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27 うっかり喘ぎにご用心
しおりを挟む――え、え……ちょっと、『目に映しておけ』ってどういう命令!? 目を逸らすなって意味? それとも、まばたきもしちゃだめってこと?
おれは完全にパニック状態だった。
それでも跪いた姿勢のまま、首領様のご尊顔を目に映し続ける。
腕を伸ばせば指先が当たりそうな距離に、首領様の顔がある。前に一度触れたことのある、形のいい唇に視線を奪われていると、唇の端がわずかに上がったのに気がついた。
「理解の難しい感情のようだ」
「っ!!」
首領様の指が、おれの顎先に触れる。
仮面に隠された目元は全く見えないのに、首領様がおれを見つめて来る視線の気配を痛いくらい感じていた。
「立て」
「……! んぁっ」
命令に従って立ち上がろうとしたおれは、誤魔化しようのないくらい、はっきりと喘いでしまった。
自分の腕が脇腹に擦れたせいだ。
目覚めてすぐよりはかなり落ち着いていたけど、それでもおれの肌はまだ敏感な状態が続いていたらしい。
――……恥ずかしい。
穴があったら入りたいって、こういう状況のことを言うんだろうな。羞恥で顔が熱くなる。
それでもなんとか立ち上がって、首領様に敬礼した。
本当なら拳を胸にくっつけないといけないんだけど、今そんなことをしたらまた変な声が出ちゃう気がするので、ギリギリ触れない位置で拳を留めておく。
「被膜がまだ完全には馴染んでおらんのか」
「……被膜?」
「これのことだ」
「ぁあッ!」
首領様は敬礼するおれの拳を横へよけると、外殻に覆われた手をおれの胸へ押し当てた。
自分で触れたときとは比にならない強すぎる衝撃に襲われ、背中が勝手に反るくらい、身体がびくっと大きく跳ねる。
無意識に首領様の手を払いのけようとしたけど、振り回した腕は簡単に押さえつけられてしまった。
「あ……ぁあっ!」
「苦しいか? バン」
これ、苦しいのかな?
苦しいという感覚とは何かが違う気がする。
全身をびくびく痙攣させながら、首を横に振ると、首領様が「ほう」と興味深げに呟いた。
「お前はやはり、他の者とは違うようだ」
「……ッぁ、あ」
「苦しくないというなら、このまま耐えてみせよ」
首領様の触れているところから、魔力が流れ込んでくるのがわかった。
初めて首領様に触れられた日、医務室でされたのと同じだ。
身体の内側から熱く重い疼きがじわじわと広がってくる。それが淫靡な刺激になって自分に襲いかかることを、おれはあのときの経験で学んでいた。
――あ……あ、来る。
ただでさえ身体を覆う被膜のせいで身体は敏感な状態なのに、外側だけじゃなくて内側からもだなんて……耐えられるだろうか。
「ひっ、あぁ――ッ!」
巨大な快感の波にいきなり襲われ、叫んだ。
内側から、ぶわりと勢いよくあふれた強すぎる気持ちよさが熱に変化し、外に向かって広がっていく。
「ん、ぁああっ、……や、ぁっ!」
快楽の熱は、そのまま外に放出されるはずだったのに、肌を覆う被膜がそれを邪魔した。
被膜に跳ね返された熱が身体の中でぐるぐると渦を巻いている。逃げ場のない快感がおれを苛んだ。
身体が硬直と弛緩を繰り返し、びくっ、びくっ、と何度も強く跳ねる。
――もう……立ってられない。
かくん、と膝から力が抜けた。
その場に崩れ落ちそうになったおれの身体を支えてくれたのは、首領様だ。
「んッ、あ……っ、申し訳、ございません……っ」
首領様の腕にもたれかかりながら、おれは必死に謝罪した。
「この状態でも、まだ自我を保つとはな」
「? ぁあ……ぁ、ん、首領、さま……っ」
「なんだ、バン」
首領様がおれの呼びかけに応えてくれる。それだけで嬉しかった。その声で名前を呼んでもらえたことに多幸感が込み上げる。
限界を超えた気持ちよさが絶えず襲いかかるせいで、何を言おうとしたのかわからなくなってしまったけど、おれは蕩けて緩みきった笑みを首領様に向けていた。
「愛いな、お前は――では、そんなお前に似合う形にしてやろう」
信じられない言葉が聞こえた気がした。
聞き返したかったけど、そんな余裕は与えてもらえない。
「あ、あ……何……ン、やぁ……っ」
さっきまでの激しい気持ちよさが和らいだかと思えば、今度は全身を優しく愛撫されるような、じわじわと性感を高められる感覚に襲われた。
これはこれで、頭がおかしくなりそうだ。
いったい何をされているんだろう。
「ほら、見てみろ。バン」
首領様に誘導され、視線を自分の身体に向ける。
首領様の手が触れている胸の中央から、被膜の形が変化し始めているのに気がついた。
――さっき言ってた、おれに似合う形にするって……これのこと?
被膜がただの薄い膜から、制服の形へと変わっていく。
首の下からつま先まで全部の肌を覆っていた黒色の膜の一部は消え、また一部は厚みが増し、色も変化する。
気がつけば、レクセやツィーガが着ているような制服と似たシルエットのものが出来上がっていた。
「もう自分の力で立てるだろう」
「っ、あ……申し訳ございません」
変化が終わるのと同時に、身体の熱や疼きも収まっていた。
肌の感覚もいつも通りだ。
あちこち触ってみたけど、うっかり喘いでしまうようなことにはならない。
――よ、よかったぁ……。
ずっとあのままだったら、どうしようかと思った。
「あっ、首領様。ありがとうございました!」
――被膜がちゃんと定着したのって、首領様が手伝ってくれたおかげだよね?
なんか色々あった気もするけど、おれは首領様にお礼を言って頭を深々と下げる。頭を上げるタイミングに悩んでいると、パキッと何かが割れる高い音が上のほうから聞こえた。
音の正体が気になって、そっと顔と視線を上げて確認する。
「ちょ……ッ、ぇえ!?」
目の前の信じられない光景に、おれは中途半端にお辞儀した変な体勢のまま、悲鳴を上げていた。
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