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第12章 勇者とエクソダス編
第124話 廃神女神の人生勉強!
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「馬鹿な……ワシが……ワシが破れるいうのか?」
「ふん、お主は……少し生き急ぎ過ぎなのじゃよ」
憂いた目で老婆が老人を諭す。
「なんだと?」
「お主がやろうとしている事は善なのだろうさ。だがな、やり方が間違っておるのじゃ……その善なる願いを急ぐあまり、悪となっていては本末転倒じゃよ!」
老婆は呆れながら、老人に言い放った。
「馬鹿な! ワシは皆のため、世界をより良くするために……もうワシには時間がないのだよ! 世界はひとつにならねばならん! それには絶対の強さが必要なのだ!」
老人は自分以外の人が、幸せに生きられる世界を夢見ていた。
「じゃから、お主はソレを作ったのか?」
「そうだ。あらゆる武芸、武術の達人の技と経験をコピーした、このヒューマノイドマシーン『デュアル』……誰も逆らえない強さを持つこのデュアルの元で、人は管理運営されてこそ、未来永劫幸せな時を過ごせるのに……なぜ、それが分からんアキコ!」
猛る老人に、アキコは憐みの目を向けた。
「だがその人形も、人の想いの前に破れ去ったようじゃな」
デュアルを倒すため、犠牲になった仲間たち(平均年齢65歳)の亡骸を、老婆は哀しみの目で見ていた。
「アキコ、お前さえ、お前さえいなければ!」
「ジーさん。お主の想いは分からなくはない。じゃがな……自分の幸せが他人の幸せとは言えんのじゃよ。幸せとは千差万別、100の人が居れば100の幸せがあって然るべきなのじゃ」
ハンマーで殴られたかのような衝撃が、ジーさんを襲う。
「ワシが……ワシが間違っていたと言うのか?」
「人生とは何を成したかではない、どうして成そうとしたかじゃよ」
「……フッフッフッ、アキコよ。60を過ぎて教えられたよ。生き急いでいたか……確かに死を前にしてワシは焦ってしまっていたのかもしれん」
何か吹っ切れたジーさん……その顔は清々しかった。
「じーさん……人生は長い。まだいくらでも、やり直しはできるはずじゃ」
アキコはジーさんの目を見て、その手を差し出す。和解の握手……だがジーさんはその手を取るのを躊躇していた。
「アキコ……ワシはまだ、やり直せるのだろうか?」
自信なさげなジーさんの問いに、アキコは満遍の笑みで、その手を握り言い放つ!
「まだ60の若造が何を言っておる。そんな言葉を吐くのは……10年早いんじゃよ!」
「アキコさん最高です!」
「すごいアキコさん!」
そこは天界にある女神セレスのプライベートルーム。部屋の中でクッションに座り、モニター画面に向かって拍手喝采する女神たちの姿がそこにあった。
ゲーム廃神と化しつつある神界の実質トップ、大地の女神セレス。
最近セレスのそば付きとして抜擢された、見習い女神のニーナ。
二人の女神がモニターの前で、釘付けになっていた。
「ばーちゃんファイター、コレは神です! 戦いの中に哲学を盛り込んだ神ゲーです!」
「アキコさん、カッコいい! 私こんな老婆になりたいです!」
二人が狂喜乱舞して讃えるのは、サガパターンが誇る3D対戦格闘ゲームの元祖、『ばーちゃんファイター』だった!
ばーちゃんファイター……世界初の3D対戦格闘ゲームとして、2D対戦格闘ゲームが主流の時代に、忽然と現れた巨星である。
当初は地味なグラフィックと1Pry\200が災いし、人気は低迷していたが……その奥深いシステムに魅了されたゲーマー達の間で、ジワリジワリと人気を上げ、その名を格闘ゲームの歴史に残す程にまで至った伝説である!
八極拳の使い手アキコさん(62歳)を主人公に、最強の座を目指し戦うこのゲーム最大の特徴は、ポリゴンによる3Dで表現されたリアルな動きだった。既存の2D対戦型格闘ゲームとは異なる操作性と演出で一世を風靡したのだ。
名機ギガドライブの後継機、サガパターンのキラータイトルとして発売されたこのゲーム……コアな信者を有するSAGAファンの絶大な支持を得て売れに売れた!
