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50 ギャップ萌えしてる場合じゃない
しおりを挟むシーツの中は思った以上に暗かった。
視覚がまるで役に立たないせいで、それ以外の感覚がいつもより鋭敏になる。
おれのことを後ろからすっぽり抱きしめるたくましい腕の手ざわりとか、背中に当たっている胸筋の弾力とか、逃げられないように絡められた脚の感触とか、あれこれ気になって仕方ない。
感覚が鋭くなっているのは、触覚だけじゃなかった。
シーツの中に充満する香りのせいで胸がきゅっと締めつけられたみたいになったり、相手の呼吸や心臓の音がやけに大きく聞こえて気になったり――視覚と味覚以外の感覚が刺激されすぎて、情緒が忙しかった。
「あの……シディア様」
後ろにいる人に、控えめに話しかける。
「なんだ。俺だと気づいていたのか」
「そりゃあ、わかりますよ」
気がつかないわけないじゃん。
部屋の雰囲気からしてそうだったし、おれがこの香りを間違えるはずがない。
――っておれ、シディア様の香りがわかるとか……ちょっと変態っぽい?
でも執務室で一緒にいる時間が多いんだから、わかるのは当然だと思う。
「……ところでシディア様、どうしてシーツに包まってたんですか?」
「別に……いつも寝起きはこうなっているだけだ」
――え、寝起きはいつもって……何それ、可愛いんだけど。
寝相が悪くて、勝手にこうなっちゃうってこと?
それとも眩しいのが苦手で、眠っているあいだにシーツの中に潜り込んじゃうってことなのかな。
どちらにしても可愛い。
見た目や雰囲気とのギャップがえぐすぎる。
――そっか。シディア様も寝起きだったんだ。
そっちも驚きだった。
でもおれ、なんで寝起きのシディア様のシーツに引きずり込まれて、後ろから抱きしめられてるんだろう。
あと……ずっと気になっていたんだけど。
「シディア様……服、着てなかったりします?」
「それはお前もだろう?」
――やっぱり! 裸だ!!
肌の感触からしてそうなんじゃないかとは思っていたけど、実際にそうだと肯定されると変に意識してしまう。
シディア様の裸は一緒にお風呂に入ったときにも見たけど、浴室と寝室じゃ、お互い裸でいる意味合いが大きく変わってくる気がするのは、おれだけ?
そう思ったけど聞くに聞けなくて、おれはシディア様の腕の中でふるふると身体を震わせながら悶える。
――あと、この腰に当たってる硬いものって……シディア様のあれ?
それが、どこよりも意識しちゃいけないものだっていうはわかっている。
でも、自分の身体に押し当てられている気がするそれを、おれは無視できなかった。だって気になっちゃうじゃん!
――寝起きだし、朝勃ち? やっぱり身体が大きいとあれも大きいんだ……って、何考えてんだよ。
考えないようにって思うほど考えちゃう。
同じものがついている男として、そこの立派さが気になるのは仕方ないと思う。
「バン、腰が揺れているぞ」
「……っ!!」
不意打ちに、えっちな声で囁くのはやめてください。
いや、えっちな声っていうのはおれの主観でしかないんだけど。
でも吐息混じりの甘い声って、誰が聞いてもえっちに聞こえると思うから、おれの感覚はおかしくない……はず。
「無視か?」
「ち、違います……別に無視したわけじゃ」
「ああ、すまない。期待していたのだな」
「期待って、何を――ひ、ぁ……ッ」
――え、待って。いつの間にそんなことになってたの?
人のものに気を取られている場合じゃなかった。
持ち主に無断で半勃ちになっていた中心をシディア様に掴まれ、おれはあられもない声を上げていた。
「だめです。擦っちゃ……んっ」
そこを他人の手で弄られるのは、初めての経験だった。
それがまさかシディア様の手だなんて。
高めるように刺激され、気持ちよさで勝手に腰が揺れてしまう。
「ん、ぅ……やッ」
快感がぞわぞわっと背筋を駆け抜けるたび、鼻にかかった高い声が勝手に漏れる。気持ちよさに喘ぎながらも、おれはいやいやと首を横に振った。
「どうして嫌がる」
「だっ、て……シディア様を、汚しちゃう」
「お前の身体は俺が手づから清めた。汚いところなんてない」
――そういう意味で言ったんじゃないです!
そう反論したかったけど、今はそんなことを言っている場合じゃなかった。
「ほら、こちらを向け」
腕の中で、ごろんと転がされる。
シディア様と向き合う体勢に変えられた。
「あの、さすがに……これは」
お互い裸でこの体勢はアウトだと思う。
シーツの中は相変わらず暗かったけど、目が慣れてきたのか、シディア様の身体のラインがしっかりと見えるようになっていた。
そのせいで、余計に目のやり場がない。
「バン、こちらを見ろ」
相変わらず、おれの身体はシディア様の命令に従順だった。
顔を上げ、シディア様の顔のあたりに視線を向ける。伏し目がちにおれを見るシディア様と、ばっちり目が合った。
――あ……シディア様の瞳、うっすら光ってる。
オーロラ色の瞳がほんわり発光していた。
おれの目にあるオーロラ色の輪っかも同じように光るのかな。そうだったらいいのに。
「ん……あ、ちょっと……ッ」
戯れはやめてくれたのかと思ったのに、中心への愛撫がいきなり再開される。
さっきよりも激しい手つきだった。
「や、ぁ……ッだめ、シディアさまっ」
「だめではなく、いいと言え」
――そんなこと言ったら、それはもうえっちになっちゃうのでは!?
「あ、あ……っ、ンっ」
たとえシディア様の命令でも、『いい』なんて、さすがに恥ずかしくて言えなかった。
決してよくないわけじゃないんだけど……だからこそ、羞恥心のほうが勝ってしまう。
「頑固だな。素直になればいいものを」
「……だ、って……ひ、ぁっ」
「では代わりに、手を貸せ」
「え…………ぁっ」
シディア様が濡れた手でおれの手を掴んで、自分のほうへ引き寄せる。
誘導されて握らされたのは、背中に触れていたときよりさらに立派に硬く勃ち上がった、シディア様の昂りだった。
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