【完結】悪の幹部の息子に転生しました 〜首領様がえっちすぎて直視できません〜

コオリ

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111 悪の首領の伴侶に転生しました!【END】

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 マッド・ビィとの戦闘から、あっという間に二か月が過ぎた。ずっと忙しくしていたせいで、時間の流れのほうがおかしくなっちゃったんじゃないかって思ったくらいだ。
 でもそんなすごい速度で過ぎていった二か月のあいだにも、いろんな出来事があった。

 まずは、おれの現在の住まいについて。
 正式にシディア様と同じ屋敷で暮らすことになった。
 少し前からシディア様とは一緒に暮らしているようなものだったけど、あれは流れでそうなっていただけだったから。
 部屋の荷物をシディア様の屋敷に運んで、イェスコル様に住所変更の手続きも済ませて――おれはシディア様と毎日、家でも一緒の時間を過ごせるようになった。
 ちなみに引っ越しの前、シディア様がおれの家族を屋敷に招待してくれた。
 前に家にお邪魔したときのお返しだって言って。
 その話を聞いたとき、父さんも母さんも口には出さなかったけど、全力で断りたい空気を醸し出していた。
 そりゃそうだよね。所属する組織の首領様の家にお呼ばれとか、普通に考えて嫌だと思う。

 次に、おれの階級について。
 ついに、幹部候補生候補から幹部候補生になった。
 っていっても、違いはよくわからないけど。訓練とか仕事の内容は全然変わらないし、シディア様の唯一の部下ってことも変わっていない。
 仕事といえば、最近はシディア様よりもガラディアーク様の執務室で働くことが多くなった。
 シディア様の執務室である暗黒書庫にも週に一、二回は足を運ぶけど、一時間もいないことがほとんどだ。そのうち、書庫の本たちが機嫌を損ねて読ませてくれなくなるんじゃないかって、おれはちょっとだけ心配している。

 あと小さい出来事なら、父さんと母さんが上級幹部になったり、レクセがイェスコル隊に正式に異動になったり、ラーギ先輩が怪人として認められて幹部候補生候補・・になったり、アカゾメさんが闇都ダークシティで暮らし始めたり――と、本当にいろいろあった。
 そしてこれからも、いろんな変化があるんじゃないかって思っている。
 そのきっかけになりそうな出来事は、もう始まっているし。



   ◆◆◆



「わあ……もうすでに懐かしい感じがする」

 おれは人間の世界に足を運んでいた。
 やってきたのは、おれが記憶喪失のときにお世話になった、災厄防衛中央局カラミティガードセントラルの本部だ。
 実はおれのことをきっかけに、ダーヴァロードと災厄防衛中央局に小さな繋がりが生まれていた。
 それでも、怪人と人間が敵対しているって構図に大きな変化はない。そんな簡単に変化が起こせるほど、怪人と人間のあいだにある溝は小さくも浅くもないからだ。
 でも、これから何か変化が起きるかもしれない。
 そんなふうに思ってしまうくらい、この出来事は大きな一歩だった。

「バンくん、いらっしゃい」
「アオナさん、お久しぶりです!」

 おれを出迎えてくれたのは、特務戦闘チームのブルーとして活躍しているアオナさんだ。
 あのときは前世の記憶もなかったからちゃんとわかっていなかったけど、アオナさんは戦隊ヒーローの一員ってことだよね。
 おれ、戦隊ヒーローではブラックを好きになることが一番多かったんだけど、二番目に好きになるのはブルーだった気がする。
 それより、悪役のほうが好きなのは言わずもがなだけど。

「元気そうで何よりだよ。連絡は取り合っていたけど、顔は見られていなかったからね。ところで、あの…………後ろの方を紹介してもらってもいいかな?」
「あっ、そうでした!」

 再会と戦隊ヒーローの登場にテンションが上がっていたせいで、最初にやるべきことが頭からすこんと抜け落ちていた。
 おれはくるっと後ろを向くと、後ろに立っていた人の腕を掴む。ついでにその人の顔を見たら、思わず口元が緩んでしまった。