数定販売本数71万本、続くグラフィックが大幅に向上したばーちゃんファイター2は、130万本と破竹の勢いで対戦型格闘ゲーム業界を席巻した。
派手な技が売りの2D対戦格闘ゲームに比べ、ばーちゃんファイターはパッと見、地味な見た目だったが、それはリアルな動きを追求した結果だった。
3Dを生かした位置関係やパースの正確さ、モーションの動きで魅力を引き出し、既存の2D対戦格闘ゲームとの差別化を計る事に成功したのだ。
ゲームシステムは6個ボタンが主流だった格闘ゲーム業界において、パンチ、キック、ガードという3個ボタンを採用することで、打撃・投げ・ガードのシンプルな三すくみの攻防が確立され……戦いの駆け引きとシンプルでありながら、より深い戦略が立てられる玄人好みのゲームへと仕上がっている。
主人公であるアキコさん(62歳)の決め台詞、『10年早いんじゃよ!』は、あまりにも有名であり、格闘ゲームをやった事がない人でも、一度は聞いたことがあるだろう。62年と言う歳月がもたらした言葉の重みに、誰もが納得の決め台詞である。
60歳を超える高齢キャラクター達が織りなす、人生を賭けた戦い……3D対戦格闘ゲームの元祖、それが『ばーちゃんファイター』だ!
「アキコさん……長い時を生きたからこそ言える、その言葉の重み、勉強になります」
「セレス様、私アキコさんみたいな女神になれるよう、頑張ります!」
「それは良いです。私もアキコさんを見習わなければいけませんね。何を成したかではない、どうして成そうとしたか……この言葉は深いです!」
「セレス様、早く対戦モードで遊びましょう! 私も早くやりたいです!」
「分かっています。ちょうど今、もう1台のばーちゃんスティックの作成が終わりましたから、一緒に遊びましょう!」
セレスが両手を上に向けて目を閉じると、手の上に、光る魔法陣が描かれ、その中からジョイスティックが浮かび上がる。
横幅738mm、縦幅230mmと、かなり巨大なジョイスティックが現れ、セレスはあまりの大きさに取り落としそうになる。
「ヒャア! あ、危なかったです。せっかく作ったジョイスティックを落として壊すとこでした!」
「セレス様、お気を付けてください。神気も節約せねばですから」
「分かっています。ようやくニューハードの作成に目処がついたのですから……できるだけ節約して、まだ見ぬゲームソフトの作成も急がねばなりません」
セレスはなんと、ヒロのために作る予定だったギガドライブを作らずに、次なるニューハードの作成に着手していた。
足りない神気を、ニーナの神器を作るために溜め込んだ……莫大な神気を使って!
『世界のため』、その一言を免罪符に、セレスは廃神女神の道を突っ走っていた!
止まらない加速に快感すら覚え、アクセル全開のセレスは、今日もゲーマーの道を爆走する。
「早く、他のソフトで遊びたいです。ところで、このジョイスティック大きいですね」
「はい。ヒロ様の記憶にある風景から再現しましたが、ヒロ様はコレを一人で操って、対人戦の修行をしていました。元々は二人で遊ぶ拡張機器で、『ばーちゃんスティクPRO』と言うらしいです」
ばーちゃんスティクPRO……ゲームセンターに置いてあるばーちゃんファイターと、同じ環境を自宅で再現できる夢の拡張機器である。
特出すべきはその大きさである……横に並んで2プレイ対戦するため、ジョイスティックとボタンが二つずつ並んでいるのだ。
ゲームセンターと同じ感覚で遊べるばーちゃんスティクPROは、コアなゲーマーを中心に売れた!
当時のサガパターンの販売価格が\44800に対して、ばーちゃんスティクPROは\24800……サガ信者達の信仰度を試される拡張機器、それが『ばーちゃんスティクPRO』だ!
「セレス様、これを一人で……どうやってですか?」
「寝っ転がって、両手と両足で2プレイしていました……」
ヒロの名誉のために補足しておく! 決して友達が居ないわけでも、遊ぶ相手が居ないわけではない!
真のゲーマーとは孤高……人知れず鍛錬に励む姿こそが、美徳なのだ!
