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65 もっと、深いところで **
しおりを挟む紫紺が魔力の流れを調整してくれたおかげで、手足が動かせるようになった。
新しい身体だが、違和感はもうほとんどない。
それどころか、前の身体との違いがアロイヴにはわからなかった。
「紫紺……重くない?」
「全然。軽すぎるぐらいだよ」
寝転がったままは嫌だったので身体を起こすと、紫紺の太腿の上に座らされた。
向かい合うような体勢は恥ずかしい。
自分だけが裸だというのも、落ち着かない理由の一つだ。
「紫紺は……脱がないの?」
口に出してから、恥ずかしいことを聞いてしまったのに気づく。
下を向いて誤魔化そうとしたのに、紫紺の長い指が先にアロイヴの顎を捕らえた。くいっと持ち上げられ、顔を至近距離から覗き込まれる。
「恥ずかしがってて可愛い」
「だって……ん」
唇が重なった。
軽く触れ合わせるだけのキスだ。
すぐに離れていった紫紺の唇を、無意識に目で追ってしまう。でもすぐに、別のものに視線を奪われることになった。
「わ……」
紫紺が魔法で服を消したせいだ。
脱いだところを見るのはこれが初めてではないのに、彫刻のように整った体躯から目が離せない。
ぽかんと口を開いたまま、呆然と見つめていると、ふっと笑みを浮かべた紫紺に手首を掴まれた。
「な……っ」
ぐっ、と引き寄せられる。
鍛えられた胸筋に触れるように手を誘導される。
「……あっ」
少し触れただけの手のひらから、ぴりっと甘い痺れが走った。
ひくん、と腰が震えてしまう。
「イヴが感じちゃった?」
「さっき、紫紺がたくさん舐めたりしたから……」
腕を動かせるようにするときに、紫紺に指を舐められた。そのせいで指だけでなく、手のひらまで性感帯のようになってしまったようだ。
紫紺の身体に触れるだけで、気持ちよくてたまらない。
「……ふ、ぁ」
「気持ちよさそうだね」
「ん、ぁああ――ッ」
不意打ちに腰を撫でられた。
触るのと触られるのとでは、やはり違う。仰け反って甘い声を上げたアロイヴの身体を、紫紺が腕の力だけで引き寄せた。
噛みつくように口づけられ、咥内を貪られる。
混ざり合った唾液と一緒に、紫紺の魔力が流れ込んでくる。
「ん……く、ぁ」
身体の奥がさらに疼いた。
さっきは外側からじわじわ高められた性感を、今度は内側から煽られている感じがする。
――食べられたときと、似てる。
お互いが混ざり合う気持ちよさも、熾された魔力の熱も、食べられたときの感覚によく似ていた。
でも、決定的に違うところもある。
――あのときは、どんどん奪われていく感覚だったけど。
それがない。
心が満たされる感覚はそのまま、身体の熱も高まっていく一方だ。
与えられる多幸感も比べものにならなかった。
――それを、今度は僕からも紫紺に渡せるんだ。
紫紺の首に腕を回す。
口づけをより深くしながら、アロイヴも紫紺に向かって魔力を流した。
贄として、自分を捧げるためじゃない。
魔力を渡す行為は言葉よりも、相手の深いところに直接感情を届けられるものだと気づいたからだ。
「……イヴ」
魔力に込めたアロイヴの気持ちがしっかり伝わったのか、紫紺が熱のこもった瞳でこちらを見た。
自分も同じような顔をしているのだろうか。
――もっと、欲しい。
そんな表情で、紫紺を見つめてしまっているのだろうか。
「もっと深くまで繋がろうか」
今のは、どちらが口にした言葉だろう。
もしかしたら、どちらも声には出していないのかもしれない。
見つめ合って、微笑んで、軽く口づける。
これから紫紺を受け入れる場所が、きゅうっと切なく疼いた。
◆
――紫紺の指が、入ってる。
ベッドにうつ伏せになって、腰だけを高く上げる。後ろに座った紫紺の指を受け入れながら、アロイヴは抱きしめた枕に顔をうずめていた。
指の動きに合わせて、ぐちゅぐちゅと濡れた音が聞こえる。
そんなところに触れられるのは初めてなのに、違和感よりも気持ちよさのほうが大きかった。
紫紺の魔力が、媚薬の役割を果たしているからだろうか。
「ん……、ぁ」
中の指をゆるゆる動かされると、声が出てしまう。
背中や腰を撫でられると勝手に下腹部に力が入り、中の指をきゅうきゅうと締めつけてしまった。
「ひ、ァ……」
「イヴ、平気? きつくない?」
「だいじょう、んッ」
大丈夫だと答え終わる前に、後ろから覆い被さってきた紫紺がアロイヴの唇を塞いだ。
慣れない中と、感じやすい咥内を一緒に責められ、電流のような快感が断続的に襲いかかる。
腰の震えが止められない。
「ンっ」
中の弱いところを指の腹で押され、アロイヴはびくりと身体を硬直させた。
張り詰めた中心の先端から、とろりと透明の体液が糸を引きながらこぼれる。シーツの上に小さな水溜りを作っていた。
「ねえ、紫紺……まだ?」
「もう少し。イヴに痛い思いはさせたくないから」
指は三本、根元まで埋め込まれている。
それでも紫紺はまだ充分ではないと考えているようだ。
――紫紺の、大きいから。
