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第12章 勇者とエクソダス編
第125話 風雲オーク城 前編
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「長、ついに人族が、村のすぐ近くまで来たぞ!」
「そうか……」
腕を組んだまま目をつぶり、時を待っていたカイザーが待ちに待った報に目を開いた。
広場に集まる総勢213名のオーク戦士。
これから死ぬ運命だと言うのに、その顔に恐れや怯えはなく、それぞれが誇りを胸に、カイザーの前に整列する。
「時は来た! 皆、覚悟は良いな!」
「「「おうよ」」」
カイザーの檄に、皆が武器を掲げて答える。
「敵の数は我らの5倍、数の上では圧倒的に不利だ! だが勝つ必要はない。我らの目的はただ一つ、ここにいる全員が人族の前で死ぬこと! 我らの死が、旅立った409名の命をつなぐ! すまぬ。皆の命……我にくれ!」
「長~、今さらそんな事、言わなくても大丈夫だべ~」
「クックックッ、ここにいる時点で、命を惜しむ臆病者などいやしない」
「脱童貞戦士ばかりだからな! がっはっはっはっ!」
「俺たちの命で皆が助かるなら本望だ!」
皆が笑顔で笑い合い、希望の未来を夢見ていた。
「我らオークは弱い……常に終わりの死に怯え、肩を寄せ合って生きてきた。食べられる弱者……それがオーク族だった」
カイザーの言葉に皆が聞き入る。彼らの脳裏に死んでいった家族や仲間の顔が思い浮かぶ。
「だが、この戦いの死は違う! 生きるための戦いではない……これは生かすための戦いだ!」
「生かすため……」
カイザーの想いが皆に伝わってゆく。
「そうだ。死んで終わりではない。死ぬ事で生かせる者がいる。素晴らしいと思わないか? ただ喰われて死ぬだけの命と、命をつなぐ死……どちらの死に意義があるかなど、言うまでもあるまい!」
「喰われるだけの命か。言われてみれば確かにな……子供の頃は、いつ襲われるかとビクビクしてたもんだ」
「だな~、おらの家族なんて~、みんな食われちまっただ~」
弱かった頃を思い出し、皆が昔を思い出していた。
「その思いを、我は息子にさせたくはない! だから我はここで死す! 我の死がオーク族の安寧のつながるなら、我は喜んで死のう!」
「そうだな、俺もかーちゃんと娘が生き残れるなら、笑いながら死んでやろう」
「ワシは孫が生まれたんだ。あの顔が可愛くてな……孫が平穏に暮らせるなら、この命くれてやる!」
「なんとなく、おっとうが俺を庇って死んだ気持ちが分かった気がする……生かすための死か、いいぜ! せいぜいカッコよく死んでやる!」
皆が死んでいった者に託された思いに気づき、生き残る者へ希望を託そうと、思いを募らせる。
「だが簡単には死ぬなよ。ここで人族の数を減らし被害を与えれば、奴らは必ずこの場にしばらく留まるか住処に戻るはずだ」
「その間に旅立つ者が逃げ切れれば~、おら達の勝ち~」
「順調なら今頃は、森を抜ける手前まで、行き着いているだろう。森と草原を抜ければ、もう人族は手出しが出来ぬと勇者ヒロは言っていた」
「そういや~、勇者ヒロと娘っ子はどうしただ?」
皆が周りをキョロキョロ見回すが、人族の二人の姿はどこにも見当たらない。するとカイザーが憂いた顔で皆に告げる。
「あの二人は……乱心したので牢屋に縛って入れておいた。誰であろうと、あの二人にかかわってはならない!」
カイザーの言葉に、誰もがヤレヤレと首を振り呆れていた。
「長……言わんでも分かる。あの二人は帰してやるべきだ。我らと共に死すべきではない」
「だな~、あの二人のお陰で、こうして希望を託せたんだしな~」
「だけど、解放して人族に合流されたら?」
「ふん。その時は戦士として全力で相手をするまで!」
皆がカイザーの意図を察し、ヒロとリーシアの解放を認めていた。
「さて、あとは手はず通り、各々が役割を全うするだけだ。オクタ……一番槍はお前だ」
「任せろだべ! 一番槍の名誉は我が仕るだべ」
「頼むぞ。最初に人族が目撃する狂ったオークだからな……しっかり狂った印象を人族に与えてくれ」
「分かっているだべ。そのために我ら50名、狂ったフリをして村の中を徘徊してやるべ」
