その手に、すべてが堕ちるまで 孤独な半魔は愛を求める

コオリ

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番外編《酒は飲んでも――……?》

01

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 くちゅり、という卑猥な濡れた音でルチアは目を覚ました。 
 エランは遅くなると言っていた。
 今日の採取依頼は夜にしか採れない花の蜜ということで、一人で依頼を受けたエランは街が暗くなり始めた頃に森へと出掛けて行った。
 帰りは遅くなるから先に寝ていろという言付けどおり、ルチアは先に就寝していたのだが、夜半過ぎにそんな聞きなれない音に起こされた。
 目を開かなくても部屋にいる人物の気配はわかる。エランだ。おそらくは同じベッドの上にいる。
 エランはまだ、眠ってはいないようだった。

「……?」

 薄目を開けて、その姿を確認する。
 窓際で月明かりに照らされているエランは、緩やかに腰を揺らしていた。

 ――え?

 信じられない光景だった。それこそ夢を見ているのではないかと思うほどだ。
 ルチアが驚愕に目を見開いていると、その身じろぐ気配に気づいたのか、エランの視線がルチアをとらえた。
 熱に浮かされたとろりとした目、紅潮した頬は明らかに発情しているように見える。

「エラン……?」
「――起きたのか」

 甘く掠れた声だった。
 エランの手は己の陰茎に触れている。濡れた音を響かせていたのはそれだったらしい。
 何がどうなっているのか、瞬時に理解することは難しかった。エランは陰茎に触れていた手を一度離し、膝立ちでルチアのほうへと近づいてくる。

 ――酒の匂い。酔っているのか?

 顔を近づけてきたエランの吐息からは、かなりの酒気が感じられた。
 とろりと蕩けたように見えた瞳も近くで見れば、ただ酔っ払っているようにも見える。だが、先ほどまでの行為も決して見間違いではない。
 エランは明らかに自慰をしていた。
 しかも、それをルチアに見られてもなんとも思っていない様子だ。酔ったことで羞恥も失われてしまっているのだろうか。
 普段のエランからは考えられないことだった。

「起きたのなら、手を貸せ」
「え……?」
「お前の手のほうが、気持ちがいい」

 そう言うと、エランはルチアの腹の上に跨った。
 ぐいっとルチアの手を引っ張り、自分の陰茎に擦りつける。
 下の衣服はすべて脱ぎ捨ててしまったのか、何も履いていない。上は着たままでいることが余計に卑猥さを際立たせた。
 膝立ちになり、脚を大きく開いて前後に腰を揺らす。まるで騎乗位をしているかのような体勢だ。
 感じ入った様子で目を閉じ、自慰をするエランの姿をルチアは寝ころんだまま呆然と見上げる。

「ぁ……はぁ……ッ」

 甘い声が漏れ始める。
 エランが自分の手を使って自慰をしているなんて、現実とは思えない光景だ。
 やはり夢なのかもしれないと思ったが、仮に夢だとしてもこの貴重な光景を見逃すわけにはいかない。ルチアは瞬きも忘れて、エランの痴態を見つめ続ける。

「あ、……も……イく――、ぁああッ」

 ルチアが目を覚ます前に既に高められていたのか、エランは意外に呆気なく果てた。
 自分の手のひらに出した白濁をどこか満足そうな表情で見つめている。
 しばらくその手を眺めた後、乱れた呼吸も整わないうちに「ルチア」と甘く掠れた声でその名前を呼んだ。

「何?」
「――食べるか?」

 そう言って差し出したのは、白濁で汚れた手だ。
 半魔であるルチアは精も食糧となる。その話を直接エランとしたことはなかったはずなのに、どうやらエランはそれを知っていたらしい。
 しかし、まさかそんな誘い方をされるとは。
 ルチアは身体を起こすと、差し出されたエランの手に唇を寄せる。その指に絡んだ白濁にそっと舌を這わせた。

「……っ」

 自分から誘ったはずなのに、エランはルチアの行動に驚いたようだった。
 一瞬引こうとした手をルチアは腰から生やした触手で絡めとる。その場に留めた。

「食べていいんでしょ?」
「……触手で食べるんじゃないのか」

 どうやら精は触手から摂取するものだと思っていたらしい。直接舐められると思っていなかったから、こんなにも驚いたようだ。
 酔ってあんなことをしたはずなのに、こうして照れた姿を見せるのはずるい。
 ぐっと自分の内側で本能が暴れ出すのを感じた。ルチアはエランに身体にも触手を巻きつける。

「っ――お前、なにして」
「……誘ったんだから、責任は取ってくれるよね?」

 ねろりとその手を舐め取りながら、ルチアは満面の笑みでそう告げた。
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