【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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05 これって不敬罪待ったなし!?

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「暴れるな。落ちるぞ」
「はわ、わ……っ」

 ――え、え、え、え? 何、どういうこと、これ。

 何が起こっているのか理解できない。
 目の前に首領様がいる……っていうか、おれが抱きついていたのは首領様だった???

「申し訳ございま……ぅわッ!!」

 慌てて身体を離そうとしたけど、結構不安定な体勢だったらしい。バランスを崩して転げ落ちそうになる。
 床への転落を回避した結果、おれはもう一度首領様の身体に、ぎゅっと抱きついてしまう格好になった。

「あ、あわわわ……申し訳ございませんっ、え、と……おれ」
「落ち着け」

 首領様は冷静そのものだった。
 パニックを通り越して放心状態になったおれをベッドに座らせると、おれがしがみついたせいで乱れたマントの襟元を直している。
 そんな仕草にも見惚れてしまいそうになったけど、そんな場合じゃないことにすぐに気づいて、おれは慌ててベッドから飛び降りた。
 首領様の足もとで土下座し、床に額を擦りつける。

 ――謝らなきゃ……!! いや、でもこういうのって、おれから勝手に喋っちゃだめなんだっけ。

 許可なく話すのは不敬になってしまうはず。

 ――でももう、それ以上のことしちゃってるって。完全に手遅れじゃん……うう、やばい。

 よりにもよって、首領様にあんなにぎゅっと抱きついてしまうなんて――いや、強さの問題じゃないか。
 それ以外にもいろいろやらかしてしまった気がするけど、首領様の身体のあちこちに触れてしまった衝撃で、記憶のほとんどは吹き飛んでしまっていた。

「身体に異変は?」

 首領様から話しかけられて、びっくりした。
 でもまだ顔を上げる勇気は出なくて、おれは床とキスしそうな距離のまま、首をぶんぶんと横に振る。問題ないっていう意思表示のつもりだけど、ちゃんと伝わったかな。

「不敬を咎める気はない。顔を上げよ」

 ――……本当、に?

 首領様の命令は無視はできない。
 おれは、おそるおそる顔を上げた。
 首領様はおれがさっきまで寝ていたベッドに腰を下ろしていた。医務室の簡易ベッドなのに、すごく絵になるのはどういうことだろう。
 さすがに顔は見れないので、おれは首領様のたくましい胸のあたりで視線を彷徨わせた。

 ――首領様、鎧じゃなくて外殻だったんだ。触ったら少しあったかくて、鼓動も伝わってきたもんな。びっくりした……父さんも母さんも外殻持ちの怪人じゃないから、外殻に実際に触ったのも初めてだし。

 外殻というのは、怪人の身体を覆う硬い殻だ。
 まるで鎧のような見た目だけど実際は身体の一部なので、形状は自在に変化させることができる。

 ――ってことは、頭に被ってるのも外殻なのかな。一瞬見ただけだけど、痺れるくらいかっこよかった。

 今も少し顔を上げれば見えるんだけど、さすがにこの距離で首領様のご尊顔を拝むのは無理だ。
 たぶん心臓が持たない。絶対に弾け飛ぶ。死んじゃう。

「それで――身体に異変はないのか?」
「あ、ありませんっ!」
「これまでなかったものが生えたようだが、それも問題はないのか?」
「え、生えたって…………ぅえッ、なんだこれぇ!?」

 指摘されるまで、気づいていなかった。
 自分の腹からにょろっと生えている、淡いピンク色の物体に。

「これって……触腕?」

 生えていたのは吸盤つきの触腕だった。
 父さんの触腕とそっくりだ。
 おれの触腕のほうが色が薄くて、なんだか柔らかそうな見た目をしていたけど、それは見紛うことなき触腕だった。

「怪人の力が……おれにも、あったってことですか?」

 どんなに頑張っても発現しなかったのに、おれにも怪人になれる特殊能力があったってこと?

「マッド・ビィの薬の影響かもしれん」
「え……薬?」
「詳しい話は後だ――お前、名は?」

 首領様の質問に、おれはハッとして姿勢を正す。
 右手の拳を握って、左胸に当てた。ダーヴァロード式の敬礼だ。

「ダーヴァロード幹部オクトスとアラネアの子、バンと申します」

 こういう名乗り方でよかったよね?
 組織入団前の研修でちゃんと習ったはずなのに、いざ使う場面になったら頭は真っ白だった。

「そうか。あの二人の……どちらともあまり似ていないな」

 それは、おれもよく思うことだった。
 父さんは筋肉隆々のいかにも肉体派って雰囲気だ。
 短く切り揃えた金髪が似合う褐色肌のいかつい見た目をしている。まあ、母さんには勝てないけど。
 母さんは幹部の中でも美人で有名だ。
 ちょっときつめの顔立ちだけどそれが人気らしくて、父さんと結婚する前は『踏まれたい』って志願する下っ端戦闘員が後をたたなかったらしい。そいつらは全員もれなく、父さんが教育し直したって言ってたけど。
 おれは、そんな二人とあまり似ていなかった。

 髪の色は父さんと似た金髪で、目の色は母さんと同じ紫色だったけど、二人から受け継いだのはたぶんそれくらい。
 背は平均より小さいうえに体型はひょろっと頼りない。顔も不細工ではないけど、特別美人というわけではなかった。

「だが、力は受け継いだようだな。触腕の使い方はオクトスに習え」
「はい!!」

 声が上擦る。
 仕方ないじゃん。憧れの首領様にそんな言葉をかけてもらえるなんて、嬉しくて興奮するに決まっている。
 もし犬なら、絶対におしっこを漏らしてる。

 ――でも、生えた触腕は一本だけかぁ。父さんは八本あるのに……これって後から増えたりするのかな? それとも、ずっと一本のまま? だとしたら残念すぎる。

 おれは生えたての触腕を見下ろした。
 支給されたばかりの制服を突き破って生えた触腕は太さと長さこそ立派だけど、本数が明らかに足りない。
 父さんと同じ八本は難しくても、せめて半分の四本くらい生えてくれたらよかったのに。もしくは母さんのように腕が増えてくれてもいいけど……そっちは期待できない気がする。

「そういえば……あっ」

 無意識に口から出てしまった言葉を慌てて止める。
 首領様の前だっていうのに、どうして気を抜いてるんだよ、おれ。

「何か疑問か?」
「いえ……」
「話せ」
「…………あ、その……こんな中途半端でも、怪人の力が発現したってことになるんでしょうか?」

 首領様に聞くようなことじゃないのはわかっている。
 でも、せっかく話せって言ってくれたのに、なんでもないって誤魔化すのは違う気がするし……どうするのが正解だったんだろう。
 いろいろ考えすぎて、頭がパンクしそうだった。

「バン――我の前に立て」
「はいッ!!」

 首領様がおれの名前を呼んだ。
 そんな夢みたいなことが起こるなんて。
 おれは慌てて立ち上がると、首領様の前でビシッと直立する。
 あ、もしかしてここでも敬礼ってしたほうがよかったのかな。

「触れるぞ」
「……っ」

 まだうまく操れないおれの触腕を、首領様の黒く大きな手が掴んだ。
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