彼女はこのあと、僕がおいしく頂きました

なしひと

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3.下駄箱にラブレターが

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 僕の方とてそんなに弁が立つ方ではないけれど。

「えっと……何か話題はありませんか星田くん」
「……」

 口下手なのは浮月さんもそれなりだった。

「違いますよ」と、僕の表情を見るだに浮月さんは少し慌てながら断りを入れた。「本当のコミュ力とは話題を提示する能力のことではありません。どんな話題が来ても、拾い上げて大風呂敷に広げまくる能力のことなのです」
「広げまくる……」

 果たして広げるのか捲くるのか。と、からかい混じりの問いを思い付いた。

「そういえば、」
「はい!」
「ずっと気になっていたのだけど」
「はいはい、何でもござれ!」

 嬉しそうに構える浮月さん。

「そのスカートの下ってどうなってるの」広げるか捲くるかして欲しいなと思いながら。

「…………は?」

 冷たい声を浴びる。

 とんでもない冷たさだった。頭から氷水を浴びせかけられたってここまでゾッとすることはなく、もしも包帯越しじゃなければとてもその視線の切っ先の鋭さに耐えきれなかっただろうほど。

 しかし僕とて、だてに真人間(見習い)として生き残れてきたわけでもない。

 人智を超えた本能で悟る。

 何となく。あくまで何となくだけれど、ここで下心を見せてしまえばすべてが終わる気がした。

 知れず、喉が鳴る。震えを押し隠して、僕は口を開いた。

「こう、包帯は」あくまでこれは純粋な興味なのだという体で。「セーラー服の下にも巻いてるじゃない?」
「そうですね……」どこかしら釈然としない顔。
「上は下着を着けずに直に巻いているみたいだけど」
「星田くんは普段、何を見ているんですか」

 浮月さんは心持ち身を引きつつ控えめな胸元を押さえた。

 良かった、あくまで冗談の流れになりつつある。

「何を見ているかって、」

 冗談ついでに、浮月さんはちょろいなんて不穏当な言葉が脳裏をよぎってしまったから。

「もちろん浮月さんだよ」「はわにゃ」「それでね」

 今、何か変な声が聞こえたけど大丈夫かな。「股関節部分はどうなっているのかと」

 真っ赤になった口元を少しの間ぱくぱくさせて。

「も、黙秘を行使しまう」噛んだ。

 増長。微かに芽生える嗜虐心。

「本当のコミュ力とは?」
「わ、話題を選びつつ、拾い上げて大風呂敷に広げまくる能力のことです」

 浮月さんは平然と過去を改変した。

 そして。

 このあたりが区切りと判断したか。呆れ混じりのため息を吐いて、困ったようにはにかんだ微笑みを口元に浮かべるものだから、いくら僕でもわかってしまう。

 どうやら冗談の流れにしてもらえていたのはこちらの方だったようで。

 ふむ。やはり敵わない。

 続けて、こほんと咳払い。

「そんなセクシャルにハラスメントな話題じゃなくて、もっと『普通』な話題はないのですか?」
「『普通』ね……」

 それがわかっていたらこんな場所にいない、なんて意地の悪いことを僕の口は漏らさない。

「ほら、私が休んでいる間にあったこととか」

 そういえば浮月さんは先週から昨日まで、持病(公称)の都合で休んでいた。だからこそ部員が二人しかいないこの部活も休みだったのだし。

 と、そこで僕は思い出した。

「お、その顔は。何かあるんですね」
「いや、やっぱり大したことではないし」

 改めて考えてみれば、『それ』を浮月さんに喋ってしまうのは少しまずいかと思いつつ、「構いませんよ」と言われて悩んでしまう。

「内容はあくまで成否ファクターのひとつでしかありません。それよりむしろ出来るだけ話す順序に工夫をつけて、こちらの興味を引くよう心がけてみてください」

 なるほど語りの構成と言われてみれば、それはコミュニケーションにおける大切な技術のように思われた。つい先ほどまでの躊躇いも忘れて、僕は少し時間を置くことで順序を練ってから、口を開いた。

