勇者ですか? いいえ……バグキャラです! 〜廃ゲーマーの異世界奮闘記! デバッグスキルで人生がバグッた仲間と世界をぶっ壊せ!〜

空クジラ

文字の大きさ
19 / 226
第2章 勇者と最悪な出会い編

第19話 激走、ランナーバード!

しおりを挟む
 ランナーバード Dランク 危険度 ★★★☆☆

 巨体ゆえに空を飛べなくなった鳥系の魔物。飛べない代わりに脚の筋肉が発達し、地上を時速50kmで一時間以上、走り回れるスタミナを持つ。

 普段は草原に生息しており、巨体を維持するのに一日に5kgものエサを必要とする。その餌を求めて毎日20kmも歩き回る。

 エサが不足すると草原から森の中へ入り、エサを求めるて彷徨さまようこともしばしあるが、基本的に用心深く、臆病な性格なため、ランナーバードから近づいて来ることはあまりない。

 だが、不意に遭遇した時には注意が必要である。臆病な性格故に、突発的な事態に遭遇するとパニックになり、誰かまわず襲い掛かって来るからである。

 その鋭い鉤爪から繰り出される蹴りは、簡単に人を引き裂き、三歩で最高速度に達する脚力で体当たりをされれば、人は跳ね飛ばされてしまう。
 一度戦闘になれば逃走は困難を極め……駆け出しの冒険者がランナーバードに遭遇したならば、死を覚悟して挑むことになるだろう。


 著 冒険者ギルド 魔物図鑑参照




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「クエエエエエエェェェェェェ!」


 不意に現れたランナーバードが、声を上げながらヒロ達に向かって走り出した。


「リーシアさん⁈」

「避けてください!」


 二人同時に声を上げるが、急に現れたランナーバードとの距離は5mも離れておらず、ヒロはリーシアの声に反応が出来なかった。
 避けられないと思った瞬間、咄嗟にリーシアがヒロを突き飛ばしていた!
 リーシアは、ヒロを突き飛ばした反動を利用して反対側へと飛び退く。


「痛!」


 リーシアが痛みで声を上げ、突き飛ばされたヒロは体勢を崩し、その場に倒れ込んでしまう。

 体勢を立て直すべく急ぎ立ち上がったヒロは、ランナーバードがいる方向に顔を向け、痛みで声を上げたリーシアの様子をうかがおうとするが……。


「前を見て下さい! よそ見は禁物です!」

「ですが、怪我を!」

「これくらいなら大丈夫です。それよりランナーバードの動きをよく見て、避けて下さい。動き出したら大きく横に避ければ、回避できますから!」


 腕を押さえながらリーシアが声を荒らげ、ランナーバードから視線を離したヒロを叱咤する。

 突如始まった遭遇戦……ランナーバードの先制攻撃を辛くも避けたように見えたが、リーシアの二の腕から服が裂かれ血が流れ出ていた。

 ランナーバードの突進からヒロを突き飛ばした際、鉤爪の蹴りが当たっていたようだ。幸い出血量は少なく、致命傷にまでは至ってはいないが状況は芳しくない。


「クエエエエエエェェ」


 再びランナーバードが声を上げ、リーシアに突進を開始する。

 ランナーバードは、その強靭な脚力でたった三歩でトップスピードに達すると、リーシアに肉薄し鋭い爪で前蹴りを繰り出して来た。


 ランナーバードの蹴りは、飛び上がりながらの前蹴りになる。これは鳥類の身体の構造上、蹴りをするにはジャンプを用いなければならないからである。その為、必然的に飛び上がりながらの前蹴りになってしまうのだ。

 スピードに乗ったジャンプ蹴りは、元のスピードと合わさり、さながらニ段ブーストの様にさらなる加速を得る。
 リーシアが横に素早くステップし、ギリギリで回避すると、流れる様な動作で横回転からの後ろ回し蹴りを蹴り出すが、空振りに終わってしまう。

 ランナーバードに攻撃を加えようにも、横に回避しながら攻撃したのでは遅すぎた。

 リーシアが攻撃を加える頃には、ランナーバードの姿はすでにその場にはなく、彼女の蹴りの間合いから離脱しているのだ。ランナーバードの一撃離脱、ヒットアンドアウェイの動きに、ヒロは脅威を感じていた。


「厄介です! ランナーバードの攻撃を避けてからでは、コチラの攻撃が当たりません! 何とかして足を止めるか、ダメージ覚悟のカウンターに掛けるしかないです」

「足を止めるにしても……どうやって?」


 ヒロは停滞した状況を打破するため、ランナーバードについて考え始めた。

 空を飛べない鳥はヒロの世界にもいた。ダチョウと呼ばれた巨大な鳥がランナーバードに近い。

 ダチョウの特徴をあげるとすると、誰もがまず足の速さを想像するだろう。だがダチョウには、足の速さよりも優れている点があることを知る人は少ない……それは視力である。
 ダチョウは陸上生物では最大の眼球を持つとされており。脳味噌より目玉の方が大きいのだ。

 それだけに目がとても良く、人間の視力平均が1.2と言われている中、ダチョウの視力は25と恐るべき視力を有している。動物の視力ランキングで1位になるくらいダチョウの視力は良い。

 人間の中で、視力が最も良いとされる人で最高視力は13とされ、これは30m先のハエが見える程である。
 対してダチョウは、40m先のアリの動きも見えていると言われている。
 だが、鳥類の中で一番の視力を誇る反面、嗅覚や聴覚は他の動物よりも弱く、逆に言えば視力に頼った生き方をしているのだ。

