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第2章 勇者と最悪な出会い編
第18話 遭遇……噂のあの子!
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着替えを終えた僕は、恥ずかしさを隠しながら後ろを向いてくれていたリーシアさんに声を掛けた。
「お待たせしました。コッチを向いて頂いて構いませんよ」
そう言うと僕が着替えている間、周囲を警戒していたリーシアさんが振り向き、安堵の表情を浮かべる。
「これでようやくまともに話ができますね。改めてよろしくお願いしますね」
「リーシアさん、こちらこそよろしくお願いします。じゃあ、早速アイテム袋にその死体を入れますね」
僕はリーシアさんの横に置かれたシカみたいな動物に、アイテム袋の口を触れて収納する。
「へ~、コレがアイテム袋ですか……初めて見ましたが、すごく便利ですね♪」
一瞬で吸い込まれ、何もない地面を目にしたリーシアさんは感嘆の声を上げて喜んでいた。
リーシアさんが持てる重量の動物と言っても、体長1mはある。地球にいるシカでいったら体重40kgはあるだろうから、それを背負って長時間歩くのは、男であっても困難だ。
さっき血だらけの肉塊を持っていたのも、血抜きして重量を軽くしていたのだろう。
普通に考えて体重40kgのシカを血抜きして、必要な部位だけを解体で抜き出すだけでも一苦労だ。
さらに他の魔物がいるであろう森の中で、呑気に解体など自殺行為かもしれない。下手したら血の匂いに惹かれ、別の魔物がやって来る可能性も否定できない。
それを考えると、アイテム袋に収納して安全な町で解体ができれば、素材を無駄にせず全てを利用できる。女神様が武具や防具ではなく、アイテム袋を渡してくれた理由が何となく分かり、僕はセレス様に感謝していた。
「さっき持っていた、血だらけの肉塊も入れますよ」
「ありがとうございます。ウサミンはこの先の泉に置いてありますので、移動しましょう」
僕はリーシアさんに連れられて、二人で泉に向かって歩き出した。
「そう言えばリーシアさんは狩人なんですか? 森の中で動物を狩っているようですが」
「いいえ、違いますよ。本職は女神教の見習いシスターです。森には教会で使う薬草を摘みに来ました。狩りは襲い掛かる火の粉を振り払う、ついでです」
シスターと聞くと『イノセントギア』という格闘ゲームに出てきた、某シスターキャラを思い出してしまう。
続編が出続ける人気格闘ゲームに登場するキャラクターなのだが、発表当時は性別に記載がなく誰がどう見ても女性キャラだった。
だが、発売直前に開発者が狂ったことを発表してしまった……どう見ても女性キャラの容姿なのに、突然このキャラは男の子として発表してしまったのだ!
フタを開けてみたら実は男の娘だったことが発覚し、ある者は嘆き、ある者は世を捨て、ある者は新たなる世界の扉を開いてしまった。
……いろんな意味で話題になった格闘ゲーム、それが『イノセントギア』だ!
「シスターと言うと?」
「はい、神に祈りと感謝を捧げ、神のために尽くす者ですね……」
そう言ったリーシアさんの瞳に、一瞬かげりが見えた。
ゲームでは、聖職者系は回復役として重要な位置を担っているが、シスターだと聖職者ではなく神の僕なので、回復魔法は使えないのかな?
「なるほど、じゃあ、やっぱり回復魔法を使えたりするんですか?」
興味本位で何気なく聞いてみた。
「シスターでは回復魔法が使えませんね。回復の才能があれば聖職者でなくても使えるのですが、私にはあいにくと才能がありませんでした……でもおかげでコッチの方が得意になりました♪」
少し前を歩くリーシアさんは立ち止まり、僕の方へ体を向けると右足でハイキックを打ち出すと空中で足を止め、見事な足技を披露する。
「ちょっ!リーシアさん!」
僕は慌てて顔を横に向け、視線を外す。
「どうしましたか?」
「どうしましたかじゃなくて、スカートですよね? 見えてしまいますよ!」
「……あ~、大丈夫ですよ、これスカートじゃありませんから」
何かを理解し、ニマニマしながらリーシアさんは話しだした。
「ほらっ、こんな感じです」
そう言って足を下ろしたリーシアさんに視線を向けると……彼女はスカートの裾を両手でつまみ、引っ張っていた。するとスカートに見えていたものが、実はズボンに近いボトムズを履いていることを僕にアピールしてきた。
たしかキュロットスカートッて言うヤツだっけ? 股下がある半ズボンの一種だったはず……裾に向かって広がるズボンのひとつで、一見するとスカートを履いているように見える。ゆったりとしていて下着を気にする必要がないので、動きやすいらしい。
男の僕は履いた事がないので、残念ながら履き心地はよく分からない……むしろ分かったらヤバいよ!
