【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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03 幹部マッド・ビィは危険人物?

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「…………やらかした」

 目を覚ましたおれは、見知らぬ天井を呆然と見上げてきた。
 自分がどうしてこんなところで寝ているのか、できることなら忘れてしまっていたかったけど……残念なことに記憶は全部残っていた。
 入団式の最中に魔力を漏らしたあげく、その場で気を失うなんて最低最悪だ。

「父さんと母さん、何も言われてないといいけど……」

 こういうのは、両親と同じところで働く弊害かもしれない。
 迷惑がかかってないといいんだけど。

「ここは医務室……かな?」

 薬品類の独特な香りがする。
 医務室っていうと前世では決まって白い部屋だったけど、この部屋は壁も天井もベッドもすべてが真っ黒だった。
 さすがは悪の組織の医務室ってことかな。

「おや? 気がついたみたいだね」

 ベッドを仕切るパーテーションの向こうから、聞いたことのない声がした。
 ひょっこりと顔を覗かせた男性にも見覚えはない。

「あ……もしかして先生、ですか?」

 白衣は着ていないけど、どことなく医療関係者に見えたのは、腰に薬瓶をいくつもぶら下げていたせいかな。
 どことなく怪しげな雰囲気なのは気になるけど。

「いひっ。いいねー、その呼び方。ここではマッド・ビィって呼ばれることがほとんどだけど、君には〈先生〉って呼んでもらおうかな」
「マッド・ビィ……?」

 個性的な笑い方をする、その人の名前には聞き覚えがあった。
 この名前を口にしていたのは父さんだ。
 確か……組織の中には、かなり頭のおかしい研究ばかりをしている幹部がいるって。その名前がマッド・ビィ。そう言っていたはずだ。

 ――まさか、この人が?

 おれは改めて、ベッド脇に立つ人を見た。
 背はひょろっと高くて、手足が長い。黒と白のまだら模様の長髪に、光をあまり反射しない黒目がちな紺色の瞳が特徴的だった。
 これは複眼? たぶん、虫系の怪人だ。

 ――怪人ってことは、やっぱり幹部だよね?

「そんなにじろじろ見ないでよー。それにさっきより怯えてる? もしかして、ボクの名前を知ってたの? そんなに怖がらなくても、まだ何もしてないって」
「まだ、って」
「あと五分起きなかったら、キミの腹の中に何があるのか、切り開いてみようかと思ってただけだよ。残念だなー、いひひっ」

 冗談なのか、本気なのかわからない。
 顔立ちはとても綺麗なのに、気味の悪い笑い方のせいで、すごく不気味な人に見えた。

「冗談だってば。キミの面倒を見ろって頼まれてるんだから、そんなことしないよー。ほら、魔力不足はつらいでしょ? この薬を飲めば楽になるよ」

 マッド・ビィはにっこりと笑みを浮かべて、薬の入った小瓶をおれに差し出してきた。
 白く長い指は先がほんのり青く染まっている。
 何か実験の影響だろうか。

 ――これ、受け取って大丈夫? ……めちゃくちゃ怖いんだけど。

 身体を起こしたおれは、おそるおそる薬を受け取る。
 蓋を開けて、くんくんとまずは匂いを嗅いだ。

「う……ぐ」
「苦手な匂いだった? いい子だから、我慢して飲みな」

 そう言ってくる笑顔も怖い。
 鼻の奥をツンと鋭く刺すような香りは、お世辞にもいい匂いとはいえなかった。
 これを口に入れるのはかなり勇気がいるけど、幹部から差し出された薬を断るわけにはいかない。
 覚悟を決めて、口元で小瓶を傾ける。

「ぃあ……ッ?」

 舌先にビリッと痺れるような感覚が走った瞬間、なぜか手の中の小瓶が消えていた。

 ――え、なんで小瓶が浮いてるの?

 手を離れた小瓶は、おれのすぐ目の前に浮かんでいた。
 よく見ると小瓶の周りには真っ黒な触手が巻きついていて、それがおれの手から小瓶を奪ったんだとわかる。
 見慣れた父さんの触腕とは違う、細くしなやかなその触手は植物の蔓に似ていた。

「――変なものを飲ませるな」
「おや、お早いお戻りで。でも、間に合いませんでしたね。少し飲んじゃったみたいですよ」
「ん……ぐ、ぁ」

 初めて聞く声がしたけど、今はそっちに意識を向けている余裕はなかった。
 舌が焼けるように痛み始めたからだ。
 小瓶の中身が触れたところだった。
 口に入ったのはほんの少しの量だったのに、そこから焼けるような痛みがすごい勢いで広がってくる。

「あ、ぁああ――ッ!」

 痛みを誤魔化したくて、おれは自分の舌を爪で掻きむしっていた。
 でも、そんなことじゃ誤魔化せない。
 喉や頭のほうにまで痛みが広がり出して、気づけば涙が止まらなくなっていた。

「暴れるな。大人しくしろ」

 さっきも聞こえた知らない声が、今度はすぐ傍から聞こえた。
 涙で滲んだ視界では、その人の顔は確認できない。それに、顔まで広がり始めた痛みのせいで、すぐに目を開けていられなくなった。
 おれの顔はもう、涙と鼻水と唾液でもうべしょべしょだった。大人しくしろと言われても、この痛みの中、じっとなんてできない。
 おれはうーうー唸りながら、ベッドの上でのたうち回る。

「――ン、ぐッ!!」

 でも次の瞬間、突然動けなくなった。
 周りの空気が重しみたいになって、おれの身体をベッドに押しつけたからだ。

 ――この……魔力圧プレッシャーって。
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