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第7章 勇者と絶望編
第69話 希望……新たなる輝き⁈
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「馬鹿ナ、我が防御ヲ破ったと言ウノか⁈」
オークヒーローが、驚愕の表情を顔に浮かべていた。ひ弱なオークから進化し、スキルが発現した日から、攻撃を通した事がない絶対防御スキル。
あらゆる物理攻撃を弾くスキルが初めて効かない敵……オークヒーローは、肩から腹に掛けて付けられた傷を見る。
血が吹き出しているが、それは最初だけでもう流血は勢いを無くしている。
当たったと思われたヒロの一撃は、薄皮一枚の深さを切り裂いただけで、致命傷を与える様なダメージでは無かった。
オークヒーローにとってはダメージと言うには微々たるものだ。これなら先ほど仕留めた鬼が放った脇腹のダメージの方が余程、深刻だった。
立っているだけでも痛みが走り続ける脇腹のダメージは、オークヒーローに確実にダメージを与えていた。
そして、ヒロに付けられた傷を見たオークヒーローは……。
「フッフッフッアハッハハハハハハッ!」
笑い出していた。脇腹の痛みよりも、絶対防御スキルの能力を知っても、なお真正面から挑み打ち破った雄に、オークヒーローは笑いが止まらなくなってしまった。
「な、何がおかしい?」
「イヤ、久方ぶリに傷をマトモに負っタのでナ。それも我ガ絶対防御スキルヲ真正面カラ打ち破ッテと思ったら、笑イが堪えきれなくナッた。気を悪くスルな」
「お前は言葉が分かるのか?」
「コトバ? お前達のコトバは分からナイが、先ほどカラお前の言ウ事は何故カ分かル」
「……言語スキルのおかげで、オークの言葉を理解しつつあるのか?」
やはり、オークヒーローには知性があり、人の言葉に代わる言語で言葉を話していたようだ。
だとすると、普通のオーク達も知性があり、言葉を使って生活している可能性は高かった。
「そんな事はドウでも良イ。戦士ヨ。我ハ認めよう。お前が我ト戦うニ相応シイ戦士である事ヲ……生かしテ返スツモリはない。さあ、全力を持ッテ我に挑メ!」
オークヒーローが再びバルバードを後ろ手に構える。
言葉を理解する知性ある魔物の出現に、ヒロは警戒を強めてショートソードを構える。
知性があるということは、思考できることをヒロは理解している。それはつまり失敗を糧に、対策もできることを意味していた。
「戦士ヨ! 言葉が分かルのなら名乗リを上げろ! 我ガ名はカイザー! オーク族ガ族長カイザー!」
名乗りを上げるカイザーにヒロは答えた。
「英雄! 本神 英雄だ!」
ヒロは略称では無く、フルネームで答えた。この世界では英雄の発音が変態の意味なのは知っていたが、これから命のやり取りをする相手が名乗れと言ったのだ。
それは相手に対して礼を尽くす意味から、ヒロは本名を偽りなく名乗った。
「ヒーローだト? お前ふざけテいるのか! 闘いを侮辱するつモリか!」
突如怒り出すカイザー……予想していたが変態の名前がふざけて言っているのと勘違いされている。
「ふざけている訳ではありません! 親から貰った名前です。たとえふざけた名前だと思われても、命のやり取りをする相手に嘘は言えません! 英雄それが僕の名前です!」
「……そうカ、我が浅はかであっタ……許セ。しかしヒーローとハ難儀ナ……我らオーク族ならそんな名ハ絶対につけヌ」
真面目な顔で言い返すヒロの言葉に、カイザーは本当に、その名に偽りがない事を知ると素直に謝ってきた。
だがカイザーの顔が哀れむような表情を浮かべている事を、ヒロは怪訝に思い、戦いの最中ながら聞き返してしまった。
「戦いの前に聞いておきたい。ヒーローという発音はオークの言葉で何という意味なんだ?」