「すみません。変なこと言ってしまいました」
変に意識しすぎて恥ずかしくなった僕は、照れ隠しでリーシアさんを置いて歩き出す。
「あっ! 待ってくださいよ~♪」
僕の後を、なぜか上機嫌でついて来るリーシアさん……そうこうしている内に、茂みを抜けて泉に着いた。
リーシアさんが泉から出ていたロープを引っ張ると、表面の血が洗い流された肉塊が泉の中から現れる。どうやら泉に沈めて保冷していたみたいだ。
僕は泉から取り出した肉塊を受けとり、アイテム袋に素早く収納する。
「それでは町に帰りましょうか。今からなら、夕暮れ前には帰れそうです」
「そう言えば、薬草採りはいいんですか?」
「ヒロさんが意識をなくしている間に、泉の周りの薬草は集めておきました」
リーシアさんが背中に背負ったバックを降ろし、中からパンパンに膨れた麻の袋を見せてくれた。
「やっぱり泉の周りは、人が寄り付かないので薬草を集めるのが楽でした」
「え? どうしてですか?」
「泉は森の中で、魔物や動物の水飲み場でもありますからね。バッタリ遭遇して襲われる可能性が高いです。だから町の人は危険な泉まで来ませんから、手つかずの薬草が大量に手に入るわけです」
その話を聞いて、僕は顔を青くした。
「つまり僕はそんな危ない場所で水浴びをしていたと……」
「です! 最初見た時、『正気ですか?』と思いました」
危なかった! 最初に出会えたのがリーシアさんで本当に助かった……もしそれが魔物だったりしたら、全裸で死んでいた可能性もあったのだ。
某メーカーが発売した人気アクションゲーム、『天国村』でも主人公キャラがダメージを受けると裸になり、さらにダメージを受けると骨になって死ぬゲームがあり……裸で死ねなんて場面、普通にないだろうと笑ってバカにしていた自分を殴り倒したい!
それにしても意識を失った見ず知らずの僕を、泉から離れた場所に移動してくれたリーシアさんには、いくら感謝しても足りないくらいである。
「リーシアさん、助けてくれてありがとうございます」
「どういたしまして。私も帰りはヒロさんのおかげで助かりましたから、こちらこそありがとうございます」
頭を下げてお礼を言う僕を見て、笑顔でリーシアさんが答えてくれた。出会いは最悪だったが、なんとかうち解けた感じである。
「さあ、それじゃ町に帰りましょう」
「はい、よろしくお願いします」
元気に返事をした僕は、リーシアさんの案内のもと、町へ向かって歩きだした。
「ここから町までは遠いですか?」
「そうですね~、歩いて2時間くらいです」
最初に転移した場所から町までは、直線距離で5キロだったはずが、森で迷い全然違う方向へ歩いていたみたいだ。
「この森って魔物も出るんですよね? リーシアさん一人みたいですが、危なくないですか?」
「ん~、森の中を歩くに当たっては、危険な魔物に注意していれば、私一人でも大丈夫ですね。こう見えて私、強いですから♪」
リーシアさんは片目をウィンクしながら、手でガッツポーズ作り強さをアピールしてきたが……僕には強さより、可愛さが強調されて見えてしまった。
だがリーシアさんの戦う姿を見たわけではないが、体長1mの動物を仕留めているのなら、それなりに戦えるのだろう。そんなリーシアさんが注意しなければならない魔物に、僕は興味を惹かれた。
「注意しなければならない魔物って……?」
「この辺りだとランナーバードですね」
リーシアさんの話だと体長2m、体重は100kg超す大柄な体躯を持つ魔物らしい。
鳥に分類されるが、羽は小さく巨体故に空は飛べない。代わりに脚力が異常に発達しており、その走る速度は時速50kmに達すると教えてくれた。
普段は用心深く臆病だが、いざ戦いになれば気性が激くなり、一度狙われたら逃げ切るのは不可能だとか……。
足は硬い鱗に覆われ、鋭い鉤爪は皮の鎧ぐらいでは防げないほど高い攻撃力を持っており、ランナーバードの姿を見かけたら静かに立ち去るのが得策との話だった。
「ランナーバードに遭遇したら、戦おうとはしないでください。もし戦いになったら、どちらかが死ぬまで戦うことになりますから……」