「おれの上司のシディア様です!」
「バン。俺との関係はそれだけじゃないだろう?」
「え、と……その……おれの伴侶、旦那様でもあります……」

 まだ、この紹介をするのは慣れない。
 声は尻すぼみに小さくなってしまったけど、アオナさんにはちゃんと聞こえたみたいだった。
 盛大に照れてしまったおれに釣られたのか、アオナさんの顔もほんのり赤くなっている。手で口元を押さえていた。

「……その紹介も不十分な気がするけど」
「ん? アオナさん、何か言いましたか?」
「ううん、なんでもないよ――さて、こちらで預かっていたツィーガくんのことだったね。早速シロガネのところへ案内するよ」

 アオナさんはそう言うと、シロガネさんのところにおれたちを案内してくれた。




「バンくん……僕、君にはどう謝罪していいか」

 顔を合わせるなり、しゅんとした顔でそう言ったのはツィーガだ。
 ツィーガの洗脳は完全に解けていた。
 シロガネ先生があれこれ手を尽くしてくれたおかげだ。
 どうやって洗脳を解いたとか、難しい話はおれにはよくわからなかったけど、シディア様はちゃんと理解できたみたいだった。
 強いうえに頭もいいって、シディア様はやっぱり最強なのでは?

「これで、まだ洗脳されてる他の人たちも治せるってことですか?」

 ダーヴァロードの〈地下〉にはまだ、マッド・ビィに洗脳されたままの人たちが残っている。
 洗脳が解ける見込みのない人たちを『即刻処刑すべきだ』って声もあったけど、シディア様はそうしなかった。

「――ツィーガ・ラァ」
「はっ」
「罪を償いたいなら、シロガネの技術を学んでから戻ってこい。お前にはホニベラの下について、〈地下〉で働いてもらう」
「かしこまりました」

 ツィーガはシディア様の正体を知らないと思っていたけど、もしかしてそうじゃないのかな。
 マッド・ビィに洗脳されていたあいだの記憶もあるみたいだったし、シディア様がガラディアーク様と同一人物だってわかっているのかもしれない。

 ――っていうか、絶対わかってるよね。めちゃくちゃ震えてるし、涙目だし……レクセたちにぼこぼこにされてたときも思ったけど、ツィーガって可哀想すぎない?

 ツィーガには酷い目に遭わされたけど、今は同情の気持ちのほうが強かった。
 戻ってきたら優しくしてあげようかな。
 シディア様との話を終えたツィーガがおれのほうを見た。相変わらず眉を下げてつらそうな表情をしているので、おれは『大丈夫だよ』っていう気持ちを込めて笑顔で手を振る。
 ツィーガはくしゃりと顔を歪めると、震えた声で「ごめん」と繰り返しながら、大粒の涙をこぼした。



   ◆◆◆



「――おい、バン! お前どうしてこの格好……それに、なんでオレまで」

 おれはダーヴァロード本部の廊下を走っていた。
 後ろからおれに向かって苦情を叫んでいるのは、入団時からお世話になりっぱなしのラーギ先輩だ。

「初心忘るべからずってやつですよ! まあおれは、もう一回これが着てみたかっただけですけど」

 おれは久しぶりに、下っ端戦闘員時代に着ていた黒タイツを身につけていた。もちろんマスクも被る気なので、手にしっかり握っている。
 今は幹部候補生候補に昇級したラーギ先輩にも、今日だけ一緒に下っ端戦闘員の黒タイツを着てもらっていた。

「意味わかんねーよ!」

 そう言いながらも、付き合ってくれるラーギ先輩は優しすぎる。

「っつーか、今日はこんなふざけていい式典じゃねーだろ。お前わかってんのか?」
「イェスコル様に確認したら『大丈夫』って言ってましたよ――と、もう皆集まってるみたい」

 到着したのは大講堂――入団式を行ったのと同じ場所だった。
 今日はここでちょっとした式典が行われる。
 ようやく少し落ち着いてきたので、ガラディアーク様から労いの言葉をいただけるというのだ。

 ――そんなの戦闘員側で聞いたほうが、絶対いいに決まってるじゃん!