 攻撃が当たらないなら当たるようにすれば……リーシアが攻めあぐねている間にも、ランナーバードは再び走り出していた。

 ヒロは足元の土を手に素早く握り締めると、ランナーバードの注意を引くために声を上げていた。


「こっちだ! こっちに来い! このチキン野郎!」

「なっ! ダメですヒロさん!」

「動きを止められないか試してみます。動きが止まったら攻撃をお願いします!」


 ランナーバードが、今度はリーシアには向かわず、ヒロの方へと走り始めた。
 ランナーバードをギリギリまでヒロは引き付けて……。


「Bダッシュ!」


 急加速して、ランナーバードの飛び蹴りをヒロは回避する。そしてランナーバードの顔が通過するであろう場所に、手に握った土をばら撒いていた。

 ランナーバードの目は、直径が5cmもありとても大きい……土とは言え、目に入れば一時的に視力を奪えるはずだ。いくら速く走れても、目が見えなければ無闇に動けなくなり、動きを止められるだろうとヒロは考えたが、それは失敗に終わる……ランナーバードは目に土が入る瞬間に目を閉じ、異物が目に入るのを防いでいたのである。

 ヒロは以前、TVの情報番組で動きの速い動物は総じてまつ毛が長いと言っていたのを思い出していた。

 これはまつ毛がセンサーの働きを担っており、目に異物が入ろうとすると、目を閉じる働きがあるからだった。人のように美しくなるため、まつ毛を増やしたり伸ばしたりはしていないのである。

 ランナーバードもまつ毛が多くかなり長いが、それは走ることに特化した進化の結果なのだろう。

 ランナーバードは飛び蹴りから着地すると、何事もなかったかのように距離を取り、僕たちの方へ体を向ける。


「待っていても状況は変わりません。攻めます!」


 リーシアはランナーバードに攻撃すべく、前へと走り出していた。守りに入れば、体力の差でランナーバードに分がある以上、負けるのは自分たちだと判断したリーシアは、攻めに転じたのだ。

 小柄なリーシアは、ランナーバードとのリーチ差を蹴りでカバーするため、スピードを乗せたハイキックを繰り出すが……空振りに終わり突き飛ばされてしまう!

 リーシアが地面を派手に転がるが、すぐに立ち上がると何事もなかったかのように構える。
 どうやらランナーバードの蹴りをとっさに後ろに飛び、地面を転がることでダメージを逃し事なきを得たようだ。

 幸い、最高速に達する前の加速中だった事も功を奏した。
 ランナーバードはリーシアを突き飛ばすと、そのまま距離を少し取り、体の向きを変えようと立ち止まる。

 その瞬間を……ヒロは見逃さなかった。


「Bダッシュ!」


 リーシアが吹き飛ばされるのを見ながらも、ヒロはランナーバードを後ろから追いかけていた。Bダッシュの加速がヒロをランナーバードに肉薄させ、後方からの気配にランナーバードが焦る。


「クエエエエエエェェ」


 叫ぶランナーバードに、ヒロは解体用ナイフを腰に構えて突っ込む!


「なっ! アレを避けるのですか⁉︎」


 リーシアが驚愕する声が森に響き渡った。ヒロの攻撃が当たったと思った瞬間、ランナーバードはその強力な脚力で真上に飛び上がり、攻撃を回避したのである。

 ランナーバードの下を通り過ぎたヒロはすぐに止まれず、逆に着地したランナーバードに後ろから突進され、一瞬で数メートルも前に蹴り飛ばされてしまった!


「ヒロ、横に転がって!」


 モロに攻撃を受け蹴り飛ばされたヒロは、リーシアの上げる声に反応してその場で立ち上がらず、痛みを堪えて横に転がった。


「クエェェェ」


 ランナーバードの悔しそうな声が聞こえ、ヒロが蹴り飛ばされた場所を鋭利な鉤爪が通り過ぎて行く。もし横に転がらず、その場で立ち上がっていたら……今頃あの鉤爪でズタズタにされていただろう。
 蹴り飛ばされ、地面に叩きつけられたせいで体のあちこちが痛む……だが、痛いからといって立ち止まっているわけにはいかなかった。


「さあ! あなたの相手は私ですよ! こっちに来なさい! 今日の晩ご飯はチキンです!」


 リーシアが手に装備したグローブを『ガン!ガン!』と打ち鳴らし、ランナーバードを挑発してヒロから引き離そうとしていた。

 ランナーバードは見事なまでに引っ掛かり、リーシアに突撃して行く……さすがは目玉よりも小さい脳味噌。だが、あの身体能力は脅威的であり、いまだ打開策をヒロは見いだせない。

 ランナーバードは無傷、こちらはヒロが体当たりを喰らってダメージを受けている。リーシアが奮戦しているが、有効打を打てず、戦況は悪い方へと傾きつつあった。

 ヒロは今の状況と情報を元に考える……生き残るのに必要な何かを探すため、深い思考の海へと意識を沈めていた。

 
 集中しろ!
 それはゲームをクリアーするため、生活の全てを投げ打って命を捧げた時のように……。
 
 集中しろ!
 ひたすらトライ&エラーを繰り返し情報を集め、パーフェクトクリアーを目指した時のように……。
 
 集中しろ!
 この世にクリアー不可能なゲームはない。
 設定ミスで製作者がクリアー不可能とまで言われた時ゲームさえも、バグ技を駆使してクリアーした時のように……。
 
 集中しろ! 考えろ! 諦めるな! この世に絶対なんて存在しない! 

 ハイスコアーは常に更新される!
 クリアータイムは日夜短縮される!
 どんな高難易度でもいつかクリアーされる!
 持ち得る全てを駆使して状況を打開しろ!

 諦めるな……答えは必ずある!
 

 そして思考の果てに、ヒロの脳裏に答えが浮かび上がるのだった。



〈勇者の集中が極限を迎えた時、勝利へ道が開けた〉
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...