「勇者様って器用なんですね!」
「ええ、動きが若干気持ち悪かったですが、器用に一人で対戦してました。さあ! 私たちも対戦しましょう!」
「はい! 私アキコさんを使いたいです!」
「いいですよ。じゃあ私はこっちの忍者なる格好のシャドー丸を使いますよ」
和気あいあいと、ばーちゃんスティクPROのコネクターをサガパターンに差し込むセレス。
サガパターン……株式会社サガエンタープライズが世に解き放った次世代32bitゲーム機である。
3Dポリゴン機能を持つが、最強の2D機能を有するモンスターマシン、それがサガパターンだった。
サガパターンは、高性能のCPUと2Dスプライト機能により、格闘ゲームやシューティングゲームといったジャンルを得意とする本体だった。
とくに業務用ゲーム筐体からの移植に強いサガパターンは、ゲームセンターにたむろするゲーマー達を取り込み、コアな信者を抱えるサガ信者に合流させる事で、さらなる勢力拡大に成功した話は有名である。
だが、このサガパターンの発売が、株式会社サガ崩壊の引き金を引く事になろうとは……当時の関係者は誰も想像がつかなかったのである。
ライバル機とシノギを削るハードウエア戦争で、サガパターンは構成パーツの多さから、思うように価格が下がらず……逆に構造が安易なライバル機は、大量生産によるプライスダウンに踏みきられ、大きく水を開けられてしまった。
下がり続けるライバル機の価格に、赤字覚悟の価格対抗で迎え撃つサガパターン……それがトドメとなった。
売れば売るほど赤字が計上され利益が出せない。
価格を下げたにもかかわらず、ライバル機のさらなるプライスダウンに販売台数が伸び悩んだ。
当然、ハードが売れなければソフトも売れない……ゲーム制作会社もソフト開発を考えねばならず、数多くの会社がサガパターンでのゲーム発売を諦めねばならなかった。
日本国内では販売台数580万台、世界合計で900万台と予想を下回る販売台数に関係者は頭を抱えた。旧ハードであるキガドライブが、全世界3075万台売り上げた事を考えれば。察する人も多いだろう。
ハードが売れない原因……それはギガドライブで大人気だったゾニッグ・ザ・ホッドドックの続編を出さなかった事も起因している。
ギガドライブのキラータイトルが、後継機のサガパターンで発売されないなんて、だれが予想しただろうか……しかも、海外でもっとも人気が高いゾニッグがである!
日本では売れたサガパターンは、このせいで海外ではサッパリ売れず、散々な結果を出すことになる。
そしてこれが、株式会社サガの転落へとつながるのであった。
最強の2D性能を持ちながら価格競争に敗れた不遇のハード……それが『サガパターン』だ!
「しかしヒロ様のために、もう1台ギガドライブを作ろうとしましたが、サガパターンを作って正解でした」
「セレス様、こっちのが対戦出来るゲームが多くて、二人で遊ぶには最適ですね。英断でした」
ニーナ褒められ、ドヤ顔のセレス!
「ニーナ、あなたの神気は無駄にはしません! 世界を救うため、大事に使わせてもらます」
「はい! 私の神気がガイヤを救う手立てになるなら、本望です」
「良くぞ言ってくれましたニーナ……あなたの献身を私は絶対に忘れませんよ。ありがとう」
ニーナの肩に優しく手を置き、礼を述べるセレス。
(この子の莫大な神気があれば、まだ見ぬハードを開発できます。フッフッフッフッ。ニーナ、あなたの神気……全てハード開発のために搾り取らせてもらいますよ)
「どうしましたかセレス様?」
黒い感情がセレスの心に闇を落とし、その顔を一瞬暗くする。
だがニーナの声にすぐに笑顔を作り、その本心を悟らせぬよう取り繕っていた。
「な、なんでもありませんよ。さあニーナ、ばーちゃんファイターやりましょう。今夜も徹夜です!」
「はい、セレス様! 五徹でも六徹でも世界のため、お付き合い致します」
公務の仕事以外は、全てをゲームに捧げるセレス……ゲームに出会ってからというもの、徹夜が続きすでに7日も寝ていない。
女神故、寝なくてもどうとでもなるが、目の下にできた深いクマは、セレスの美貌に影を落とし始めていた。
「さあ! 朝までに300戦はしますからね♪」
「お供します。セレス様!」
二人の女神は、いつ終わるともしれない戦いのロンドへと、その身を投じるのであった。
だがこの時、女神セレスは思いもしなかった……自分の行いが、株式会社サガと同じような運命を辿ることになろうとは、夢にも思わないのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「…………な、なんだこれは!」
オーク討伐隊指揮官、ドワルドがそれを見た時、驚愕で言葉を失っていた。
「どう言う事? こんな砦を作るくらいオーク達の知能は高いというの? ありないわ!」
それ見たナターシャも、その異質な光景に驚きを隠せないでいた。
アルム町の南に広がる豊かな森、町から遠く離れたその場所に、突如として砦が現れたのである。
高い岩壁と水が満たされた幅広の堀り。およそこんな深い森の中には似つかわしくない……堅牢な砦がオーク討伐隊の前に現れたのである!
