【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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28 これが首領様デザイン……

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「しゅ、首領様……何を……」

 おれが聞いた何かが割れる音――それは、首領様の外殻が割れた音だった。割れたっていうか、折れた?
 折ったのは、首領様本人だ。
 二本の指で仮面の外殻の一部をつまんで、へし折ったらしい。

 ――首領様の至高で完成された美の極致である、外殻に傷が……。

 折れたのは仮面の右側部にある、捻じ曲がったつのの先端部分だった。表面に精緻な模様がびっしりと刻まれた、それだけでも芸術品のような角だったのに。

 ――それを、折っちゃうなんて……どうして?

 別に自分がしたわけでもなければ、痛みがあったわけでもないのに、さぁっと全身の血の気が引いていくのがわかった。

「バン、近くへ来い」
「……はい」

 放心状態のまま、ふらふらと首領様に近づく。
 傷のついてしまった仮面を直視できる気がしなくて、おれは視線を足もとに向けていた。

「お前はすべて顔と態度に出るな。こんなものは傷にも入らぬ」
「え……?」

 はっ、と顔を上げる。
 首領様の言葉は本当だった。
 折れたはずの角の先端が、何事もなかったように元通りになっている。さっきは折れてなくなっていた角の先端を呆然と見つめていたら、一歩ほど離れていた首領様との距離が急に縮まった。
 首領様から、おれのほうに近づいてきたのだ。

「飾るならここか」
「あ……」

 首領様の手が、おれの左の耳朶に触れる。
 その手にはさっき折った外殻の破片が握られていた。
 首領様は何かを確かめるように、おれの耳朶をふにふにとつまむ。くすぐったさに肩を震わせていると、突然その耳に痛みが走った。

「痛……っ」

 鋭い痛みのあと、じーんと耳全体が熱くなる。
 その熱が引かないうちに、ピキッ、ピキッ、と硬質な高い音が何度も耳のすぐ傍から聞こえた。いや……これ、鳴っているのはおれの耳そのもの?

「――よく似合っている」

 耳元で囁かれた首領様の声に、ぞくっと身体の奥が重く疼く。
 自分の状況がまるで把握できていなかったおれは、「ありがとうございます」と返すのが精一杯だった。



   ◆◆◆



 ホニベラ様の工房を訪ねたときは朝だったのに、気づけば夕方近くなっていた。
 体感としてはもっと長い時間ここにいたような気がするけど、あの特殊な環境がそんなふうに認識させただけだったらしい。

 ――なんか……すごかったな。

 第二の皮膚――被膜に覆われる感覚もやばかったけど、何よりも、あの部屋で首領様にされたことが一番インパクトに残っていた。

「この制服……首領様が作ってくれたんだよな……」

 廊下で足を止めたおれは、鏡のように磨かれた黒い壁に映った自分の姿を眺める。
 下っ端戦闘員タイツより、ぴたっと身体に密着した制服は着ているというより包まれている感覚だった。
 素材の厚みはこちらのほうがあるのに、肌と完全に密着しているからか、身体のラインはこの制服のほうが目立つ気がする。

「……えっちすぎない? これ」

 レクセやツィーガが着ていた制服も、こんなにぴっちりしてたっけ。
 他人が着ているのを見るのと、自分が着てみたものを見るのとでは感覚が少し違うのかもしれないけど……でも、皆のはここまでエロく見えなかった気がする。

「おれの身体が貧弱すぎるせい? ……ちょっと筋肉つけたほうがいいかも」

 筋肉という自家製の鎧を纏っていれば、ここまで身体のラインがくっきり出ていても、そこまでエロさは感じないのかもしれない。
 父さんレベルの筋肉は無理だとしても、レクセくらいのレベルなら……ううん。おれには無理かな。

「でも、こういうのは筋肉のラインが出てるほうが絶対にかっこいいもんなぁ……」

 そんな独り言を呟きながら、いろんな角度から自分の身体を眺める。
 おれの制服は、上は長袖、下はショートパンツのつなぎ・・・がベースだった。色は黒基調で、差し色に深い青色が使われている。

「これってシディア様の色、かな?」

 首領様はおれの上司が誰なのかちゃんと把握して、このデザインにしてくれたのだろうか。差し色は肩から袖にかけてと前身頃の体側部分に使われていた。
 首もとはハイネックで、上半身の露出はほとんどない……ないんだけど。

「ここが透けてるのは……なんか、うん」

 胸筋の下からへそ下十センチくらいまで、素肌が透けて見えていた。下に重心がある菱形っていうのかな。そんな形にくり抜かれている。
 ちなみに肌は露出していないし、完全に透けているわけでもない。半透明の素材で一応は覆われているんだけど、臍の形がはっきり見えるくらいの結構な透明感だった。

「見えちゃだめなところは、ちゃんと隠れてるけどさぁ……」

 一応、露出魔にはなってないはず。
 ちなみに、背面側にも同じように透けている箇所があった。こっちは真ん中じゃなくて側面だ。
 腰の位置からショートパンツの裾のところまで、親指の長さくらいの幅だけど肌が見えるようになっていた。

「横だけど、お尻が見えちゃってるってどうなの……ここお尻だよね?」

 なんだか、よくわからなくなってきた。
 他にこんなデザインの制服を着た幹部候補生がいただろうか……いなかった気がする。
 候補生候補だから、こんなデザインってことはないよね。さすがに。

「そういえば、このブーツも被膜でできてるんだっけ」

 足もとはニーハイブーツと呼ばれる、膝上まで筒の長さがあるブーツだった。被膜が変化したものとは思えない、ちゃんと靴底のあるしっかりとしたブーツだ。
 こっちも、ぴちっと肌に張りついている。

「……これって脱ぐときはどうするんだろ」

 ふと浮かんだ疑問に首を傾げていたときだった。

「あれ? バンくん。ここで何してるの?」

 廊下の向こうから、声をかけてきたのはツィーガだった。
 ツィーガは一人ではなく、後ろに三人、誰かを連れている。黒い枷と鎖で繋がれたその人たちは、どう見ても組織の関係者とは思えなかった。
 周りが見えないように、頭にすっぽりマスクを被せられた人たちは、ツィーガの後ろで怯えたように震えている。

「その人たちって、もしかして……人間?」
「そうだよ、うちの隊で捕まえた人間。地下に連れていくところなんだ」

 ツィーガはいつもと変わらない笑顔で答えた。
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