「俺たちの狂いっぷりで、人族を恐怖させてやるぜ!」
「「「やるぞ!」」」
人族を欺くため、演技派古参オーク50名が武器を手に吼える。
「砦に残る部隊130名は砦に立て篭もり防衛だ。オク次郎、粘り強いお前が適任だ。指示を頼む」
「任せろだ~、一人でも多く、一秒でも長く奴らを釘付けにするだ~」
「一人でも多く道連れにするぞ!」
「「「おお!」」」
立て篭るは歴戦の勇士、総勢140名が弓を掲げ声を上げる。
「そして我と残り20名は、遊撃隊として待機、臨機応変に戦いに挑むぞ!」
「……」
遊撃隊に選ばれた者達は無駄口を叩くものは一人もいなかった。最も過酷な遊撃隊……カイザーは古参オークの中でも最高と呼べる戦士達を選抜していた。
口で開かず背中で語るプロフェッショナル……最古参オーク達が静かに頷く。
「さあ! いくぞ! 人族に教えてやれ! 弱き我らの強き想いを! 希望の未来のために、見事果ててやるぞ!」
「「「「おうよ!」」」」
ついにオークと人……勝敗が確定した戦いが始まろうとしていた!
…………時は遡る。
「ふ~、ヒロ。まだ切り出すか?」
カイザーは愛用のハルバードを地面に突き刺すと、流れ出る汗を拭きながらヒロに尋ねた。
「いえ、このくらいで多分足りるでしょう。お疲れさまです」
「うむ。我に掛かれば造作もない。しかし随分と切り出したものだな」
ヒロとカイザーの二人は、オーク村から少し離れた場所にある、河原にできた断層前で岩を採取していた。
砦を作るのに必要な岩がある場所を、ダメ元で聞いてみたところ、カイザーが河原の上流に岩の層が見える場所があると教えられたヒロは、早速カイザーに連れられ、この河原へとやって来ていた。
「しかし闘気をこんな事に使うとは、思いもしなかったぞ」
「戦うだけではありません。考え方一つで戦う技も、戦い以外の役に立つと言うことです」
ヒロは岩盤の深く削りとられた跡を見ながら、最後に切り出した岩をアイテム袋の中に収納していた。
自然では、決して作りえない河原の岩盤……それは当然、ヒロとカイザー二人の手によって作られたものだった。
闘気をまとったカイザーの必殺技、パワースレイブをダイナマイト代わりに削岩し、ヒロが手頃な大きさと形に、闘気をまとわせたショートソードで形を整えていた。
闘気をまとった武具の切れ味は飛躍的に上がり、岩はまるでバターを切るが如く、綺麗に整形されてゆく。
闘気をまとう練習がてら、どんどん岩を整形するヒロ……その技術は、時間を追うごとに飛躍的に上がる。
「さて、じゃあ僕は急いで村に戻ります。早めに石垣を組んでしまいたいので、カイザーさんは村へ引き込む水路作りのチームへ合流してください」
「分かった。ジークポーク」
「では、ジークポーク!」
同志カイザーと別れたヒロは。一人オーク村へと急ぐ。
Bダッシュを使い加速を続け、森の中を疾走するヒロは、アイテム袋のメニュー画面を見ながら最善の岩の組み方を模索していた。
築城をした経験はないが、小学校の時、発表会のテーマで築城の歴史と仕組みを調べた事がある。その時学んだ知識とこのアイテム袋、そしてポーク族の労働力があれば、短期間で砦を作るのは可能だとヒロは判断していた。
だが、なぜ小学生のヒロが築城なんてマニアックなテーマを選んだのかというと……当時ハマっていた『風雲タカシの挑戦状』というゲームが原因だった。
風雲タカシの挑戦状……人気お笑い芸人タカシさんが、タカシ軍団と城を賭けて戦う視聴者参加型バラエティー番組をゲーム化したものだった。
このゲーム、無論ウラコンのコントローラーで操作はできるのだが、真骨頂はウルトラトレーナーというマット型の体感コントローラーを用いてのプレイにあった。
実際に体を動かしてキャラクター操作する、体感型ゲームとして当時は発売されたのだ。
数々の難関ステージをクリアし、最終的にタカシ城の城主タカシを倒すことが目的となるゲームである。
難関ステージは3つあり、3ステージクリアーで1周クリアー扱いになる。3周すればファイナルステージであるタカシ城に進み、城主タカシを倒せばゲームクリアーなのだが……1周ごとに上がる難易度と削られる体力に、最終ステージを前にして力尽きる子供が続出した!