「死ぬまで⁈」
「はい。ランナーバードからは絶対に逃げ切れません! 時速50kmで走り回れるスタミナが、逃走を許さないからです」
秒速に換算すると、1秒間で約14mも進める計算で……これは驚異的である。
体重100kgを超える巨体が時速50kmで体当たりしてきたらどうなるか? 当然ぶつかった方は、ただでは済まない。
「確かに逃げ切るのは無理そうですね……」
「だから遭遇してしまったら、気づかれる前に静かに立ち去るのが一番です。もし戦いになったら殺るか殺《や》られるかの2択しかありませんから……」
「ちなみにランナーバードって、どんな格好をしているんですか?」
「私も遭遇したことがありません。聞いた話では黒い体に赤いトサカがあり、特徴的なのが頭から首に掛けては鮮やかな青色と言う話です」
「へ~、それって……あんな感じですか?」
「……え?」
僕がリーシアさんの後方を指差すと、釣られてリーシアさんが振り向く……それは茂みから『ヌッ』と首を出し、僕らをジッと見つめていた。
赤いトサカに、頭から首が青色の鳥の頭が……息を飲む僕とリーシアさんは、ゆっくりと後ずさる。
まだランナーバードと決まったわけではない……特徴がまだ完全に一致していないからだ!
頭の位置が低いことから、別の種類の鳥かもしれない。そんな甘い考えを打ち消すがごとく、鳥が不意に大声を上げ立ち上がった。
「クエエエエエエェェェェェェ!」
僕たちの目の前で立ち上がる鳥の体は、黒く巨大だった!
〈噂のランナーバードが現れた!〉
「お待たせしました。コッチを向いて頂いて構いませんよ」
そう言うと僕が着替えている間、周囲を警戒していたリーシアさんが振り向き、安堵の表情を浮かべる。
「これでようやくまともに話ができますね。改めてよろしくお願いしますね」
「リーシアさん、こちらこそよろしくお願いします。じゃあ、早速アイテム袋にその死体を入れますね」
僕はリーシアさんの横に置かれたシカみたいな動物に、アイテム袋の口を触れて収納する。
「へ~、コレがアイテム袋ですか……初めて見ましたが、すごく便利ですね♪」
一瞬で吸い込まれ、何もない地面を目にしたリーシアさんは感嘆の声を上げて喜んでいた。
リーシアさんが持てる重量の動物と言っても、体長1mはある。地球にいるシカでいったら体重40kgはあるだろうから、それを背負って長時間歩くのは、男であっても困難だ。
さっき血だらけの肉塊を持っていたのも、血抜きして重量を軽くしていたのだろう。
普通に考えて体重40kgのシカを血抜きして、必要な部位だけを解体で抜き出すだけでも一苦労だ。
さらに他の魔物がいるであろう森の中で、呑気に解体など自殺行為かもしれない。下手したら血の匂いに惹かれ、別の魔物がやって来る可能性も否定できない。
それを考えると、アイテム袋に収納して安全な町で解体ができれば、素材を無駄にせず全てを利用できる。女神様が武具や防具ではなく、アイテム袋を渡してくれた理由が何となく分かり、僕はセレス様に感謝していた。
「さっき持っていた、血だらけの肉塊も入れますよ」
「ありがとうございます。ウサミンはこの先の泉に置いてありますので、移動しましょう」
僕はリーシアさんに連れられて、二人で泉に向かって歩き出した。
「そう言えばリーシアさんは狩人なんですか? 森の中で動物を狩っているようですが」
「いいえ、違いますよ。本職は女神教の見習いシスターです。森には教会で使う薬草を摘みに来ました。狩りは襲い掛かる火の粉を振り払う、ついでです」
シスターと聞くと『イノセントギア』という格闘ゲームに出てきた、某シスターキャラを思い出してしまう。
続編が出続ける人気格闘ゲームに登場するキャラクターなのだが、発表当時は性別に記載がなく誰がどう見ても女性キャラだった。
だが、発売直前に開発者が狂ったことを発表してしまった……どう見ても女性キャラの容姿なのに、突然このキャラは男の子として発表してしまったのだ!