猛った紫紺の昂りが、尻たぶに触れていた。
熱く脈打つ硬いそれが、紫紺の興奮をアロイヴに伝えてくる。
こんな状態なのに、紫紺はアロイヴのことを気遣ってくれているのだ。
――嬉しい、けど……もどかしい。
これを入れられたら、自分はどうなってしまうのだろう。想像するだけで、アロイヴの腹の奥は激しく疼く。
早く欲しいとすら思ってしまっている。
「痛くても、いいよ?」
「イヴ」
「紫紺のこれ……入れて?」
後ろに回した手で、紫紺の昂りに触れた。
握るのは少し怖かったので、指先でつんと触れてみただけだ。
「……あんまり、煽らないほうがいい」
余裕のない低い声だった。
「んッ」
指が一気に引き抜かれる。
ぽっかりと空いた場所に、すぐに熱くて硬いものが触れた。
「ぁ、ぁああ……」
指とは比べものにならない太さと質量のそれは、ゆっくりとアロイヴの中に侵入してきた。
後ろからは獣のような息遣いが聞こえてくるのに、紫紺の動きは慎重そのものだ。
「ん、く……ぁ、ぁあッ」
それでも、苦しかった。
あれだけ慣らしてもらったのに、やはりまだ受け入れるのは早かったらしい。
「ごめん……イヴ。我慢して」
早く入れろと煽ったのはアロイヴなのに、わざわざ謝ってくれるなんて。
言葉で答える余裕はなかった。
でも平気だと伝えるために、アロイヴは目の前にあった紫紺の手を握る。手の甲に舌を這わせた。
「イヴ……だめだって」
「ん……っ」
中にいる紫紺の昂りが硬度を増す。
どうやら、さらに煽ってしまったらしい。
「ん、んぁ」
侵入してくる速度が上がった。
指では届かなかった場所を、ぐいぐいと拡げながら熱の塊が進んでくる。
内臓が押し上げられ、声が抑えられない。
――ここからも、魔力が。
中からも紫紺の魔力が流れ込んでいた。
敏感なところに直接媚薬を塗り込まれるような、ずくずくと脈打つような強い快感が、腹の奥に熱を発させる。
「あ、あ……だめ……っ」
これ以上はおかしくなる。
ふるふると首を横に振ったが、快感を逃がすことはできなかった。
引こうとした腰を、紫紺の大きな手にがしりと掴まれる。
「逃げないで」
「……ン、ぁああッ!」
引き戻されたのと同時に、紫紺の昂りを根元まで捩じ込まれた。
媚薬代わりに注がれた魔力のおかげが痛みは全くなかったが、気持ちよさが止まらない。
アロイヴの中心からは、だらだらと白濁があふれていた。
「あ……待って、まだ、動いちゃ」
イッている最中だというのに、紫紺の昂りがアロイヴの奥を押し潰してくる。激しいピストンではなかったが、今のアロイヴには強すぎる刺激だった。
絶頂が続いているせいで、ろくな抵抗ができない。
むしろ、アロイヴの身体は本人の意思とは反対に、紫紺の昂りを歓迎しているようだった。
中が紫紺を搾り取ろうと蠢いている。
その動きがまたアロイヴをさらなる絶頂へと押し上げようとしてくる。
「やだ、やだ……むり」
気持ちよすぎるのが怖い。
恐怖を誤魔化すように枕に顔をうずめていると、肩に濡れた肌の感触がした。
紫紺が頭を預けてきたのだ。
「……イヴ」
荒い息遣いの間に、掠れた声で名前を呼ばれる。
それでも顔を上げられないでいると、耳にちゅっと優しく唇が触れた。
身体の疼きは全く収まらないが、宥めるような触れ合いに恐怖心が収まってくる。伏せていた顔を上げると、眉を下げた紫紺がこちらを覗き込んでいた。
「もう少し、頑張れる?」
無理だと言ったら、止めるつもりなのだろうか。
紫紺はまだ一度も達していないのに。
「そっち、向きたい……」
後ろからより、向き合って抱かれるほうがまだ頑張れる気がした。
「イヴがきつくなる」
「いい、から……」
すぐに身体を反転させられた。
当たる場所が変わったせいか、アロイヴの中心から新たな白濁があふれる。再び達したせいで、中の紫紺をまた強く締めつけてしまった。
紫紺が苦しそうに眉根を寄せる。
「紫紺も……気持ちよく、なって」
まだ少し遠慮している紫紺に向かって、アロイヴは手を伸ばした。
頬を撫でると、紫紺が顔を擦り寄せてくる。
ふと、小さな魔獣だった頃の紫紺が、こうして甘えてきた日のことを思い出していた。
「ん、く……ぁあッ」
身体の力が抜けたところを狙って、最奥を穿たれる。
激しい前後運動が始まった。
奥を責められる衝撃はさっきまでと変わらないはずなのに、不思議と苦痛はない。アロイヴはふわふわとした感覚に包まれていた。
――すごく、気持ちいい。
紫紺も同じだけ気持ちよくなってほしい。
与えられる幸せを全部受け取って、自分からもあふれるぐらいの幸せを届けたい。
――本当に、独りじゃなくなった。
こうして紫紺と繋がれたのは、独りじゃないと教えてくれたあの子のおかげだ。あの影狐が自分と紫紺を出会わせてくれたから、二人とも孤独にならずに済んだ。
いつの間にか絡められていた紫紺の指を、ぎゅっと握り返す。
――この手はもう、何があっても離さない。
そう心の中で誓った瞬間、紫紺の熱が中で激しく迸るのを感じた。
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