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第4章 勇者と森のクマさん編
第39話 死闘の果てに……助ける理由
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銀の流星が大地から空へと駆け上り、オーガベアーをついに切り裂いた。
腹と左目を斬り裂かれ、傷口から大量の出血をするオーガベアーの頭上で、ヒロが叫ぶ!
「リーシア、今です!」
「分かっています!」
言われるまでもなく、すでに鬼は突然の痛みで声を上げるオーガベアーに向かって、攻撃のモーションに入っていた!
歩くのがやっとの満身創痍な状態から、動く左手で握り拳を作りオーガベアーの前に鬼が立つ。
折れた左足でゆっくりと震脚し、一歩前に飛び出した鬼は、すかさず右足で震脚を行い、上へ跳ぶ!
両足から発生した二つの異なる力の波は、ぶつかり合う事で増幅されて鬼の体の中を駆け上がる。通常よりも何倍も高められた波が、体の捻りで莫大な力へと昇華し左腕へと流れて行く。
両目を潰され痛みに我を忘れたオーガベアーの胸の辺りにまで跳び上がった鬼が、ソッと力なく心臓付近に手を添えていた。
「音叉波動衝!」
極限にまで高められた力の波が、鬼の掌からオーガベアーの体内に伝わり……体の内部で大爆発する!
体内から爆発した力の衝撃に逃げ場はなく、オーガベアーの胸が大きく膨らんだと思った瞬間、口から大量の血を吐き出していた!
完全に心臓と肺を内部から破壊され、崩れ落ちようとするオーガベアーは、最後の足掻きに腕を無造作に振るう!
オーガベアーの目の前に着地した直後の鬼には、その攻撃を避ける余力は残されていなかった。
さらにそのタイミングで鬼化が解け、蓄積したダメージが一気にリーシアの体に襲い掛かる。
痛みで一歩も動けないリーシアの顔は、諦めの表情を浮かべていた。今の状態で、あの攻撃を受ければ死は免れない……迫る来る攻撃を避け切れないと判断したリーシアの心は、生きる事を諦めてしまっていた。
だが、上空から落下する男の目は諦めていなかった。
「させるかあぁぁぁぁぁぁ!」
上段に構え、落下スピードの全てを宿したヒーローの剣が、銀色の流星となってオーガベアーに振り下ろされる!
絶妙なタイミングで振り下ろされた剣撃は、全ての力を一点に集め、オーガベアーの体毛と筋肉を切り裂く! そして剣を振り抜いたとき、オーガベアーの腕が跳ね飛び、宙を舞っていた。
ついに力尽き生命の灯火を消すオーガベアー……だが、その巨体がリーシアに向かって倒れ込み始める。
リーシアは、避けようとするが、痛みで体が動かない。ダメージを受けた今の状態で、あの巨体の下敷きになれば恐らく死ぬ。
思わず目をつぶってしまい身構えるリーシア……そして次に目を開けた時、リーシアはヒロに抱きかかえられていた。
着地と同時に、リーシアの方へ倒れ込むオーガベアーを見たヒロは、素早くBダッシュを発動し、リーシアを救い出していた。
一瞬でも助けるのを戸惑えば、二人ともオーガベアーの下敷きになっていたギリギリのタイミングで、ヒロはリーシアを助けられた。
ヒロにお姫様抱っこされたリーシアは、目を開けると視界一杯に映るヒロを、惚けた顔で見つめると……。
「なんで……なんで戻って来たんですか! あんなに酷い事を言った私を、なんで…… あなたは馬鹿なんですか! 死ぬかも知れないのに! 逃げ出せたのに! 私なんて放って置いて、逃げれば良かったのに……なんで……」
自分がワザと拒絶したヒロの突然の乱入に、死の覚悟から生還したリーシアは、困惑しヒロに問い掛けていた。
魔物と言う危険な存在が身近にいる世界に、一人で生きてきたリーシアは、人に頼られる事はあっても、頼る事はなかった……誰にも寄り掛かからず、たった一人で歩んで来た少女にヒロは答える。
「誰かを助けるのに、理由がいりますか?」
「私は助けてなんて言ってませんよ!」
当たり前のように答えたヒロに、リーシアは泣きそうになりながら、語尾を強めてで言い返してきた。
「確かに、リーシアは助けてなんて言ってませんね……僕もリーシアを助けたいと思って助けた訳じゃありません、気づいたら助けていました」
「気づいたら? 何を言っているんですか? 下手したらヒロも死ぬかもしれなかったんですよ! それなのに……」