〈希望のやらかしが、オーク討伐隊に絶望を植え付けた!〉
「ふん、お主は……少し生き急ぎ過ぎなのじゃよ」
憂いた目で老婆が老人を諭す。
「なんだと?」
「お主がやろうとしている事は善なのだろうさ。だがな、やり方が間違っておるのじゃ……その善なる願いを急ぐあまり、悪となっていては本末転倒じゃよ!」
老婆は呆れながら、老人に言い放った。
「馬鹿な! ワシは皆のため、世界をより良くするために……もうワシには時間がないのだよ! 世界はひとつにならねばならん! それには絶対の強さが必要なのだ!」
老人は自分以外の人が、幸せに生きられる世界を夢見ていた。
「じゃから、お主はソレを作ったのか?」
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猛る老人に、アキコは憐みの目を向けた。
「だがその人形も、人の想いの前に破れ去ったようじゃな」
デュアルを倒すため、犠牲になった仲間たち(平均年齢65歳)の亡骸を、老婆は哀しみの目で見ていた。
「アキコ、お前さえ、お前さえいなければ!」
「ジーさん。お主の想いは分からなくはない。じゃがな……自分の幸せが他人の幸せとは言えんのじゃよ。幸せとは千差万別、100の人が居れば100の幸せがあって然るべきなのじゃ」
ハンマーで殴られたかのような衝撃が、ジーさんを襲う。
「ワシが……ワシが間違っていたと言うのか?」
「人生とは何を成したかではない、どうして成そうとしたかじゃよ」
「……フッフッフッ、アキコよ。60を過ぎて教えられたよ。生き急いでいたか……確かに死を前にしてワシは焦ってしまっていたのかもしれん」
何か吹っ切れたジーさん……その顔は清々しかった。
「じーさん……人生は長い。まだいくらでも、やり直しはできるはずじゃ」
アキコはジーさんの目を見て、その手を差し出す。和解の握手……だがジーさんはその手を取るのを躊躇していた。
「アキコ……ワシはまだ、やり直せるのだろうか?」
自信なさげなジーさんの問いに、アキコは満遍の笑みで、その手を握り言い放つ!
「まだ60の若造が何を言っておる。そんな言葉を吐くのは……10年早いんじゃよ!」
「アキコさん最高です!」
「すごいアキコさん!」
そこは天界にある女神セレスのプライベートルーム。部屋の中でクッションに座り、モニター画面に向かって拍手喝采する女神たちの姿がそこにあった。
ゲーム廃神と化しつつある神界の実質トップ、大地の女神セレス。
最近セレスのそば付きとして抜擢された、見習い女神のニーナ。
二人の女神がモニターの前で、釘付けになっていた。
「ばーちゃんファイター、コレは神です! 戦いの中に哲学を盛り込んだ神ゲーです!」
「アキコさん、カッコいい! 私こんな老婆になりたいです!」
二人が狂喜乱舞して讃えるのは、サガパターンが誇る3D対戦格闘ゲームの元祖、『ばーちゃんファイター』だった!
ばーちゃんファイター……世界初の3D対戦格闘ゲームとして、2D対戦格闘ゲームが主流の時代に、忽然と現れた巨星である。
当初は地味なグラフィックと1Pry\200が災いし、人気は低迷していたが……その奥深いシステムに魅了されたゲーマー達の間で、ジワリジワリと人気を上げ、その名を格闘ゲームの歴史に残す程にまで至った伝説である!
八極拳の使い手アキコさん(62歳)を主人公に、最強の座を目指し戦うこのゲーム最大の特徴は、ポリゴンによる3Dで表現されたリアルな動きだった。既存の2D対戦型格闘ゲームとは異なる操作性と演出で一世を風靡したのだ。
名機ギガドライブの後継機、サガパターンのキラータイトルとして発売されたこのゲーム……コアな信者を有するSAGAファンの絶大な支持を得て売れに売れた!
