【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

文字の大きさ
4 / 111

04 おれを助けてくれたのは

しおりを挟む

 このプレッシャーをおれは知っていた。
 少し前、同じように身体の自由を奪われたことを思い出す。

「舌を噛むなよ」

 ――それに……この、声。

「――ん、ぁあッ」

 あと少しでその人の正体がわかりそうだったのに、思考は胸の上に置かれた手によって邪魔された。 
 触れた場所から何かが流れ込んで、おれの体内を駆け巡っていく。
 これは――魔力?

「あ、あ……っ、嫌……ッ」

 他人に魔力を流し込まれるのは初めてじゃない。
 魔力の使い方は、小さい頃に親がこうやって教えるものだからだ。
 でも、両親以外の魔力を身体で受けるのは初めてだった。
 嫌だ。怖い。何、これ。
 他人の魔力がこんなにも不快なものだったなんて。

「抵抗するな」
「……ひ、ぅ……ッや、だ……っ」

 流し込まれた魔力が、身体の中にいる得体の知れない恐ろしい何かと反応していた。
 魔力を食らったそれが、急速に膨れ上がっていくのを感じる。その恐ろしいものに、自分が飲み込まれてしまう――そんな本能的な恐怖がおれを襲った。
 これに負けたら、自分というものを強制的に塗り替えられてしまう。
 自分が、いなくなる。

「やめ……嫌だ……!!」

 おれは抵抗するのに必死で、今自分に触れているのが誰かなんて考えられなくなっていた。

「飲ませた薬、ただの魔力回復薬ではないな」
「いひっ、バレちゃいましたか? この子がさっき飲んだのは人体改造薬の試作品。力が発現しなかった出来損ないを、無理やり怪人化させる薬ですよ」
「完成したとは聞いていない」
「試作品と言ったではないですか。まだ試験段階です。だから、こうして人体で実験する必要がある――まあ、これは失敗のようですが」
「――もういい。立ち去れ」
「わかりました。では」

 二人が話している内容を、おれはほとんど理解できなかった。
 ただわかるのは、自分の死が近いということだ。
 肉体的な死か、精神的な死かはわからなかったけど、自分の終わりが近いことを不思議と自覚していた。

 ――おれ……また・・、わからないまま死ぬんだ。
 
 どうして、そう思ったのかはわからない。
 これも魂に刻まれた記憶だろうか。

 ――あんなに苦しくて、怖かったのに……死ぬ直前って、急に静かになるんだ。

 もう、すべての感覚が遠かった。
 一つだけわかるのは、まだ誰かの手が自分の胸に触れているということだけ。

 ――そこだけ、あったかい。

 さっきは、そこから流し込まれるものが怖くて仕方なかった。
 だけど、今は違う。
 そこが最後の繋がりのように思える。
 身体はどこも動かせなかったけど、もし動かせるなら、その手に自分からも触れてみたかった。

「――失敗ではないかもしれん」

 全部の感覚が遠かったはずなのに、その声はやけにはっきり聞こえた。

「腹に力を集めろ。生き延びたければな」

 ――お腹に、力を……?

 導く声の主は、たぶんおれに触れている人だ。
 そこが胸だから、腹はその少し下。
 もう自分の身体すら自覚できないおれにとって、その手が発する熱だけが頼りだった。

 ――っ。

 意識した腹のあたりに、トクンと小さな鼓動を感じた。
 それは少しずつ大きく、しっかりとした鼓動へと成長していく。その鼓動を感じる場所から、じんわりと熱が生まれて、広がっていく。

「……ん、ぅ」
「意識が戻ったか。そのまま力の流し方を覚えろ。あの薬で道はできたはずだ」

 ――力の流し方……? 道って?

 少しずつ、意識がはっきりしてくる。
 まだ身体は動かせなかったし、目も開けられなかったけど、自分の身体がどこにあるのかは自覚できるようになった。

「今ならいけるか?」
「ん……ぁ、待って。これ」

 胸に触れた手から、また魔力が流れ込んでくる。
 でも、その感覚はさっきと全然違った。
 中にあった、得体の知れない存在がなくなっている。
 流れ込んでくる魔力が、まるで自分のもののように身体の中を巡り始めた。
 気持ち悪さもない。それどころか――

「や、ぁ……っん、ぁああッ」

 気持ちよすぎて、おかしくなりそうだった。
 自由に動かせないはずの身体が、快感に操られるみたいに反応してビクビクと震える。
 高くて甘えるような声が勝手に押し出される。

「ぁッ、待って、だめ……」

 気持ちよさの向こうに、何か違う感覚もあった。
 それがすごくいけないもののように感じる。

「駄目ではない。解放しろ」
「ン、んん――ッ」

 全く抵抗できない。
 その感覚はどんどん強くなる。

「ひ、ぁ……や、やだ。なんか、出る」
「出せ」
「だめ、これ……出ちゃ、やだ」

 自分の内側から何かが出そうなのがわかった。
 ちょうどヘソのあたりだ。
 皮膚の下がぞわぞわと蠢いている。そこを突き破って、何かが生えそうだ。

「待って、こわい……怖いから」
「仕方ない。我に掴まることを許してやる」

 身体を押さえつけていたプレッシャーから解放される。まだ身体はかなり重いけど、自分の意思で動かせるようになった。
 おれは何も考えずに、目の前の誰かに抱きついていた。

 硬い感触だった。
 鎧? 違う。これは怪人の外殻だ。
 硬いのに、触れたところから相手の鼓動とほのかなあたたかさを感じる。
 それが気持ちを落ち着けてくれた。

「あ、出る……ん、やァああああ――ッ!!」

 ずるっ、と何かが出る。痛みはなかった。
 けど、何かが出ていった衝撃のせいで全身の痙攣が止まらない。身体の力が抜き方がわからなくて、おれは目の前の誰かに、ぎゅっと力いっぱいしがみついていた。

 ――ん……はぁ、落ち着いてきたっぽい。

 しばらくして、ようやく身体の震えが収まった。
 腕の力を緩めて、密着していた身体を離す。
 腫れぼったく感じる目元をぐいっと拭うと、重い瞼をこじ開けた。
 自分の目に映ったものが信じれなくて、無言のまま、何度も目を瞬かせる。

「え……………首領、様? う、ぇえええッ!!?」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。  ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

学園一のスパダリが義兄兼恋人になりました

すいかちゃん
BL
母親の再婚により、名門リーディア家の一員となったユウト。憧れの先輩・セージュが義兄となり喜ぶ。だが、セージュの態度は冷たくて「兄弟になりたくなかった」とまで言われてしまう。おまけに、そんなセージュの部屋で暮らす事になり…。 第二話「兄と呼べない理由」 セージュがなぜユウトに冷たい態度をとるのかがここで明かされます。 第三話「恋人として」は、9月1日(月)の更新となります。 躊躇いながらもセージュの恋人になったユウト。触れられたりキスされるとドキドキしてしまい…。 そして、セージュはユウトに恋をした日を回想します。 第四話「誘惑」 セージュと親しいセシリアという少女の存在がユウトの心をざわつかせます。 愛される自信が持てないユウトを、セージュは洗面所で…。 第五話「月夜の口づけ」 セレストア祭の夜。ユウトはある人物からセージュとの恋を反対され…という話です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

処理中です...