リーシアが震える手を握りヒロの顔を見上げと、ヒロが真剣な顔で少女に語り掛けていた。
「リーシア……死ぬかも知れない。助けられないかも知れない。自分がいても役に立たないかも知れない。人が人を助けるのに諦める理由や理屈は沢山あります」
「……」
少女は無言で青年の話を聞いていた。
「けれども、それは全て後づけであって、人の根底には誰かを助けてあげたいという想いは、善人でも悪人でも、誰でも当たり前のように持っているものだと僕は思うんです」
「誰でも持っている、助けてあげたいという想い……」
「リーシア、僕と初めて出会った時、腹パンチされて気絶した僕を放置せずに、危ない泉から遠ざけて目覚めるのを待っていてくれたのは、何でですか?」
「……」
なぜか言葉が出てこないリーシア……。
「それが答えです。だからリーシアを助けるのに、理由はいらないんですよ」
ヒロが笑いながらリーシアに見ると、ヒロの言葉を聞いたリーシアの瞳から、なぜか涙が零れ落ちる。
母と死別してから、リーシアにとって世界は残酷で救いのない非情な世界だった。
神や女神はいるはずなのに、祈りを捧げても助けてくれず、世界のどこにも母親以外に信用できる者はいなかった。
家族である教会の皆も、少女は心から信頼はしていなかった。弟として可愛がるリゲルでさえも……。
だからこそ、リーシアは他者との関係を最小限にして生きてきた。
他人に頼られれば最低限の範囲で手を貸すことはあっても、他人には決して気を許さなかった。
母の時みたく裏切られるぐらいならば、いっそ他者との関係を最小限に留めて、いつ裏切られても良いようにと……。
無論、生活をする上で、最低限のコミュニケーションは取るように生きてきたので、街で暮らす分には問題がなかった……だが、魔物と戦うなら話は別だ。
戦いは命懸けであり、他人の命を気に掛けていたら自分の命が危うい。
人は自分の死に直面した時、本性を表す……他人の命をより、自分の命が大事なのは当たり前の事だ。
自分の命が危ないなら他者の命を差し出してでも生きようとする醜い人の本性を、かつてパーティーを組んだ際にまざまざと見せつけられたリーシア……それ以来、パーティーを組む事はなくなった。
命を預けられる仲間なんて、この世にいやしないと……裏切られるぐらいなら、裏切っても問題ない最小限の関係を保つように心掛けて生きてきた。
だと言うのに、この目の前の男は……ヒロはそんなリーシアの生き方を、たった一言でぶっ壊してしまった。
生まれて初めて母親以外で、命を掛けて打算なく自分を助けてくれた人……死ぬかも知れないのに、躊躇なく自分を助けてくれたヒロの言葉を聞いた時、リーシアの中で凍っていた何かが溶け、心の中が温かくなっていた。
その温かさを感じた時、リーシアの瞳から涙が自然に溢れ落ちた。
「おかしいです。悲しいわけではないのに、なんで涙が……。み、見ないでください。私、変な顔してますから」
リーシアは、ヒロの胸に顔を埋めて少しの間だけ泣いていた。
ゲーム三昧の人生で、女性に泣かれたシュチュエーションが皆無のヒロは、こんな時どんな言葉を掛ければ良いのか分からずオタオタする。
しばらくして泣き止んだリーシアが顔を上げ、まだオタオタしているヒロを見てクスリと笑うと一言だけつぶやいた。
「ヒロ……助けてくれて、ありがとう」
感謝の言葉を聞いたヒロは、リーシアの怪我の治療のため、急ぎアルムの町へと戻るのだった。
【レベルが上がりました】
名前 本上 英雄
性別 男
年齢 6才(27才)
職業 プログラマー
レベル :8 (レベルUP)
HP:96/155(+70)
MP:49/115(+70)
筋力:101(+70)
体力:121(+70)
敏捷:101(+70)
知力:121(+70)
器用:111(+70)
幸運: 96(+70)
固有スキル デバック LV 1
言語習得 LV 1
Bダッシュ LV 3(レベルUP)
2段ジャンプ LV 1
溜め攻撃 LV 1(New)
所持スキル 女神の絆 LV 1
女神の祝福 【呪い】LV 10
身体操作 LV 1
剣術 LV 1(New)
〈勇者の想いが、少女の心に温かな何かをもたらした!〉
腹と左目を斬り裂かれ、傷口から大量の出血をするオーガベアーの頭上で、ヒロが叫ぶ!
