彼女はこのあと、僕がおいしく頂きました

なしひと

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27.初デート(暫定)

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 そして土曜日。ある意味ダメ元だった白地さんとの約束が本当に取り付けられてしまって、気付けば駅前のロータリー角で立ち尽くす僕がいた。

 予想よりもトントン拍子に進む事態の渦中、それは若干の動揺を引きずったせいだったのだと思いたいけれど。

 白地さんの到着に対してテンプレ的な待った? も、お約束的な今来たとこ。も交わさないまま、気付けば僕は開口一番尋ねていた。

「これってデートなの?」
「……いや、そっちが呼び出したんじゃん」

 言うつもりだった台詞を取られたような呆れ顔に、白地さんはため息を吐いた。

「ということは、別用があるのね」
「一応。ごめんね、せっかくの休日に」
「ふーん」

 と訝しげな白地さんは別段残念そうでもホッとしたようでもなく、つまりは最初から期待などしていなかったのだろうな、と。

 そんな旨のことを言ってみたら彼女は至極微妙そうな顔で。

「というか、妹さんから昨日メッセ来たし」

 左様ですか。

 確かに砂音には、デートのつもりかと尋ねられて否定した記憶があるけれど。

 この子らもしかして結構仲良いのかなと思いつつ。仕切り直す意図で咳払いをひとつ。

「人に聞かれない場所で話したいんだ」
「ファーストフード店とか?」

 ちょうど差し掛かりに彼女が指差したビルは二階席まである全国チェーンのハンバーガー店。

 確かにこの時間帯なら店内はかなり混み合っていて、他人の話に聞き耳を立てるのも一苦労だろうけれど。

「……えっと」

 それは逆に言えば、顔見知りにこの組合せを見られるリスクも高いことを意味するわけで、むろん別に、だからといって困るような関係を日頃から築いているわけでもないけれど。

 白地さんは初デート(暫定)なのに勇気があるなと思いました。まる。

 一方、意気地なし人外部門代表の僕はささやかな所望を控えめに述べる。

「僕はもう少し個室っぽい方が良いかな」
「……そ」

 何となく釈然としないような声が返ってきたから、思わず視線を向ける。

 別に、と首を振りつつ。

「初デートで女の子を個室に連れ込めるなんて、勇気あるなって」
「……」

 どの程度の個室を想定しているのか知らないけど、彼女の発音する『初デート』には丸括弧が付いていないような気がして、僕は少しキョドりました。まる。

 そんな僕の様子を横目に、白地さんはため息混じりで。

「ま、星田くんのこと最近は結構わかってきたから」

 つもりじゃないのはわかってるけどと、すでに歩き始めていた。慌てて追いかける。

 しばらくの道すがら。僕らは平行に黙々と歩き続ける。

 お互いに黙り込んでしまった空気をあえて破るように。

「じゃ、ここなんかどう?」

 と、気持ち明るめな声で白地さんが指差した先は。

「……待って。白地さん」

 喫茶店でもファーストフード店でもなく、全国チェーンのカラオケ店。

 確かに個室ではあるけれど、どちらかと言えば密室。

 話し合いの場所としては申し分ないと思うけれど、何というか、こう。

 僕にはハードルが高い。

「あの………………、僕はもう少し落ち着けるところの方が」
「そう?」と、真顔で首を傾げる白地さん。「なら、あっちかな?」

 と、次に彼女が指した先は三時間休憩が可能な宿泊施設。

 確かにこちらもカラオケは付いているけど、恐らくそのための防音じゃなくて。

 辺りを見回してみればこんな建物が出現するくらいには、いつの間にか中央通りから外れてしまっていたらしい、というか。

「……もしかして、からかってる?」

 白地さんが淡く笑う。
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