「オチから先に言うと」「ほぅ」

「じつは昨日の朝、僕の下駄箱にラブレターが突っ込まれていたんだ」

 浮月さんはガタタッっと身を乗り出して来て、その姿を見るに、どうやら僕はその話題を上手く切り出せたらしい。

「取り乱さないで浮月さん」
「……別に取り乱してなんかいませんけど」

 あ、そう。

 しかし早まってはいけない。ここで期待に応じる形で、何の捻りもなく話を先に進めてしまうのは悪手だろう。

 焦らすように本題から外れつつ。実際にテンプレが突如として出現すると、自身の目の前で何が起こっているのかを理解するまでに思わぬ時間がかかってしまうよね、なんて。そんなことを浮月さんに言ってみると、彼女は何かを誤魔化そうとするかのような勢いで首肯した。

「わかりますよ、星田くん。その視点は『普通』を目指す私たちにとっては、とても重要なものです」
「重要なの?」

 重要ですと頷く。制服の襟元に切り揃えた黒髪が揺れて、眼鏡の傾きを直した。

「テンプレートやお約束というのはフィクションにおいて起用頻度が高いというだけではなく、逆に言ってしまえば現実で起こるとあまりにでき過ぎていて、本当にここは現実なのかな、なんて疑いたくなってしまうような要素なのです」
「なるほど……」それは重要なのかな?
「だからこそ私たちの意表を突かないからといって、あえて驚かないという選択肢は愚策の極みと言えます」
「……?」

 とうとう内心のみならず身体の方でも首を傾げてしまったけど、しかしまぁ。

 そんなじゃんけんの裏の裏をかくようなやり方で浮月さんが日々表す感情を決めているとは、正直恐れ入る。

 と、褒めたら「大したことじゃないですよ」と、照れられた。

 仄かな罪悪感。テイクツーでは心底から感心してみる。

「僕なんて驚くふり自体をあまりしないから。テンプレートをあえてって観点はなかったな」
「靴箱ラブレターの他には、実在のツインテツンデレに違法就労のロリメイドなどがありますね」

 ……それらの実例はなおさらよくわからなかった。

 なら今、僕らがいるこの場所も果たして立派なテンプレートになりきれているのかと、改めて眺め直してみる。

 例えば、いわゆるライトノベルの書き出しみたいに。

 僕らがそれぞれ腰掛けた二つのパイプ椅子の間に挟まれる長机。時は放課後の夕暮れ。この場所は我が校に数多ある極小部室のうちの一つ。正式にはボランティア部とかいう名前だった気がするけども、春休み明けに僕らが入部した時点で部員ゼロの廃部寸前だったから、じゃあここを隠れ蓑として乗っ取ろうよという話になった。

 驚くなかれ。

 僕と彼女だけが所属するこの部活の実態は、『普通部』だ。

 ……何の説明にもなっていない気がするけど響きはテンプレートっぽいし、まぁいいか。

 差し込む日射しが輪郭を失いつつあることに気付いて、雲が出てきたのかもしれないと思った。

 ふと黙り込んでしまっていたことと、それから自身の些細な間違いに気付いて、彼女の言葉を流す形になりつつも僕は話を続ける。

「水を差すようで悪いけど、よく考えたらラブレターという表現は少し間違っていたかもしれない」

 通常のラブレター。いわゆる恋文というやつには、書いた側の想いが余りなく表現されていると聞く。

 対して僕の上履きの上に置かれていたそれは、概要としては読み手を放課後の屋上へと誘導するだけのものだったから。あくまで文章の主旨が呼び出しならラブレターとは弁別した方が無難だろう、と僕は付け足した。

「なるほど、果たし状の線もあったわけですね」

 ……?

 会話をキャッチボールで表すなら。事前サインのないチェンジアップ、チェンジアップ、ジャイロボールくらいが浮月さんのパターンで、まれに敬遠が入ってくるのだとすでに心得ている。心得ていてもまったく捕れない球を投げるから迷(惑)投手なのだ、とは僕の個人的な評価。

「果たし状を洒落た封筒に包むのかという疑問は、まぁ置いておいて」拾って捨てるコミュ力。「文中の前置きで僕への気持ちのようなものも仄めかされていたから、とりあえず浮ついた内容であることは容易に推測されたよ」
「あぁ、良いですね。まさしく『普通』の青春って感じですよね。私こういうのを待っていたんですよ」