 ということで、今日はこっそり下っ端戦闘員として参加することにしたのだ。
 少しだけ開いた扉の隙間から中を覗いたおれは、ずらっと並んだダーヴァロード戦闘員の後ろ姿に、ほぉっと感嘆の溜め息をつく。これは圧巻すぎる。

「幹部以上の人たちはまだ来てないみたいですね。おれたちも並びますよ!」
「ちょっ、バン……ッ! くそ……まじかよ」

 頭にすっぽりマスクを被って、いそいそと下っ端戦闘員の列に混ざる。
 ラーギ先輩は最後まで文句を言っていたけど、おれを止めるのは無理だと察したのか、自分もマスクを被っておれの隣に並んだ。
 すぐに幹部以上の人たちも入ってきた。
 最前列には幹部、壇上には上級幹部がそれぞれ並んでいる。当たり前だけど、その中にシディア様の姿はない。

 ――首領様の玉座、やっぱり何回見てもぞくぞくする……かっこよすぎ。

 壇上中央にあるからの玉座を一度目に映したら、縫いつけられたみたいに視線が動かせなくなった。
 身体の内側から込み上げる甘い疼きにそわそわしながら、玉座の禍々しく美しい造形を隅々まで目に焼きつける。
 はぁ、と熱い息を吐き出したときだった。

 ――あ……来る。

 敬礼の号令代わりに放たれる魔力圧プレッシャー
 まだ本人の姿は見えないのに、大講堂に並ぶ戦闘員全員を一瞬で跪かせるほどの桁外れの魔力圧だった。
 おれはこの魔力圧に慣れているから平気だけど、下っ端戦闘員の中で一人だけ立っていては目立つので、皆と同じタイミングで跪く。
 それでもこっそり、視線は玉座に向けていた。

 ――あのときも、こんなふうに覗き見してたっけ。

 玉座前の空間に闇色の魔力が滲み出す。
 それはじわじわと満ちて、人の影のように変化した。
 輪郭がはっきりすると、おれの待ちわびていた人の姿になる。

 ――わざわいが人の形になったら、こんな感じなのかな。

 空間を圧し潰すような闇の気配から感じるのは、畏怖ではなくて崇拝だ。
 きっと、ここにいる全員がそう感じていると思う。
 怖いはずなのに美しくて、残酷であるはずなのに気高い。

 ――ガラディアーク様……あんなすごい人が、おれの伴侶だなんて。

 とても誇らしくて、興奮する。
 全身の熱が高まっていた。同時にお腹の奥が重く疼くのは、おれの身体がガラディアーク様を求めているからだ。
 壇上ではイェスコル様が話していたけど、内容は何も入ってこなかった。

 ――ガラディアーク様に触れたいな。

 そんな考えが頭をよぎった瞬間、玉座に座るガラディアーク様の意識がこちらを向いたのがわかった。
 仮面で目元が隠れていても、おれを見ているのがわかる。
 それくらい突き刺さるような視線だった。

 ――今日、おれが下っ端戦闘員に混ざっているのは内緒だったなのに……どうしてわかったんだろ?

 ガラディアーク様が手を動かした。
 上に向けた手のひらに魔力が集まっていく。
 その魔力は闇の帯のような形に変化すると、ふわふわと揺れながら、おれのいるほうへと伸びてきた。

 ――え、え……これって、まさか。

 手を伸ばせば届く距離に、ガラディアーク様の魔力がある。
 おれは一瞬も迷うことなく、その魔力に触れた。
 触れた場所から、ガラディアーク様の魔力に自分の魔力を絡めていく。

「……わ――ッ」

 急に動いた魔力の帯が、おれの腰に巻きついた。
 身体がふわりと浮かび上がったかと思えば、次の瞬間には、玉座に座るガラディアーク様の腕の中だった。
 呆然とガラディアーク様のご尊顔を見つめていたら、勢いよくマスクを脱がされる。
 ぽかんと気の抜けた素顔がばっちり晒されてしまった。

「――求婚成立だな」

 ガラディアーク様はそう言うと、大講堂全体を支配する魔力圧をさらに強める。
 幹部まで膝をついてしまうほどの魔力圧だ。
 下っ端戦闘員の中には気絶してしまっている人もいる。
 
 ――もしかして、誰も見るなってことかな……? っていうか、さっきのってやっぱり求婚だったんだ。

 闇都で一番人気の求婚方法は、『自分の魔力を相手に差し出して、相手がそれに魔力を絡めてくれたら求婚成立』というものだ。
 おれが入団式の日に、ガラディアーク様相手にうっかりやらかしてしまった行為でもある。

 ――これが、あのときの返事ってこと?

