23 / 29
番外編《酒は飲んでも――……?》
01
しおりを挟むくちゅり、という卑猥な濡れた音でルチアは目を覚ました。
エランは遅くなると言っていた。
今日の採取依頼は夜にしか採れない花の蜜ということで、一人で依頼を受けたエランは街が暗くなり始めた頃に森へと出掛けて行った。
帰りは遅くなるから先に寝ていろという言付けどおり、ルチアは先に就寝していたのだが、夜半過ぎにそんな聞きなれない音に起こされた。
目を開かなくても部屋にいる人物の気配はわかる。エランだ。おそらくは同じベッドの上にいる。
エランはまだ、眠ってはいないようだった。
「……?」
薄目を開けて、その姿を確認する。
窓際で月明かりに照らされているエランは、緩やかに腰を揺らしていた。
――え?
信じられない光景だった。それこそ夢を見ているのではないかと思うほどだ。
ルチアが驚愕に目を見開いていると、その身じろぐ気配に気づいたのか、エランの視線がルチアをとらえた。
熱に浮かされたとろりとした目、紅潮した頬は明らかに発情しているように見える。
「エラン……?」
「――起きたのか」
甘く掠れた声だった。
エランの手は己の陰茎に触れている。濡れた音を響かせていたのはそれだったらしい。
何がどうなっているのか、瞬時に理解することは難しかった。エランは陰茎に触れていた手を一度離し、膝立ちでルチアのほうへと近づいてくる。
――酒の匂い。酔っているのか?
顔を近づけてきたエランの吐息からは、かなりの酒気が感じられた。
とろりと蕩けたように見えた瞳も近くで見れば、ただ酔っ払っているようにも見える。だが、先ほどまでの行為も決して見間違いではない。
エランは明らかに自慰をしていた。
しかも、それをルチアに見られてもなんとも思っていない様子だ。酔ったことで羞恥も失われてしまっているのだろうか。
普段のエランからは考えられないことだった。
「起きたのなら、手を貸せ」
「え……?」
「お前の手のほうが、気持ちがいい」
そう言うと、エランはルチアの腹の上に跨った。
ぐいっとルチアの手を引っ張り、自分の陰茎に擦りつける。
下の衣服はすべて脱ぎ捨ててしまったのか、何も履いていない。上は着たままでいることが余計に卑猥さを際立たせた。
膝立ちになり、脚を大きく開いて前後に腰を揺らす。まるで騎乗位をしているかのような体勢だ。
感じ入った様子で目を閉じ、自慰をするエランの姿をルチアは寝ころんだまま呆然と見上げる。
「ぁ……はぁ……ッ」
甘い声が漏れ始める。
エランが自分の手を使って自慰をしているなんて、現実とは思えない光景だ。
やはり夢なのかもしれないと思ったが、仮に夢だとしてもこの貴重な光景を見逃すわけにはいかない。ルチアは瞬きも忘れて、エランの痴態を見つめ続ける。
「あ、……も……イく――、ぁああッ」
ルチアが目を覚ます前に既に高められていたのか、エランは意外に呆気なく果てた。
自分の手のひらに出した白濁をどこか満足そうな表情で見つめている。
しばらくその手を眺めた後、乱れた呼吸も整わないうちに「ルチア」と甘く掠れた声でその名前を呼んだ。
「何?」
「――食べるか?」
そう言って差し出したのは、白濁で汚れた手だ。
半魔であるルチアは精も食糧となる。その話を直接エランとしたことはなかったはずなのに、どうやらエランはそれを知っていたらしい。
しかし、まさかそんな誘い方をされるとは。
ルチアは身体を起こすと、差し出されたエランの手に唇を寄せる。その指に絡んだ白濁にそっと舌を這わせた。
「……っ」
自分から誘ったはずなのに、エランはルチアの行動に驚いたようだった。
一瞬引こうとした手をルチアは腰から生やした触手で絡めとる。その場に留めた。
「食べていいんでしょ?」
「……触手で食べるんじゃないのか」
どうやら精は触手から摂取するものだと思っていたらしい。直接舐められると思っていなかったから、こんなにも驚いたようだ。
酔ってあんなことをしたはずなのに、こうして照れた姿を見せるのはずるい。
ぐっと自分の内側で本能が暴れ出すのを感じた。ルチアはエランに身体にも触手を巻きつける。
「っ――お前、なにして」
「……誘ったんだから、責任は取ってくれるよね?」
ねろりとその手を舐め取りながら、ルチアは満面の笑みでそう告げた。
188
あなたにおすすめの小説
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。