 なんと、知らないうちに待たれていたらしい。浮月さんはご満悦だった。

「それでそれで、そのあと屋上ではどうなったんですか?」

 後から振り返ってみれば、投手交代はこの瞬間だったに違いない。僕は大きく振りかぶって。

「うん、行かなかった」
「……はい?」

 暴投を顔面捕球。浮月さんは固まった。

「えっと、今のはテンプレでもない気がしたけど」
「待ってください、テンプレどころか常識外れの対応を聞いたような気がしまして」

 頭痛を堪えるかのように、こめかみの辺りを抑えた。

「……聞き違いを期待して尋ね直しますが」

 行かなかったんですね?
 行かなかった。

 と、僕は頷く。こうなることは事前からわかっていた。申し開きはない。

 話し始めた時点でこの話題はまずいと感じていたし、だからこそ躊躇もしたのだけれど。

 ほら、浮月さんは聞き上手だから(責任転嫁)。

 為念、心の日記帳を広げてみても昨日のそこには、『帰宅した』とそっけなく書いてあるだけだった。

「……ちょっと、正座しましょうか」

 浮月さんはタイル貼りの床を指した。

 僕は首を傾げつつ無言で従う。膝が固く冷たかった。

「星田くん」浮月さんは頭を抱えつつ、ため息を吐いた。「あぁ、星田くん」「あなたは何故、星田くんなの」「お黙りください」

「……」あ。

「いいですか、星田くん」
「下着見えてるよ」

 瞬間、顎先に浮月さんの蹴りが入り、彼女は僕を蹴った勢いのまま足を組んだ。それでも気になったのか、心持ちスカートを重力方向に引っ張る。

 一方の僕は、履いていてくれて良かったと思った。最悪、そこも包帯で代用してるんじゃないかと危惧していたし。

 それから野球じゃなくサッカーだったのか、とも。

 ……いや、いい加減この喩えもやめようか。

 別段、僕の内側に反省の色がないわけでもなく、心持ち態度を正して、浮月さんのお叱りを享受する構えを見せる。

 星田くん、と吐息に傾く胸元。

「昨日あなたがやったことはフラグ折りという『普通』ではない行為です」
「……はい」

 浮月さんは、普段から見ていればわかる通り、切り替えの早いタイプらしく、何事もなかったかのようにお説教を再開した。

「私が指定した漫画をきちんと読破していればわかることかとは思いますが、『普通』の主人公は滅多なことではフラグを折りません」
「おっしゃるとおり」
「下着が見えていてもあえて指摘せずにそっと視界から外します」

 切り替えられたのは外面だけらしかった。自分でもその言い添えは本題から外れていると気付いたのかこほんと咳払い。

「それはともかく、星田くん。そのラブレターもとい呼び出し状に宛名はありましたか?」
 それなら。「A組の白地さんだね」

「白地さん。……その方を私は存じ上げませんが星田くんとは既知の仲なのですよね」
「いや」と、僕は頭を振る。「少なくともこの校内での面識はないと思う」

 学校の外だと滅多なことでは同級生と顔を合わせるとも思えないけれど。意外なところで繋がりはできるものだし、ひょっとしたらこちらの記憶にないだけで、僕と白地さんの間にも何かしらのイベントがかつて発生していたのかも知れない。あるいは僕と浮月さんの出会いのように。

 譲歩の構えを見せる浮月さん。「知らない相手だから警戒したと?」
 誠実さで以って応える僕。「いや、単純にその日は見たいテレビが」

「五体投地」
「……」

 僕は無言で従いそうになった。顎の冷たさを覚えるに至って、どこか釈然としないものを感じつつ。

「ちょっと待って浮月さん。これ以上は『普通』の範疇を超えている」気がしなくなくもない。

「確かに言われてみれば」と、何かを納得したらしき浮月さん。「私も見下ろしたままでは話しにくいですし、椅子に戻ってもらえますか」

 結果的に人として大切な何かを守りきった気がした。特に嬉しくはない。

「それにしても、」と、冗談の色を落とした真顔で訊かれる。「本当にどうして、星田くんは行かなかったのですか?」
「だからテレビが」「嘘ですよね?」
「……」嘘だけど。