「ムウ……知らぬノカ……そうで無ければ確かにあれだけ堂々ト名乗る訳がナイカ……良かロウ、教えてヤル。ヒーローとは我らオークの言葉でロリコンという意味デ嫌われテいる」
沈黙が二人の雄を襲った。
「え?……まって? まって! ちょっと待って! ヒーローって、オークの言葉でロリコンって意味なんですか? ロリコンって……あのロリコン事ですか? それキラキラネームを通り越してますよね?」
「ウム、だから我ハ馬鹿にされていると思っテ、怒っタノだ。名を名乗れと言ったのに自分はロリコンだと意味不明な事ヲ言われれば普通に怒ル」
「変態に続いてロリコンって……ガイヤの世界でヒーローって言葉は呪われているのか? 偶然だとしても酷すぎる……ロリコン……」
「まあそんな些細ナ事はもういい、さあロリコンよ! 我の期待に応えてミロ!」
「応え方によっては、犯罪だよ畜生!」
ヤケッパチになり声を上げるヒロ……すると、今まで余裕の構えで相手に先手を打たせていたカイザーが、今回は先手を取って走り出していた。
「今度はこちらカラ攻めさせてもらオウ!」
バルバードを横に構え迫るカイザーの動きは速かった。今までの敵を待ち構え、迎え撃つカウンター主体の戦い方から、自らが打って出る攻めの戦い方にシフトしていた。
重量のあるバルバードを片手で軽々と持ち、まるで重さを感じさせずに横なぎの攻撃がヒロを襲う!
突然の戦いの開幕に、ヒロはカイザーの動きに後れを取り、バルバードの回避が間に合わない。
「クッ! 先手を取られた!」
ヒロはとっさに迫るバルバードに合わせて、ショートソードを横に振るっていた!
黄金の輝きがバルバードにぶつかると、輝きを辺りに撒き散らし、拮抗する力が互いの繰り出した武器の勢いを殺し、反発して弾き合う。
「力は互角!」
「その体で我と同等の力だと……面白い!」
地面にクレーターを作るカイザーの馬鹿げた力に、ヒロは負けていなかった。ブレイブチェンジによって書き換えられたステータスが、カイザーに匹敵する力をヒロに与えていた。
カイザーは久しく感じていなかった闘いに喜び、昔を思い出す。弱かった自分が仲間を守るために、力を求めて足掻いていた頃を……強くある理由を改めて思い出したカイザーは、全力でヒロと闘う。
それは挑まれる者の覚悟、全てを掛けて挑む者への礼儀……そして仲間を守るための闘い!
自然にその四肢に力が入り、闘志が湧き上がり、攻撃に熱がこもる。
ヒロも負ける訳には行かなかった。負ければ自分だけではない。リーシアの命が……このままオークの数が増え続ければ、スタンピードが起こり、アルムの町で出会った人々の笑顔が消えてしまう。強敵を前にしてヒロの心は奮い立ち、体に力が入る。
カイザーが振るうバルバードを、次々とヒロは捌く。
先程とは違い、苛烈なカイザーの攻撃に防戦一方で攻めに転じられない。攻撃の隙を突こうにも、止まらないハルバートの連撃は、老齢な戦士の様に的確にヒロの動きを読み、反撃を許さない。
「まずい!」
だが、カイザーの攻撃をショートソードで防ぎ続けていたヒロに変化が訪れた。カイザーと打ち合う度に黄金の輝きが刀身から飛び散り、少しずつその輝きが失われつつあった。
再チャージすれば問題がないが、カイザーの熾烈な攻撃を捌きつつ、ブレイブチャージするチャンスが来ない。
今のヒロでは流した力が剣の中で暴れ回り、安定するまでに時間が掛かる。ブレイブチャージしながら、カイザーの攻撃を防ぎ切るのは困難を極めた。
一瞬でも気を抜けば、ハルバートの一撃が確実に当たる。
チャージに要する時間は5秒……たった5秒のチャージ時間が、今のヒロにとって永遠に近い時間に感じられた。
だが冷酷にも、それから何合も打ち合わない内に、黄金の輝きが刀身から消え失せてしまう。