数定販売本数71万本、続くグラフィックが大幅に向上したばーちゃんファイター2は、130万本と破竹の勢いで対戦型格闘ゲーム業界を席巻した。
派手な技が売りの2D対戦格闘ゲームに比べ、ばーちゃんファイターはパッと見、地味な見た目だったが、それはリアルな動きを追求した結果だった。
3Dを生かした位置関係やパースの正確さ、モーションの動きで魅力を引き出し、既存の2D対戦格闘ゲームとの差別化を計る事に成功したのだ。
ゲームシステムは6個ボタンが主流だった格闘ゲーム業界において、パンチ、キック、ガードという3個ボタンを採用することで、打撃・投げ・ガードのシンプルな三すくみの攻防が確立され……戦いの駆け引きとシンプルでありながら、より深い戦略が立てられる玄人好みのゲームへと仕上がっている。
主人公であるアキコさん(62歳)の決め台詞、『10年早いんじゃよ!』は、あまりにも有名であり、格闘ゲームをやった事がない人でも、一度は聞いたことがあるだろう。62年と言う歳月がもたらした言葉の重みに、誰もが納得の決め台詞である。
60歳を超える高齢キャラクター達が織りなす、人生を賭けた戦い……3D対戦格闘ゲームの元祖、それが『ばーちゃんファイター』だ!
「アキコさん……長い時を生きたからこそ言える、その言葉の重み、勉強になります」
「セレス様、私アキコさんみたいな女神になれるよう、頑張ります!」
「それは良いです。私もアキコさんを見習わなければいけませんね。何を成したかではない、どうして成そうとしたか……この言葉は深いです!」
「セレス様、早く対戦モードで遊びましょう! 私も早くやりたいです!」
「分かっています。ちょうど今、もう1台のばーちゃんスティックの作成が終わりましたから、一緒に遊びましょう!」
セレスが両手を上に向けて目を閉じると、手の上に、光る魔法陣が描かれ、その中からジョイスティックが浮かび上がる。
横幅738mm、縦幅230mmと、かなり巨大なジョイスティックが現れ、セレスはあまりの大きさに取り落としそうになる。
「ヒャア! あ、危なかったです。せっかく作ったジョイスティックを落として壊すとこでした!」
「セレス様、お気を付けてください。神気も節約せねばですから」
「分かっています。ようやくニューハードの作成に目処がついたのですから……できるだけ節約して、まだ見ぬゲームソフトの作成も急がねばなりません」
セレスはなんと、ヒロのために作る予定だったギガドライブを作らずに、次なるニューハードの作成に着手していた。
足りない神気を、ニーナの神器を作るために溜め込んだ……莫大な神気を使って!
『世界のため』、その一言を免罪符に、セレスは廃神女神の道を突っ走っていた!
止まらない加速に快感すら覚え、アクセル全開のセレスは、今日もゲーマーの道を爆走する。
「早く、他のソフトで遊びたいです。ところで、このジョイスティック大きいですね」
「はい。ヒロ様の記憶にある風景から再現しましたが、ヒロ様はコレを一人で操って、対人戦の修行をしていました。元々は二人で遊ぶ拡張機器で、『ばーちゃんスティクPRO』と言うらしいです」
ばーちゃんスティクPRO……ゲームセンターに置いてあるばーちゃんファイターと、同じ環境を自宅で再現できる夢の拡張機器である。
特出すべきはその大きさである……横に並んで2プレイ対戦するため、ジョイスティックとボタンが二つずつ並んでいるのだ。
ゲームセンターと同じ感覚で遊べるばーちゃんスティクPROは、コアなゲーマーを中心に売れた!
当時のサガパターンの販売価格が\44800に対して、ばーちゃんスティクPROは\24800……サガ信者達の信仰度を試される拡張機器、それが『ばーちゃんスティクPRO』だ!
「セレス様、これを一人で……どうやってですか?」
「寝っ転がって、両手と両足で2プレイしていました……」
ヒロの名誉のために補足しておく! 決して友達が居ないわけでも、遊ぶ相手が居ないわけではない!
真のゲーマーとは孤高……人知れず鍛錬に励む姿こそが、美徳なのだ!