 そうなんだとしたら嬉しすぎる。
 胸がぎゅーっとなって、いてもたってもいられなくなった。
 おれはガラディアーク様の身体にくっつきつつ、たくましい首の後ろに腕を回す。
 そのまま、ガラディアーク様の頬に口づけた。

「あら……」
「おい、バン……さすがにそれは」
「おやおや、お熱いですね」

 母さん、父さん、イェスコル様の声が続けて聞こえて、おれははっと後ろを振り返る。
 そこには気まずそうな両親と穏やかに笑うイェスコル様、視線を逸らす他の上級幹部の姿があった。
 どうやら、ガラディアーク様の魔力圧に耐えられる上級幹部の人たちに、この光景をずっと見られていたらしい。

「ガラディアーク様……気づいてましたよね?」
「さあな」

 ガラディアーク様はそう言って笑うと、顔を近づけ、おれの唇に軽く牙を立てる。

「この程度のことで動揺するな。お前は我の伴侶なのだから、隣で堂々としていればいい――わかったな?」
「っ……はい。ガラディアーク様」

 そう話す姿があまりに神々しくて、息をするのも忘れそうになった。
 おれはガラディアーク様の言葉に頷いてから、大講堂内に並んで跪く戦闘員のほうへ視線を向ける。

 ――この頂点に立つガラディアーク様を、おれが隣で支えるんだ。

 決意を新たにしてガラディアーク様のほうを向き直る。
 腕の中に抱かれたまま、ガラディアーク様の顔をまっすぐ見つめた。

「――バン・クラードゥは、ガラディアーク・シン・ダーヴァロード様に一生の忠誠を捧げ、愛することを誓います!!」

 大講堂内に響き渡る声で宣誓した。
 堂々と隣にいるなら、これくらいしなきゃいけないよね?
 笑われるかと思ったのに、ガラディアーク様は黙っておれを見ているだけだった。
 しばらくして口元を緩めたかと思えば、おれの耳元に唇を寄せる。

「我も誓おう。バン・クラードゥ、お前にすべてを捧げ、一生涯愛し続けると――」

 言葉の意味を理解するのに数秒かかった。
 理解した瞬間、ぶわわっと勢いよく涙があふれる。
 ガラディアーク様に誓いを交わしてもらえるなんて、感動せずにいられるわけがなかった。


 最初はただの憧れだった。
 それと前世から引き継いだ少々変わった性癖――おれが持っていたのは、それだけだった。
 でもそのおかげで、とんでもない出会いを果たした。
 自分の一生を捧げて、愛したいと思える人に巡り会えたのだ。

「バン――」

 おれの名前を呼んだガラディアーク様が、ゆっくりと顔を近づけてくる。
 吐息が触れて、胸が震えた。
 いつもは奪うような激しさなのに、大事に包み込むような口づけに、涙は止まりそうにない。

 ガラディアーク様と玉座で交わした誓いの口づけは、冷たくてしょっぱい――でもすごくあったかくて甘い気持ちになれる、幸せな口づけだった。








「悪の幹部の息子に転生しました」End.



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感想 5

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みんなの感想(5件)

かさかさスライム

完結済という圧倒的安心感*ˊᵕˋ*続きが楽しみでございます

2025.09.25 コオリ

最後まで毎日休みなく更新するので、楽しんでいただけると嬉しいです!

解除
黒ツナ
2025.09.23 黒ツナ

毎日更新ありがとうございます。

バンくんがとにかく可愛いです(。-∀-)にや♡

応援してます♪

2025.09.25 コオリ

完結済なので、最後までぜひお付き合いください!!✨

解除
黒ツナ
2025.09.23 黒ツナ

毎日更新ありがとうございます。

最初の読み始め世界観が(私的に)アニメの戦隊大失格になんか似てるなぁも思いいつつ

バンくんがとにかく可愛いです(。-∀-)♡

応援してます♪

2025.09.25 コオリ

ありがとうございます!!
バンの可愛さを愛でてやってください😊

解除

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