それを見たヒロは……チャージされていないショートソードを構え……賭けに出るのだった。
〈南の森でロリコンとオークヒーローの闘いが佳境を迎えようとしていた!〉
オークヒーローが、驚愕の表情を顔に浮かべていた。ひ弱なオークから進化し、スキルが発現した日から、攻撃を通した事がない絶対防御スキル。
あらゆる物理攻撃を弾くスキルが初めて効かない敵……オークヒーローは、肩から腹に掛けて付けられた傷を見る。
血が吹き出しているが、それは最初だけでもう流血は勢いを無くしている。
当たったと思われたヒロの一撃は、薄皮一枚の深さを切り裂いただけで、致命傷を与える様なダメージでは無かった。
オークヒーローにとってはダメージと言うには微々たるものだ。これなら先ほど仕留めた鬼が放った脇腹のダメージの方が余程、深刻だった。
立っているだけでも痛みが走り続ける脇腹のダメージは、オークヒーローに確実にダメージを与えていた。
そして、ヒロに付けられた傷を見たオークヒーローは……。
「フッフッフッアハッハハハハハハッ!」
笑い出していた。脇腹の痛みよりも、絶対防御スキルの能力を知っても、なお真正面から挑み打ち破った雄に、オークヒーローは笑いが止まらなくなってしまった。
「な、何がおかしい?」
「イヤ、久方ぶリに傷をマトモに負っタのでナ。それも我ガ絶対防御スキルヲ真正面カラ打ち破ッテと思ったら、笑イが堪えきれなくナッた。気を悪くスルな」
「お前は言葉が分かるのか?」
「コトバ? お前達のコトバは分からナイが、先ほどカラお前の言ウ事は何故カ分かル」
「……言語スキルのおかげで、オークの言葉を理解しつつあるのか?」
やはり、オークヒーローには知性があり、人の言葉に代わる言語で言葉を話していたようだ。
だとすると、普通のオーク達も知性があり、言葉を使って生活している可能性は高かった。
「そんな事はドウでも良イ。戦士ヨ。我ハ認めよう。お前が我ト戦うニ相応シイ戦士である事ヲ……生かしテ返スツモリはない。さあ、全力を持ッテ我に挑メ!」
オークヒーローが再びバルバードを後ろ手に構える。
言葉を理解する知性ある魔物の出現に、ヒロは警戒を強めてショートソードを構える。
知性があるということは、思考できることをヒロは理解している。それはつまり失敗を糧に、対策もできることを意味していた。
「戦士ヨ! 言葉が分かルのなら名乗リを上げろ! 我ガ名はカイザー! オーク族ガ族長カイザー!」
名乗りを上げるカイザーにヒロは答えた。
「英雄! 本神 英雄だ!」
ヒロは略称では無く、フルネームで答えた。この世界では英雄の発音が変態の意味なのは知っていたが、これから命のやり取りをする相手が名乗れと言ったのだ。
それは相手に対して礼を尽くす意味から、ヒロは本名を偽りなく名乗った。
「ヒーローだト? お前ふざけテいるのか! 闘いを侮辱するつモリか!」
突如怒り出すカイザー……予想していたが変態の名前がふざけて言っているのと勘違いされている。
「ふざけている訳ではありません! 親から貰った名前です。たとえふざけた名前だと思われても、命のやり取りをする相手に嘘は言えません! 英雄それが僕の名前です!」
「……そうカ、我が浅はかであっタ……許セ。しかしヒーローとハ難儀ナ……我らオーク族ならそんな名ハ絶対につけヌ」
真面目な顔で言い返すヒロの言葉に、カイザーは本当に、その名に偽りがない事を知ると素直に謝ってきた。
だがカイザーの顔が哀れむような表情を浮かべている事を、ヒロは怪訝に思い、戦いの最中ながら聞き返してしまった。
「戦いの前に聞いておきたい。ヒーローという発音はオークの言葉で何という意味なんだ?」
「ムウ……知らぬノカ……そうで無ければ確かにあれだけ堂々ト名乗る訳がナイカ……良かロウ、教えてヤル。ヒーローとは我らオークの言葉でロリコンという意味デ嫌われテいる」