フタを開けてみたら実は男の娘だったことが発覚し、ある者は嘆き、ある者は世を捨て、ある者は新たなる世界の扉を開いてしまった。
……いろんな意味で話題になった格闘ゲーム、それが『イノセントギア』だ!
「シスターと言うと?」
「はい、神に祈りと感謝を捧げ、神のために尽くす者ですね……」
そう言ったリーシアさんの瞳に、一瞬かげりが見えた。
ゲームでは、聖職者系は回復役として重要な位置を担っているが、シスターだと聖職者ではなく神の僕なので、回復魔法は使えないのかな?
「なるほど、じゃあ、やっぱり回復魔法を使えたりするんですか?」
興味本位で何気なく聞いてみた。
「シスターでは回復魔法が使えませんね。回復の才能があれば聖職者でなくても使えるのですが、私にはあいにくと才能がありませんでした……でもおかげでコッチの方が得意になりました♪」
少し前を歩くリーシアさんは立ち止まり、僕の方へ体を向けると右足でハイキックを打ち出すと空中で足を止め、見事な足技を披露する。
「ちょっ!リーシアさん!」
僕は慌てて顔を横に向け、視線を外す。
「どうしましたか?」
「どうしましたかじゃなくて、スカートですよね? 見えてしまいますよ!」
「……あ~、大丈夫ですよ、これスカートじゃありませんから」
何かを理解し、ニマニマしながらリーシアさんは話しだした。
「ほらっ、こんな感じです」
そう言って足を下ろしたリーシアさんに視線を向けると……彼女はスカートの裾を両手でつまみ、引っ張っていた。するとスカートに見えていたものが、実はズボンに近いボトムズを履いていることを僕にアピールしてきた。
たしかキュロットスカートッて言うヤツだっけ? 股下がある半ズボンの一種だったはず……裾に向かって広がるズボンのひとつで、一見するとスカートを履いているように見える。ゆったりとしていて下着を気にする必要がないので、動きやすいらしい。
男の僕は履いた事がないので、残念ながら履き心地はよく分からない……むしろ分かったらヤバいよ!
「すみません。変なこと言ってしまいました」
変に意識しすぎて恥ずかしくなった僕は、照れ隠しでリーシアさんを置いて歩き出す。
「あっ! 待ってくださいよ~♪」
僕の後を、なぜか上機嫌でついて来るリーシアさん……そうこうしている内に、茂みを抜けて泉に着いた。
リーシアさんが泉から出ていたロープを引っ張ると、表面の血が洗い流された肉塊が泉の中から現れる。どうやら泉に沈めて保冷していたみたいだ。
僕は泉から取り出した肉塊を受けとり、アイテム袋に素早く収納する。
「それでは町に帰りましょうか。今からなら、夕暮れ前には帰れそうです」
「そう言えば、薬草採りはいいんですか?」
「ヒロさんが意識をなくしている間に、泉の周りの薬草は集めておきました」
リーシアさんが背中に背負ったバックを降ろし、中からパンパンに膨れた麻の袋を見せてくれた。
「やっぱり泉の周りは、人が寄り付かないので薬草を集めるのが楽でした」
「え? どうしてですか?」
「泉は森の中で、魔物や動物の水飲み場でもありますからね。バッタリ遭遇して襲われる可能性が高いです。だから町の人は危険な泉まで来ませんから、手つかずの薬草が大量に手に入るわけです」
その話を聞いて、僕は顔を青くした。
「つまり僕はそんな危ない場所で水浴びをしていたと……」
「です! 最初見た時、『正気ですか?』と思いました」
危なかった! 最初に出会えたのがリーシアさんで本当に助かった……もしそれが魔物だったりしたら、全裸で死んでいた可能性もあったのだ。
某メーカーが発売した人気アクションゲーム、『天国村』でも主人公キャラがダメージを受けると裸になり、さらにダメージを受けると骨になって死ぬゲームがあり……裸で死ねなんて場面、普通にないだろうと笑ってバカにしていた自分を殴り倒したい!