「リーシア、今です!」
「分かっています!」
言われるまでもなく、すでに鬼は突然の痛みで声を上げるオーガベアーに向かって、攻撃のモーションに入っていた!
歩くのがやっとの満身創痍な状態から、動く左手で握り拳を作りオーガベアーの前に鬼が立つ。
折れた左足でゆっくりと震脚し、一歩前に飛び出した鬼は、すかさず右足で震脚を行い、上へ跳ぶ!
両足から発生した二つの異なる力の波は、ぶつかり合う事で増幅されて鬼の体の中を駆け上がる。通常よりも何倍も高められた波が、体の捻りで莫大な力へと昇華し左腕へと流れて行く。
両目を潰され痛みに我を忘れたオーガベアーの胸の辺りにまで跳び上がった鬼が、ソッと力なく心臓付近に手を添えていた。
「音叉波動衝!」
極限にまで高められた力の波が、鬼の掌からオーガベアーの体内に伝わり……体の内部で大爆発する!
体内から爆発した力の衝撃に逃げ場はなく、オーガベアーの胸が大きく膨らんだと思った瞬間、口から大量の血を吐き出していた!
完全に心臓と肺を内部から破壊され、崩れ落ちようとするオーガベアーは、最後の足掻きに腕を無造作に振るう!
オーガベアーの目の前に着地した直後の鬼には、その攻撃を避ける余力は残されていなかった。
さらにそのタイミングで鬼化が解け、蓄積したダメージが一気にリーシアの体に襲い掛かる。
痛みで一歩も動けないリーシアの顔は、諦めの表情を浮かべていた。今の状態で、あの攻撃を受ければ死は免れない……迫る来る攻撃を避け切れないと判断したリーシアの心は、生きる事を諦めてしまっていた。
だが、上空から落下する男の目は諦めていなかった。
「させるかあぁぁぁぁぁぁ!」
上段に構え、落下スピードの全てを宿したヒーローの剣が、銀色の流星となってオーガベアーに振り下ろされる!
絶妙なタイミングで振り下ろされた剣撃は、全ての力を一点に集め、オーガベアーの体毛と筋肉を切り裂く! そして剣を振り抜いたとき、オーガベアーの腕が跳ね飛び、宙を舞っていた。
ついに力尽き生命の灯火を消すオーガベアー……だが、その巨体がリーシアに向かって倒れ込み始める。
リーシアは、避けようとするが、痛みで体が動かない。ダメージを受けた今の状態で、あの巨体の下敷きになれば恐らく死ぬ。
思わず目をつぶってしまい身構えるリーシア……そして次に目を開けた時、リーシアはヒロに抱きかかえられていた。
着地と同時に、リーシアの方へ倒れ込むオーガベアーを見たヒロは、素早くBダッシュを発動し、リーシアを救い出していた。
一瞬でも助けるのを戸惑えば、二人ともオーガベアーの下敷きになっていたギリギリのタイミングで、ヒロはリーシアを助けられた。
ヒロにお姫様抱っこされたリーシアは、目を開けると視界一杯に映るヒロを、惚けた顔で見つめると……。
「なんで……なんで戻って来たんですか! あんなに酷い事を言った私を、なんで…… あなたは馬鹿なんですか! 死ぬかも知れないのに! 逃げ出せたのに! 私なんて放って置いて、逃げれば良かったのに……なんで……」
自分がワザと拒絶したヒロの突然の乱入に、死の覚悟から生還したリーシアは、困惑しヒロに問い掛けていた。
魔物と言う危険な存在が身近にいる世界に、一人で生きてきたリーシアは、人に頼られる事はあっても、頼る事はなかった……誰にも寄り掛かからず、たった一人で歩んで来た少女にヒロは答える。
「誰かを助けるのに、理由がいりますか?」
「私は助けてなんて言ってませんよ!」
当たり前のように答えたヒロに、リーシアは泣きそうになりながら、語尾を強めてで言い返してきた。
「確かに、リーシアは助けてなんて言ってませんね……僕もリーシアを助けたいと思って助けた訳じゃありません、気づいたら助けていました」
「気づいたら? 何を言っているんですか? 下手したらヒロも死ぬかもしれなかったんですよ! それなのに……」