沈黙が二人の雄を襲った。
「え?……まって? まって! ちょっと待って! ヒーローって、オークの言葉でロリコンって意味なんですか? ロリコンって……あのロリコン事ですか? それキラキラネームを通り越してますよね?」
「ウム、だから我ハ馬鹿にされていると思っテ、怒っタノだ。名を名乗れと言ったのに自分はロリコンだと意味不明な事ヲ言われれば普通に怒ル」
「変態に続いてロリコンって……ガイヤの世界でヒーローって言葉は呪われているのか? 偶然だとしても酷すぎる……ロリコン……」
「まあそんな些細ナ事はもういい、さあロリコンよ! 我の期待に応えてミロ!」
「応え方によっては、犯罪だよ畜生!」
ヤケッパチになり声を上げるヒロ……すると、今まで余裕の構えで相手に先手を打たせていたカイザーが、今回は先手を取って走り出していた。
「今度はこちらカラ攻めさせてもらオウ!」
バルバードを横に構え迫るカイザーの動きは速かった。今までの敵を待ち構え、迎え撃つカウンター主体の戦い方から、自らが打って出る攻めの戦い方にシフトしていた。
重量のあるバルバードを片手で軽々と持ち、まるで重さを感じさせずに横なぎの攻撃がヒロを襲う!
突然の戦いの開幕に、ヒロはカイザーの動きに後れを取り、バルバードの回避が間に合わない。
「クッ! 先手を取られた!」
ヒロはとっさに迫るバルバードに合わせて、ショートソードを横に振るっていた!
黄金の輝きがバルバードにぶつかると、輝きを辺りに撒き散らし、拮抗する力が互いの繰り出した武器の勢いを殺し、反発して弾き合う。
「力は互角!」
「その体で我と同等の力だと……面白い!」
地面にクレーターを作るカイザーの馬鹿げた力に、ヒロは負けていなかった。ブレイブチェンジによって書き換えられたステータスが、カイザーに匹敵する力をヒロに与えていた。
カイザーは久しく感じていなかった闘いに喜び、昔を思い出す。弱かった自分が仲間を守るために、力を求めて足掻いていた頃を……強くある理由を改めて思い出したカイザーは、全力でヒロと闘う。
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自然にその四肢に力が入り、闘志が湧き上がり、攻撃に熱がこもる。
ヒロも負ける訳には行かなかった。負ければ自分だけではない。リーシアの命が……このままオークの数が増え続ければ、スタンピードが起こり、アルムの町で出会った人々の笑顔が消えてしまう。強敵を前にしてヒロの心は奮い立ち、体に力が入る。
カイザーが振るうバルバードを、次々とヒロは捌く。
先程とは違い、苛烈なカイザーの攻撃に防戦一方で攻めに転じられない。攻撃の隙を突こうにも、止まらないハルバートの連撃は、老齢な戦士の様に的確にヒロの動きを読み、反撃を許さない。
「まずい!」
だが、カイザーの攻撃をショートソードで防ぎ続けていたヒロに変化が訪れた。カイザーと打ち合う度に黄金の輝きが刀身から飛び散り、少しずつその輝きが失われつつあった。
再チャージすれば問題がないが、カイザーの熾烈な攻撃を捌きつつ、ブレイブチャージするチャンスが来ない。
今のヒロでは流した力が剣の中で暴れ回り、安定するまでに時間が掛かる。ブレイブチャージしながら、カイザーの攻撃を防ぎ切るのは困難を極めた。
一瞬でも気を抜けば、ハルバートの一撃が確実に当たる。
チャージに要する時間は5秒……たった5秒のチャージ時間が、今のヒロにとって永遠に近い時間に感じられた。
だが冷酷にも、それから何合も打ち合わない内に、黄金の輝きが刀身から消え失せてしまう。
それを見たヒロは……チャージされていないショートソードを構え……賭けに出るのだった。
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