それにしても意識を失った見ず知らずの僕を、泉から離れた場所に移動してくれたリーシアさんには、いくら感謝しても足りないくらいである。
「リーシアさん、助けてくれてありがとうございます」
「どういたしまして。私も帰りはヒロさんのおかげで助かりましたから、こちらこそありがとうございます」
頭を下げてお礼を言う僕を見て、笑顔でリーシアさんが答えてくれた。出会いは最悪だったが、なんとかうち解けた感じである。
「さあ、それじゃ町に帰りましょう」
「はい、よろしくお願いします」
元気に返事をした僕は、リーシアさんの案内のもと、町へ向かって歩きだした。
「ここから町までは遠いですか?」
「そうですね~、歩いて2時間くらいです」
最初に転移した場所から町までは、直線距離で5キロだったはずが、森で迷い全然違う方向へ歩いていたみたいだ。
「この森って魔物も出るんですよね? リーシアさん一人みたいですが、危なくないですか?」
「ん~、森の中を歩くに当たっては、危険な魔物に注意していれば、私一人でも大丈夫ですね。こう見えて私、強いですから♪」
リーシアさんは片目をウィンクしながら、手でガッツポーズ作り強さをアピールしてきたが……僕には強さより、可愛さが強調されて見えてしまった。
だがリーシアさんの戦う姿を見たわけではないが、体長1mの動物を仕留めているのなら、それなりに戦えるのだろう。そんなリーシアさんが注意しなければならない魔物に、僕は興味を惹かれた。
「注意しなければならない魔物って……?」
「この辺りだとランナーバードですね」
リーシアさんの話だと体長2m、体重は100kg超す大柄な体躯を持つ魔物らしい。
鳥に分類されるが、羽は小さく巨体故に空は飛べない。代わりに脚力が異常に発達しており、その走る速度は時速50kmに達すると教えてくれた。
普段は用心深く臆病だが、いざ戦いになれば気性が激くなり、一度狙われたら逃げ切るのは不可能だとか……。
足は硬い鱗に覆われ、鋭い鉤爪は皮の鎧ぐらいでは防げないほど高い攻撃力を持っており、ランナーバードの姿を見かけたら静かに立ち去るのが得策との話だった。
「ランナーバードに遭遇したら、戦おうとはしないでください。もし戦いになったら、どちらかが死ぬまで戦うことになりますから……」
「死ぬまで⁈」
「はい。ランナーバードからは絶対に逃げ切れません! 時速50kmで走り回れるスタミナが、逃走を許さないからです」
秒速に換算すると、1秒間で約14mも進める計算で……これは驚異的である。
体重100kgを超える巨体が時速50kmで体当たりしてきたらどうなるか? 当然ぶつかった方は、ただでは済まない。
「確かに逃げ切るのは無理そうですね……」
「だから遭遇してしまったら、気づかれる前に静かに立ち去るのが一番です。もし戦いになったら殺るか殺《や》られるかの2択しかありませんから……」
「ちなみにランナーバードって、どんな格好をしているんですか?」
「私も遭遇したことがありません。聞いた話では黒い体に赤いトサカがあり、特徴的なのが頭から首に掛けては鮮やかな青色と言う話です」
「へ~、それって……あんな感じですか?」
「……え?」
僕がリーシアさんの後方を指差すと、釣られてリーシアさんが振り向く……それは茂みから『ヌッ』と首を出し、僕らをジッと見つめていた。
赤いトサカに、頭から首が青色の鳥の頭が……息を飲む僕とリーシアさんは、ゆっくりと後ずさる。
まだランナーバードと決まったわけではない……特徴がまだ完全に一致していないからだ!
頭の位置が低いことから、別の種類の鳥かもしれない。そんな甘い考えを打ち消すがごとく、鳥が不意に大声を上げ立ち上がった。
「クエエエエエエェェェェェェ!」
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