「勇者様って器用なんですね!」
「ええ、動きが若干気持ち悪かったですが、器用に一人で対戦してました。さあ! 私たちも対戦しましょう!」
「はい! 私アキコさんを使いたいです!」
「いいですよ。じゃあ私はこっちの忍者なる格好のシャドー丸を使いますよ」
和気あいあいと、ばーちゃんスティクPROのコネクターをサガパターンに差し込むセレス。
サガパターン……株式会社サガエンタープライズが世に解き放った次世代32bitゲーム機である。
3Dポリゴン機能を持つが、最強の2D機能を有するモンスターマシン、それがサガパターンだった。
サガパターンは、高性能のCPUと2Dスプライト機能により、格闘ゲームやシューティングゲームといったジャンルを得意とする本体だった。
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だが、このサガパターンの発売が、株式会社サガ崩壊の引き金を引く事になろうとは……当時の関係者は誰も想像がつかなかったのである。
ライバル機とシノギを削るハードウエア戦争で、サガパターンは構成パーツの多さから、思うように価格が下がらず……逆に構造が安易なライバル機は、大量生産によるプライスダウンに踏みきられ、大きく水を開けられてしまった。
下がり続けるライバル機の価格に、赤字覚悟の価格対抗で迎え撃つサガパターン……それがトドメとなった。
売れば売るほど赤字が計上され利益が出せない。
価格を下げたにもかかわらず、ライバル機のさらなるプライスダウンに販売台数が伸び悩んだ。
当然、ハードが売れなければソフトも売れない……ゲーム制作会社もソフト開発を考えねばならず、数多くの会社がサガパターンでのゲーム発売を諦めねばならなかった。
日本国内では販売台数580万台、世界合計で900万台と予想を下回る販売台数に関係者は頭を抱えた。旧ハードであるキガドライブが、全世界3075万台売り上げた事を考えれば。察する人も多いだろう。
ハードが売れない原因……それはギガドライブで大人気だったゾニッグ・ザ・ホッドドックの続編を出さなかった事も起因している。
ギガドライブのキラータイトルが、後継機のサガパターンで発売されないなんて、だれが予想しただろうか……しかも、海外でもっとも人気が高いゾニッグがである!
日本では売れたサガパターンは、このせいで海外ではサッパリ売れず、散々な結果を出すことになる。
そしてこれが、株式会社サガの転落へとつながるのであった。
最強の2D性能を持ちながら価格競争に敗れた不遇のハード……それが『サガパターン』だ!
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「セレス様、こっちのが対戦出来るゲームが多くて、二人で遊ぶには最適ですね。英断でした」
ニーナ褒められ、ドヤ顔のセレス!
「ニーナ、あなたの神気は無駄にはしません! 世界を救うため、大事に使わせてもらます」
「はい! 私の神気がガイヤを救う手立てになるなら、本望です」
「良くぞ言ってくれましたニーナ……あなたの献身を私は絶対に忘れませんよ。ありがとう」
ニーナの肩に優しく手を置き、礼を述べるセレス。
(この子の莫大な神気があれば、まだ見ぬハードを開発できます。フッフッフッフッ。ニーナ、あなたの神気……全てハード開発のために搾り取らせてもらいますよ)
「どうしましたかセレス様?」
黒い感情がセレスの心に闇を落とし、その顔を一瞬暗くする。
だがニーナの声にすぐに笑顔を作り、その本心を悟らせぬよう取り繕っていた。
「な、なんでもありませんよ。さあニーナ、ばーちゃんファイターやりましょう。今夜も徹夜です!」
「はい、セレス様! 五徹でも六徹でも世界のため、お付き合い致します」
公務の仕事以外は、全てをゲームに捧げるセレス……ゲームに出会ってからというもの、徹夜が続きすでに7日も寝ていない。
女神故、寝なくてもどうとでもなるが、目の下にできた深いクマは、セレスの美貌に影を落とし始めていた。
「さあ! 朝までに300戦はしますからね♪」
「お供します。セレス様!」
二人の女神は、いつ終わるともしれない戦いのロンドへと、その身を投じるのであった。
だがこの時、女神セレスは思いもしなかった……自分の行いが、株式会社サガと同じような運命を辿ることになろうとは、夢にも思わないのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「…………な、なんだこれは!」
オーク討伐隊指揮官、ドワルドがそれを見た時、驚愕で言葉を失っていた。
「どう言う事? こんな砦を作るくらいオーク達の知能は高いというの? ありないわ!」
それ見たナターシャも、その異質な光景に驚きを隠せないでいた。
アルム町の南に広がる豊かな森、町から遠く離れたその場所に、突如として砦が現れたのである。
高い岩壁と水が満たされた幅広の堀り。およそこんな深い森の中には似つかわしくない……堅牢な砦がオーク討伐隊の前に現れたのである!
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親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
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「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
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この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
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〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
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──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
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