当時の開発者は首を傾げた……テストプレイでは誰もが問題なくクリアーしていたのになぜだと?
その答えはすぐに判明する。それは大人と子供の体力の差である……テストプレイをする大人基準でゲームを作成してしまったのが原因だった。
今さら発売したソフトを修正できるはずもなく、小学生の体力ではクリアー不可能なゲームが、世に解き放たれてしまったのだ。
まあ、ウルトラトレーナーでなくても、ゲームをクリアーするだけなら。普通にコントローラーでプレイすれば良いだけの話であるのだが、真のゲーマーであるヒロは違った。
当時小学4年生の彼は、当然このゲームをクリアーできなかった。いや……コントローラーを使ってなら余裕でクリアーはできる。やはり子供の体力と言うハンデが、ウルトラトレーナーでのクリアーを妨げたのだ。
ヒロは泣いた。生まれて初めて悔し涙で枕を濡らし、自分の体力のなさを嘆いた。そして明くる日……彼の挑戦は始まった。
『敵を知り、己を知れば、百戦して殆うからず』
日々の勉学の中で学んだ孫子の言葉を彼は実践する。
和洋の城について、歴史から築城について知識を増やしつつ、徹底的に体を鍛え始めた!
体力がないのなら、つければいい! ヒロの挑戦ははじまった。トレーニングは過酷を極め……毎朝5時に起きてやるゲームの時間をジョギングに変え、勉強している時もゲームをしている時も、食事中だろうが筋トレで体をイジメ抜いた。
結果、ヒロはたった二ヵ月で体を作り込み、見事ウルトラトレーナーでのゲームクリアーを果たしたのだった。
この時、ヒロの格言にある言葉が追加された……『ゲームは体力!』、彼のゲーマー人生に、体力作りが加えられたのは言うまでもなかった。
ゲームばかりで、体を動かさない子供向けに作られたはずなのに、クリアーが困難なゲーム……それが『風雲タカシの挑戦状』だ!
「なんとかなりそうですね。あとはどれだけ早くこの切り出した岩を効率良く短時間で組み上げるかですが……久々にアレをやりますか! 幸いアイテム袋に入っている中身が、視界に表示できますからね。イケるはずです! 久しぶりに『デドリズ』ができそうで腕が鳴りますよ!」
ヒロは満遍の笑みを浮かべ、オーク村へと急ぎ戻るのだった。
〈人族と戦うため、やり過ぎゲーマーによる築城が始まった!〉
「そうか……」
腕を組んだまま目をつぶり、時を待っていたカイザーが待ちに待った報に目を開いた。
広場に集まる総勢213名のオーク戦士。
これから死ぬ運命だと言うのに、その顔に恐れや怯えはなく、それぞれが誇りを胸に、カイザーの前に整列する。
「時は来た! 皆、覚悟は良いな!」
「「「おうよ」」」
カイザーの檄に、皆が武器を掲げて答える。
「敵の数は我らの5倍、数の上では圧倒的に不利だ! だが勝つ必要はない。我らの目的はただ一つ、ここにいる全員が人族の前で死ぬこと! 我らの死が、旅立った409名の命をつなぐ! すまぬ。皆の命……我にくれ!」
「長~、今さらそんな事、言わなくても大丈夫だべ~」
「クックックッ、ここにいる時点で、命を惜しむ臆病者などいやしない」
「脱童貞戦士ばかりだからな! がっはっはっはっ!」
「俺たちの命で皆が助かるなら本望だ!」
皆が笑顔で笑い合い、希望の未来を夢見ていた。
「我らオークは弱い……常に終わりの死に怯え、肩を寄せ合って生きてきた。食べられる弱者……それがオーク族だった」
カイザーの言葉に皆が聞き入る。彼らの脳裏に死んでいった家族や仲間の顔が思い浮かぶ。
「だが、この戦いの死は違う! 生きるための戦いではない……これは生かすための戦いだ!」
「生かすため……」
カイザーの想いが皆に伝わってゆく。
