風のささやきが聴こえたら

菊池まりな

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第2話 王国の法を犯してでも

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 君が高校二年生になったばかりの春、いつもの通学路で道路を横断中に、信号無視の大型トラックに跳ねられそうになったから、強い旋風|《せんぷう》を巻き起こし、時空の歪みから、君をこの世界に連れてくるしかなかった。放っておけなかった。ずっと君のことを見てきたから、いつか君が居なくなってしまうのが僕は怖かった。許されないことと分かっていながら、僕は現実世界の君に恋をしてしまったんだ。

「ここはどこ…?」

「気が付いたかい?ここはグレートマカトニア王国だよ。」

「え?私、トラックに跳ねられたんじゃ?」

「僕が君を助けたんだよ。」

「貴方の名前は?」

「僕は、ルークス。君の名前は?」

「私の名前は真理|《まり》よ。…一体どうなっているの?まるで別世界じゃない、ここ!」

「現実世界とはかなり違うからね。でも、僕はこの世界からずっとマリのことを見ていたよ。」

「やだ!ただの変態じゃないの!」

「…まあ、そう思われても仕方ないか…。でも、現実世界の出来事を観察するのが僕の仕事なんだ。」

「現実世界って…。ここは異世界ってこと?グレートなんとか王国って聞いたことないんだけど?」

「グレートマカトニア王国。現実世界から見たら異世界だろうね。」

「ルークス!部屋に誰かいるの?さっきから騒がしいけど、大丈夫?」

「あ、母さんだ!…ちょっと静かにしてて!…誰も居ないよ!大丈夫だから、心配しないで。」

「ならいいんだけど…。何かあったらすぐに言ってね。」

「わかったよ、母さん。」

「僕が、現実世界の観察員になってから、母さん、かなり心配性になってしまって。困ったよ。」

「現実では、お父さんもお母さんも心配性で、おまけに過干渉で。こっちが参っちゃうわ。」

「知ってるよ。マリ、ずっと君に会いたかったよ。」

「ルークスって言ったわよね?何で日本語喋れるの?」

「一応、僕は現実世界の観察員だし、現実世界の各国の言葉を理解してるし、喋れるよ。」

「…。そうなんだ…。でも、待って!私、異世界に来ちゃったんだよね?現実世界に戻れるのかなぁ?」

「…僕がなんとかするよ。大丈夫だから、安心して。」

「こっちの世界と現実世界、自由に行き来出来るの?」

「この王国では、それは認められていない…。」

「じゃあ、私はどうなるの?」

「僕も君も、この王国の法律で裁かれることになるかな。」

「…。私は普通の女子高生だよ?なんでこんな目に遭わなきゃいけないの!」

君が突然泣き出したから、僕は困惑してしまったよ。

「マリを助けたかったんだ。こうするしか方法がなかったんだよ。…そろそろお腹空いただろう?これ、飲んで。」

「何?これ?なんかの薬?」

「この国では、これが食事の代わりなんだ。取り敢えず、飲んで!」

「食事?これが?」

「ああ。そうだ。栄養とらないと、倒れてしまうよ?」

「…。分かったわよ。飲めばいいんでしょ?」

「いい子だ。あと、その服装では、すぐに捕まってしまうから、この服に着替えて。」

「なんなの?なんだか窮屈そうなドレスね。」

「母さんのドレスをこっそり拝借したんだ。ここは王国だから、女性はドレスを着るのが一般的なんだ。」

「私、普段着はTシャツにジーパンなんだけどなぁ。」

「それも知ってる。」

「…。なんか、恥ずかしい。」

「ああ、気付かなくてごめん!僕は一旦部屋から出るから。ドレス、初めてだと思うし、ひとりで着れるかな?」

「…。どうだろう?分からないけど、着てみるね。」

「着終わったら、このカードをドアの隙間に挟んで。」

「分かったわ。」

「じゃあ、部屋の外で待ってるから。」

しばらくするとドアの隙間からカードが見えたから、ドアを開けたんだ。

「ドレス、着られたかい?」

「なんとかね。…でも、ウェストがちょっときついかなぁ?」

「調整出来るから大丈夫だよ。後ろを向いて。この紐を引っ張ると…、ほら、これでどうだい?」

「…楽になったわ。」

「良かった。すごく似合ってる。」

「本当?…でも、デザインが私好みじゃないのよねぇ…。」

「…そっか。この王国では、服は自分好みにオーダーメイドで作ってもらえるよ。衣装屋に行きたいけれど、今、一緒に出たら確実に見つかりそうだからなぁ。」

「見つかったら、やっぱり捕まってしまうの?」

「そうだな。…、あの方法が一番かな?」

「何かいい方法があるの?」

「一つだけ、思いついたんだ。僕にはテレポート能力もある。まだあんまり使ったことないから、自信はないけど…。」

「どうやるの?」

「マリはただ、僕の手を強く握って、目を閉じているだけでいいよ。僕は衣装屋へ行きたい!と強く願えば、テレポート出来るんだ。」

「すごい能力ね!」

「…自信はないけどね。」

「でも、それしか方法はないんでしょう?やってみなきゃ分からないわ。」

「そうだな。…マリ、さっき言った方法。分かるよね?」

「手を強く握って、目を閉じていればいいのよね。」

「ああ、そうだ。…じゃあ、行くよ!」

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