お前は何か勘違いしている。私は確かにお前のもふもふが好きだが、それ以上に……お前に直接触れたいんだ。リティス」
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