「そうだ。死んで終わりではない。死ぬ事で生かせる者がいる。素晴らしいと思わないか? ただ喰われて死ぬだけの命と、命をつなぐ死……どちらの死に意義があるかなど、言うまでもあるまい!」
「喰われるだけの命か。言われてみれば確かにな……子供の頃は、いつ襲われるかとビクビクしてたもんだ」
「だな~、おらの家族なんて~、みんな食われちまっただ~」
弱かった頃を思い出し、皆が昔を思い出していた。
「その思いを、我は息子にさせたくはない! だから我はここで死す! 我の死がオーク族の安寧のつながるなら、我は喜んで死のう!」
「そうだな、俺もかーちゃんと娘が生き残れるなら、笑いながら死んでやろう」
「ワシは孫が生まれたんだ。あの顔が可愛くてな……孫が平穏に暮らせるなら、この命くれてやる!」
「なんとなく、おっとうが俺を庇って死んだ気持ちが分かった気がする……生かすための死か、いいぜ! せいぜいカッコよく死んでやる!」
皆が死んでいった者に託された思いに気づき、生き残る者へ希望を託そうと、思いを募らせる。
「だが簡単には死ぬなよ。ここで人族の数を減らし被害を与えれば、奴らは必ずこの場にしばらく留まるか住処に戻るはずだ」
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「順調なら今頃は、森を抜ける手前まで、行き着いているだろう。森と草原を抜ければ、もう人族は手出しが出来ぬと勇者ヒロは言っていた」
「そういや~、勇者ヒロと娘っ子はどうしただ?」
皆が周りをキョロキョロ見回すが、人族の二人の姿はどこにも見当たらない。するとカイザーが憂いた顔で皆に告げる。
「あの二人は……乱心したので牢屋に縛って入れておいた。誰であろうと、あの二人にかかわってはならない!」
カイザーの言葉に、誰もがヤレヤレと首を振り呆れていた。
「長……言わんでも分かる。あの二人は帰してやるべきだ。我らと共に死すべきではない」
「だな~、あの二人のお陰で、こうして希望を託せたんだしな~」
「だけど、解放して人族に合流されたら?」
「ふん。その時は戦士として全力で相手をするまで!」
皆がカイザーの意図を察し、ヒロとリーシアの解放を認めていた。
「さて、あとは手はず通り、各々が役割を全うするだけだ。オクタ……一番槍はお前だ」
「任せろだべ! 一番槍の名誉は我が仕るだべ」
「頼むぞ。最初に人族が目撃する狂ったオークだからな……しっかり狂った印象を人族に与えてくれ」
「分かっているだべ。そのために我ら50名、狂ったフリをして村の中を徘徊してやるべ」
「俺たちの狂いっぷりで、人族を恐怖させてやるぜ!」
「「「やるぞ!」」」
人族を欺くため、演技派古参オーク50名が武器を手に吼える。
「砦に残る部隊130名は砦に立て篭もり防衛だ。オク次郎、粘り強いお前が適任だ。指示を頼む」
「任せろだ~、一人でも多く、一秒でも長く奴らを釘付けにするだ~」
「一人でも多く道連れにするぞ!」
「「「おお!」」」
立て篭るは歴戦の勇士、総勢140名が弓を掲げ声を上げる。
「そして我と残り20名は、遊撃隊として待機、臨機応変に戦いに挑むぞ!」
「……」
遊撃隊に選ばれた者達は無駄口を叩くものは一人もいなかった。最も過酷な遊撃隊……カイザーは古参オークの中でも最高と呼べる戦士達を選抜していた。
口で開かず背中で語るプロフェッショナル……最古参オーク達が静かに頷く。
「さあ! いくぞ! 人族に教えてやれ! 弱き我らの強き想いを! 希望の未来のために、見事果ててやるぞ!」
「「「「おうよ!」」」」
ついにオークと人……勝敗が確定した戦いが始まろうとしていた!