「星田くんは少なくとも義理を果たさない人ではありません。何か別の理由があったんじゃないですか?」

 と尋ねられるけれど、本当に何もないのだから答えようがない。

 もっと正確に言えば、昨日の放課後の記憶が丸々ないのだけど。

 まったく本当に。昨日の僕に一体何があったんだろうなとは思いつつ。

 一方で浮月さんは、口ごもる僕の様子をどうしても言いたくないものと判断したらしく、「なら、」と話を進める。

「お相手の白地さんは約束をすっぽかされた形になったわけですね」
「一方的な呼び出しを約束というなら、そうみたいだね」

 ふむと頷いた彼女は少しいたずらっぽい顔で。星田くん、と。

「部則その一を言ってみてください」
「えっと」僕は束の間、宙に視線を彷徨わせた。


『部則その一、適応する姿勢を見せよ』


「、だよね」
「その通りです」

 丸暗記の僕と違って、思い入れの一つもあるのだろう部則制定者な浮月さんは心持ち胸を張って頷いた。

 それは僕ら『普通部』にとっての一種の矜持だった。なんて、覚えているだけの僕が自称しても説得力はないだろうけれど、少なくとも浮月さんにとってのぜんぶで三つあるそれら部則は、彼女なりの戦闘姿勢なのだと思う。

「無理をしろと言うつもりは決してありませんが、放課後の呼び出しに応じるくらいは十分に努力可能な範囲ですよね」
「まぁ、そうだね」

 一度だけ見たいテレビ番組を我慢するという程度だ。別に親の死に目ってわけでもないし血涙が出せるほど見たいわけでもない。

 はて、本当にそうだったかなという疑問が浮かびかけたけれど、浮月さんの声に引き戻される。

「ならやはり昨日の放課後。星田くんは屋上へと赴くべきでした」
「はぁ」
「しかしもちろん、過ぎてしまったことを悔いても仕方ありません」優しげな声のまま。「悔いる姿勢を見せておくことは『普通』な人たちの神経を慰撫する効果はありますが、あまり生産性には直結しない行動です」と、情緒の欠片もないことをおっしゃる浮月さん。

 何だかんだでこの人は、僕以上にシビアな世界観を持っていたりする。

「そこで、星田くんが打つべき次なる手はリカバリーの実行です」
「リカバリーとな」

 僕はその言葉に緩みかけていた意識を再度引き締め、覚悟する。
 取り返しのつかないことをどうにか上手く収めるための贖罪となれば、相応の苦労が要請されるだろう。『人魚姫』然り、『眠れる森の美女』然り。過剰な比喩で表現するならそれは、一度死んだ少女を蘇らせるのとほとんど同じくらいに困難な作業で。

 なんてことを考えていた僕に浮月さんはあっさりと告げた。

「はい。それはこの放課後を利用して直接、白地さんの元へと謝りに行くことです」
「あ、そのくらいで良いんだ」

 拍子抜けしたような僕の言葉に彼女は首を傾げた。

「それ以上に何か?」
「えっと……そう、だよね」

 改めて尋ねられると、自分がどうしてそんな大層な覚悟を決めようとしたのかよくわからない。と言いつつ経験上、こういう時は何かしら無意識下の理由があったりする。

 何かを忘れているような。浮月さんに伝え損ねたことがあるような。

「ともかく」彼女は僕の思考を遮ってしまうタイミングで、扉の方を指した。「白地さんが帰ってしまう前に星田くんは急いでA組へと向かってください」
「……了解」

 僕はなお座りの悪いものを感じながらも、浮月さんの小さな激励の言葉を背に廊下へと出る。教室棟は渡り廊下を隔てて向かい側。僕はひとまず特別棟の三階を目指して、廊下の端に設置された階段へ。

 横目に、向かい校舎窓のうちのどれかであるはずなA組の窓を探す。たぶんあれだろうと当たりをつけた教室内ではちょうど今、帰りのホームルームが終わったところだったらしく、生徒らが次々に席を立ちつつあった。

 少し早足になる。白地さんが教室から出て行ってしまう前に捕まえられることを望んで。

「あ」

 階段を降り始めたその一歩目でようやく思い出したのだけど、さっきの話でもういくつか、僕は浮月さんに誤って伝えてしまったことがあったのだ。
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