リーシアが震える手を握りヒロの顔を見上げと、ヒロが真剣な顔で少女に語り掛けていた。
「リーシア……死ぬかも知れない。助けられないかも知れない。自分がいても役に立たないかも知れない。人が人を助けるのに諦める理由や理屈は沢山あります」
「……」
少女は無言で青年の話を聞いていた。
「けれども、それは全て後づけであって、人の根底には誰かを助けてあげたいという想いは、善人でも悪人でも、誰でも当たり前のように持っているものだと僕は思うんです」
「誰でも持っている、助けてあげたいという想い……」
「リーシア、僕と初めて出会った時、腹パンチされて気絶した僕を放置せずに、危ない泉から遠ざけて目覚めるのを待っていてくれたのは、何でですか?」
「……」
なぜか言葉が出てこないリーシア……。
「それが答えです。だからリーシアを助けるのに、理由はいらないんですよ」
ヒロが笑いながらリーシアに見ると、ヒロの言葉を聞いたリーシアの瞳から、なぜか涙が零れ落ちる。
母と死別してから、リーシアにとって世界は残酷で救いのない非情な世界だった。
神や女神はいるはずなのに、祈りを捧げても助けてくれず、世界のどこにも母親以外に信用できる者はいなかった。
家族である教会の皆も、少女は心から信頼はしていなかった。弟として可愛がるリゲルでさえも……。
だからこそ、リーシアは他者との関係を最小限にして生きてきた。
他人に頼られれば最低限の範囲で手を貸すことはあっても、他人には決して気を許さなかった。
母の時みたく裏切られるぐらいならば、いっそ他者との関係を最小限に留めて、いつ裏切られても良いようにと……。
無論、生活をする上で、最低限のコミュニケーションは取るように生きてきたので、街で暮らす分には問題がなかった……だが、魔物と戦うなら話は別だ。
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人は自分の死に直面した時、本性を表す……他人の命をより、自分の命が大事なのは当たり前の事だ。
自分の命が危ないなら他者の命を差し出してでも生きようとする醜い人の本性を、かつてパーティーを組んだ際にまざまざと見せつけられたリーシア……それ以来、パーティーを組む事はなくなった。
命を預けられる仲間なんて、この世にいやしないと……裏切られるぐらいなら、裏切っても問題ない最小限の関係を保つように心掛けて生きてきた。
だと言うのに、この目の前の男は……ヒロはそんなリーシアの生き方を、たった一言でぶっ壊してしまった。
生まれて初めて母親以外で、命を掛けて打算なく自分を助けてくれた人……死ぬかも知れないのに、躊躇なく自分を助けてくれたヒロの言葉を聞いた時、リーシアの中で凍っていた何かが溶け、心の中が温かくなっていた。
その温かさを感じた時、リーシアの瞳から涙が自然に溢れ落ちた。
「おかしいです。悲しいわけではないのに、なんで涙が……。み、見ないでください。私、変な顔してますから」
リーシアは、ヒロの胸に顔を埋めて少しの間だけ泣いていた。
ゲーム三昧の人生で、女性に泣かれたシュチュエーションが皆無のヒロは、こんな時どんな言葉を掛ければ良いのか分からずオタオタする。
しばらくして泣き止んだリーシアが顔を上げ、まだオタオタしているヒロを見てクスリと笑うと一言だけつぶやいた。
「ヒロ……助けてくれて、ありがとう」
感謝の言葉を聞いたヒロは、リーシアの怪我の治療のため、急ぎアルムの町へと戻るのだった。
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敏捷:101(+70)
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