…………時は遡る。
「ふ~、ヒロ。まだ切り出すか?」
カイザーは愛用のハルバードを地面に突き刺すと、流れ出る汗を拭きながらヒロに尋ねた。
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「うむ。我に掛かれば造作もない。しかし随分と切り出したものだな」
ヒロとカイザーの二人は、オーク村から少し離れた場所にある、河原にできた断層前で岩を採取していた。
砦を作るのに必要な岩がある場所を、ダメ元で聞いてみたところ、カイザーが河原の上流に岩の層が見える場所があると教えられたヒロは、早速カイザーに連れられ、この河原へとやって来ていた。
「しかし闘気をこんな事に使うとは、思いもしなかったぞ」
「戦うだけではありません。考え方一つで戦う技も、戦い以外の役に立つと言うことです」
ヒロは岩盤の深く削りとられた跡を見ながら、最後に切り出した岩をアイテム袋の中に収納していた。
自然では、決して作りえない河原の岩盤……それは当然、ヒロとカイザー二人の手によって作られたものだった。
闘気をまとったカイザーの必殺技、パワースレイブをダイナマイト代わりに削岩し、ヒロが手頃な大きさと形に、闘気をまとわせたショートソードで形を整えていた。
闘気をまとった武具の切れ味は飛躍的に上がり、岩はまるでバターを切るが如く、綺麗に整形されてゆく。
闘気をまとう練習がてら、どんどん岩を整形するヒロ……その技術は、時間を追うごとに飛躍的に上がる。
「さて、じゃあ僕は急いで村に戻ります。早めに石垣を組んでしまいたいので、カイザーさんは村へ引き込む水路作りのチームへ合流してください」
「分かった。ジークポーク」
「では、ジークポーク!」
同志カイザーと別れたヒロは。一人オーク村へと急ぐ。
Bダッシュを使い加速を続け、森の中を疾走するヒロは、アイテム袋のメニュー画面を見ながら最善の岩の組み方を模索していた。
築城をした経験はないが、小学校の時、発表会のテーマで築城の歴史と仕組みを調べた事がある。その時学んだ知識とこのアイテム袋、そしてポーク族の労働力があれば、短期間で砦を作るのは可能だとヒロは判断していた。
だが、なぜ小学生のヒロが築城なんてマニアックなテーマを選んだのかというと……当時ハマっていた『風雲タカシの挑戦状』というゲームが原因だった。
風雲タカシの挑戦状……人気お笑い芸人タカシさんが、タカシ軍団と城を賭けて戦う視聴者参加型バラエティー番組をゲーム化したものだった。
このゲーム、無論ウラコンのコントローラーで操作はできるのだが、真骨頂はウルトラトレーナーというマット型の体感コントローラーを用いてのプレイにあった。
実際に体を動かしてキャラクター操作する、体感型ゲームとして当時は発売されたのだ。
数々の難関ステージをクリアし、最終的にタカシ城の城主タカシを倒すことが目的となるゲームである。
難関ステージは3つあり、3ステージクリアーで1周クリアー扱いになる。3周すればファイナルステージであるタカシ城に進み、城主タカシを倒せばゲームクリアーなのだが……1周ごとに上がる難易度と削られる体力に、最終ステージを前にして力尽きる子供が続出した!
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その答えはすぐに判明する。それは大人と子供の体力の差である……テストプレイをする大人基準でゲームを作成してしまったのが原因だった。
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ヒロは泣いた。生まれて初めて悔し涙で枕を濡らし、自分の体力のなさを嘆いた。そして明くる日……彼の挑戦は始まった。
『敵を知り、己を知れば、百戦して殆うからず』
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この時、ヒロの格言にある言葉が追加された……『ゲームは体力!』、彼のゲーマー人生に、体力作りが加えられたのは言うまでもなかった。
ゲームばかりで、体を動かさない子供向けに作られたはずなのに、クリアーが困難なゲーム……それが『風雲タカシの挑戦状』だ!
「なんとかなりそうですね。あとはどれだけ早くこの切り出した岩を効率良く短時間で組み上げるかですが……久々にアレをやりますか! 幸いアイテム袋に入っている中身が、視界に表示できますからね。イケるはずです! 久しぶりに『デドリズ』ができそうで腕が鳴りますよ!」
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